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0 people agree with this review 2021/04/17
日本版Uボートの話で期待していたが、他の吉村作品と比べるとやや展開が間延びしているテンポが悪く感じた。 第二次大戦中のUボートによる深海での攻防がいつもながらのドキュメンタリータッチで写実的に描かれていて知的好奇心は掻き立てられるが、上にも書いたように題材がマニアックなので説明的な部分が多く、流れが阻害されてしまっており展開がやや間延びしているように感じた。 「ドラマ」として読むのではなく、「ドキュメンタリー」として読むには 面白いかもしれない。
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写実的な情景描写が前面に出すぎてしまい、実写を見ているようなリアルすぎる表現が裏目に出てしまったかも・・・ 旧日本海軍の元旗艦にして戦艦大和の姉妹艦である悲劇の戦艦武蔵の着工から沈没までの物語。 流石に徹底したルポを土台として書かれているだけあって写実的な描写の中が他の小説とは一味違うが、砲弾で吹き飛ばされる人間はまるで「物」でも描かれているような錯覚に陥る。 戦争における「人の死」などはそんなものなのだという吉村氏の目論見が 文章にも表れているのはわかるが、個人的にはリアルすぎて平和ボケした私には近寄りがたいものを感じた。
これぞ吉村文学の最高傑作の一角! 想像を絶する自然の猛威と戦いながら黒部トンネルを開通させる男たちのドラマ。 最近のトンネル工事のイメージとは全く違うのでピンとこないかもしれないが、過去には映画化された名作。 吉村作品らしく、綿密なルポの上で淡々と写実的な情景描写をしているのでかえって自然の猛威や過酷な労働がリアルに伝わってくる。まさに吉村文学の王道といえる作品と云える。 内容的に時代遅れと感じるかもしれないが、「自然を克服」できるという人間の大きな勘違いを再認識するには最高の一冊。 人間は自然の中で「生かされている」という謙虚な認識があれば、「想定外」な原発事故は起きなかったのではないかと痛感した。
北方南北朝軍記物の中では個人的にやや歴史教科書的展開で盛り上がりに欠けると感じた。 赤松円心を主人公として、大塔宮や足利尊氏との駆け引きや攻防が描かれているが、何故か描写がやや硬く文章にも躍動感が感じられないと感じた。 知名度の低い主人公ほど大きめに演出しないと知名度が低い分、主人公の「人物像」が見えにくい典型的なパターンかもしれない。
個人的には北方軍記物の最高傑作の一つとしても良いと思う。オススメ! 北方氏が九州出身ということもあり、数多い北方軍記物の中でも強い思い入れを感じる。 菊池氏の夢と現実を写実的に力強く描きながら北方流滅びの美学が見事に織り込まれており北方軍記物の最終型といっても差し支えない完成度だと思う。北方氏はこういうあまりクローズアップされない歴史的には非主流のモデルを書かせると右に出るものなしだと思う。
定番の楠木正成の軍記物を北方氏がどう料理するのか期待していたが、北方氏の作品の割にはやや歴史教科書的展開で他の北方軍記物と比較すると 個人的にはややインパクトに欠けると感じたが、戦闘場面などについては 文章が躍動的でまるで映画を観ているように頭の中に場面が浮かび上がる 点は流石と云わざるを得ない。 内容的には比較的オーソドックスで読みやすいので楠木物のファーストチョイスとしては良いかもしれない。
文章に躍動感があってまるで映画を観ているように楽しく読了できました。こちらも北方歴史小説の快作です! 「藤原純友の乱」を描いたものであるが、将門の乱は小説化されているが「藤原純友の乱」は小説化されたものがほとんどないので内容的にも新鮮。北方氏は滅びの美学を書かせたら最高ですね^^
北方軍記物の傑作!オススメ! 北方軍記物の特色はダラダラと歴史教科書的にストーリー展開するのではなく、歴史的に動きが大きく面白い一点・人物を絞り込み時代考証にムリのない流れの中でストーリー展開するので非常に歴史小説として楽しめるものが多い。また、血沸き肉躍る戦闘シーンの描写はまるで映画でもみているかのように頭の中で映像的に展開する点は見事としか言いようがない。こちらの小説では主人公を軍神=北畠顕家としている点も話を月並みでないものとしている。テンポもよくラストまで中だるみなくハイテンションのまま読了できる快作だ。
「小説」として読むには楽しめるし、「悪い羆神=ウェンカムイ」アイヌの考え方をテーマを取り入れたまでは良いが、個人的には内容的にやや踏込みが浅い感じがした。羆には「ウェンカムイ」という一面もあるが、反面「良い羆神=キムン・カムイ」という一面もある。 北海道でも最近、ヒグマの生息地に無防備に人間が入り込み接触事故が後を絶たないが、事故を検証するとほとんどのケースが人災の要素が多々あることも否定できない。地球は人間だけでなく、他の生物との共存で成り立っていることを考えるべきであるが、熊谷氏の一連の著作も一貫してその点がテーマとなっていることを意識しながら読むとまた違った側面が見えてくるハズ・・・
「生き物の死にざま」の著者が自らの専門分野である雑草生態学の視点で 書いた快作!現代社会を(本当は弱い)雑草のように生き抜く知恵が満載! サラリーマンには是非読んでいただきたいオススメの一冊! 詳細についてはヤボなネタバレになってしまうのであえて書きませんが、 現代社会で生きる中間管理職以下のサラリーマンやベンチャー企業、中小企業が上司や大企業の中でいかに「生き抜く」かということを「雑草」の生存戦略に置き換えて読んでみて下さい。大いに得るものがあると思います。内容的にも門外漢の素人でも理解できるように専門用語なしでわかりやすく書かれています。
全9巻読了したが、「現代社会を生き抜く」上での様々な知恵が詰まっている。若い方にこそ是非読んでいただきたい一冊! サブタイトルに「呉越春秋」とあるが実際には伍子胥を中心とした呉越の攻防が描かれている。 途中で「孫子」の兵法で有名な孫子も登場するが、あくまで伍子胥が主人公なので孫子の活躍については最低限にとどめられている。 短期間で国家の栄枯盛衰があった時代の話なので、話の展開も大部の割には一定の緊張感を維持したままラストを迎える。 この本には「呉越同舟」「臥薪嘗胆」など現代でも使われている故事のべースとなる話が出てくるが、紆余曲折の多い現代社会を生き抜く上で必ず役に立つ知恵が詰まっている。
0 people agree with this review 2021/04/12
日本人で唯一、世界地図に記された間宮林蔵という男の半生を描いた大作! 江戸時代後期、間宮海峡が島ではなくて陸続きの海峡であることを発見した大探検家の半生が史実をベースとして写実的に描かれているので、誇張のない写実的表現である分余計に間宮林蔵という男が成し遂げた大偉業の足跡が脳裡に焼き付けられる。間宮は探検家という顔以外にも幕府の隠密としての顔を持つことで知られているが、探検家としての顔を中心に、隠密としての顔の部分は婉曲的な描写でニュアンスを描き切っている表現力にはいつもながら脱帽させられる。
1 people agree with this review 2021/04/12
北方文学の最高峰!感動の一大スペクタルとはまさにこのことだ! 「史記」は漢の司馬遷の書いた膨大な歴史書だが、北方氏は「史記」の中でも武帝紀に特化して李陵や衛青と匈奴との攻防、「史記」の作者でもある司馬遷の生きざまを見事に歴史小説として昇華させている。 匈奴との戦闘シーンの描写も臨場感満点でハリウッド映画でも見ているような錯覚に陥る。 全7巻テンションが下がることなく緊張の連続なので飽きることなく一気に読了できるので大型連休で出かける予定がないのであればまとめて一気に読まれることをオススメします。
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0 people agree with this review 2021/04/11
貧しい海沿いの寒村を舞台にしたフィクションだが、おそらく実話をベースにした話なのでリアルすぎてヘタなホラーやサスペンスより怖いと思いますが、余計な脚色なしで写実的にストーリーが展開する分、余計に読み応えがあります。 内容的には人間が生きていくために人としてのモラルを失い、他人の不幸が自分たちの欲望を満たす常套手段となってしまうという究極ともいえる テーマなので話は終始、暗雲が立ち込めているように重いが、その重圧感のある表現は見事としか言いようがない。 結末を書いてしまうと無粋なネタバレになってしまうので控えるが、コロナ禍の今だからこそ読む意味のある一冊だと思う。
「事実は小説より奇なり」という言葉を絵にかいたような快作! 北海道に住んでいるため家族旅行で立ち寄った「博物館 網走監獄」でこの小説のモデルになっている「昭和の脱獄王」の話を知り、小説が出ていることを知り読んでみた。 「博物館 網走監獄」では脱獄王・佐久間清太郎がどのように脱獄したか人形を使って説明されているが、知恵を使って鉄格子を破壊したり、5メートルの高さの天井にスパイダーマンよろしく張り付いてみたりと・・・とても人間業とは思えない光景を実体験することができる。 2019年にビートたけし主演でテレビドラマ化されたのでご存じの方も多いと思うが、こちらの小説では佐久間清太郎の超人的な所業ばかりではなく、投獄された経緯から亡くなるまでの「人間・佐久間清太郎」としてのヒューマンドラマも史実に基づいてしっかり書かれており、内容的にも非常に密度の高い作品となっている。 吉村作品の中では是非、ご一読いただきたい快作である。
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