--- ここで再びお話しを移させていただいて、Gillesさんのオールタイム・フェイヴァリット・アルバムをご紹介していただけますでしょうか?
Gilles つい先日、キーボード奏者のRichard Wrightが亡くなったけど、Pink Floydは、まさにオールタイム・フェイヴァリットだね。『Wish You Were Here』や、『Dark Side Of The Moon』の時代が特に好きだね。Radioheadは、Pink Floydをモデルにしているって言ってもいいと思うよ。僕は、ロックの中でも、野心的で、少しジャズ的な要素を孕んだものが好きなんだ。
Mike Oldfieldの『Tubular Bells』は大好きで、今もよく聴いてるよ。今聴いても素晴らしいんだ。ちょっとSteve Reichっぽくてね。David Bowieの『Hunky Dory』、これも最高だよ!Outkast『Speakerboxx – The Love Below』もブリリアントで、文句なしのクラシックだよ!
それから、これはみんなが挙げるかもしれないけど、Radioheadの『In Rainbows』は、とんでもなく素晴らしいレコードだね。いい音楽を聴くのは、本当に最高だってあらためて感じるよ。たまに、ハイプなものもあって、イギリスでは、本当にでたらめな音楽ばっかりが出回ってるんだけど・・・まぁ、いいけどね(笑)。
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4 Pink Floyd 『Wish You Were Here』
特大のベストセラーとなった前作『狂気』に続き75年に発表された名作。邦題『炎(あなたがここにいてほしい)』。シド・バレットに捧げられた楽曲をはじめ、テーマは従来通りシリアスだが、サウンド的には前作と比べかなりシンプルでストレートな感覚が出ている。
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4 Pink Floyd 『Dark Side Of The Moon 30周年記念盤』 SACD
Pink Floydの名作として知られる、73年発表の『狂気』。かなりの時間と神経を費やした作品であり、その分安定した完成度を見せている。様々なSEを駆使して作り上げられたサウンドは圧倒的。こちらは、発売30周年を記念した最新24ビット・デジタル・リマスター盤で、現行CDとの互換性を持たせたSACDハイブリッド・ディスク仕様。
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4 Mike Oldfield 『Tubular Bells』
14歳でプロ・デビューしたMike Oldfieldは、Sallyangie、Kevin Ayers&The Whole Worldを経て、73年にソロに転身。その第1弾ソロ・アルバムで名盤の誉れ高い本作。Virginレーベルの第1回新譜というのも有名。実に、2000回以上ものダビングにより制作された楽曲は、この世のものとは思われない世界を描き出す。映画「エクソシスト」のサントラとなり大ヒットを記録した。
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4 David Bowie 『Hunky Dory』 紙ジャケット仕様
1971年発表の名作。次作の『Ziggy Stardust』の印象が強いせいで、やや目立たない立ち位置に置かれているように見えるかもしれないが・・・初期ボウイの代表曲「Changes」は、アメリカでの初ヒットを記録。後に明らかになるように、実は異常に人間臭いボウイが、ここに居る。そのせいか、全体にヒューマンさの漂う1枚となっている。
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4 Outkast 『Speakerboxx -The Love Below』
ヒップホップをベースに、ロック、ドラムンベース、ジャズ・・・全ての要素を混ぜ込んだ、Outkastの2003年衝撃作。「Hey Ya」旋風でたちまちトップ・アクト(≠セレブ・アクト)に上り詰めた彼らの全世界ブレイクによって、シーンのクロスオーバー化に拍車が掛かったことは紛れもない事実だ。
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4 Radiohead 『In Rainbows』
Radioheadの通算7作目。プロデュースは、“第6のメンバー”と呼ばれるお馴染みNigel Godrich、アートワークは、『My Iron Lung EP』以降のRadiohead作品を手掛けてきたStanley Donwoodが担当。アップテンポなギター・ナンバー「Jigsaw Falling Into Place」や「Bodysnatchers」、『OK Computer』時に制作された未完成曲を新たに録音した「Nude」、美しく壮大なバラード曲「All I Need」など全10曲。
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--- ジャズでは、どのようなセレクトになるでしょうか?
Gilles ブルーノートから出ているWayne Shorterの『Speak No Evil』は、最高のジャズ・レコードだよ。1曲1曲が心に残るんだ。全6曲で、長過ぎず短すぎず、ちょうどいい収録タイムだしね。本当に完璧だよ。ブルーノートの最もいい時期の1枚だって言えるね。
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4 Wayne Shorter 『Speak No Evil』
Miles Davis〜john Coltrane周辺の若い才能を結集した60年代ジャズを代表する傑作。Freddie Hubbard (tp)をフロントに迎えた64年の本アルバムは、黄金のMiles Davisクインテット参加直後のShorterによる表現力が冴えまくる、次代を先取りした1枚。心象風景的な作曲法にも、Shorterの天才たる所以が窺える。クインテットは、Herbie Hancock((p)、Ron Carter(b)、Elvin Jones(ds)による編成。
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--- 同じく、ブラジルやラテンではいかがでしょうか?
Gilles (DJ用に持参の大型CDキャリー・ケースを取り出し、ぱらぱらと見回しながら)・・・う〜ん、好きなのって、毎日変わるんだけどね(笑)・・・今は、Dom Um Romaoの『Spirit Of The Times』かな。Dom Um Romaoは、MUSEから2枚のアルバム(『Dom Um Romao』、『Spirit Of The Times』)を出しているんだけど、この『The Complete Muse Recordings』には、その2枚の音源が全部入ってるんだ。素晴らしいブラジリアン・アルバムだね。ロウな質感で、Nana Vasconcelosのようでもあり、Airto Moreiraのようでもあり。ドラマーとしても最高だしね。どの曲も素晴らしくて、とても重要なレコードだよ。
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4 Dom Um Romao 『Lake Of Perseverance』
Dom Um Romaoは、Weather Reportでその名を馳せたが、ここでは、本職のパーカッションに加え、サウンド・クリエイター、ホンカーとしても大活躍。全曲が様々なリズムを包含した世界パーカッション物語〜南北米編という趣。2000年1月から4月にかけて、リオとニューヨークで録音された作品で、「Blue Bossa」、「Naima」、「Afro Blue」、「Mas Que Nada」等を収録。
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4 Nana Vasconcelos 『Nana Nelson Angelo Novelli / Africadeus』
世界的パーカッション奏者Nana Vasconcelos(ナナ・ヴァスコンセロス)の初期サラヴァ・レーベルを代表する重要作2枚(74年作『Nana Nelson Angelo Novelli』と72年作『Africadeus』)をカップリング復刻。大自然の息吹きと一体化したNana、Nelson Angelo(Joyceの当時の夫)、ベース奏者のNovelli、3人のフォーキーでスピリチュアルな音宇宙、まさに永遠の名作。
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4 Airto Moreira 『Fingers』
Weather Report、Return To Foreverの初代メンバーで、70年には電化Miles Davisグループにも参加。現在も精力的に活動を続けるブラジリアン・パーカッショニスト、Airto Moreiraの73年CTI盤。クラブ・サイドからの熱いラヴ・コールが絶えない「Tombo in 74」を収録。
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--- ソウル・ミュージックではいかがでしょうか?
Gilles (しばし、キャリー・ケースを見回して)・・・Earth Wind & Fireの『All ‘N All』だね。素晴らしすぎるよ。
ニューヨークで、ベースのVerdine Whiteに会ったことがあるんだけど、最高の男だったよ!まさに、本物のスーパースター・ソウル・ピープルだっていうのを感じたんだ。自信に満ち溢れていて、強い信念を持っていて、クリーンで、ダイレクトで、アメイジングなソウルマンだったよ。彼らのような音楽を生み出す人間っていうのは、他にいないと思う。音楽のクオリティ自体もそうだし、アレンジ的な部分もそうだし、あの野心的な姿勢という部分においても、Earth Wind & Fireは、ずば抜けているよ。他に誰もマネができないんだ。ファンキーであり、ジャジーであり、楽曲も素晴らしい。全てが完璧だよね。
ニューヨークで会った時、Verdineに「いいプロデューサーを見つけて、またアルバムを作ってみなよ」って言ったんだ。以前は本当に素晴らしいミュージシャン達だったけど、今は・・・ちょっとね(笑)。とにかく、70年代、80年代が彼らにとっての黄金時代だったってことなんだよ。
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4 Earth Wind & Fire 『All N All』 BLU-SPEC CD
「Fantasy(宇宙のファンタジー)」を収録した77年発表の名盤。Earth Wind & Fireの音楽的テーマともいえる”神殿”と”宇宙”というコンセプトを元にした長岡秀星氏のイラストレーションや、折からの映画「スターウォーズ」や「ディスコ」ブームとも相俟って、発売当時、空前の”アース旋風”を巻き起こし、見事ダブル・プラチナ・アルバムを獲得。クラブ方面で根強い人気の「Brazilian Rhyme」も収録。こちらは、高音質BLU-SPEC CD盤。
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Gilles 最近のソウル・ミュージック、ここ10年で考えてみると、Lauryn Hillの『Miseducation Of』、Erykah Baduの『Baduizm』・・・は、まぁまぁかな・・・あとは、D’angeloの『Brown Sugar』が良かったね。そんなところかな。この10年で本当にハイ・スタンダードな作品っていうのは、2、3枚だろうね。
でも、70年代、80年代となると、Stevie Wonderの『Songs In The Key Of Life』だったり、さっき言ったEarth Wind & Fireに、Marvin Gaye、それから、Temptations、信じられないぐらい素晴らしいアルバムばかりなんだよ。僕は、本当にソウルが大好きなんだ、オールド・スクールのね。ただ、残念だけど、最近のソウルは、以前のものとは違うよね。今の世の中に、もっといいソウル・ミュージックがあったらなって心から思うよ。
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4 Lauryn Hill 『Miseducation Of』
Fugees時代とは趣を変え、”一人の女性”としてのメッセージを色濃く投影させたLauryn Hillの98年ソロ・デビュー・アルバム。ヒップホップ・サウンドの原点回帰となる全ての音楽をスピリチュアルな要素で包み、全身全霊でパフォーム。90年代、いや、20世紀の音楽シーンを代表する傑作。
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4 Erykah Badu 『Baduizm』
ターバン姿と独自の思想で、およそ新人とは思えぬカリスマ性を漂わせていたErykah Badu、97年の衝撃デビュー作。彼女のアイデアを具現化していたのが、Bob Power、?uestloveをはじめとするRoots組、James Poyserといった、名うてのフィリー・プロデューサー陣。コンセプチュアル且つ、至極完成度の高い本作は、方々から絶大な支持を得、後のオーガニック・ソウル・ムーブメントをもたらした。
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4 D'angelo 『Brown Sugar』
D'angeloの95年発表のデビュー・アルバム。その後のニュー・クラシック・ソウル・ブームの火付け役ともなったばかりでなく、90年代後期のR&Bシーンに多大な影響を与え、同シーンにおけるひとつの最高到達点として奉られた歴史的傑作。タイトル曲に加え、「Lady」、「Cruisin'」、「Me And Those Dreaming」等、70年代のニュー・ソウルの雰囲気をヒップホップ世代ならではの感性で見事に再生している。
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4 Stevie Wonder 『Songs In The Key Of Life』 紙ジャケ仕様SHM-CD
70年代のミュージック・シーンを代表する大名盤。14週連続で全米1位をに輝き、「最優秀アルバム賞」他、76年のグラミー賞を総なめに。「愛するデューク」、「可愛いアイシャ」、「永遠の誓い」収録。彼のキャリアにおいて人気、神々しいまでの創作力が爆発した作品。こちらは、紙ジャケット仕様の高音質SHM-CD盤。
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--- では、最後になるのですが、今年、HMV SHIBUYAが現在のロケーションに移転して10周年を迎えます。HMV SHIBUYAには、どういった印象をお持ちでしょうか?また、HMV ONLINEも同じく10周年を迎えます。HMV ONLINEをご覧のファンの方々にメッセージも併せてお願い致します。
Gilles HMVの渋谷店は最高だよ。日本に来た時はいつも行ってるよ。今日このあと行きたいんだけど、時間あるのかな?すぐに、ジャズのフロアに向かうよ(笑)。それから、HMV ONLINEを見ているファンのみんなは、今すぐ、Gilles Petersonのセクションにアクセスするように(笑)。常に、いい音楽が揃っているからね(笑)。
--- ありがとうございました。では、さっそくHMV SHIBUYAに向かいましょう。
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