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クレンペラー/ロマン派交響曲集

2012年9月28日 (金)

ロマン派交響曲集、序曲集(10CD)
クレンペラー&フィルハーモニア管


クレンペラー没後40年を記念したアニヴァーサリー・エディション。クレンペラーが得意としたロマン派作品から9人の作曲による作品を収録。
 定評ある正統派名演のシューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ヴェーバーに加え、ユニークなベルリオーズにフランク、民族的性格配慮ゼロゆえにシンフォニックで面白いドヴォルザークにチャイコフスキー、そしていったい何事が始まったのかと思わせる壮大な『皇帝円舞曲』が印象的なヨハン・シュトラウスという構成。

【シューベルト】
1963年5月の交響曲第5番は、曲にふさわしい優雅な音楽を聴かせる演奏で、巨大でヘヴィーな『幻想交響曲』、『アウリスのイフィゲニア』と同じ頃の録音。作品によっては柔軟な対応をおこなっていたクレンペラーの意外な面を楽しめます。
 1963年2月の『未完成』は、チャイコフスキーの4番と5番、ストラヴィンスキーの『プルチネッラ』と同じ頃の録音。それらとも共通する明確な造形美と少し抑制気味の情緒表現が印象的な演奏。
 1960年11月の『グレート』は、当時、交響曲第7番と呼ばれていたこともあってか、同時期にベートーヴェン第7番、ブルックナー第7番が録音されており、ここでもそれらに通じる雄大なスケールの音楽を味わえます。面白いのは第1楽章序奏部から主部への移行部分。通常はギアチェンジで大幅に速くなる部分ですが、クレンペラーでは遅いままたっぷりした感覚で第1主題が呈示されています。

【メンデルスゾーン】
1960年1月から2月にかけて集中的に録音された一連のメンデルスゾーン作品は、昔からクレンペラー・ファン以外にもよく知られていた名演が多数。
 『フィンガルの洞窟』では広々とした構えの中にチェロによって示される第2主題が実に魅力的。『イタリア』も気品あるアプローチが美しく、『スコットランド』では、大幅に拡大された作品の持ち味を、ほの暗い響きの中に慌てず急がず見事なフレージングで立体的に再現。終楽章コーダでは、どこかバッハ:ロ短調ミサの終曲を思わせるような雰囲気で巨大な音楽を構築しているのが心に残ります。
 『真夏の夜の夢』は以前から有名な演奏で、木管楽器を大切にしたクレンペラーならではの色彩の豊かさと美しさ、決して力まず精妙にあたたかく表現されるメルヘンの世界が独自の味わい深さに繋がっています。

【シューマン】
1965年10月の交響曲第1番『春』は、ベートーヴェンの荘厳ミサや、ハイドンの交響曲第100番と102番、モーツァルトの交響曲第29番と33番などと同じ頃の録音で、新運営体制になって1年あまりが経ったオーケストラの高い士気を反映した演奏となっており、80歳になっていたクレンペラーもここでは気迫のこもった指揮ぶりで、オケをダイナミックに統率しています。
 1968年10月の交響曲第2番と『ゲノヴェーヴァ(ゲノフェーファ)』序曲は、マーラーの交響曲第7番やベートーヴェンの交響曲第7番再々録音などと同じ頃の録音で、それらと共通のきわめて遅いテンポによる演奏です。
 その4ヶ月後の1969年2月に録音された交響曲第3番『ライン』も、同様にクレンペラー最晩年様式の遅いテンポによる演奏。第2楽章での幅広い音の流れが独自の味わいを醸し出しています。
 1960年5月の交響曲第4番は、シューマンとリストのピアノ協奏曲や、ヴェーバーの『オベロン』『魔弾の射手』と同じ頃の録音。冒頭からハイテンションの演奏で、比類の無い緊張感と重量感でぐんぐん進み、効果的な楽器法改変も含めてすごい高揚感をつくりあげています。
 1966年2月の『マンフレッド』序曲は、フランクの交響曲ニ短調と同時期の録音。悲痛な題材に付曲したシューマン後期の傑作を、クレンペラーが緊迫した悲劇的なタッチで演奏。

【ヴェーバー】
『魔弾の射手』序曲、『オイリアンテ』序曲、『オベロン』序曲ともに1960年の録音。初期ロマン派作品では、クレンペラー流儀の木管重視スタイルは非常に有効で、独特の色彩を持つ響きが味わい豊かな演奏に結実。体調も良かったのか、緊張感の持続、エネルギー・レヴェルも申し分のない水準にあります。

【ヨハン・シュトラウス】
1961年の録音で、同じ頃にR.シュトラウスやワーグナー、自作のメリー・ワルツのセッションなどもおこなっていました。クレンペラーとヨハン・シュトラウスは意外な組み合わせにも思えますが、『こうもり』序曲では各素材を丁寧に濃やかに描き出し、開幕の華やかさや本編への期待感を煽るワクワクした感じがなんとも魅力的。『ウィーン気質』でもリラックスした雰囲気でヨハン・シュトラウスらしい親密な美感を十分に堪能させてくれます。クレンペラーらしいのは『皇帝円舞曲』。序奏部から主部への盛り上がりの凄さには、いったい何事が起こったのかと思わせるインパクトの強さがあります。

【ベルリオーズ】
シューベルトの交響曲第5番と同じ頃の録音ですが、こちらは一転してクレンペラーらしいクールで巨大な演奏となっています。微視的な視点を大切にした構造的な魅力にあふれるアプローチで、長大な第3楽章での各素材の克明な表現、チェロの主題の圧倒的な存在感にはたまらないものがあります。第2楽章でも、当時珍しかったコルネット復元ヴァージョンを使用し、どこかいびつな華やかさを強調、第4楽章と第5楽章ではまったく興奮しないグロテスクなまでの冷ややかさで音楽の風変わりな要素をえぐり出しています。

【フランク】
1966年2月の録音。同一形のフレーズは律儀に正確に維持し、しかも木管など多くの声部情報を大容量で再現するクレンペラーの芸風は、この作品の「循環形式」との相性も抜群。強大堅牢な骨組みに、色彩の濃いサウンドの乗った独特な雰囲気の演奏に仕上がっており、ヴァイオリン両翼型の配置も効果的です。

【ドヴォルザーク】
1963年の10月から11月にかけての録音。ブルックナー第4番や、『レオノーレ』序曲集などと同時期の演奏。民俗音楽的要素に配慮せず、シンプルにシンフォニックにアプローチした演奏で、カッコ良さや感傷趣味もスルーされるため、その仕上がりは実にユニーク。拡大されたフォルム、抽象的な抒情美が独特の面白さを感じさせる演奏です。

【チャイコフスキー】
1963年録音の交響曲第4番と交響曲第5番は、クレンペラーらしい楽譜情報処理に徹した演奏で、チャイコフスキーの作品が、本来は二管編成で書かれており、結果として木管楽器の比重が高いものであったことを意識させるようなバランス配分となっています。クレンペラーは感傷趣味を排除したため、作品との相性は一見悪そうですが、実際に各パートがよく聴こえるようになると、コブシなど無くてもチャイコフスキーの抒情美は十分に有効であり、かえってその方が美しい場面も多いことに気づかされます。
 1961年録音の交響曲第6番は、『マタイ受難曲』やマーラー交響曲第2番、R.シュトラウスの『メタモルフォーゼン』と『死と変容』などと同時期の録音。クレンペラー絶好調だったときの演奏で、大規模な第1楽章では、各パートのバランスも鮮やかに壮大な造形美を構築し、第2楽章では多くのパートを印象づけることで不安を巧みに演出、第3楽章もまったく軽やかさのないユニークな音楽で、行進曲というよりはスケルツォとしての面白さがあり、どこかクレンペラーの指揮したベートーヴェン第九の第2楽章を思わせるところもあります。第4楽章はヴァイオリン両翼配置の効果が活かされた立体的な演奏で、感傷趣味や憐憫は無いもののこれはこれで魅力的だと思います。(HMV)

【収録情報】
CD1
・シューベルト:交響曲第8番ロ短調 D.759『未完成』
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年2月 ステレオ

・シューベルト:交響曲第9番ハ長調 D.944『グレート』
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年11月 ステレオ

CD2
・シューベルト:交響曲第5番変ロ長調 D.485
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年5月 ステレオ

・メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』 op.26
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年2月 ステレオ

・メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 op.56『スコットランド』
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年1月 ステレオ

CD3
・メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』op.61
 ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
 ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
 フィルハーモニア管弦楽団&合唱団
 録音:1960年1月 ステレオ

・メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 op.90『イタリア』
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年2月 ステレオ

CD4
・シューマン:交響曲第1番変ロ長調 op.38『春』
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1965年10月 ステレオ

・シューマン:交響曲第2番ハ長調 op.61
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1968年10月 ステレオ

CD5
・シューマン:交響曲第3番変ホ長調 op.97『ライン』
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1969年2月 ステレオ

・シューマン:交響曲第4番二短調 op.120
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年5月 ステレオ

CD6
・ヴェーバー:『魔弾の射手』序曲
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年5月 ステレオ

・ヴェーバー:『オイリアンテ』序曲
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年9月 ステレオ

・ヴェーバー:『オベロン』序曲
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1960年5月 ステレオ

・シューマン:『ゲノヴェーヴァ』序曲
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1968年10月 ステレオ

・シューマン:序曲『マンフレッド』 op.115
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1965年10月 ステレオ

・ヨハン・シュトラウス2世:『こうもり』序曲
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1961年10月、12月 ステレオ

・ヨハン・シュトラウス2世:ウィーン気質 op.354
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1961年10月 ステレオ

・ヨハン・シュトラウス2世:皇帝円舞曲 op.437
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1961年10月 ステレオ

CD7
・ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年4、9月 ステレオ

・フランク:交響曲二短調:第1楽章
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1966年2月 ステレオ

CD8
・フランク:交響曲二短調:第2・3楽章
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1966年2月 ステレオ

・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95『新世界より』
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年10、11月 ステレオ

CD9
・チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 op.36
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年1、2月 ステレオ

・チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 op.74 『悲愴』:第1楽章
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1961年10月 ステレオ

CD10
・チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 op.74『悲愴』:第2・3・4楽章
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1961年10月 ステレオ

・チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 op.64
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音:1963年1、2月 ステレオ

 オットー・クレンペラー(指揮)
※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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ロマン派交響曲集、序曲集 クレンペラー(10CD)

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ロマン派交響曲集、序曲集 クレンペラー(10CD)

ユーザー評価 : 5点 (21件のレビュー) ★★★★★

価格(税込) : ¥8,800
会員価格(税込) : ¥7,656

発売日:2012年10月29日

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