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橋本徹の続 『素晴らしきメランコリーの世界』対談

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2010年12月24日 (金)

interview

橋本徹の続 『素晴らしきメランコリーの世界』対談


多くの音楽ファンから絶賛を浴びた橋本徹氏によるアプレミディ・レコーズの『音楽のある風景』シリーズと、そのスペシャル・イシュー『美しき音楽のある風景〜素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』、そしてスピリチュアルでロマンティックでチルアウト・メロウな『Chill-Out Mellow Beats〜Harmonie du soir』に続き、カルロス・アギーレの来日やNujabes追悼、HMV渋谷店の伝説のコーナー「素晴らしきメランコリーの世界」など、2010年の静かなる音楽ムーヴメントの最後を飾る『素晴らしきメランコリーの世界〜ピアノ&クラシカル・アンビエンス』が大好評を博していますが、そのシリーズ第2弾『素晴らしきメランコリーの世界〜ギター&フォーキー・アンビエンス』の発売を記念して、渋谷・公園通りのカフェ・アプレミディにて選曲・監修をされた橋本徹氏と、アプレミディ・レコーズの制作担当ディレクターの稲葉昌太氏を交えて興味深いお話を聞くことができました。今回は特別に、それぞれが選んだ「素晴らしきメランコリーな3枚」もコメント付きで掲載していますので、こちらも併せてご覧ください。
(HMV商品本部ジャズ/ワールド担当バイヤー 山本勇樹)

稲葉昌太:11月にリリースされご好評いただいている『素晴らしきメランコリーの世界〜ピアノ&クラシカル・アンビエンス』の兄弟作となる『ギター&フォーキー・アンビエンス』編がいよいよ12月末に発売されます。このシリーズが生まれた経緯や背景については前回の対談で詳しく触れていますので、この対談では今作の聴きどころを中心にお話できればと思いますが、まずオープニングを飾るのはアルゼンチンのSSW、ダリオ・リポヴィッチの「900年のセレナーデ」ですね。これはフォルクローレの偉人、クチ・レギサモンの名曲ですが、アルゼンチンでは恋人にプロポーズするときに男性が贈る曲だそうです。

橋本徹:そうですね。結婚式で歌ったり、好きな人に贈る曲というのがいいかなと。

稲葉:ギターが弾けない男性もこの曲を女性に贈るためだけにギターを練習するという微笑ましいエピソードもありますが、まずこの曲がオープニングというのはとても印象深いです。

橋本:この『素晴らしきメランコリーの世界』シリーズが生まれるきっかけになっているコンピレイション『美しき音楽のある風景〜素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』に、同じ曲のシルヴィア・イリオンドによるヴァージョンを収録したわけですが、今年こんないいヴァージョンが生まれたのも何かの縁かと(笑)。すごく親密な雰囲気で、今回は特に最初と最後を温もりがあって愛に溢れた感じにできたらという気持ちがあったので。このダリオ・リポヴィッチは本当に見過ごされがちだと思うんですけど、個人的には今年聴いた中でも有数のアルバムだと思ったので、それを紹介する意味でも1曲目に持ってきたんです。

山本勇樹:すごく残響がきれいですよね。前作『ピアノ&クラシカル・アンビエンス』に収録されたゴールドムンドを聴いているような、心鎮まる感覚がありますね。

橋本:音の響きというか、残響と無音の部分のバランスがね。耳をすっと澄ませてしまうような。

山本:1曲目から心が安らいでコンピレイションに入っていける素敵なオープニングだと思います。

橋本:特に最近アルゼンチンの音楽に興味を持ち始めた方が多いと思うので、この曲でまたひとつ素敵なエピソードを知ってもらえたらな、と。

稲葉:そして2曲目はスコット・アッペルによるニック・ドレイクの「Road」のカヴァーです。

橋本:今回のトピックとしてひとつあげるとすれば、ギターをメインにしたコンピレイションということもあって、やっぱりこのスコット・アッペルの楽曲を収録できたことが僕にとってはとても嬉しいことで。彼はニック・ドレイクに捧げた曲やカヴァーをたくさん吹き込んでいるんですけど、ニック・ドレイクのご遺族も数あるトリビュートの中でもこれほど心を動かされたものはない、というメッセージを寄せているアーティストで。スコット・アッペルご本人も2003年に亡くなってしまったので、その二人を追悼する意味でもこの曲を収録できたのはとても嬉しいことですね。次の、これも今年有数の愛聴盤だったサン・キル・ムーンも、ニック・ドレイクに捧げるという意味合いと、ホセ・ゴンザレスに代表される現代のSSWを愛する音楽ファンに共感のメッセージを贈れたら嬉しいなと思って選んでいて。さらに続くピーター・ブロデリックまでの流れというのは、今回の『ギター&フォーキー・アンビエンス』の象徴的なテイストとして選曲したつもりですね。

稲葉:ニック・ドレイクもスコット・アッペルも、生前は不遇だったという点も共通しますね。

橋本:ニック・ドレイクなんて、今の状況からは信じられないくらい生前は不遇だったわけで。もしかするとスコット・アッペルもこれから伝説のアーティストになっていく可能性があるのではないかと。

山本:今回彼にスポットを当てられたのはとても意味のあることですよね。このコンピレイションに入らなかったらあまり知られないまま終わってしまったかもしれませんし、こうやってアプレミディ・レコーズがアーティストを掘り起こしていくっていう。

稲葉:YouTubeでも、スコット・アッペルの素晴らしい演奏の映像が見られますが、閲覧数が三桁の前半なんですよ。世界的にもあまり知られていない存在なんですが、ニック・ドレイクが好きな人だったら絶対にその良さはわかるっていう。

山本:ニック・ドレイクのいいカヴァーってあまりないじゃないですか。オリジナルを超えられないというか。そんな中でこれほど心に響くっていうのは、とても凄いことだなと思います。

稲葉:サン・キル・ムーンはカルロス・アギーレさんも聴いてとても気に入っていましたね。イノセンス・ミッションもサン・キル・ムーンを好きだって言っていて、また繋がったな、と。

橋本:ニール・ヤングに声が似ているところも、僕はたまらないんですよね。ピーター・ブロデリックはまさに山本さんがやっていた「素晴らしきメランコリーの世界」の売場で展開されていて、ポスト・クラシカル的な側面のある一方で、こういうフォーキーな楽曲も素晴らしいことを知って。感謝しています(笑)。

山本:ありがとうございます(笑)。70年代のSSWやベン・ワットなんかが好きな人にはひっかかる要素があると思いまして、やはり独特な空気感というか。

素晴らしきメランコリーの世界
〜ギター&フォーキー・アンビエンス
「心の調律師のような音楽」をキーワードに、あらゆるジャンル/年代を越えてグッド・ミュージックを愛し、 必要とする人々によって起こった2010年の静かなるムーヴメントの最後を飾る、橋本徹(サバービア)選曲・監修の究極のメランコリック・コレクションの第2弾!




素晴らしきメランコリーな3枚

「素晴らしきメランコリーな3枚」と題して、橋本徹氏、稲葉昌太氏、山本勇樹が「素晴らしきメランコリーの世界」のコンピレイションには惜しくも収録されなかった作品を中心に、2010年のメランコリックな愛聴盤を選びました。

profile

橋本徹 (SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・グラン・クリュ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは200枚を越える。NTTドコモ/au/ソフトバンクで携帯サイト「Apres-midi Mobile」、USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。

http://www.apres-midi.biz