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TOP > My page > Review List of フォアグラ
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3 people agree with this review 2024/11/21
モーツァルト、シューマン、ブルックナー、マーラーいずれも素晴らしい出来。ブルックナー、マーラーは米国のオケによるものでは最高、ショルティ/シカゴよりはるかにいい。クリーヴランドはアンサンブルの精度が高いので響きが透明であり声部が細部まで聴きとれる。ドホナーニの指揮はどこまでも誠実だが迫力に欠けることはなく音楽の推進力も充分。このセットは買いだ。残念なのは「リング」中断とともにブルッックナー、マーラーが全曲録音にならなかったこと。マーラーは3番、7番録音してほしかった。またドヴォルザークの7〜9番がダブルデッカのジャケット仕様になっていて音もダブルデッカの透明度の低いものであること。どうしてデジタル録音なのにダブルデッカはあんなに音が悪いんだろう。演奏はピカイチなのにもったいない。ドホナーニは現在95歳で現役のはず。97歳のブロムシュテットは大いに話題になるが、ドホナーニもこのBOXをきっかけに話題と尊敬を集めてほしいと切に思う。
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1 people agree with this review 2024/11/13
フランクは全曲47分、かなりテンポの遅い演奏である。これがクレンペラーなら遅いテンポから曲の構造が浮びあがるのだが、バレンボイムはそういうことはなく、ただ遅い重厚な演奏になっている。そのためフランクのフランス音楽的側面は後退しドイツ後期ロマン派として鳴り響く。私はこの曲のテンポの遅い演奏を苦手とするので正直聴き通すのに気力が必要だったが、だからといってこの演奏をダメというつもりはない。考えてみるともともとバレンボイムは若い頃から重厚でうねるような音楽をやりたがっていた。しかしバレンボイムがパリ管弦楽団と録音したころはカルロス・クライバーが大人気で、切れ味鋭くノリのいい音楽が好まれていた。バレンボイム自身クライバーの影響を強く受け、指揮スタイルが大きく変わったためなんとなく中途半端な音楽を聴かせる指揮者という印象になってしまっていたと思う。バレンボイムも80歳を超え彼が一番やりたい音楽をそのテンポでも耐えれるベルリン・フィルを得て成し遂げたのがこのフランクなのだろう。フォーレはパユをはじめとする名人芸により聴きごたえがある。バレンボイムへの敬意で満点。
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1 people agree with this review 2024/11/06
アーベントロートとの出会いは半世紀近く前LPで聴いた「未完成」。高音がキンキンする決して良好とはいえない録音なのに私は激しく心を打たれ涙が止まらなかった。以来リマスターが出ると買っているのだが、音はバランスが良くなったにもかかわらず、あの感動の再現はない。リマスターに問題があるのか、かつての私の精神状態が関係するのかLPを処分してしまったので確認の仕様がないのだが、それでもこの「未完成」は非常な名演であることは間違いないと思う。ここにはのっぴきならない切実なものがある。第1楽章展開部はただ事ではない。やはり私にとってのアーベントロートは「未完成」だ。「グレート」はずっとロマンティックであり、テンポの動かし方の激しさではフルトヴェングラーの42年盤と双璧。シューマンのコンチェルトははるかに音は良好で演奏も大変よい。若きトルトゥリエもほぼ無名のヴューラーも優れた演奏をしているし、アーベントロートの指揮も情感に溢れている。
3 people agree with this review 2024/09/30
21世紀最高のカルテットとしてフランスのエベーヌと並ぶ存在だったドイツのアルテミス・カルテット。残念ながら解散してしまったが(第1ヴァイオリンのサレンカがベルリン・フィル初の女性コンマスになったものの退団したので再結成の可能性はゼロではないが)ここにほぼ全ての録音がまとめられた。私はカルテットは新しい団体になればなるほど優れていると勝手に思っている。というのも第2ヴァイオリン、ヴィオラのレベルがどんどん上がり非常に緊迫し、かつ伸びやかな音楽が形成されるようになったと考えるからだ。アルテミスも第1と第2ヴァイオリンが入れ替わることもあるように技術的に見劣りはなく丁々発止の演奏が繰り広げられる。チェロのルンゲ以外全員メンバーが順次代わっているのも演奏レベルを高く維持した要因だろう。ベートーヴェン全集もシューベルトもブラームスもどれも白熱的で個人的にはこれがベスト演奏。ヤナーチェク、リゲティもいい。シェーンベルクやバルトーク全集にも取り組んでほしかったな。
2 people agree with this review 2024/09/20
名演!沖澤はテヌートで旋律をたっぷり歌う。しかしカラヤン新盤のように重くならない。迫力はありキレもいいが、感じられるのは北欧の巨人シベリウスの孤高ではなくもっと柔らかく人間的な音楽である。聴いているうちに音楽に包まれるような錯覚を受ける。終楽章コーダのトランペットも優しく柔らかく吹かれる。聴き終わって物足りなさ皆無、いい音楽を聴いたという感銘だけが残る。この曲でこういったアプローチはあっただろうか。6番の視線で見た2番ともいえようか。読響も素晴らしい出来であり、録音も優秀。2番に限ればマケラより演奏、録音とも上だ。沖澤は間違いなく非凡な才能。京都市交響楽団聴きに行くかな。京都なら日帰りだし。
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4 people agree with this review 2024/08/17
クリーヴランド管弦楽団のセル時代、副指揮者のルイス・レーン率いるクリーヴランド・ポップスが活躍していたことを皆さんご存じだっただろうか。私は初めて知った。レーンの名前も初めて。そもそもLP時代日本で出たのだろうか。ポップスといってもボストン・ポップスとは違い、ヒットナンバーをゴージャスなサウンドで聴かせるイージー・リスニングはほぼない。映画音楽集もロバート・ラッセル・ベネットによる交響組曲版を演奏している(有名な「ジジ」組曲はラッセル・ベネットだったのか)。そして演奏はすこぶる楽しい。クリーヴランド管弦楽団だから上手いのは当然だが、レーンの指揮もいいのだ。選曲に一捻りあるのもいい。先の映画音楽集にヴァージル・トムソンの「ルイジアナ物語」が入っていたり、ラプソディではお馴染みのリスト、エネスコとともにヴィクター・ハーバートのアイルランド狂詩曲を入れたり。初めて聴く曲も結構あり興味は尽きない。ボストン・ポップスやフィラデルフィアに比べ響きが引き締まっているのはやはりクリーヴランド。エピックからコロンビア・マスターワークスに昇格後、レーンも録音を残しているが、モーツァルトのK334(K287とともにカラヤンが偏愛した曲)の優れた演奏は、セルの指揮と聞いても信じてしまうだろう。セルはレーンをとても気に入っていたらしいが(セルとレーンがおどけた写真がブックレットにある)セルの元で20年近くやっているから芸風が似たのか、レーンの下準備があってこそのセル/クリーヴランドだったのかわからなくなってくる。レーンはクリーヴランドで亡くなっているが、セル没後ポストに恵まれたとはいえなかった点も含め、セルに殉じた人生にも思え、遅ればせながらも日本で無名に終わった指揮者がまとめられてよかったと思う。
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2 people agree with this review 2024/08/15
ブライロフスキーはショパンのマズルカやワルツを個性的に弾くサロン向けの古いタイプのヴィルトーゾというのが通説だ。今回メロクラシックから出たものは全てコンチェルトであり、チャイコフスキー、シューマンは非常に珍しい音源ではないだろうか。ここに聴くブライロフスキーはきらめくようなピアノの音を持ち、早めのテンポだが弾き飛ばしたりせずファンタジー溢れる演奏。決してサロン風のスケールの小さなピアニストではない。とりわけ優れているのはルクセンブルクでのショパンとシューマン。乗りに乗った素晴らしい演奏だ。ルイ・ド・フロマンの指揮するオケもよく録音もモノながら優秀。データを見るとショパンの翌日にシューマンだったようだ。チャイコフスキー、ラフマニノフは音質が落ちるが鑑賞に支障はなく、これも充分楽しめる。オーマンディはもちろんガラグリーの指揮もしっかりしている。ブライロフスキーの再評価につながる貴重な音源である。
0 people agree with this review 2024/06/23
しばらく入荷困難だったが、また入手できるようになっているのでレビューを書かせていただく。ダンチョフスカはDGへのツィメルマンとの録音でしか知られていなかった。このセットはポーランド放送によるスタジオ録音とライブからなるが、もともとレコード会社への録音は極端に少ない人のようだ。では演奏はどうかというと、これが素晴らしいのだ。とりわけシマノフスキの2つのコンチェルトはそれぞれの最高の演奏と断言したい。これほどシマノフスキの音楽をわかりやすく魅力的に描いた演奏はない。指揮者のコルトが振るオケも優れており今時珍しい地元の強みを感じさせる。ショスタコーヴィチの1番もトップレベルの名演。指揮者陣はアントニ・ヴィトのようなおなじみの人がいる一方で馴染みのない名前もあるが皆好演であり、ポーランドの演奏水準は高い。小品もとてもよい。ツィメルマンはダンチョフスカの実力を知り尽くしていたからDGにアピールしたのだろうが、なぜかフランクは普通の出来であり、国際的に知られることがなかったのは惜しいことだ。放送録音としてブラームスやシベリウス、プロコフィエフのコンチェルトとか残っていないのだろうか。
0 people agree with this review
1 people agree with this review 2024/06/11
マイク・クレメンツのリマスタリングによるナクソスのVOXシリーズは思わぬ楽しみを私に与えてくれている。アブラヴァネル、ジュスキントと地味な指揮者の好演を聴いて評価を改めているところだが、今回のスクロヴァチェフスキは日本でもすっかりおなじみだった名匠。フランス物は珍しいが最高の職人指揮者のスクロヴァチェフスキが悪かろうはずがない。大好きな「高雅で感傷的なワルツ」からはじまるが、実に精妙な名演奏だ。「ダフニスとクロエ」は折角なら全曲にしてほしいところだが、第1組曲が入っていることで30分聴けるし全員の踊りの統率された爆発もスクロヴァチェフスキらしい。ミネソタ管弦楽団の状態はいいし、リマスタリングも成功している。
0 people agree with this review 2024/06/11
チャイコフスキーが優秀だったアブラヴァネル/ユタ響コンビ。しかしこのグリ−グはもうひとつ。「ペール・ギュント」は一言で言うと平凡だ。アンサンブルの精度も高いと言えず、編集ミスと思われるカットもあり興を削ぐ。ホルベルク組曲ももっと歌いこんでほしい。この曲はジョージ・ウェルドンの古い録音以上の演奏をいまだに聴いたことがない。チャイコフスキーに比べアブラヴァネルの曲への共感は薄いようだ。トロルドハウゲンの婚礼の日のオーケストラ・バージョンは珍しく、これを聴きたい人にはお勧め。
2 people agree with this review 2024/06/09
またまたフィンランドからの新鋭ペルトコスキのデビュー盤。DGからの登場でしかもモーツァルトの超有名曲。どれほどの才能か興味を持たないほうがおかしいだろう。一聴しての感想は録音がよくないなあと。モダン楽器でノンビブラートのピリオド奏法なのに響きがうるさく透明感がないのだ。ペンタトンやリファレンスらのマイナーが素晴らしい音質なのに対してユニヴァーサル系は20世紀の録音より後退しているのは残念だ。ペルトコスキの指揮は速いテンポでキレよくダイナミックに進行するのは予想通りだが、ティンパニの強打が対旋律をつぶしてしまう部分が「ハフナー」「リンツ」にあるのは疑問。録音も相まって雑然とした印象が残る。この指揮者の評価は保留。やっぱりモーツァルトは難しい。
5 people agree with this review 2024/04/19
子供の頃日本コロムビアからスタインバーグのコマンド録音が廉価盤でいくつか出たのを覚えているが音楽誌で推薦されたものは0だった。それから数十年後ワーナーから出たキャピトルレコーディングスで初めてスタインバーグの実力を知り、DGの「ツァラ」「惑星」ICAの「復活」「ミサソレ」で圧倒された。日本でスタインバーグの評価が低かったのはキャピトル、コマンドというポピュラーミュージックのレーベルから出たからだ。権威主義の塊のような日本の評論家はまともに聴きもしないで評価した可能性が強い。スタインバーグの記念年でもないのにソニー、ユニヴァーサルから同時にコンプリートが出たのは私も含め日本からスタインバーグを聴きたいというニーズが高まったからではないか。このセットの解説を読むと米国ではちゃんと高い評価を受けていたようで、それに対して日本ではスタインバーグ再発見の驚きははるかに大きかったからだ。コマンド音源も紆余曲折あり、当初ユニヴァーサルはマスター消失といい、その後ベートーヴェン交響曲全集が出たが、9番終楽章は音源紛失により板起こしで対応であった。今回のセットにはその断りはなく音質も向上しているので多分ユニヴァーサルは再度倉庫を探して全ての音源を見つけたのだろう。今回解説を読んでコマンド録音の全てのレコーディングエンジニアをマーキュリーのCロバート・ファインが務めていることがわかった。35ミリマグネティックフィルム録音もファインがマーキュリーでの技術を持ち込んだのだろう。61年から68年にかけての録音だが、すべて35ミリ録音なのは驚きだ。60年代後半に35ミリを使っていたのはコマンドだけだろう。音質はマーキュリーに及ばないがそれでも良好。演奏は言うまでもなく素晴らしい。早めのテンポでキレのいい演奏は一貫しており、ドイツ音楽だけでなくロシア、フランスそして米国の「サウンドオブミュージック」まで質の高い演奏を聴かせてくれる。ラフマニノフ2番でもVOXから再発売されたスラトキンに比べ音楽の躍動感が全然違うのだ。ワーグナーも手に汗握る。一見淡白なシューベルトも味わい深い。ユニヴァーサルには言いたいこともあるが、何はともあれ音源を見つけてくれ発売してくれたことに感謝したい。今年最高の聴きものかもしれないのだから。
5 people agree with this review
6 people agree with this review 2024/04/11
HMVの宣伝文とは違いオリジナルジャケット仕様ではない。解説書にオリジナルジャケットの写真が載っているだけである。誇大広告なので☆1つにしようと思ったが、「ザ・グレイト」の素晴らしい演奏を聴いてるうちにどうでもよくなってしまった。私はこのセットに収録されている音源を聴くのは初めてだが、DGへのスタインバーグ/ボストンの3枚は知っているのでRCA録音も悪かろうはずがないと思っていたが、やはり見事な演奏ばかりであった。シューベルトもブルックナーもスタインバーグの特徴であるタメを作らず前進するリズムの上に多彩な表現がなされ聞き手を魅了する。「ティル」は急速テンポで目もくらむ。ピッツバーグに比べボストン交響楽団は明らかにワンランク上であり聴きごたえ充分。HMVの紹介にあるように米国のメジャーの音楽監督掛け持ちは異例なのだが、スタインバーグはミュンシュ時代から客演の常連であり、楽団員も理事も是非にということだったんだろう。それならミュンシュの後任をスタインバーグにしておけばもっとたくさんのこのコンビの録音が聴けたのに。ラインスドルフとスタインバーグは似たタイプの指揮者だが、力量の差は大きいのだ。おまけにアーサー・フィードラー生涯唯一の本格クラシック録音の「新世界」が入っているが、これもおまけではもったいない立派な演奏だ。この当時のボストン交響楽団は本当に素晴らしい。サウンドにキレがあり、ソロもうまいし俊敏なのだ。小澤時代の80年代にこのサウンドを失ったのは残念なことだった。
6 people agree with this review
1 people agree with this review 2024/04/04
7番はブルックナーの交響曲では静謐な音楽だと思うが、実際にはテナーホルンが加わり金管がかなり重厚になっている。このバランスで私的に最重要だと考えているのが第2楽章3部形式の中間部冒頭、例の印象的なテーマが戻ってくるところで、弦と金管がほぼユニゾンで旋律を歌うのだが、ブルックナーは弦を最初ヴァイオリンその後低弦で弾かせる。ここに分厚い金管が被るのだが、ここで低弦がしっかり聞こえると何とも言えない「幽玄の美」が生まれる。ここを最も見事にやってるのがカラヤン/ウィーン・フィルだったりするのだがヨッフムも素晴らしかった。一方某評論家が絶賛していたシューリヒト/ハーグ、マタチッチ/チェコ・フィルは金管しか聞こえない。普通に鳴らせばこうなるんであって指揮者がどれだけ意識してバランスを取っているかがよくわかるのだ。アバドは弦も金管も絶妙のバランスで聞こえてくる。アバドはブルックナーの音楽を深く理解していた証明だと私は思っている。
2 people agree with this review 2024/03/27
とてもいい全集だと思う。不出来な演奏がない。N響でもやっていた7番序奏ヴァイオリンの1オクターヴ上げは効果もないしいらなかったと思うが、それ以外はスコアの改変も標準的。ザグレブ・フィルも水準以上。どっしりとした低弦の上に筋肉質で野性的な音楽を構築していくマタチッチの良さが十分とらえられているし、決して泥臭いとか荒っぽいとかはならないことも美質。N響との66年の9番を引き合いに出して燃焼度不足とおっしゃっているレビュアーの方がおられるが、それはそのとおり。でもあの演奏は別格なのだ。マタチッチの咳がかなり入っているところをみても既に体調は万全ではなくなっていたのだろう。むしろマタチッチならではの豪快な面とともに晩年の落ち着いた解釈を味わえることを楽しみたい。優れた録音が極端に少ないマタチッチ最大の遺産といえるかもしれない。
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