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tasuke さんのレビュー一覧 

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     2017/09/18

    大ヒットとなった「原子心母」のあと、廉価版として発売されたオムニバス。LP未収録だった「アーノルド・レーン」「シー・エミリー・プレイ」を中心とした初期拾遺作品群です。彼らは初期の作品とシド・バレットに特別な思い入れがあり、のちに「ナイス・ペア」というファーストとセカンドのカップリング盤を発売したこともありました。言わばデビュー時の立ち位置を常に確認しているグループでもありました。

    シド・バレット在籍時の特徴は「陽気な狂気」です。また「星空のドライブ」のような暴力衝動も後日のフロイドには望めない要素です。この曲からは、当時の演奏力で可能なかぎり、既存の音楽でないものをつくろうという熱気が伝わってきます。「シー・エミリー・プレイ」のポップさは、今聞いても天才だと思いますね。あまり指摘されない彼らの要素として、ユーモアがあります。「原子心母」のB面ぐらいまで彼らは必ず「おふざけ」を入れるグループでした。(以後シリアス路線一筋になってしまいますが…。)バレットがギルモアに交代しての変化は、ドラマティックになり、叙情性あるギターが出てくることです。でも、このオムニバスでは、その片鱗程度しかわからない変化でしょう。

    貴重なドキュメントで、他のフロイドの有名作品を聴いた後がふさわしいかもしれません。

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     2017/09/18

    ルーツとしてのR&Bに敬意を払いつつ、「ベガーズ・バンケット」の頃から彼らは音楽にとても独自なアプローチをするようになったと思います。その完成形がこのアルバム。ストーンズの「型」が定着したと思っています。彼らの演奏は技術を聞かせようとか、スマートになろうとか全く考えていません。どちらかと言えば演奏者のエゴを否定し、声と演奏の積み上げを塊のように組織して「ノリ」をつくりだす手法です。いわゆるポピュラー音楽の洗練とも無縁で、武骨で野蛮なまま、がちゃがちゃっとした感触を聴かせる音楽です。

    アレンジがまた独特というか、ノリが生まれるまでピアノだろうがサックスだろうがぶつけられるだけぶつけてきます。(だからミック・テイラーは耐えられなかったとも考えられます。)どう聴いてもスタジオ・ライブに聴こえるこのアルバム。制作過程はメンバー個々の演奏を積み上げ積み上げしていったようで、つくづく不思議な音づくりをする人たちです。

    1.Rocks Off から5.Tumbling Dice あたりまでが、その魔術的ノリにユーザーを惹き入れる部分です。わたしが好きなのが12.Ventilator Blues からの流れ。ほとんどワンフレーズの繰り返しだけの曲が盛り上がること盛り上がること。そして14.Let It Loose 、17.Shine A Light と疲労感あるバラードを重ねてきます。がちゃがちゃっとした感触が整理されて、美しさを感じさせるのがこの部分です。ミック・テイラーのギターはここで活きてくるんですね。いっしょに滅びていこう。でもしっかり前を向いて。そんな感じでしょうか。ストーンズのカタルシスに比較できるバンドをちょっと思いつきません。クリームでは重すぎるし、トラフィックでは綺麗すぎるし。18.Soul Survivor まで来ると終わってしまうのが名残惜しくなってくるアルバムです。

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     2017/07/24

    これはとんでもないアルバムで、言語による理解を拒否する圧倒的迫力に満ちています。2.Cowboy Movie というワンフレーズをただ繰り返すだけの曲があります。野太いベースと左右のギターが好き勝手に舞う中を、クロスビーが感覚的に歌を押し出していくのです。最初に音の迫力に突き上げられ、最後までどんどん惹きこまれていきます。曲が終わった後、ふとワンフレーズだけなんじゃないか、と気づきますが、その驚愕と言いましたら。

    ジャンルを申し上げれば別格の位置にあります。時代もあまり感じさせません。70年代に聴こうが、21世紀に聴こうがきわめて特異な感触を与えると思います。CSNから聴き進むと特にわかりにくいかも知れません。でも音の優しさと深みは特別で何度も何度も繰り返したくなります。歌詞がないスキャットの曲も多いんです。彼の声の透明感に打ちのめされて歌詞がないことさえ気になりません。

    参加しているのはジェファーソン・エアプレーンやらジェリー・ガルシアやら、ジョニ・ミッチェルやらグレッグ・ローリーやら。みんなクロスビーの新しいアルバムに参加したかったんでしょう。わたしはどの曲で誰が弾いているかまで判らないのですが、ジャック・キャサディのベースだけは判ります。このアルバムの成功の影の立役者ではないかと思います。最後にわたしなりに言語的解釈を試みますと、タイトルは「言語による意味づけを要さない」の意味ではないかと考えています。名前など理解の足しにならない、と読むのではないかと。

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     2017/07/14

    トニー・ケイがリーダーではありません。曲も演奏もギターのブライアン・パリッシュが率いるブルーズ・ロックのグループ。彼の歪んだギター・ソロや、はね回るベースは実にカッコよいです。イエスの前座として演奏されたステージをライブ録音されたもので、ずっとプログレッシヴ・ロックとして扱われてしまっているところが、バジャーの泣き所です。(プログレッシヴ・ロックのファンはブルーズが苦手ですから…)イエスの出発は、ブルーズを基本にすえたヘビーロックでした。イエスのイノヴェーションに耐え切れなくなって脱退したのがトニー・ケイですから、彼がヘビーロックの尻尾を引きずっているのは当然です。パリッシュとの相性もよかったでしょう。ゆえに、のちのディテクティヴ加入があるんだと思うわけです。

    英国グループらしく湿り気もたっぷりあります。逆にブルーズ・ロックのファンでこのグループを聞いていらっしゃらない方におすすめです。

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     2017/06/17

    フリーは活動期間が短かったため、ライブ音源をそれほど残していません。実にライブ向きのグループだったので残念なことです。

    マスターテープの多くが失われ、相当数がポール・コゾフの保管していたエアチェックのリールから復元されたものです。デビュー直後に出演した68年のWaiting on Youは、BBキングの曲。3.I’m a Moverから6.Broad Daylightまでが69年の「トンズ・オブ・ソブズ」発表直後の出演。ここらへんまでは、演奏に勢いがあり若いグループだったことがよくわかる名演であります。7.Woman (69年12月)は、コゾフのギターが冴えておりますが、同時に演奏されていたMr.Bigのテープが使い物にならなかったとのことで、とても残念です。13.Be My Friend (71年)以下はデモテープ並みの出来栄えです。

    DISC2のライブは、70年1月(1.The Hunterから4.Remember)、70年7月(5.Fire And Waterから11.All Right Now)の2公演。ラジオのリスナーが個人的に録音していたものなのでしょう。音質は悪いです。しかし、「フリー・ライブ」の同年の演奏であり、なかなか白熱しております。全体としてコアなユーザー、音源マニア向けです。

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     2017/06/06

    クリームの商品が「即興」であったように、初期のピンク・フロイドの商品は「実験」であったと思っています。このアルバムに実験色はほとんどなく、とてもシンプルかつエモーショナル。曖昧なところを極力排除した制作に感じます。歌詞を聴いていて感じるのが、テーマにしている動物たちとの距離感です。「I」という単語はあまり出てこなくて、たんたんと事象を積み上げている、えらく客観的な歌詞だと思います。よく言われる階層批判というより、犬にもブタにも羊にも、可哀想=同情すべき事情があると歌われているような気がしています。一方で実験を捨てた今作は、あいも変わらず神秘や幻想を求める一部の人には評判が悪かったのでした。

    ブタは醜いし、犬は卑屈だし、羊は臆病である。これらはおそらくロジャー・ウォーターズの内面をそれぞれ表現してるんじゃないかと。中でも 2. Dogsが判りやすくて、生き抜くうえでの無力感、孤独感を恐れずに襲い掛かれ、クレージーになれ、と言われている気がします。現実との違和感を表明していた過去から、現在のリスナーをいかに説得するか、という方法に変わったと思うんです。それをサウンドでしっかり裏付けているのはギルモアのギター。深読みしようのない演奏で、とても情感が入っています。

    批判して終わり、のアルバムではありません。それだけでしたら、ここまでリスナーをつかめない。 5. Pigs On The Wing の歌詞が象徴的で、出だしと正反対のことが歌われます。僕は君を気にかけているし、君が僕を同じように思っていることを知っている。生きづらさを感じながら、それでも生き抜くにはそれしかない。かつてなく確信的に締めくくられるラストには勇気づけられます。

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     2017/05/29

    ロック界で五指に入るベーシストと五指に入るドラマーが同居していたのがフー。彼らが同時代の英国バンドの中で最も早くR&B離れをしてしまったことを物語ります。でもエントウィッスルとムーンは、もともとR&Bに影響を受けていなかったのではないでしょうか。それぐらい独自性ある演奏です。この盤は、「マイ・ジェネレイション」とこのアルバムの間に制作されたEPも含んでいます。そちらではビーチボーイズ顔負けのアカペラを聴かせたりします。懐の深いバンドだなあ、と。

    6 Cobwebs And Strange はキース・ムーンの破壊的ドラミングが全て。これを聴いて彼のルーツがブルーズではなく、ブラスバンドだという確信を持ちました。明るさ、ポップさの中に破壊衝動を感じさせるフーの根幹は、ムーンとエントウィッスルだと思います。10 A Quick One, While He’s Away は、アビーロードB面のようなつくりで、夫がいない間の妻の情事の様子を(主人公を変えながら)歌いつないでいきます。物語をつくらせたらキンクスが上、という声もありますけれど、やっぱりこうした曲は彼らのお株です。

    アディショナル・トラックを入れて全部で1時間近く。最後の「威風堂々」まで来ると肩で息をしたくなるほどぎっしり中身が詰まっています。

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     2017/05/21

    ピアノの低音部やマンドリンのかき鳴らしが異質どころか、ストライプスらしさを感じさせる不思議な作品です。ジャック・ホワイトの音づくりが何を楽器に持ってこようが左右されない性質のものであることが判ります。彼らの音楽はおちょくり精神にあふれたものが多い反面、そのいかがわしさがロックの原初的な感動を呼び起こすところがあります。おそらく計算づくでやっているのでしょう。ユーザーを驚かせ、間口を広げさせることがジャック・ホワイトの目的なのではないでしょうか。

    わたしは彼らの音楽をブルーズの再現であるかのような論評を読むと不思議な気持ちがします。ブルーズの再現がポップ音楽でポピュラリティを獲得したことはないからです。レッド・ツェッペリンにしても、ストーンズにしてもそうです。ホワイト・ストライプスにしてもブルーズへの批評的アプローチは行っていますが、完コピを目指しているわけでもありません。実際に20年代のカントリー・ブルーズと音の感触は全然違います。ルーツの素晴らしさを説くあまり、ルーツを神格化しては、彼らの現代性を理解できないのではないでしょうか。

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     2017/05/21

    ラテン系のロック・グループでワールドワイドになったのは、彼らが初めて。イタリア系米国人のファンは誇らしかっただろうし、アングロ系米国人は燃えるようなラテン魂を感じたことだと思います。PFMの良いところは、曲が明るいこと。抒情性たっぷりではあるのに、陰鬱さとは無縁です。74年8月のセントラルパーク公演がCD2枚分追加されて、ほぼ完全な形で彼らのライブ演奏に向き合えるようになりました。既発表部分(トロント公演が主)をダイジェスト、追加2枚をフル・ライブと考えるといいと思います。このライブの段階で、アルバムはわずか2枚のリリースでした。レパートリーのほとんどを演奏しますが、LP1枚分ではPFMにとってダイジェストの長さだったと思います。

    また彼らの演奏力は並みのものではありません。緊張感などみじんもなく、自由にのびのび。全員が圧倒的で、それぞれのソロを味わえるパートもあります。さらにスタジオ録音が彼らの一部の側面でしかなかったんだ、と思わせるタイトな演奏です。フランツ・ディ・チョッチョのドラムズがおそろしい手数です。心なしかリズムが走り気味になる展開が多いです。マウロ・パガーニのフルートも効いていますし、わたしフラビオ・プレモリの鍵盤が好きなんです。骨太のミニムーグの音でユーザーを煽ってくれます。タランテッラのビートを刻む 4. Celebrationでは「フニクリ・フニクラ」が、6. Alta Loma Five ’Till Nine では「ウイリアム・テル」まで出てきます。

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     2017/05/21

    かつてカンのユーザーから支持されていない筆頭作だったですが、現在はどうなんでしょうか。レーベルをヴァージンに移籍したものの、グループ内の異分子だったダモ鈴木を失ってしまい、カンは音楽の熟度を上げていくことを考えます。トラフィックを自由契約になったロスコ・ジー、リーボップが躍動するビートをもたらしたのに加え、もともと凄いドラマーだったヤキ・リーベツァイトとのリズムは空前絶後。80年代のトーキング・ヘッズは、このアルバムの模倣だと言いたいぐらいです。

    4.Animal Waves は15分の長尺曲ながらすさまじいエネルギーで走り切ります。トラフィックの末期も長い演奏でしたが、リズム二人のパッションをウインウッドは使いこなしていたとは言えません。(実は、二人は別々の時期の加入でしたが。)巧みなリズムに、イルミン・シュミットのサイケ感覚、ホルガー・ツーカイの奇妙なエレクトニクスが結合し摩訶不思議な世界になっています。一聴して聴きやすいことが、かつての不評の要因だったわけなんですが。ミハエル・カローリが、リゾート感覚溢れるカッティングを弾いているのもどこかおかしいです。

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     2017/05/21

    ブルーズから出発した彼らは、しかしブルーズを前面に出す音づくりをしませんでした。ブルーズの精神を大事にしながら、古典をリメイクすることを潔しとせず、独自の音世界をつくっていたと思います。このアルバム、古いブルーズのパターンに詞をのせただけのような曲が多くて、わたしは長いことジム・モリスンの曲想が枯れたせいなのでは、と考えていました。ブルース・ボトニックの回顧を読むとどうも様子が違っています。このアルバムは、バンドの原点回帰のために敢えてシンプルな制作にしたようなのです。ベースのジェリー・シェリフ、リズム・ギターのマーク・ベノを加えたのも、オーバーダブをなくしセッションで決定テイクを生み出す知恵だったようです。

    9. Texas Radio And The Big Beat にいたっては、書き溜めていたモリスンの詞に対して、クリーガーが瞬時にメロディをつけたようでマジックのようだったと書かれています。バンド生命を締めくくる作ではなく、次のステップへ踏み出すためのアルバムだったのですね。モリスンの死がなければ、おそらくこの6人ないし5人でツアーに出たのではないか、とも思えます。複雑な曲構成こそありませんが、ワイルドで粗野なドアーズの魅力が出ている盤です。

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     2017/05/21

    「フリーバード」で粘りつくギターを弾いたエド・キング脱退のゆえか、このアルバムの特徴は歯切れのよさにあります。ユニゾンによるリズム・ギターとしゃきしゃきしたビートを聴いているとレーナードだなあ、と落ち着きます。トム・ダウドが制作した作で彼らにしては泥臭くなく評判は今一歩。でも手抜きはなく輪郭のはっきりした録音もよいです。わたし、南部のロックはブルーカラーのためにある、と信じて譲りません。PCに向かう仕事をした後より、蒸し暑い日に草刈りしてたっぷり汗をかいた後の音楽です。音を聴いているとウイスキーを瓶からラッパ飲みして右手親指を突き立てたくなりませんか。

    8.Cry For The Bad Man のリズムは「ファイア・アンド・ウォーター」にしか聴こえません。ベースがアンディ・フレーザーっぽいところを聴くと、本当にフリーをトリビュートした曲なのではないかと思えてきます。フリー、バッド・カンパニーが南部に影響されたのか、南部バンドがフリーを聴いてアイデンティティを確立したのか、今ではよくわからなくなっています。ただUKヘビーロックのユーザーであるわたしは、米国ロックの中で南部の音に最もひかれるし、自分の家に帰ってきたような安らぎを感じます。

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     2017/05/21

    並みのプログレッシブ・ロックが束になってもかなわないのが2.The Jungle Line です。ブルンジ・ドラムズにシンセサイザーがからむだけの伴奏でコード感もありません。曲の進行に関わらずバックでウェーイという歓声があがったりします。アルバム・カバーが、大都会のすぐそこでアナコンダを捕まえた集団が喜んでいるというもので、この曲をイメージにしたもの。わたしは彼女にアフリカのイメージを吹き込んだのがスティブン・スティルスでないのかと邪推しております。前作の「コート・アンド・スパーク」で踏み込んだ音楽上の実験を、さらにアヴァンギャルドに展開した曲たちです。

    アヴァンギャルドと言えばシンセサイザーと声だけの10.Shadows And Light もあります。アカペラというよりゴスペル。彼女のユーザーなら避けて通れない傑作ライブ&ビジュアルのテーマとなっている曲です。ジョニ・ミッチェルは高性能なスポンジみたいな人なのではないでしょうか。どんなジャンルの音楽でも、もっと言えば雨音や犬の鳴き声や風を聞いても音楽の要素にすることができるし、必ずその音の最適解を見つける。前衛が前衛にならず、耳触りのいいエンタテインメントになるジョニの魔術を聴いていると不思議で仕方ありません。

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     2017/05/07

    ずっとヒッピーでいられるわけでもなく、スーツを着て企業に就職するか、農場や工場に散って行った若者たちが支持したのが、70年代後半のフリートウッド・マックだと思います。このデュオ作、間違いなくマック起死回生のきっかけとなったアルバムで、若者の恋愛、疲れ、楽観主義を表現しています。家庭的とも言えるデュオ作をつくりあげたのが当時貧乏生活者だったバッキンガムとニックスです。ここでバッキンガムの技能と才能を見抜いたミック・フリートウッドも大したものながら、この二人が米国を代表するパフォーマーに成長する余力をまだまだ残していたことに驚きます。言い換えると習作、でありながら何十年も語り継がれる印象的な音楽なのです。

    リンジー・バッキンガムは綺麗なフォーク・ギタリストではありません。6. Don’t Let Me Down Again を聴いてもらえばわかりますが、(ピックなしで)ぐいぐい弾きまくるワイルドなギタリストです。スティービー・ニックスもいわゆる典型的なウエスト・コースト・シンガーではありません。彼女の特長は地声で通すことで、ドスを効かせることではエタ・ジェイムズに近いと思っています。このデュオ作が売れなかったのは、プロモーションがなかっただけの理由でなく、二人の個性をまだ見抜ける人が業界にいなかったことによるのでしょう。

    ところが聞き分ける人はいるもので、ライ・クーダーはニックスの個性を見出して映画「ストリート・オブ・ファイアー」に彼女のデモ曲を起用しているのです。同時にウエスト・コースト音楽の飽和状態を見越して、ティーンズより上の世代にアピールする音楽をつくったキース・オルセンにも確信があったのでしょうね。以後カリフォルニアだって暗いし、恋愛はしんどいし、でも生きて行かなきゃならないよね、というウエスト・コーストの基調が生まれたと思います。

    くやしいのがCD後半で音程が不安定になるところ。マスターが原因と説明されていますが、わたしは信じていませんし、マスターがだめなら盤起こしすればよろしい。

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     2017/05/06

    「ハイウェイ」後、ポール・ロジャーズとアンディ・フレイザーのソング・ライティング・コンビの確執が決定的となり、グループは分裂。残されたコゾフは、「コゾフ・カーク・テツ・ラビット」として一枚のアルバムを完成させるも、鎮静剤のオーバードーズにより重篤な症状をきたすに至る。サイモン・カークのコゾフを何とか助けてやってほしい、との呼び掛けに、ロジャーズとフレイザーは再びグループに戻る。言わば、フリー各メンバーによるコゾフへの「応援」と「感謝」がこのアルバムの基調であります。

    華々しく「Catch a Train」で幕を開けるも、曲の進行に従ってどんどんトーンが重くなっていき、最後の「Guardian of the Universe」「Child」「Goodbye」の三曲は他のフリーのアルバムでは聞けない、美しくも悲痛なあきらめのようであります。コゾフのギターは、立ちのぼる陽炎のように鬼気迫るものです。重い疾患にかかっていた、と言って間違いない彼の状態からすれば奇跡の演奏かもしれません。

    「とうとう自由になった」というタイトルは皮肉です。ろくに仕事もなく、地元でブルーズ音楽を演奏することでしか生活の糧を得られなかった四人。若くして天才音楽集団のように祭り上げられてしまいますが、ずっと引きずってきた疲労感は彼らを年齢以上に老成させてしまったようです。フリー・ファンの方で、このアルバムを飛ばされている方はぜひ。

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