『SR サイタマノラッパー』 入江悠監督 インタビュー 【2】
Monday, April 23rd 2012

日本映画に旋風を巻き起こし大ヒットした映画『SR サイタマノラッパー』。シリーズ3作目『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が渋谷シネクイントを皮切りに4月14日から公開中!入江監督特集も緊急決定☆ あの「週末Not yet」がスクリーンに!?『SR』、『SR2』のDVD、オーダー伸びてます!『SR2』公開前の入江監督インタビュー、再び! INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美
最近、日本に多い音楽映画とかは結構、普通の日常的な生活を否定することで音楽って表現をするんですよ。それが腹立つし、自分の身内でもそういうことで傷ついてる人って多いんで、もうそろそろそういう時代じゃないんですよね。
- --- 『SR』と『SR2』ではラストシーン、長回しのラップシーンがすでに作品の終着点になっています。
入江 もちろん形は変わっていくと思いますけど、昔からシリーズものが好きだったんで・・・例えば、『釣りバカ日誌』で言ったら最後には釣っとくみたいな(笑)、そういう一応シリーズものっぽい感じにしたいなあって思ってて。この前もね、ライムスターのライブに行ったんですけど、あのステージングを映画で再現しようと思っても絶対に無理だなって思って。本当にあのステージを作るのと同じくらいの予算があってこその熱というか。ライブシーンがある映画っていっぱいありますけど、そういうものじゃないものをやりたいなって思ってたんで。
- --- あのシーン、撮られるのはすごく大変ですよね?
入江 いや、俳優はたぶん大変だと思いますけど、僕はたのしかったですよ(笑)。いい短いカットが積み重なってその場でOKが出て、後で編集で組み合わせていくっていうよりは、みんなの呼吸が合わないと出来ないシーンなんで一緒に作り上げた感じはありますよね。
- --- 山田さんにもぜひお聞きしたいのですが、噂によるとあのラストのラップシーン、何度も撮り直されたんですよね?
山田 そんなに何回も撮った記憶はないんですけど、1回が長かったんでどっしりと響きましたね(笑)。
- --- 本当にぐだぐだでどうしようっていうあの時のアユムちゃんの状況・・・空気感が滲み出ていた感じがありました(笑)。
山田 わたしもつい最近、試写をもう一度観る機会があって、やっと冷静に観れたんですけど、あのシーン・・・最後の最後のラップはもう、本当に何かいろんな人達の部屋中に充満していたプレッシャーみたいなものでぐっしょりと重く・・・濡れた雑巾みたいになってるなって思いました(笑)。
- --- 『SR』も『SR2』もあのラストの長回しのラップシーンがあることによって、全編に渡る細かいシーンの積み重ねが効いてきますよね。すごくいいシーンだと思いますし、あれがあるからこその“SR”なのではないかと。
入江 そうですね。やっぱり、あれだけ長いとボロも出るし、みんながかなりいろんなことを強いられると思うんですけど、そこをみんなで作り上げてる力っていうのが出るといいなと思って撮りましたね。
- --- 5月28日に『SR』がDVDでリリースされますが、特典映像も収録されるんですよね?
入江 入ってますね。ゆうばり映画祭もですけど、池袋のシネマロサからずっと“SHO-GUNG”とお客さんを追いかけて僕とかカメラマンがカメラを回してたんですね。日本全国を回って、韓国とかも映像としてあって。“SHO-GUNG” 全国行脚の旅っていうことで、僕らは「逆参勤交代」って呼んでるんですけど(笑)・・・まあ、このタイトルはカットされましたけど(笑)、本当にかなりいろんなところを回って、仙台とか北海道とかも街中でラップしながら宣伝とかしてたんでそこらへんがかなり入ってますね。
- --- 入江さんは日大芸術学部で映画を学ばれていますが、『SR』ではMAを、『SR2』では録音とMAを担当された山本タカアキさんは、今までにかかわった作品を上映する「録音映画祭」(7月24日〜30日に開催予定!)も決定しましたし、今、日本映画界の結構なキーパーソンだと思うのですが、日大つながりでご一緒されたんですか?
入江 タカアキさんはね、元々、冨永(昌敬)さんの映画で録音をやってて、『パビリオン山椒魚』でメジャーなこともやってますけど、初期の頃、学生の時からずっとその仕事を見てきて、「こんなにすごい録音をしてる人がいるんだな」っていうのが最初で。でも、結構忙しい方なんで全部は携わってもらえなかったんですけど、相談に乗って頂いたりして、最後のMIXとかを少しずつお願いするようになったっていう感じですね。最近もね、松江(哲明)さんの『ライブテープ』とかでかなりすごいことやってますし、タカアキさんの存在は大きいですね。
- --- 初期の段階というのは、冨永さんの『亀虫』ですか?
入江 そうですね。やっぱりね、『亀虫』を観た時に「わあ、すごい音作ってるなあ」って思って。
- --- その『亀虫』でも堂々出演の杉山彦々さんは、シャーリーシリーズや冨永監督の作品でも大活躍されていますが、『SR』と『SR2』(連続出演中!)では杉山さん、インチキっぽい変な役でしたよね?(笑)。(※不法滞在中国人 李(リー)役!)
入江 いやね、本人もインチキ臭いですよ(笑)。そこが大きな魅力だと思ってます。
- --- 『SR2』では、クレジットされていないのがかわいそうだなあって思っちゃったくらいです(笑)。
入江 そうですよね(笑)。でも、永遠にこのシリーズでは中国人役で出演してもらおうと思ってるんですけど(笑)、杉山(彦々)さんは本当にいいキャラクターですよね。杉山さんは僕が昔、短編(『杉山彦々のすべて』(2005))とかを撮ってた時からずっと仲良くしてくれていて、よく撮影にも来てもらってたんですけど、(入江監督の『JAPONICA VIRUS ジャポニカウイルス』(2006年 94分)にも杉山さんは出演!)、タカアキさんと杉山さんは本当にいい先輩っていう感じで、僕のちょっと上に『南極料理人』の沖田(修一)さんとかもいるんですけど、そこらへんの方々がずっとつるんでくれてて、後輩に対してすごく面倒見がよくて。
- --- 『SR2』の最後に今度は栃木?とありましたが・・・(笑)、栃木の構想はすでに?
入江 いや・・・何となくぼんやりは考えてるんですけど、作れるっていう風に決まってるわけではなくて、『SR2』の結果次第みたいなところもあるので、今はかなり『SR2』の宣伝にどっぷり浸かってるっていう感じですね。ただ、やっぱりライムスターのライブを見たのがデカくて、ああいうステージングでどーんって派手にかますのは映画の中ではやめようって思いましたけどね(笑)。下手に扱ったら普通に音楽やってる人に失礼だなって思って。まだ『BECK』とか観てないですけどね。
あと、「『SR』には何でライブシーンがないの?」とかって言われたりすることも多いんですけど、それは「実際のライブ見に行けよ」っていう話なんで。ライブを見るならライブハウスやコンサートに行った方がよっぽど素晴らしい体験できますよ。やっぱりね、映画でしか出来ないようなことを音楽を扱うからにはやらないといけないなとは思ってて。『SR3』があるとしたら一応、3本のまとめとして集大成になるようなことをやりたいですね。- --- ドイツ映画祭 ニッポン・コネクションでも『SR』『SR2』は上映されましたが、入江さんのブログに「日本映画界に対する不満がある」というようなことも書かれていましたよね?(笑)。
入江 それはねえ(笑)、何だったかなあ・・・舞台挨拶で、「日本映画界に対して入江さんはどうなんですか?」みたいなことを言われたから、「まあ、不満はありますよ」とかって答えたら、それが翌日の記者会見の時に「日本映画界に苛立っている入江さんは・・・」みたいな感じで紹介されちゃって(笑)。その場には『色即ぜねれいしょん』の田口トモロヲさんとか、『蘇りの血』の豊田利晃さんとかいらして、「え?」みたいな顔されてましたけどね(笑)。
- --- 不満があるからこそ、”SR”のようなスタンスで映画を撮ろうと思われたところもありますよね?
入江 それはやっぱり大きいですよね。昔、大学時代に深作欣ニさんに会いに東映に行ったんですけど、「今の奴らは大変だよな。俺らの時は、プログラムピクチャーとかで1本、2本コケても全然撮り続けられたけど、お前らそれ、今無理だよな」って言われて。今はそういう時代ですからね。どうしても安全なもの?に行きがちだし、そういう作品が集まりがちで勝負するというか、危険な映画がなかなか作りづらいというか。だってね、『母なる証明』とかはジャニーズを使ってやってるようなもんですからね、韓国とかは。それを考えるとやっぱりね、日本は何か保守的になってるなっていう感じはありますけどね。まあ、でも、日本映画界全体に対しては別になくて、自分が撮れればいいんですけど(笑)、自分が撮れるためだったら別に日本じゃなくてもいいと思ってて、チャンスがあればいつでも外に行けるように英語とか中国語とかも勉強してるんですけど。
でも、海外の映画祭に行って、単純にばっと世界中の映画が並んだ時に韓国で一番ヒットした映画とか・・・まあ、ポン・ジュノの映画とかは上映してますけど、日本で一番ヒットした映画ってほとんど、海外の映画祭で上映されないじゃないですか?そういう気持ち悪さはありますよね。やっぱりね、『SR』みたいな200万くらいで作った規模の映画でも海も渡れるんだっていうのは自分の中で一つの大きな自信になったので、自分の気持ちというか何というか、その人にしか出来ないものを作っていればそれはどこかで通用するなという。『息もできない』とかも観ましたけど、やっぱりその人しか出来ないことをやってる力強さってありますよね。- --- 松江さんは「『ライブテープ』はテープ代の2000円しかかかってない」とおっしゃっていましたし・・・(笑)。
入江 まあ、それはね、ギャラ払ってないからですよね(笑)。
- --- 前野健太さんにも・・・(笑)。
入江 そう、タダ働きしてるからですけどね(笑)。
- --- 低予算でも入江さんにしか出来ない表現でさらなる新作が撮られることもたのしみにしております。公開がまもなくになりますので、最後に一言ありましたら、ぜひお願いします。
- --- 一同 (爆笑)。
入江 でもこれ、HMVさんで書けるのかっていう(笑)。
- --- 全然大丈夫です(笑)。
- --- メーカーさん 何で挑戦?しようとするんですか!(笑)。
入江 いや、その媒体さんがね、どこまで書けるのかっていうのを見極めたいなあと。
- --- わたしが読む側でしたら、そういう本当の発言の方が知りたいし、読みたいと思いながらいつも、インタビューさせて頂いておりますので(笑)。
入江 いいことばっかりってね、読んでて飽きますよね。まあ、そこまで直接じゃなくても、その最近日本に多い音楽映画とかは結構、普通の日常的な生活を否定するじゃないですか?何かを否定することで音楽って表現をするんですよ。で、それが腹立つし、自分の身内でもそういうことで傷ついてる人って多いんで、もうそろそろそういう時代じゃないんですよね。みんな苦しみながらやりたいことをやろうとしてんだから、地道にコツコツやってる日常を否定すんなよと。特に地方回った経験から言うと、お客さんでもそうですけど、生活にかなり苦しんで映画館を経営してたり、映画を見せるっていうことを好きでやってるっていう人がいたんで。そういう方々の日常というところも含めて、観てもらいたいなって思ってます。
- --- 6月13日にHMV横浜ビブレと渋谷で『SR』DVD発売&『SR2』公開記念インストアイベントも開催決定しましたので、その際はまた改めて・・・よろしくお願いします。ありがとうございました。
入江 ありがとうございました。
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入江悠(いりえゆう)
1979年、神奈川県生まれ埼玉県育ち。
03年、日本大学芸術学部映画学科卒業。大学在学中より映画や映像作品の制作を始め、短編『OBSESSION』(02)と『SEVEN DRIVES』(03)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門に2年連続入選し、05年には4本の短編を集めた短編集『OBSESSION』が池袋シネマロサにてレイトショー公開され、注目をあびた。冨永昌敬監督作品『パビリオン山椒魚』には演出部として参加。2006年に初の長編映画『JAPONICA VIRUS』が全国劇場公開。仙台、埼玉などで入江悠監督特集上映が上映される。他に『くりいむレモン 魔人形』『SPYGIRLS 水着スパイ』など。2009年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で『SR サイタマノラッパー』がファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを受賞。3月に池袋シネマロサで劇場公開されるや初日動員記録を塗り替えるヒットとなる。以降、北は北海道から南は沖縄まで、全国のミニシアターで順次劇場公開されるなど好評を博す。一躍、今最も新作が観たい監督の一人となる。

