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シネジャズ-和製ヌーヴェルヴァーグとジャズ

Friday, March 28th 2008

シネジャズ


 
アップ・テンポのモダン・ジャズが、画面の疾走感に拍車をかける。
昭和映画とジャズ双方のファンを熱狂させる「シネ・ジャズ」。

マイルス・デイヴィスが映像を見ながら即興でトランペットを吹き込んだ『死刑台のエレベーター』、欧州ツアー中のアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズを起用した『危険な曲がり角』、『殺られる』、『危険な関係』、ほかにも、MJQの『大運河』、『エヴァの匂い』をはじめとしたミシェル・ルグランがスコアを手掛けた諸作、ソニー・ロリンズがスコアを提供した『アルフィー』、ベルナルド・ベルトリッチ監督でガトー・バルビエリの哀愁のテナーに酔う『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(同時代、米では『成功の甘き香り』(エルマー・バーンスタイン)、『私は死にたくない』(ジェリー・マリガン)などが有名。)など、50年代後半以降、仏フィルム・ノワール/ヌーヴェルヴァーグ作品を中心に顕著となっていった、シネマとジャズの蜜月。

さて、ここ日本においても、そうしたヌーヴェルヴァーグ作品に触発されるカタチで、当時、新進気鋭の若手監督達が、次々と映画音楽にモダン・ジャズを取り入れるようになりました。鈴木清順、蔵原惟繕、西村潔、大和屋竺、若松孝二、大島渚、吉田喜重、篠田正浩・・・。元々、アメリカの「トーキー」映画に対抗するかたちで、日本映画がジャズ(=スウィング・ジャズ)との結びつきを強めたのは1930年代。第二次世界大戦後、西洋化を推し進めていった時代を経て、60年代中頃、ジャズは、若者を中心にした「最先端の音楽」となりました。日本映画は、その熱狂を再びジャズ(=モダン・ジャズ)とのシナジーに求めるようになったと言っても、決して大袈裟ではないでしょう。江利チエミ、芦川いづみ、雪村いづみ、石原裕次郎、青山恭二、フランキー堺らが銀幕を彩り、一時代を築いた『ジャズ・オン・パレード』、『ジャズ娘』シリーズといった、それまでの「音楽映画」とは一線を画した、斬新で鋭利なスタイル。ストーリーは勿論のこと、映像・美術においても、よりラディカルに、受け手の感受性を揺さぶり罹る彼らの作品は、
                                                                           ジャズを用いることにより、さらにその世界をブーストさせていったのでした。

「殺しの烙印」ポスター

当時、多くのジャズを背景にした青春小説を書いていた河野典生原作の『黒い太陽』、日野皓正が音楽を担当した西村潔による『白昼の襲撃』、三保敬太郎と前田憲男が音楽を担当した鈴木清順・監督『すべてが狂ってる』、同じく鈴木清順がメガホンをとった『殺しの烙印』、加山雄三、田宮二郎・主演、佐藤允彦が音楽を担当した『豹は走った』、山下洋輔が音楽を担当した若松孝二・監督の『天使の恍惚』と大和屋竺監督の『荒野のダッチワイフ』など、60〜70年代の混沌とした時代が、ジャズという音楽に共鳴したことを証明する、ニッポン・ジャズ史的側面からみても非常に貴重なフィルム達。

やり場のないフラストレーションを露わに、欲望を剥き出しにしたタフガイ達が、ジャズのビートをバックに、逞しくも切なく泳ぎ回る。スタア達の鬼の形相が、万華鏡のように渦巻く和製フィルム・ノワール(犯罪映画〜ギャング映画の一群)には、やはりジャズやニュー・ロックがぴったりだと、改めて感じでいただけるはずです。つむじ風の様なアップ・テンポのモダン・ジャズ、息を呑むゴリッとした質感のジャズ・ファンクが、画面の疾走感に拍車をかける。昭和映画とジャズ双方のファンを熱狂させる「シネ・ジャズ」の世界。

今回こちらでご紹介するのは、「和製ジャズ・ビートニク映画音楽傑作撰」と銘打ったシリーズのリリースに全力を注ぐ、おなじみThink!レーベルからのタイトルを中心に集めた、モダン・ジャズとの連命性を強く感じさせる「シネ・ジャズ」作品。それでは、ご高覧ください。



非行少女ヨーコ

非行少女ヨーコ
4 『非行少女ヨーコ』(1966) « New«

<監督>

降旗康男

<音楽>

八木正生

<キャスト>

緑魔子
谷隼人
石橋蓮司
城野ゆき
大原麗子
芳村真理
寺山修司
小林稔侍

『日本ゲリラ時代』(68年)、『大悪党』(68年)、『盲獣』(69年)、『ぼくは天使ぢゃないよ』(74年)などでも、その妖しい魅力で我々を釘付けにした「麗しき悪の華」、緑魔子を主演に迎え、妖しいエロチシズムでリアルな路上の青春を描いた降旗康男の監督デビュー作。愛のない閉塞された青春をさまようヨーコ。現代の喧噪に巻き込まれて暗中模索する集団に飛び込んだ家出娘が、ジャズ、睡眠薬遊び、肉体の結び合い等を通じで自分の人生を捜し求めてヨーロッパへ船出する・・・。「ひも」の小野龍之助と「あばずれ」の神波史男が共同シナリオ。撮影は、「夜の牝犬」の仲沢半次郎。

渡辺貞夫(as)、日野晧正(tp)、原田政長(b)、富樫雅彦(ds)、八木正生(p)が演奏するシルエットのタイトル・バックから映画本編がスタートという、日本ジャズ史においても興味深い記録だ。後年の八木正生の述懐によれば、本人のピアノに加え、渡辺貞夫(as)、日野晧正(tp)、原田政長(b)、富樫雅彦(ds)のメンバーが、さらに数曲で山本邦山が尺八で参加したとある。まさに、「非行少女ヨーコ・セッション」と呼びたい名演奏を余すことなく収録。




  




野獣死すべし

野獣死すべし
野獣死すべし
4 『野獣死すべし』(1959)

<監督>

須川栄三

<音楽>

黛敏郎

<キャスト>

仲代達矢
団令子
佐藤允
白川由美
小泉博
東野英治郎
中村伸郎
滝田裕介
三好栄子

大藪春彦の処女小説(発表当時、早大教育学部在籍中・24歳)の完全映画化作品。小説は完全犯罪を暗示する非情な大量殺人を描き、ショッキングな旋風を巻き起こし、大藪春彦はハードボイルド作家として、一躍脚光を浴びた。監督には、当時新人(28歳)の須川栄三と、脚本に白坂依志夫(当時26歳)、音楽に黛敏郎(当時29歳)、そして、主演・仲代達矢(当時26歳)という若い世代が結集。衝撃の異色作として今も色あせない魅力を放っている。

モダン・ジャズからラウンジ・テイストなものまで、また、ミュージック・コンクレート的なものからシロフォンを多用した実験音楽作風まで、と実に多種多彩な黛敏郎ワールド。モダン・ジャズへ本格的に取り組んだ黛敏郎のミッシング・リンクを埋める画期的な発見となる。




  




3000キロの罠

3000キロの罠
3000キロの罠
4 『3000キロの罠』(1971)

<監督>

福田純

<音楽>

前田憲男

<キャスト>

田宮二郎
谷口香
浜美枝
戸部夕子
加賀まりこ
米岡雅子
永井智雄
三國連太郎

俳優の田宮二郎が設立した田宮企画の第1回作品。原作は、推理小説や現代的な感覚で描く股旅物で人気のある笹沢左保の同名小説。脚本は、「喜劇:昨日の敵は今日も敵」の石松愛弘。監督は、「喜劇:ソレが男の生きる道」の福田純。撮影は、「刑事物語 兄弟の掟」の逢沢譲がそれぞれ担当。

音楽は、前田憲男が打楽器を中心にした新しいバンド編成でジャズ調の主題曲を作曲。4つのテーマ、各ヴァリエーション全12曲。ヴィブラフォンとパーカッションが全篇に渡りフィーチャーされ、アップテンポな曲調にピアノ・ソロが冴えるメイン・テーマから、ミステリアス・ムードを盛りあげるサブタイトル曲まで、最後まで汗握る緊張感が続く。演奏陣には、猪俣猛(ds)を中心とするオーケストラ=ザ・サードからのメンバーが参加していると言われている。








殺しの烙印

殺しの烙印
殺しの烙印
4 『殺しの烙印』(1967)

<監督>

鈴木清順

<音楽>

山本直純

<キャスト>

宍戸錠
小川万里子
真理アンヌ
南原宏治
玉川伊佐男
南廣
久松洪介
緑川宏

新人の具流八郎がシナリオを執筆し、「けんかえれじい」の鈴木清順が監督したアクションもの。撮影は「続東京流れ者 海は真赤な恋の色」の永塚一栄。ジム・ジャームッシュは、99年の『ゴースト・ドッグ』で、本作にオマージュを捧げたことは有名。

音楽は山本直純。氏のイメージを大きく覆すハード・バップ・ナンバーから、クールなボサノバまで、27シーンから26曲収録。その特異な映像を見事に際立たせたニッポン・ハードボイルド・ジャズ・サントラ・アルバムの金字塔。日本一「だらしない」名唱として知られる主題歌「殺しのブルース」は大和屋竺によるもの。「女を抱いてきたのか?」「あたりきよ」「湯たんぽを抱きな」。シュールすぎて不可解だが、ビリビリと電流が走るのは確かだ。




  




黒い太陽 / 狂熱の季節

黒い太陽
狂熱の季節
4 『黒い太陽(1964) / 狂熱の季節(1960)』

『黒い太陽』
<監督>

蔵原惟繕

<音楽>

黛敏郎

<キャスト>

川地民夫
チコ・ローランド
千代侑子
新田昌玄
山田禅二
大滝秀治
高山千草
中根実
『狂熱の季節』
<監督>

蔵原惟繕

<音楽>

黛敏郎

<キャスト>

川地民夫
郷■治
千代侑子
松本典子
長門裕之
チコ・ローランド
高山千草
島田容子

『黒い太陽』は、河野典生の原作を「駈け出し刑事」の山田信夫が脚色、「何か面白いことないか」の蔵原惟繕が監督した社会ドラマ。撮影は金宇満司。『狂熱の季節』は、河野典生の「狂熱のデュエット」を、「青年の樹(1960)」の山田信夫が脚色し、「ある脅迫」の蔵原惟繕が監督したもので、現代の若者たちを描く。撮影は「刑事物語 小さな目撃者」の間宮義雄。

『黒い太陽』の録音ために来日(1963年)したマックス・ローチ(ds)、クリフォード・ジョーダン(ts)、ロニー・マシューズ(p)、エディ・カーン(b)、アビー・リンカーン(vo)。特筆すべき、アビー・リンカーンが歌う「25セントのブルース」はじめ全10テイク54分。『狂熱の季節』では、コルトレーン・ライクなテナー・サックス・プレイも耳にすることができる。「ジャズのビートで不満をぶちまけるファンキー族の抵抗」。素晴らしい宣伝文案だ。








すべてが狂ってる

すべてが狂ってる
すべてが狂ってる
4 『すべてが狂ってる』(1960)

<監督>

鈴木清順

<音楽>

三保敬太郎
前田憲男

<キャスト>

川地民夫
禰津良子
奈良岡朋子
芦田伸介
中川姿子
伊藤孝雄
吉永小百合
上野功一

一条明の「ハイティーン情婦」を、「俺の涙は甘くない」の星川清司が脚色し、「密航0ライン」の鈴木清順が監督した高校生もの。撮影は「爆破命令」の萩原泉。

音楽は、「モダンジャズ3人の会(59年〜)」結成直後の三保敬太郎と前田憲男。鈴木清順のヌーベルバーグ作風に即興・実験的演奏で見事に応えた、そのファンキーなジャズ・サウンドは今こそ新鮮に響く。演奏:ダニー飯田とパラダイス・キング/歌:坂本九の劇中演奏シーンも3テイク収録。




  




豹は走った

豹は走った
豹は走った
4 『豹(ジャガー)は走った』(1970)

<監督>

西村潔

<音楽>

佐藤允彦

<キャスト>

加山雄三
田宮二郎
加賀まりこ
ナンシー・サマース
アリス・シャリフ
高橋長英
中村伸郎
神山繁

「娘ざかり」の長野洋と「女賭博師花の切り札」の石松愛弘が脚本を共同執筆し、「白昼の襲撃」の西村潔が監督したハード・ボイルド・アクション。撮影は「日本一の断絶男」の源一民が担当。

当時、最先端をゆく先鋭的なミュージシャン、佐藤允彦を起用して制作。宮間利之とニューハードによるニュー・ジャズ的な演奏によるオーケストラル・ジャズが、パターン化された日本映画音楽を打ち破いたとして話題を呼んだ。ストーンズのあの曲のギターリフにも似た主題曲「ターゲット」をはじめ、UKジャズ・ロック的な打ち出しで迫る、スリリングで疾走感のある楽曲がひしめき合っている。








ゴリラ7 ミュージック・ファイル

ゴリラ7

志穂美悦子♥ゴリラ7
4 『ゴリラ7 ミュージック・ファイル』(1975)

<監督>

石井輝男
竹本弘一
田中秀夫 ほか

<音楽>

三保敬太郎

<キャスト>

千葉真一
にしきのあきら
目黒祐樹
千葉治郎
志穂美悦子
マリア・エリザベス
夏八木勲
中丸忠雄
大平透(ナレーター)

1975年にテレビ朝日系で放送されていた人気TVドラマ『ザ・ゴリラ7』。フランスの大統領護衛官のニックネームになぞらえた「ゴリラ」を名乗り、悪に立ち向かう不死身の集団。その活躍をちょっぴりコミカルに描いた、「ザ・ボディガード」の続編とも言えるシリーズ。出演は、千葉真一、志穂美悦子ら。

音楽は、イレブンPMなど、洒落たサウンドでソフト・ロック系のリスナーからの人気も高い、三保敬太郎。本家USブラックスプロイテーションも裸足で逃げ出す、全編ソリッドなジャズ・ファンク仕様!特に、テーマ曲は、フルートにエレピが絡んだアブストラクト&ファンキーなジャズ・グルーヴで、クラブ・アンセムとしても人気の1曲。








日活映画音楽集:監督シリーズ 鈴木清順
4 『日活映画音楽集:監督シリーズ 鈴木清順』

 海外での評価も高く、ジム・ジャームッシュ、ウォン・カーウァイなどが挙って賛辞を贈る、鈴木清順の日活映画音楽集。同じ監督シリーズでは、中平康、藤田敏八、スタアシリーズでは、小林旭、赤木圭一郎、宍戸錠といった、昭和の銀幕〜アンダーグラウンドを彩った(血の色に!)鬼才&怪優(栄光の日活ダイヤモンドライン!)関連のサウンドトラックも一挙リリース。




流血の縄張: 日活ニューアクション小林旭の世界
4 『流血の縄張: 日活ニューアクション小林旭の世界』

 ニューアクション期の小林旭。そのヴォーカル・テイク5曲はどれも映画用オリジナル・ソング。中でも、「アリペデルーチ・レオパルーダ・カリーナ」は、スパイ映画のテイストとアキラ節が炸裂する最高のガレージ・パンク!その他、「放浪のブルース」など、全て既発のものとは別テイクを収録しています。音楽は、「野良猫ロック・シリーズ」でお馴染みの鏑木創をはじめ、山本直純、坂田晃一、伊部晴美など豪華作家が担当。




野獣死すべし -復讐のメカニック、野獣狩り
4 『野獣死すべし -復讐のメカニック、野獣狩り』

 『野獣死すべし -復讐のメカニック』、『野獣狩り』。大藪晴彦原作、須川栄三監督の2作のサウンド・ファイル。エキセントリックな展開、藤岡弘のバイオレンス・アクション。そこに絡む、勝新太郎『顔役』、『御用牙』や『悪魔の手毬歌』等でおなじみの名コンポーザー、村井邦彦のソフィスティケートされたジャズ・コンボ。これにより、東宝「ニューアクション」が完成した。

  



野良猫ロック セックス・ハンター: 日活編 3
4 『野良猫ロック セックス・ハンター: 日活編 3』

 『野良猫ロック セックス・ハンター』の劇中音楽を収録した完全サウンド・ファイル。鏑木創の最大の特徴である小規模編成のバンドによるジャズ、ソウル、ロックの絶妙なブレンド。エッジの利いた音楽が、映画全体のストリート感とマッチして作品を形成している。梶芽衣子の歌唱が印象的だった「禁じられた一夜」のインスト・ヴァージョンなど全25トラックス。

  



新宿の女 盛り場仁義: 日活編 2
4 『新宿の女 盛り場仁義: 日活編 2』

 「盛り場流し唄 新宿の女」(70年)、「盛り場仁義」(70年)、「三人の女・夜の蝶」(71年)といった、銀座、新宿のネオン街で生きる女たちをディープに描いた風俗映画からセレクトされた日活編第2弾となる本作のテーマは、すばり「夜の蝶」。藤圭子「女のブルース」劇中ヴァージョンほか、劇中音楽はムード歌謡からボサ・ノヴァまで、一味違った鏑木創が堪能できる全30トラックを収録。




反逆の旅 殺すまで追え 新宿25時: 松竹編 1
4 『反逆の旅 殺すまで追え 新宿25時: 松竹編 1』

 香山美子が唄うグルーヴ歌謡の秘曲「新宿25時」(殺すまで追え〜)や、コズミックなカンフー・サウンド(カラテ大戦争)など、キラー・チューン満載。「反逆の旅」(76年)、「殺すまで追え 新宿25時」(71年)、「カラテ大戦争」(71年)、伝説の松竹映画3作品より、鏑木創入魂の30トラックをセレクト。




やさぐれ姐御伝 総括リンチ: やさぐれ歌謡最前線
4 『やさぐれ姐御伝 総括リンチ: やさぐれ歌謡最前線』

 大人気の池玲子・主演をキーワードに東映映画より唄、インストなど18曲をセレクト。本作の目玉は、ドスの効いた歌声にシビれる、池玲子「ふうてんぐらし」!同じく、池玲子「お蝶のブルース」はレコードとは違う劇中ヴァージョンを収録。その他、外国人ポルノ女優、サンドラ・ジュリアンが日本語で歌う人気曲「ジュテームはさよならの始まり」、八田富子「女番長ブルース」などの人気曲を収録。




<女番長ゲリラ: やさぐれ歌謡最前線
4 『女番長ゲリラ: やさぐれ歌謡最前線』

 杉本美樹の仁義にシビれる「女番長流れ者」をはじめ、人気の『女番長(スケバン)シリーズ』を中心に、やさぐれ女の生き様を彩る、主題歌、劇中歌、劇中インストを濃厚に23曲収録。映画用に録音したメガレア音源はオリジナル・マスター・テープ使用。




Go Cinemania Series Reel 2 -若い突風
4 『Go Cinemania Series Reel 2 -若い突風』

 60〜70年代日本映画のサントラから、「コメディ/モンド編」と銘打ち、モダニズムの第一人者、コモエスタ八重樫が監修を手掛け、コンパイル。川地民夫「陽のあたる坂道」、和田浩治「若い突風」、高橋英樹「若くて、悪くて、凄いこいつら」といった、当時の日活の「活きのいいところ」による名唱を。  




Go Cinemania Series Reel 8 -殺しのスタイル
4 『Go Cinemania Series Reel 8 -殺しのスタイル』

 2001年、鈴木清順のリヴァイヴァル上映会「鈴木清順レトロスペクティヴ 殺しのスタイル」(中平康、増村保三らが独自のスタイルを確立した60〜70年代の映画上映会)を記念してコンパイルされた1枚。予告編に楽曲を書き下ろした、スカパラの冷牟田竜之を選曲・監修に迎えた好企画盤。「真理アンヌ」ジャケも♥。




八木正生 『八木正生の世界』
4 八木正生 『八木正生の世界』

 『網走番外地』シリーズなどの音楽を手掛けたことで知られる八木正生の作品集。ジャズを映画音楽の中に浸透させた存在とも言える八木正生は、武満徹と知り合ったのをきっかけに映画音楽への興味が膨らんだとか。「流れ者仁義」では、トランペットで日野晧正、「網走番外地」では、ギターに沢田駿吾らが参加。また、『非行少女ヨーコ』には、渡辺貞夫、日野皓正、原田政長らも参加し、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。




日野皓正 『Hi Nology』
4 日野皓正 『Hi Nology』

 そのズバ抜けた演奏力、容姿で空前の「ヒノテル・ブーム」が、ひとつのピークを記録した69年タクト作品。「電化マイルス」に触発された、所謂「ジャズ・ロック」然としたシャープなアンサンブルは方々で話題を独り占めに。注目は、後にボーナス追加された、西村潔・監督、黒沢年男・主演の東宝映画「白昼の襲撃」(69年)のサウンドトラック・シングル「白昼の襲撃のテーマ」と、「Snake Hip」。日野皓正クインテットは、ゴーゴー・クラブのバンドとして映画本編にも出演している。




山下洋輔 『ミナのセカンド・テーマ』
4 山下洋輔 『ミナのセカンド・テーマ』

 日本映画を変革した怪人、大和屋竺による、アンブローズ・ビアスの短編小説「アウル・クリーク橋の一事件」を大胆にアレンジした伝説のハードボイルド・ムービー『荒野のダッチワイフ』(67年)。そのサウンドトラックを担当した山下洋輔トリオによる「ミナのセカンド・テーマ」を収録。当時まだ、アバンギャルドに対する受け皿が十分ではなかった日本映画界において、大和屋、山下、両雄の観念が錯綜し合い、ぶつかり合う。




菊地雅章 『ヘアピン・サーカス』
4 菊地雅章 『ヘアピン・サーカス』

 西村潔・監督、見崎清志・主演によるカーレース・アクション映画『ヘアピン・サーカス』のサウンドトラックは、1972年当時、フェンダーローズを多用した菊地雅章セクステットの貴重な記録でもある。菊地は、アープ・シンセを多用するなど、ラッシュを見てほとんど即興的に音楽を創造。「音楽に画面が圧倒された」と西村が述懐するほどに、音楽と映像が見事な結合を見せた。 




佐藤充彦 『火曜日の女 -佐藤允彦女を奏う』
4 佐藤充彦 『火曜日の女 -佐藤允彦女を奏う』

 1970年、加賀まりこ、団令子らが出演した日本テレビ系のサスペンス・ドラマ「火曜日の女」のために、佐藤允彦が作・編曲/演奏を手掛けた幻のTVサウンドトラック傑作。後藤芳子(vo)、石川晶(ds)、稲葉国光(b)、荒川康男(b)、杉本喜代志(g)という60年代後期の日本ジャズ界の俊英を集めた演奏は、単なる「TVドラマのサントラ」という枠を越え、「時代感」をストレートに表現したスリルに満ち溢れたものになっている。




『ルパン三世 念力珍作戦 ミュージックファイル』
4 『ルパン三世 念力珍作戦 ミュージックファイル』

 おなじみモンキー・パンチの『ルパン三世』を原作とし1974年に封切られた実写版映画。ルパンを目黒祐樹、次元を田中邦衛、峰不二子を江崎英子、銭形警部を伊東四朗、というやけに興味深いキャスティング。それだけでも一見の価値アリ。当時流行の超能力ブームにかこつけたタイトルもまたいい。音楽は、佐藤勝が担当し、ピアノを基調としたライトなジャズ・ロックを聴かせる。

  



『フォービート・アルチザン 岡本喜八の映画音楽』
4 『フォービート・アルチザン 岡本喜八の映画音楽』

 デビュー作品『結婚のすべて』(58年)から、『助太刀屋助六』(02年)まで、岡本喜八監督作品39本の中からセレクトされた、「喜八作品×ジャズ」の集大成とも言えるベスト盤。フォービートのリズムを基調とした音楽に彩られ、その殆どは、黒澤明作品でおなじみの名コンポーザー・佐藤勝によって手掛けられている。





おまけ・この辺の音源、CD化待ってます。

和製シネ・ジャズ音源。おそらく、その発掘・CD化の旅は、遠く果てしない。一般的な和モノなどの再発とは異なり、元々、封切り当時より、サウンドトラックLPというものが存在していないものがほとんどだからだ。

現存する、7インチ・リール等の音楽テープから、タイトルも付いてないような寸尺の音源を、撮影所の暗い倉庫(?)から拾い集める。どれだけ、気の遠くなるような作業なのだろう。だからして、『黒い太陽』や、『殺しの烙印』といった一連のCD化は、「偉業」と呼べるのだろう。Thinkシネ・ジャズ・シリーズからの最新タイトル『野獣死すべし』に続くべし(・・)タイトルをいくつか。

さらばモスクワ愚連隊 廃盤VHSまずは、こちら。堀川弘通・監督、加山雄三・主演で、五木寛之の処女小説を映画化した『さらばモスクワ愚連隊』(68年)。こちらは、日本の元ジャズ・ミュージシャン(加山)が、ソ連邦下のモスクワでジャズ興業を企てるというストーリー。

音楽は、黛敏郎、八木正生が手掛け、その八木をはじめ、富樫雅彦(アル中のドラマーとしてもなかなかの迷演技を披露・・・)、日野皓正、東本安博、宮沢昭、沢田駿吾といった一流プレーヤー達の演奏が楽しめる。

和製ヌーヴェルバーグの代名詞、鈴木清順・監督作品では、鏑木創がスコアを担当し、渡哲也の主題歌もヒットを記録した『東京流れ者』(全然ジャズではないけど・・・)、三保敬太郎が音楽を担当し、鈴木にとっては、日活追放以来10年ぶりのスクリーン復帰作となった『悲愁物語』(77年・松竹)といったところの音源のCD化も待ちたいところ。

サド・ジョーンズ、ローランド・ハナ等の演奏も聴ける、平岡精二、前田憲男が音楽を担当したミュージカル映画『アスファルト・ガール』(64年・大映)、中村八大が音楽を手掛けた、須川栄三・監督の『みな殺しの歌より: 拳銃よさらば!』(60年・東宝)などの音源からも、かなり面白いものが出てくるのではないだろうか。

天使の恍惚また、『荒野のダッチワイフ』で使用された「ミナのセカンド・テーマ」がこの度めでたくCD化された、山下洋輔トリオ。彼らの演奏シーンも劇中に登場する、若松孝二・監督作品『天使の恍惚』(72年)においても、凄まじい音塊をぶつけてくる。

同じく、若き日の若松による暴力とエロスの日々『13人連続暴行魔』(78年)では、音楽を担当した阿部薫が劇中にも登場(河原でサックスを吹くシーン)。阿部の死の間際の演奏(アルト・サックス以下ハーモニカ、ピアノ等も演奏)が、全編にわたってフィーチャーされているという点でも非常に興味深い記録だ。

日野皓正『スネイク・ヒップ』/『白昼の襲撃のテーマ』ドーナツ盤

追記として。『Hi Nology』のボーナス・トラックとして収録されている日野皓正クインテット『白昼の襲撃のテーマ』の7インチは、見開きのジャケット・アートが秀逸につき、是非、オリジナルで手に入れていただきたい。日野作品の中では、『Hip Seagul』に次ぐDJ人気アイテムと言ってもよいだろう。また、このジャケットを元に、劇中の全スコアを纏めたCD化も切望★


『Foxy Brown』、『Shaft』、『110番街交差点』といったブラックスプロイテーション・アイテムや、モリコーネ、ルグランあたりの欧州系サウンドトラックが、一時期、神格化された当シーンの傾向を鑑みれば、和ジャズ系レアグルーヴ・シーンの主役は、今後、間違いなく、シネジャズから生まれようとしていると言ってもよいだろう。