おまけ・この辺の音源、CD化待ってます。
和製シネ・ジャズ音源。おそらく、その発掘・CD化の旅は、遠く果てしない。一般的な和モノなどの再発とは異なり、元々、封切り当時より、サウンドトラックLPというものが存在していないものがほとんどだからだ。
現存する、7インチ・リール等の音楽テープから、タイトルも付いてないような寸尺の音源を、撮影所の暗い倉庫(?)から拾い集める。どれだけ、気の遠くなるような作業なのだろう。だからして、『黒い太陽』や、『殺しの烙印』といった一連のCD化は、「偉業」と呼べるのだろう。Thinkシネ・ジャズ・シリーズからの最新タイトル『野獣死すべし』に続くべしタイトルをいくつか。
まずは、こちら。堀川弘通・監督、加山雄三・主演で、五木寛之の処女小説を映画化した『さらばモスクワ愚連隊』(68年)。こちらは、日本の元ジャズ・ミュージシャン(加山)が、ソ連邦下のモスクワでジャズ興業を企てるというストーリー。
音楽は、黛敏郎、八木正生が手掛け、その八木をはじめ、富樫雅彦(アル中のドラマーとしてもなかなかの迷演技を披露・・・)、日野皓正、東本安博、宮沢昭、沢田駿吾といった一流プレーヤー達の演奏が楽しめる。
和製ヌーヴェルバーグの代名詞、鈴木清順・監督作品では、鏑木創がスコアを担当し、渡哲也の主題歌もヒットを記録した『東京流れ者』(全然ジャズではないけど・・・)、三保敬太郎が音楽を担当し、鈴木にとっては、日活追放以来10年ぶりのスクリーン復帰作となった『悲愁物語』(77年・松竹)といったところの音源のCD化も待ちたいところ。
サド・ジョーンズ、ローランド・ハナ等の演奏も聴ける、平岡精二、前田憲男が音楽を担当したミュージカル映画『アスファルト・ガール』(64年・大映)、中村八大が音楽を手掛けた、須川栄三・監督の『みな殺しの歌より: 拳銃よさらば!』(60年・東宝)などの音源からも、かなり面白いものが出てくるのではないだろうか。
また、『荒野のダッチワイフ』で使用された「ミナのセカンド・テーマ」がこの度めでたくCD化された、山下洋輔トリオ。彼らの演奏シーンも劇中に登場する、若松孝二・監督作品『天使の恍惚』(72年)においても、凄まじい音塊をぶつけてくる。
同じく、若き日の若松による暴力とエロスの日々『13人連続暴行魔』(78年)では、音楽を担当した阿部薫が劇中にも登場(河原でサックスを吹くシーン)。阿部の死の間際の演奏(アルト・サックス以下ハーモニカ、ピアノ等も演奏)が、全編にわたってフィーチャーされているという点でも非常に興味深い記録だ。
追記として。『Hi Nology』のボーナス・トラックとして収録されている日野皓正クインテット『白昼の襲撃のテーマ』の7インチは、見開きのジャケット・アートが秀逸につき、是非、オリジナルで手に入れていただきたい。日野作品の中では、『Hip Seagul』に次ぐDJ人気アイテムと言ってもよいだろう。また、このジャケットを元に、劇中の全スコアを纏めたCD化も切望★
『Foxy Brown』、『Shaft』、『110番街交差点』といったブラックスプロイテーション・アイテムや、モリコーネ、ルグランあたりの欧州系サウンドトラックが、一時期、神格化された当シーンの傾向を鑑みれば、和ジャズ系レアグルーヴ・シーンの主役は、今後、間違いなく、シネジャズから生まれようとしていると言ってもよいだろう。