--- 平戸さんと松岡さんでは、「オーセンティック・ジャズ」と「クラブ・ジャズ」といった具合に、ジャズを聴いてきた道筋が多少異なるという点で、お互いの情報交換みたいなことはされているのでしょうか?
平戸 ほとんど松岡に教えてもらってますね。
松岡 逆に、彼からはスタンダードであるとか、この曲は色んな人が演奏しているだとかの情報は教わってますね。
平戸 松岡は、クラブに精通しているじゃないですか? 尚且つオーセンティックなものも聴いているんですよ。それにはびっくりしましたね。例えば、僕が「これはジャズで名盤なんだよね」って言うと、「そうなんだ。でも、これもこれもいいんだよ」って、聴かせてもらったら、「これってジャズでいうC級ですよ・・・」って話になって、「でも、これがクラブでウケてるんだよね」っていう、そのギャップがすごく勉強になってましたね。「ああ、これがクラブでウケるんだ」って。僕が聴いてるのは、まさしくリアル・ジャズで、松岡に色々と教えてもらってはじめて、クラブに反映できるジャズっていうのを学んだんですよね。
松岡 僕は、ただ天邪鬼なだけで(笑)、セッションとかジャズの仕事とかもしてたんですけど、そういったところでみんながワーッって言ってる曲なんかに対しては、そんなに興味が沸かなかったというか・・・クラブ側からの視点もあって、誰も聴かないようなやつの中に、絶対いい曲があるって思っていたんですよ。そういうものばっかり聴いて、後からスタンダードを聴いたりとかして。
あと、レゲエとスカが大好きだったんで、ジャマイカのレア盤なんかを探して聴いてた時に、結構、ジャズのカヴァーがあったりしたんですよ。それでスタンダードを知ったのもありますね。ハービー・ハンコックの「Watermelon Man」とか。スカタライツやモンゴ・サンタマリアなんかがカヴァーしたのからオリジナルを知った感じだったから、アプローチとしては、変わったアプローチだと思いますよ。
--- 比較的若い世代のジャズ・リスナーですと、ヒップホップのサンプリング・ネタとしてのジャズというアプローチも当たり前だったりしますし、もはや、入り口は様々ですよね。
松岡 そうですね。どちらかと言うと、個人的には、ラテンやブーガルーでカヴァーしていたりとか、そこからジャズの曲を知る場合が多いと思うんですよね。あとは、スタジオ・セッションの仕事の時に、ジャズのスタンダード本を使う事が多かったので、「じゃあ、ちょっと音聴いてみるか」って。そこで知ってたものも多かったんですよね。
本文中に登場のブルーノート作品はこちら
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4 Herbie Hancock 『Takin Off』
ハービー・ハンコックのブルーノートにおける最も”端正”な作品。後年における器用な活躍からしてもハンコックがかなりの分野で研究をしていたことは想像されるが、ここではデクスター・ゴードンという、前時代の大物と、当時は大きな期待をもって見られていた次の時代のフレディ・ハバードをフロントに据えたところに”意外な”商売人でありなおかつ世渡り上手な面が見え隠れする。
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--- アルフレッド・ライオンの印象的な言葉で、「ジャズのルーツはブルースにあるということを信じて疑わない。ブルースがどれだけ演奏できるかをミュージシャンの判断基準にしていた」というものがあるのですが、quasimodeの皆さんにとってもこの考えは、共感にあたるものと言えそうでしょうか?
松岡 多分、それはスピリット的なものだと思うんですよね。ただ技術があって器用に何でもできるよりも、もっと根底から、スピリットのある音を出せるかっていうことだと思うんですよ。
こんなこと言っちゃうとアレですけど・・・少なくとも僕が関わらせていただいた日本のジャズのミュージシャンだと、仕事で演奏していたというのもあると思うのですが、あまりいないと思うんですよね。逆に、レゲエを演ってる人だとかの方が、スピリット的なところを重視していたり・・・そこは、僕がビックリしたところでもあって、最初にジャズ・ミュージシャンの人たちと一緒に演るようになった時に。みんな、メロディとかよりも、いかに難しいソロやコードを演奏できるかを競い合ってて・・・「なんで、メロディはおざなりにされてるの?」って。それがすごくイヤだったんですよね。それは、メンバーたちとも話してて。だから、ライオンの言葉っていうのは、そういうことを言い表しているんじゃないかと思いますね。
--- 残念ながら、お時間が残り少なくなってきたようでして・・・ここで、今後の活動スケジュールを教えていただけますか?
平戸 まずは、1月28日に『mode of blue』をリリースします。それに伴ってリリース・ツアーも始まり、3月3日、大阪のBillboard Live Osakaを皮切りに、4日が福岡のBillboard Live Fukuoka、19日に名古屋のBlue Note、そして、22日最終が東京のBlue Noteでやらせていただく感じですね。
--- では、最後に、HMV ONLINEをご覧のファンの方々に、お三人方それぞれから、「『mode of blue』及び、ブルーノート作品のここに注目」といったメッセージをお願い致します。
平戸 ブルーノートは、ジャズの歴史に刻み込まれた偉大なレーベルなので、僕らの『mode of blue』を聴いて、オリジナルの音源を探して聴いてみるも良し、さらにそこから、もっともっと色々なジャズを聴いてもらえればと。『mode of blue』が、そういった窓口になるアルバムになれば、すごく嬉しいです。
松岡 僕もほぼ同じなんですが(笑)、加えて言うならば、ブルーノート独特のジャケット・アート、これだけでもディスプレイ的に楽しめると思うんで、そこから入るのもアリかなと思うんですよね。だから、「ジャズだから難しいんじゃないか」とか、「知らないんですけど」みたいなことは、一切ナシで。とにかく、何か取っ掛かりがあったら聴いてみるでいいと思うんですよ。
須長 そうですね。「ジャズだから」ということじゃなくて、雰囲気で「いいな」と思ったら、敷居とかお構いなしに聴いてもらいたいですよね。
--- 『mode of blue』をきっかけに、ジャズへの新しい一歩が踏み出せるクラブ・リスナー、クラブへの新しい一歩が踏み出せるジャズ・リスナーが一層増えるような気がします。本日はお忙しいところありがとうございました。
平戸・松岡・須長 ありがとうございました。
<取材協力:EMIミュ−ジック・ジャパン/フラワーレコーズ>