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『SR サイタマノラッパー』 入江悠監督 インタビュー

Monday, April 23rd 2012

interview
入江悠


日本映画に旋風を巻き起こし大ヒットした映画『SR サイタマノラッパー』。シリーズ3作目『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が渋谷シネクイントを皮切りに4月14日から公開中!入江監督特集も緊急決定☆ あの「週末Not yet」がスクリーンに!?『SR』、『SR2』のDVD、オーダー伸びてます!『SR2』公開前の入江監督インタビュー、再び! INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美

本当に1年間、『SR サイタマノラッパー』と一緒に駆け抜けたって感じですね。でもね、まさかこんなに大きい規模で『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』を公開するとは思ってなかった(笑)。


--- 『SR サイタマノラッパー』(以下、『SR』)を池袋シネマロサのレイトショーで、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(以下、『SR2』)を試写でたのしく拝見させて頂きました。完成おめでとうございます。

入江悠(以下、入江) ありがとうございます(笑)。

--- 『SR』が大ヒットを記録し、まもなく『SR2』も公開になり、今“SR現象”が起こっていますが、ここに至るまでの道のりを少し、お聞かせ頂けますか?

入江 2009年の2月末にゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009でグランプリをもらって、シネマロサでの劇場公開にかなり弾みがついたっていうのが一番最初だったんですよね。シネマロサでは2週間限定の劇場公開っていうことで始まっていたのでそこに出来るだけお客さんに来てもらおうと思って、宣伝費とかもないんで自分たちでチラシを作ったり、サンプルを撒いたりもしてたんですけど、そのロサで観てくれた方が意外とブログとかに書いてくれて、口コミでどんどん広がっていったんですよね。で、その時は予定よりも1週間延びて3週間の上映になって。

その後は地方を回ったんですけど、行った先でも結構評判がよくて、地方を回り始めた6月くらいに「ユーロスペースでもやりたい」っていう話をもらって。そのユーロスペースでは今度は1週間だけの上映だったんで、「毎日イベントっぽいことしようか」ってなって、ライムスター宇多丸さんとか漫画家の渡辺ペコさんとかゲストを呼んで。自分達では全然宣伝してなかったんですけど、ロサでの上映の時に観て、ブログを書いてくれた人達の書き込みを見てだと思うんですけど、初日に結構席が埋まったんですよ。そしたら、ユーロスペースの支配人が「これは絶対伸びる」って直感であったらしくて、大きい方のスクリーンに移してくれたんですよね。そこからどんどん動員数が伸びていって、最後の3日間くらいが満員立ち見になったという。その後もまた、それを聞いた地方の方が「うちでも上映したい」みたいな感じで言ってくれて。

その頃は『SR2』の制作に入ってたんですけど、地道に地方を回り続けて、新潟とかは2009年の12月、クリスマスの後とかに上映で。出来るだけ全部、舞台挨拶は行ってたんですけど「これで終わったかな」って思ってたら、今度は下高井戸シネマとか新宿バルト9とかでリバイバルが決まって、本当に1年間、『SR』と一緒に駆け抜けたって感じですね。


SR2


--- そこには“SHO-GUNG”のみなさんもご一緒だったんですよね?

入江 そうです。交通費とかも全部自腹だったんで、車で行けるところはみんなを車に乗っけて行って。さすがに韓国とかカナダは一緒に行けませんでしたけど、北海道まではみんなで行ってましたね。

--- 入江さんのブログも拝見させて頂いたんですが、「彼らの努力のおかげ」とも書かれていましたよね。

入江 そうですね。やっぱり、こういう規模の映画だし、僕らスタッフもキャストも含めて無名なんで、「大きな映画と同じようなことやっててもおもしろくないよね」っていうところですよね。

--- この企画の立ち上がり、「埼玉を舞台にラッパー主演で映画にしたい」というそもそものスタートのところもお聞かせ頂けますか?

入江 一応、大学1年生の時から映画作りっていうものをしてたんですけど、ちょうど10年くらい続けていた中で映画の業界の端っこ・・・底辺というかに自分がいて、「これから自分はどうなっていくのかな?」みたいなところで、これをやっておかないと後悔するもの、最後の1本になる可能性もあるからそこでやらなきゃいけないことは何かっていうようなことを考えながらいろいろ脚本を書いてたんですけど、そこで1回、地元を見直そう、見つめようと思ったのがきっかけですね。

--- 入江さんは埼玉育ちなんですよね?わたしは埼玉出身なんですが・・・ド田舎過ぎない、ちょっと田舎というのがポイントでもあったんですか?

入江 それはありますね。自分の地元に当時19歳くらいまでいたんですけど、あんなに地元が嫌いだったというか、鬱屈してたのかっていうのを考えようかなってところで、中途半端なポジションっていうのはテーマとして浮かび上がったところですね。

--- “SHO-GUNG”との出会いについてもお聞かせ頂けますか?

入江 地元の深谷市に久しぶりに帰ったら、駅前でラップしてる奴らがいて、それが”SHO-GUNG”だったんですよ!それがまたヘタクソな哀愁漂うラップだったんで、これはぜひ映画に出演してもらいたいと思ったのが最初ですね!・・・って言いたいところなんですが、実際にそんな人は深谷市にはいなかったので、映画に登場している人達は僕の知り合いの俳優です。数ヶ月間ずっとラップの練習をさせて、撮影に入りました。撮影中も毎日合宿所に帰ってはずっとラップの練習をさせてました。

--- 『SR』の上映で地方を回っている間に『SR2』の制作に入られたそうですが、結構前から『SR2』を撮ろうという構想が?

入江 いや、『SR』を編集し終わった時くらいには別に続きを作ろうとは思ってなかったんですけど、そのゆうばり映画祭で「グランプリの副賞として助成金がもらえる」っていうことを聞いて、「あ、次が作れる」って思ったのが最初ですね。自分も含めて、『SR』に関わってくれたキャストもスタッフもかなり崖っぷちにいたので、「今ここで第2弾を作らないと、もう数年後には集まれないかもしれない」という思いがありました。自分でも、『SR』で戻って来たお金はすべて『SR2』の制作費に注ぎ込んでいます。


SR2


--- 『SR2』は、『SR』で病死した“伝説のDJ”TKD(タケダ)先輩が生前に繰り広げたという“伝説のゲリラライブ”の聖地を探しに来たIKKU(駒木根隆介)とTOM(水澤紳吾)の埼玉コンビが群馬女子ラッパーチーム“B-hack”に出会い、対決するという設定になりましたが、この発想はすぐに出てきたんですか?

入江 女子ラッパーをやりたいっていうのはすぐに出ましたね。逆に、『SR』の“SHO-GUNG”がどう絡むかっていうのはまた別だったんですけど、女の子のラッパーって日本ではまだ少ないし、女の子がラッパーっていう映画も観たことがないんでそれを作りたいなあと。

--- 女の子達をメインに描くということで、『SR』とはまた違う難しさがあったと思いますが。

入江 一応ね、『SR』の時はいろんな資料を見ながらラップの練習とかをしてて、こういうキャラクターを参考にしようっていうのはあったんですけど、女性のラッパーってモデルになる人がそんなにいないんで・・・。

--- そういう中でどういう風に脚本を書かれていったんですか?

入江 女子ラッパーの方が、『SR』の男達に比べて、歌うことがもっと生活寄りっていうところですかね。男の方がもうちょっと、権力とか名誉とか出世欲とかに絡んでくるんですけど、女性の方はもうちょっと現実的というか。そういうところも踏まえて、歌詞は何回も直しましたね。

--- 今日はアユム役を演じた主演の山田真歩さんもいらしていますので、山田さんのお話もぜひ・・・(笑)。

山田 こんにちは・・・(笑)。

--- オーディションをして、山田さんを主役に抜擢という流れで?

入江 オーディションっていうか・・・僕らも音楽を作ってるチームも女の子のラッパーっていうのがどういうものかっていうのが手探りだったんで、ワークショップのような「ラップの練習をする会」みたいなのをやってて、来たい人はそこに自由に来てもらったんですよね。だから、そこでキャスティングをどうこうっていうよりも、こっちももっと勉強したいというか、どういう歌い方や歌詞があり得るのかっていうのを探りたかった。で、たまたまそこに彼女が来てたんですよね。

--- しかも、いきなり主演で(笑)。

入江 いや、でもね、まさかこんなに大きい規模で公開するとは思ってなかった(笑)。制作する時は、ゆうばり映画祭のバックアップとかはありましたけど、まだまだ、『SR』とあんまり変わらないような仲間で制作してましたんで。


SR2


--- 5人のキャラクターが個性豊かで魅力的でした。

入江 基本的にこのシリーズに関しては僕のダメなところというか、悩みとかを反映してるんで、それをそれぞれの人に振り分けてるっていう感じなんですよね。例えば、安藤サクラ演じるミッツーの借金まみれの旅館の娘とかはもう、僕がその時、『SR』でお金が本当になかったんで、感情移入しながら書いてましたよ(笑)。

--- “SHO-GUNG”に続き、女子ラッパー達を“B-hack”と命名されましたが(笑)、他にも候補はたくさんあったんですか?

入江 いや、候補はそんなになかったですね。一応ね、BはB-BOYとかB-GIRLのBにかかってるのと、ちょっと大きくというか理想を求めたいみたいなところがあって。“B-GANG(美顔)”とかも考えたんですけど(笑)、響きが“SHO-GUNG”と似ちゃうんで“B-hack(美白)”にしました。

--- 『SR』のヒットがあったから、『SR2』では安藤サクラさんや岩松了さんのキャスティングが成立したというところもありますか?

入江 いや、ヒットはそんなに関係ないですね。安藤サクラに関しては、6月の韓国で開催されたプチョン国際ファンタスティック映画祭で彼女は『俺たちに明日はないッス』『愛のむきだし』で招待されてて会ったんですよ。で、一緒に飯とか食ってて、「おもしろい奴だな」って思ってて、たまたまこの企画が進んでるうちに「どう?」っていう話があったんだと思いますね。僕の中でメジャーな人とやりたいっていう気はあんまりないんで、全然メジャーな人にオファーしてないんですよ。

--- メジャーな方に限らず、どういう方を映画に使いたくなりますか?

入江 うーん、やっぱり、何かちょっと暗ーいところがある、影があるような人はいいですよね。



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シリーズ3作目『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が渋谷シネクイントを皮切りに4月14日から公開中!入江監督特集も緊急決定☆ あの「週末Not yet」もスクリーンに!?


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『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』
『SR サイタマノラッパー』

profile

入江悠(いりえゆう)

1979年、神奈川県生まれ埼玉県育ち。

03年、日本大学芸術学部映画学科卒業。大学在学中より映画や映像作品の制作を始め、短編『OBSESSION』(02)と『SEVEN DRIVES』(03)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門に2年連続入選し、05年には4本の短編を集めた短編集『OBSESSION』が池袋シネマロサにてレイトショー公開され、注目をあびた。冨永昌敬監督作品『パビリオン山椒魚』には演出部として参加。2006年に初の長編映画『JAPONICA VIRUS』が全国劇場公開。仙台、埼玉などで入江悠監督特集上映が上映される。他に『くりいむレモン 魔人形』『SPYGIRLS 水着スパイ』など。2009年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で『SR サイタマノラッパー』がファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを受賞。3月に池袋シネマロサで劇場公開されるや初日動員記録を塗り替えるヒットとなる。以降、北は北海道から南は沖縄まで、全国のミニシアターで順次劇場公開されるなど好評を博す。一躍、今最も新作が観たい監督の一人となる。 

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