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Review List of アーチ 

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     2021/04/13

    走る練習に関する記載が少ないのは、他の類書をあたってほしいという意図か。見開き60項目(すなわち120ページ)のうち、ウォーキングによってフォームを身につける点、写真によって、ウォーミングアップ、クールダウン、筋トレを丁寧に説明している点が特徴。特に後者は参考になる。
    そして注目すべきは、「適当にゴミを沿道に捨てたり、沿道でツバを吐いたりなど、誰が見ても深いだと思われ行動」はするなとマナーの重要性を訴えているところ。100円ショップで雨合羽を買って、暑くなったら途中で捨てろと書くような指南書とは違って素晴らしい。

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     2021/03/19

    題名だけを見て敬遠してしまいそうになったが、目次をみたところ、著者の対話相手として登場する欧州やアジアの映画監督の顔ぶれが興味深かったので購入し読んだところ、とてもよかった。
    著者はドキュメンタリーを専門領域とする人かと思っていたら、欧州やアジアの映画及びその社会にも通じていて、映画の場面を具体的に取り上げ、相手から創作方法や、背景にある製作意図まで的確に聞き出している手腕はすぐれもの。
    個人的には、インタビュウを目にする機会がほとんどないフィリピンの三人の監督が登場する第3章に注目したが、第2章の欧州・中近東の監督六人の、各人が確固として持っている映画を作ることの使命感には感心した。また、それぞれが自分の方法論を持っているところも。タル・ベーラは、さすが百戦錬磨という感じ。
    掲載されている写真は、小さすぎるのか印刷が悪いのか、よく見えないものが多かったのが残念。また、インタヴュウを行った日付は入れておいてほしかった。一方、イラスト担当の住本尚子による、各回に付く小ネタが、内容に直接関係ないながら、話者がより身近に感じられるようなホッとする感じで丸。

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     2021/03/19

    原田芳雄も「この人の近くに有能な助言者あり」というひとりであった。かつて俳優座に勤務していたという配偶者のインタヴュウを核とした本。言及される作品は多くはないが、俳優の立場から見た作品や監督が興味深い。
    インタビュウでも登場する石橋蓮司との演技者同士の駆け引きは、画を見てわかるというたぐいのものではないが、優秀な演技者だけが到達できる世界とはこういうものか。カメラマンの鈴木達夫が、普通は役のほうに自分を合わせようとするが、原田は「役を自分のほうに持ってくる人」という説明は、別の人でも聴いた覚えがあるけれど、原田をしっかり見つめている。
    出演作を見てみると、なるほどよく知られた大作は少ないけれど、存在感は偉大。
    映画撮影時の写真が豊富に掲載されていること--カバーを外した本体にも写真--と、版型、すべすべした紙質、すこぶる好もしい造本。鈴木一誌の仕事。

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     2021/03/19

    ビートルズとディランとプレスリーのDVDを見て、感想を書いた本。こんな本なら私でも書けると思うが、そこはやはり、著者の知名度と、思ったことをズバリと書く文章の妙と、小見出し題名のつけ方のうまさに出版社もゴーサインを出したといったところだろう。
    それにしても、この本の体裁は好もしい。ソフトカバーで手に取りやすい版型、カラー写真がふんだんに使われているところ。これだけ写真を多用すれば、制作費が高そうだが、そこはどうしたのだろう。DVDやレコードのジャケットなど私物の写真は版権をとらないのだろうか。
    著者は三人のうちプレスリーに一番親しんでいるようで、なので書く焦点が定まっているのと、取り上げられているのが映画作品ばかりなので、逆にピンと来るところが少なかった。

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     2021/03/18

    著者が日本全国の面白そうな博物館を選んで訪問した記録。全10館と数はそれほど多くはないが、ひとつひとつ建物の外観から陳列されているものについての説明は写真とともに自分も訪れているような気分になる。さらにすべての博物館で運営者から解説を聴き、設立の経緯や陳列物への思いまで刻印している。
    文庫化するにあたり、2017年の単行本発売時から変更があったことを追記している他、梯久美子による著者に関する的確な評言の解説まで加わっており、単行本を読んだ者でもまた読んでみたくなること必定。
    日本にはまだまだ面白い博物館はあるはずで、ぜひ続編を期待したい。

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     2021/03/18

    NHKで放映された二人の対談番組を活字にしたものだそう。それぞれの現時点の寄稿もある。
    ケン・ローチ監督が、生粋の共産主義者であることを初めて知った。すぐにかつてのソ連のような体制にすべしという主張は明確だ。しかしながら、是枝監督が述べているように、彼の作る作品は、その主張を押し付けるものとは全然違って、現実は確と捉えているが、それをどうように判断するかは見る者に委ねられている。
    最近、是枝監督の対談を目にすることが多いが、自分ならどうするというところまで咀嚼しているところが内容の濃い対談となるのだろう。

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     2021/03/17

    映画『れいわ一揆』の採録シナリオと、立候補した9人の個別インタヴュウから成る本。
    インタヴュウはすべて選挙から二か月ほど後に行われている--山本代表のインタビュウは実現しなかったらしい--のだが、映画では各人の選挙活動に続けて挿入されていたので、安富歩を除けば、そんなあとで収録されたものとは気づかなかった。
    すべて時系列に出来事を並べていたのかと思っていたが、見るものにそう感じさせるような部分を選んでいないところが原監督の技であった。
    また、インタヴュウには、この映画の製作である島野千尋も同席していて、原監督の問いが一段落すると登場する。映画では声だけで誰か認識していなかったが、彼女の貢献も大きいことがわかった。
    この本を読むと、候補者だった人たちのそれぞれの立ち位置や性格がよりはっきりわかる。

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     2021/03/17

    押井監督と対談している相手が若者であることからもわかるように、この本はこれからいろいろな映画を見たいと思っている若者向けの本。幸い選ばれているものの多くはヴィデオが発売されているので、この本を片手に作品を鑑賞して映画について考えてほしい。
    個人的には日本映画が少ないのと、押井監督の銃器・兵器趣味が出ているところに興味を削がれる部分はあったが、鈴木敏夫だけでなく、また押井も映画を見ること人生を捧げているところに尊敬を禁じ得ない。

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     2021/03/16

    URCレコードに関する本などいまさら、という感じもあったのだが、レコード紹介は「後世に残したい50曲」の解説に留め、歌手へのインタヴュウが中心となっていて読み応えがある。いろんな人に分担させたのではなく、荒野政寿がひとりで頑張ったというのがよかったのでは。休みの国など発掘ものもあるが、基本的には新たに話を聴いている。
    個人的な購入の動機は三上寛ではあるが、金延幸子なども面白かった。(岡林、早川、友部の話は聞くのが難しかったか。)
    過去の出来事は、50年ぐらい経ってみて、やっと大きな流れのなかでの位置がわかるのと、生々しくて話せなかったことが明かせるということがある。

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     2021/03/15

    大学で研究科目に映画が加わったのは、おそらく20年ぐらい前からと思うが、この本に参加している研究者はその流れで映画研究を専門にしている人たちと勝手に推測した。各人の視点と研究の深さは論文形式の文章と相まってなかなか手ごわく学術論文の趣き。これから斯様な人たちによって、映画研究がもっと豊かになっていきそうな予感がする。
    中でも、編者のひとりである角尾宣信の論考は、現存する渋谷監督の作品すべての階段場面を検証し、数字を検証することで、渋谷映画における男性の登場人物に与える罰を詳らかにするという労作。
    これら論文だけを並べて映画評論とはかくあるべしとすることもできたろうが、最後に有馬稲子と香川京子、そして澁谷監督の令嬢のインタヴュウを載せて、渋谷実研究本としての価値を高めている。
    550ページと大部の本にしては判型を抑えて持ちやすくしているのと、写真をうまく並べている装丁もよい。

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     2021/03/15

    まずなぜ著者がルドルフ・ヘスに興味を持ったかが語られる。子どもの頃、記憶に残った人というのは、深い理由がなくともいつまでも気になっているということはある。著者は、ずっとヘスのことが頭にあって、こうやって形にしないと自分自身がヘスであるかのような気になってしまったのかもしれない。
    最初の部分は創作ではなく、著者の子ども時代の争時体験が語られている。自らの福井空襲の体験を書き残す必要性も感じていたのだろう。
    ヘスの告白部分は、実際にドイツで起こった事件を紹介しながら、ヘスがなぜ英国に単独飛行をしたかが語られる。この部分の「主語のない文章」という体裁は、日本語だからこそできたのであって、著者による創作上の実験精神が嬉しい。
    敗戦までのドイツの状況は、ヘスに語らせるわけにはいかないため、懇意にしていた大学の先生の息子の遺書の形で語られる。ヘスに親近感を感じていた人ゆえ、視点がヘスと似てしまったことが気になった--英国側から語らせるという方法もあったろう--が、小説上の技巧には興味はなかったと理解した。
    まるで吉田監督の新作映画を見ているかのようで、88歳になろうとしている監督がこの本を世に出したことを素直に喜びたい。

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     2021/03/14

    佐藤允に関する本とは貴重。
    冒頭に、未公開という本人のインタヴューが掲載されている。東宝に入社した経緯から、ずっと東宝ひと筋でやってきて、60年代後半に辞めてから、加藤泰の松竹作品に出て、70年代は石井輝男映画、80年代は大林宣彦と、彼を気に入って起用した監督の面々を見るだけで、唯一無二な俳優であったとわかるというもの。
    本の後半部分は、彼と親しかった人々として、夏木陽介、江原達怡、水野久美、そして岡本みね子が登場するが、これらも他ではお目にかかることができない貴重なもの。
    佐藤允が活躍する福田純作品が見たくなる。

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     2021/03/13

    これまでに出版したエッセイ本の中からと、2002年以降新聞などに発表したものから編まれた本。「旅人」という言葉で表すのがふさわしい、いろいろな場所に出かけて観察し、考えた文章が選ばれている。
    もう一つ裏主題として「ボブ・ディラン」がある。これまで著者は、ディランについて語ることを避けているような印象があったが、この本の文の中には、ディランがいろいろな形で顔を出す。自分の根っこにあったものを素直に出してみようという気持ちも「自選」の基準にあったのかもしれない。
    ミチロウの追悼ライヴで朗読された詩には、旅人としての共感がある。
    文章から、著者が朗読する声が聴こえてくる。

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     2021/03/08

    著者の三回忌に合わせて、著者が亡くなる直前に雑誌に発表したものを編んだ作品。それでは内容が不足するため、90年代初めの文章が併せて収録されているが、「平成」という切り口に見事にはまっている。
    序文を内田樹が書いているのも贅沢かつ著者への愛が溢れていて読ませる。

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     2021/03/03

    新書としては価格は高価だが、高紙質で著者の解説する美術品がカラーで掲載されているので、著者の言うところがよく理解できる。縄文と弥生という二つのキーワードで日本美術の特徴を解説する手つきは鮮やかでわかりやすい。逆にわかりやすさに落とし穴があるのではないかと思い、これもひとつの説とみるべきだろう。
    著者自身、流行を作り出すことの警戒感も持っていることがわかる。「美術展では、絵を見る前に解説ボードを読むのは止めていただきたい。」「絶対に名前で買ってはいけない。」等終章のメッセージだけでも読む価値あり

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