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Review List of 村井 翔 

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  • 3 people agree with this review
     2011/11/13

    10年前にBS2で放送されて以来、お気に入りの映像。DVDは長らく米KULTUR社のものしかなかったが、ARTHAUSに移って日本語字幕付きになったのは朗報。最大のチャームポイントはソフィー・コッホ。作曲家役では最も魅力的な映像だと思う。演出は手堅いものだが、この演出ではオペラのなかでも作曲家が狂言回しとして出てきて、最後はめでたくツェルビネッタとゴールイン(チューリッヒのグート演出とは使われ方が180度逆なのも面白い)。意外に出来不出来の大きい指揮者だと思うデイヴィスの指揮も、引き締まった運びでとても良い。マルティネスのツェルビネッタは、技術的にはもっとうまい歌手がいるとしても、(演出の意図でもあろう)下品な感じがなかなかいい。ヘルデン+ハイ・テノールという難しいバッカス役のヴィラーズも技術的には及第点だし、見た目もまあ悪くない。アリアドネのアンソニーは可も不可もなし。今をときめくラルス・フォークトが端役で出ているので、探してみてください。

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  • 7 people agree with this review
     2011/11/07

    イタリア人指揮者のマーラーは今や少しも珍しくないが、イタリアのオケでというのは珍しい。このコンビはチャイコフスキーでも実にユニークな名演を記録しているが、マーラーの方がさらに相性が良さそうだ。まず魅了されるのは、明らかにラテン的と言いうる音色の多彩さ。この曲は形式的にはスクウェアな4楽章交響曲であるものの、打楽器の騒音効果やカウベル、チェレスタのメルヘン的な音など、音の色合いという点では非常に豊麗な曲なのだが、遅めのテンポをあまり動かさないアポロ的な造型のなかに、音色の豊かさが一杯に詰め込まれている。このコンピのEMI録音はもともと鮮麗な音がするものが多いが、このライヴ録音の鮮明さは特筆に値する(それゆえ客席のノイズもそれなりに拾っているが)。金管が突出しがちな曲なのだが、弦や木管の音を近接マイクで多めに拾っていること、チェレスタをクローズアップ気味に録っていることなどは指揮者の要求なのかもしれない。全く救いのない終楽章の終結は確かに衝撃的だが、6番という曲自体は決して陰々滅々とした音楽ではなく、むしろあっけらかんとしたハードボイルド交響曲なので、こうしたアプローチは全く正解。久しぶりに6番の凄さを堪能した。

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  • 1 people agree with this review
     2011/11/07

    バレンボイムによるショパンの2つのピアノ協奏曲も興味尽きない面白い演奏だったが、ショパンではツィメルマンを超えられないかなとも思った。その点ではこのリストの方が一段とユニークだ。ピアノ協奏曲第1番はもちろんリストの代表作と言って差し支えない名曲だけど、かなり軽薄なところがあって、ロ短調ソナタのようなピアノ独奏曲とは同列に語れないところがある。ところがバレンボイムは遅いテンポで、しんねりむっつり、ロマンティックな濃い情感をたっぷり込めて、この曲を弾いてみせる。65歳を過ぎても技術的にはまだまだ達者で、ライヴでも大きな破綻はないが、もとより切れ味鋭いテクニックで圧倒するというタイプのピアニストではない。円熟したと人は言うけど、私の見るところではむしろ今や枯れ過ぎ、リスト音楽の「色気」をすっかり脱色してしまったようなブーレーズのクールな指揮が、また何ともミスマッチ。この曲はもう聞き飽きたという人にこそ、勧めたい独特な演奏だ。第2番の方は何の問題もなく、両者とも曲にうまく適合していて、このあまり人気のない曲の良さが改めて感じられる。

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  • 3 people agree with this review
     2011/11/07

    DG移籍後、意欲的なアルバムを次々に出しているグリモー。リストのロ短調ソナタほかによる「レゾナンス」も良かったが、聴き手をねじふせるような技巧の持ち主ではないだけに、この種の超絶技巧曲ではいまひとつ、食い足りなさが残った。しかし今回のモーツァルト・ピアノ協奏曲集は文句なしの出来ばえ。非常に編成の小さなオケ(限定盤のオマケDVDで見ると十数名であることが分かる)を弾き振りしているが、繊細かつ自発性の高い、生気あふれる演奏になっている。オケも含めてピリオド・スタイルを踏まえているのは明らかだが、緩徐楽章での旋律装飾は行わず、楽器はもちろんモダンだし、必要とあれば弦楽器もたっぷりヴィブラートをかける。特に第23番の第2楽章はかなり遅めのテンポで非常にロマンティックな音楽になっている。終わり近くの弦の伴奏も旧全集版通りのピツィカート。一方、両協奏曲とも終楽章は速いテンポで溌剌たる演奏(2曲とも最後に拍手あり)。第23番第1楽章では、ホロヴィッツが弾いていたのと同じブゾーニのカデンツァを採用。協奏曲の間にはさまれたk.505のコンサート・アリアも実にいいコントラストになっている。

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  • 17 people agree with this review
     2011/11/07

    これまでの3曲と同じく、いわゆる爆演型の対極に位置するような演奏。やや遅めのテンポを維持しつつ、5番の特色である線的対位法のからみを隅々まで描き尽くすことに全力をあげていて、音楽を感情的に煽ろうという気配を全く見せない。「嵐のように激動して」という第2楽章冒頭あたりは、さすがにクールに過ぎるのではと思ってしまうが、第2主題に入ると、チェロの主旋律と木管から第2ヴァイオリン以下のピツィカートに渡される対旋律、あるいは「茶化し」旋律の配合のうまさに魅せられてしまう。かつてのシカゴ響を思わせるほど、金管が雄弁な響きのバランスも、この曲に関しては、まさしく正解。終楽章も無理に突っ走ることはしないが、ホルン、トランペットの見事な名人芸からごく自然に盛り上がって、白熱的なエンディングに至る。曲のポリフォニックな構造をここまで克明に聴かせてくれた演奏は前代未聞と言っても過言ではないだろう。それにしても、相変わらず「一流のオーケストラとは言い難い」と言われたのではピッツバーグ響がかわいそう。マゼール、ヤンソンスの時代から全米屈指のオケだったと思うし、そもそもこの録音がまぎれもない「一流」の証明だ。

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  • 7 people agree with this review
     2011/10/15

    アンディ・ゾマーの映像演出が好みを分けているようだが、これは実に秀逸だと思う。瞬間的なストップ・モーション、オーバーラップ、画面分割などの映像処理も嫌味なく行われていて、私は大好きだ(曲ごとにスタイルを変えていて、4番が最も遊びが多い)。舞台上に常に数人のカメラマンがいるのを目障りと思う人もいるだろうが、それでこそのいい絵が撮れている。特に演奏中の奏者たちの真剣な表情をとらえたショットは絶賛に値する。かつてのカラヤンの時のような単なる「楽器」ではもはやない。5番の最後ではコンマスのテレンティエフがいかにも愉しそうに、ほとんど笑いながら弾いているのにも納得。演奏はやはりその5番が格別の出来で緩急自在、個性的な「ゲルギエフ印」が随所に刻印されているという点では、最も得意な曲なのだろうと思う。ただし、管楽器は倍管にせず、弦楽器も基本は14型というやや小振りな編成からも分かる通り、かつての巨匠たちのような濃厚一辺倒ではなく、軽みや繊細さも大事にした演奏。もう少し音色的な華やかさが欲しいとも思うが、このマッシヴで暗めの響きがいいのだという声もあろう。4番は従来の行き方へのアンチテーゼとして明らかに軽めに仕上げることを意識しているが、それでも第1楽章展開部から再現部にかけての火を噴くような盛り上がりには手に汗握る。6番も両端楽章の修羅場の表出力は申し分なく、明らかに不出来だったVPOとの録音を名誉挽回するには十分な出来。

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  • 2 people agree with this review
     2011/10/09

    マーラー・フェスティヴァル最終公演の録画で画質・音質はきわめて鮮麗。カメラワークも良く、舞台を埋めつくす大オーケストラ、ヒナ段(本来は客席)に鈴なりの合唱団など約500名が参加した演奏は見どころ満点ではある。ただし、演奏は2番に比べるとやや安全運転気味。作りが単純なだけにツボさえ外さなければ絶大な効果が得られる2番と違って、8番の方がオケ、声楽陣ともに遥かに要求が高いだけに短い準備期間では手堅くまとめるだけで精一杯だったのだろう。古くはバーンスタイン、テンシュテットの録画のような神がかった演奏は期待できないし、一部演奏者が共通している今年9月のラトル/BPOの演奏(ご存じ、デジタルコンサートホールで見られる)と比べても音楽の追い込みが甘い。別動隊金管楽器群の配置も、この演奏のような正面高所では作曲者の意図した効果は得られまい。つくづく8番という曲は難しいなと思わされる。

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  • 7 people agree with this review
     2011/10/09

    マーラーとライプツィヒとの結びつきはあまり意識しにくいが、修業時代には2シーズンほどオペラハウスの副楽長をつとめたという縁もあって、没後100年の今年5月には主要全作品を連続演奏するマーラー・フェスティヴァルが催された。地元ライプツィヒ勢は2番、8番という大物2曲を担当。これはオープニング・コンサートの映像(8番が最終コンサート)。シャイーはどんなオケを振っても、自分好みの音色に染めてしまう癖があるようで(そのため、コンセルトヘボウでもオールド・ファンをずいぶん怒らせたらしい)、ゲヴァントハウスも低域の厚みなど旧東独の名門オケらしい名残りはあるものの、明快で機能的なオケに変身している。指揮はなかなか切れ味鋭いが、最近では色々とこだわりのある演奏を視聴することが多いこの曲では、やや物分かりが良すぎるか。しかし、この演奏は合唱が入ってからがとても良い。混成メンバーだが、中核はさすがライプツィヒ放送合唱団。こんなに見事にコントロールされた合唱パートは久しぶりに聴いた。最新の収録だけに音質・画質・カメラワークとも申し分ない。

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  • 3 people agree with this review
     2011/09/19

    指揮者には指揮姿と出てくる音楽が完全に一致している人と、そうでもない人がいる。テンシュテットはバーンスタインのような前者の極致ではないとしても、その逆のフルトメンクラウ風の茫洋とした指揮でもない。彼の音楽の特徴である細かな作り込みの大半は綿密なリハーサルの成果だろうけど、前かがみの姿勢で一心不乱に振るおなじみの指揮姿ながら、勘所ではちゃんと的確なキューが出せることは、この映像でも明らかだ。アダージェットの最初など、柔らかい表情が欲しいところは指揮棒なしで振っているのも見もの。さて、その映像は1988年収録なので、それなりの画質・音質であることは覚悟する必要がある。音だけなら既にEMIから出ているCDの方が上。絵も物理的な鮮明さでは同じ年の日本公演ライヴに劣るけれど、ごく真っ当な演奏会映像ながら、カメラワークが的確なのは救い。それに何よりもマーラー5番が見られる有難さは、何にも代えがたい。演奏自体は、既にCDとしても定評あるものなので、多く語る必要もあるまい。私はこの曲ではシノーポリ、ガッティなど、より鋭角的な指揮を好むけど、これも文句を言ったら罰が当たるような堂々たる演奏。音楽の呼吸が深く、大きく、しかも5番の特徴である線的対位法のからみが見事に表現されている。

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  • 4 people agree with this review
     2011/09/16

    まず最初に録音状態についてレポートしておこう。1989年の2番は驚異的な水準だったし、1991年の8番ライヴは以前から映像ディスクとして発売されている通り、若干の混濁が避けられぬとしても、おおむね良好なものだった。1986年の3番ライヴはこの二種や既にEMIから発売されている5〜7番のライヴよりやや落ちるが、1983年の6番ライヴよりは遥かに良い。80年代BBC収録のコンサート・ライヴとしては平均的な水準だろう。演奏は1979年のスタジオ録音と聴き比べてみたが、ライヴの方が緩急のメリハリが強くなっているものの、基本的にはそれほど違わない。つまり、2番ほど巨大なスケールではなく、爆演でもない。でも、やはりいい演奏。マーラーのなかでも(特に第1楽章は)群を抜いて前衛的な音楽であるこの曲は、最近ではまるで現代音楽のように精緻で、解剖学的な手つきで扱われることが多いが、テンシュテットの指揮で聴くと、各部分が有機的にからみあって発展してゆく、れっきとしたドイツ・ロマン派の音楽に戻っている。新プラトン主義的なものなのか、それともニーチェのいわゆる「神の死」後の世界なのか、議論は分かれるにしても、いずれにせよ森羅万象を描き尽くそうとしたこの交響曲に、こうした演奏は実にふさわしい。この指揮者らしい細部の作り込みも健在だ。EMI録音では薄っぺらく聴こえがちだったLPOがここではとても分厚い音を出していて、管楽器の難所が多い曲なのに、ほとんど破綻がないのも素晴らしい。

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  • 5 people agree with this review
     2011/09/11

    今年のBPO来日公演は東京で3回の演奏会が行われるだけなので仕方ないが、事前抽選ことごとく外れ、発売当日は朝からパソコンにかじりついたが、発売から15分で全席売り切れ。結局、チケットを買えなかった。目下、絶好調と思われるこのコンビに対するクラシックファンの期待の高さが分かる。このCDもシェーンベルクという名前だけで敬遠する人がいたら、実に惜しい。ブラームスの第5交響曲と俗称されるピアノ四重奏曲第1番の管弦楽版はそもそも目茶苦茶に面白い曲。ジプシー音楽調の終楽章など、ブラームスらしからぬド派手な音楽だが、そこに目をつけたシェーンベルクもさすが。すでに2度目の録音、ギリシアでのヨーロッパ・コンサートでの映像もあるラトルにとってこの曲はもはや自家薬籠中のもの。どうも弱腰だったブラームスの4つの交響曲とは別人のような積極的な演奏だ。珍しい室内交響曲第1番の大管弦楽版もここまでやるか、というような力押しでオケの名技を見せつける。ところでSACDは今のところ日本だけでの発売のようだが、新録音の少ない現状ではハイクオリティCD、SACDとあれこれ出して、同じ音源で複数のディスクを買わせようという姑息な商策のように見えてしまう。いっそクラシック新譜はすべてSACDハイブリッドという英断に期待したい。

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  • 4 people agree with this review
     2011/08/30

    2002年マリインスキー劇場管、2004年ロッテルダム・フィル、2010年ロンドン響と日本での3回の演奏がいずれも良かったので、ゲルギエフ自身、得意な曲なのだと思う。それをマーラー交響曲シリーズの最後に持ってきたわけだから、大いに気合のはいった録音。79分とCD1枚にかろうじて収まる演奏時間だが、遅いところは結構たっぷりしていて、全体に速いという印象ではない。第1楽章なら提示部末尾、展開部のクライマックス、第2楽章の第2ワルツ、第3楽章(この楽章末尾の猛烈な追い込みは期待通り)など速いところが相当に速いので、ここで時間をかせいでいるのだろう。つまり強弱、緩急の振幅が非常に大きい演奏。ポリフォニーが聞こえないだの、細部の仕上げが粗いだのと文句を言う余地はあるけど、われわれがゲルギエフの指揮に期待する要素は100%満たされているのだから、満点をあげてもいいのではないか。2、3、8番がこの水準で出来ていれば、と後から振り返れば残念なシリーズだったが、終わりよければすべてよし。

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     2011/08/29

    HMVレビューでは演奏会形式上演のライブとあるが、解説書にはライブとの記述はなく、聴いた感じでも名プロデューサー、ジェイムズ・マリンソンの仕切りのもと、5日間を費やしたセッション・レコーディングのようにも思える。2010年9月と言えば、ナタリー・デセイが日本で驚異的な『椿姫』を聴かせてくれた、ほぼ一カ月後にあたる。表現としては全く斬新かつ繊細、彼女にしかできない『椿姫』だったが、すでにあの時、声楽的には高い方が苦しそうだと感じたものだった。彼女としても、これ以上、イタリア語版の録音を延ばすと、もう『ルチア』は歌えなくなると考えていたのだろう。というわけで、これはおそらく万全の準備をし、声のコンディションを整えての録音。声楽的にも、表現としても完璧、グラス・ハーモニカの使用も含めて、史上最高の「狂乱の場」に数えられる出来だと思う。『ルチア』はゲルギエフがマリインスキー劇場で日常的に振っているレパートリーとは思えないが、彼の指揮が思いのほか良い。劇的な振幅が非常に大きく、第3幕冒頭の嵐の場面など凄まじい限りだ。仏語版のエヴェリーノ・ピドとは違うタイプの指揮者を求めたのだろうが、この共演は大成功だ。ベチャワは南欧系テノールに比べれば「低体温」だが、あまりロブストなテノールと組むわけにはいかないから、まあ悪くない。

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     2011/08/20

    1980年の録画なので、それなりの音質・画質だが、経年劣化の痛々しかった前年のパリでのシェロー演出版(かつ日本語字幕が抱腹絶倒の誤訳だらけなのは参った)よりはずっと良い状態だ。演出は写実的で性的描写もごく控えめ。今見ると古色蒼然といった感もあり、前述のシェロー演出がいかに傑出したプロダクションであったかを思い知ることになった。しかし、演奏自体はきわめて充実。明晰かつ劇的起伏豊かな、素晴らしい指揮はやや貧弱な録音からも、ちゃんと聞き取れる。歌手陣ではジュリア・ミゲネスがやはり出色のルル。限られたレパートリーしか歌わなかった歌手だが、映画版『カルメン』と並んで彼女の代表作と言える映像だろう。かつてのルル役、イヴリーン・リアーの堂々たるゲシュヴィッツも見ものだし、ブーレーズ/シェロー版にも出ているフランツ・マツーラ、ケネス・リーゲルも文句なしの名唱。シゴルヒのアンドリュー・フォルディが好々爺といった印象で、無気味さが足らないのがほぼ唯一の不満。

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     2011/08/13

    この魅力的なオペラの三組目の映像ソフト。演出は穏健だが、舞台後景に水が張られ、その上の手前側に傾いた大きな鏡に上からの眺めが映るのがこの舞台のミソ。第1幕「マリエッタの歌」の終わりでパウルが眠り込むような姿勢を見せるほか、第1幕と第2幕は続けて上演されるのだが、マリーの肖像画ほか前景をそのまま残したまま第2幕が演じられるので、この部分が主人公の夢または妄想であることが、はっきりと見てとれる。インバルは最近の都響との爆演とは違って、手堅い指揮。ノスタルジックな側面をあまり強調せず、20世紀の音楽らしいモダンさを聴かせようとしているのは、それなりの見識だろう。しかし歌手陣はかなり残念な出来。フィンケは小太りのオジサンという主人公にあまりふさわしくない容貌に加えて、二晩のライヴの編集であるにも関わらず、声楽的にもやや不安定。クリンゲルボルンはなかなか魅力的だが、アップになると老けた顔に見えてしまうのが惜しい。

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