CD 輸入盤

『さまよえるオランダ人』全曲 クレンペラー&NPO、アダム、シリヤ、他(1968 ステレオ)(2CD)

ワーグナー(1813-1883)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
SBT21423
組み枚数
:
2
レーベル
:
:
Europe
フォーマット
:
CD
その他
:
ライブ盤,輸入盤

商品説明

EMIセッション録音直後の演奏会形式上演による『さまよえるオランダ人』ライヴ録音が、ステレオで登場します。
 1967年。クレンペラーでワーグナーのオペラを録音できるチャンスは残り少ないと感じていたEMIのチーフ・プロデューサー、ピーター・アンドリー(ウォルター・レッグの後任)は『さまよえるオランダ人』を提案し、乗り気になったクレンペラーは、バイロイトを訪れ歌手を物色します。そこでドホナーニ指揮する『タンホイザー』でエリーザベトを歌っていたアニヤ・シリヤに一目惚れし、アンドリーに次のように書き送りました。
「彼女は音楽的にも演劇的にも飛び抜けている。間違いなく天才だ。彼女が『オランダ人』の録音とコンサートに参加出来るよう、ありとあらゆる手を尽くさねばならない。他の歌手にゼンタを歌わせるなんて、黒を白だと言い張るようなものだ!」

 かくしてシリヤは歴史的名盤の録音セッションに参加することになりましたが、セッション中のクレンペラーを振り返って「真剣なときは私が女であることさえ忘れてしまったように厳しかった」と語っています。オランダ人とゼンタのデュエットはなんと6回も録り直されたのだそう。しかしその理由は「マエストロは何度も、どこかを踏んずけたりぶつかったりして大きな騒音をたてるんですもの!」
 実は、クレンペラーとスタッフ一同が強く望みながらEMIの録音では実現しなったことが一つありました。それはエリク役のテノール歌手で、皆がジェイムズ・キングを望み、キングも同意しながら、彼について優先権を持つデッカが、コンサートへの出演は認めつつも録音への参加を拒否したのです。このためEMI盤ではエルンスト・コツープが歌っています。コツープも決して悪い歌手ではありませんが、やはりキングの方が実力は上でした。シリヤも「キングの存在によってコンサートが一層強烈な体験になった」と語っています。
 リハーサル中は厳しかったクレンペラーも、それ以外の時間は終始ご機嫌で、シリヤやスタッフを笑わせていました。それは、このコンサートの際、クレンペラーの巨体を舞台袖から指揮台まで支えて歩く役をシリヤが仰せつかっていたからかも知れません。「彼はとても重くて、指揮台に辿り着くまで5分もかかったのよ!」

 そしてまた、リハーサルを見学に来たジョージ・セルとのエピソードも残っています。クレンペラーは70歳のセルに“ヤング・マン”と呼びかけ(セルはクレンペラーの12歳年下)、シリヤを「俺の婚約者だ。」と紹介するなど愛想よく対応しています。しかし、普段は絶対あり得ないのに、リハーサル全編を立ったまま指揮するなど、クレンペラーがいかにこの年下の指揮者を意識していたかも同時に伺い知れます(ちなみにセルはこの8ヶ月後にニュー・フィルハーモニア管に客演し、ベートーヴェンの8番と9番の見事な演奏をおこなっています)。

 クレンペラーのへヴィーな『オランダ人』には、サヴァリッシュの快速な『オランダ人』とはまったく違った世界があります。当時、バイロイトに蔓延していた度を越してドイツ的な音楽作りを刷新したいと考えていたヴィーラント・ワーグナーは、サヴァリッシュやクラウスのすっきりしたスタイルを熱狂的に支持していました。サヴァリッシュに比べると、クレンペラーのワーグナーは対極といえるものですが、ヴィーラントはクレンペラーのワーグナーも称えており、『トリスタン』を指揮するよう要請したり、EMIの管弦楽作品集には讃辞を呈したりもしていました。それに、ヴィーラントが提唱した新バイロイト様式の演出の元祖とも言える前衛的なワーグナー演出が、クレンペラーによって、ベルリンで行われていたことも忘れてはならないでしょう。ヴィーラントはクレンペラーについてこう述べています。
「彼が他に全く類のない独特な指揮者である所以は、古典的ギリシャ、ユダヤの伝統、中世のキリスト教精神、ドイツのロマンティシズム、現代のリアリズムといったものの混在にある。」

シリヤは語ります。
「ええ、クレンペラーのやり方は、私のそれまでのやり方とは全く違いました。でも、私は今でも感じるのです。クレンペラーの音楽作りがわたしは一番好きだったと。彼の音楽には、何か‘実質’がありました。」

シリヤが舞台上で感じたこの感覚を同じく感じることができる、このライヴ録音が秘めた重要性には計り知れないものがあります。(ユニバーサルミュージックIMS)

ワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』全曲
 オランダ人・・・テオ・アダム(バス=バリトン)
 ゼンタ・・・アニヤ・シリヤ(ソプラノ)
 ダーラント・・・マルッティ・タルヴェラ(バス)
 エリク・・・ジェイムズ・キング(テノール)
 舵取り・・・ケネス・マクドナルド(テノール)
 マリー・・・アンネリース・ブルマイスター(メゾ=ソプラノ)
 BBC合唱団
 ピーター・ゲルホーン(合唱指揮)
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 オットー・クレンペラー(指揮)

 録音時期:1968年3月19日(ステレオ)
 録音場所:ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ライヴ)
 リマスタリング:ポール・ベイリー

収録曲   

ディスク   1

  • 01. Wagner Der fliegende Holländer Overture 11.02
  • 02. ACT ONE Scene one: Hojohe! Hallojo! Ho! Hallohe! 4.45(Orchester/Chor/Daland/ Steuermann)
  • 03. Mit Gewitter und Sturm 5.47(Steuermann)
  • 04. Scene two: Die Frist ist um 11.03
  • 05. Scene three: He! Holla! Steuermann! 3.24(Holländer/Chor/Daland/Steuermann)
  • 06. Durch Sturm und bösen Wind 10.17
  • 07. Wenn aus der Qualen Schreckgewalten 2.27(Holländer/Daland)
  • 08. Südwind! Südwind! 3.46(Steuermann/Chor/Daland/Holländer)
  • 09. ACT TWO Scene one: Introduction 0.38(Orchester)
  • 10. Summ’ und brumm’9.13(Chor/Mary/Senta)
  • 11. Johohoe! Johohohoe! Johohoe! Johoe 8.31(Senta/Chor/Mary/Erik)
  • 12. Senta! Willst du mich verderben? 3.00(Erik/Chor/Mary/Senta)

ディスク   2

  • 01. Scene two: Mein Herz, voll Treue 6.15
  • 02. Fühlst du den Schmerz 6.43(Erik/Senta)
  • 03. Scene three: Mein Kind, du siehst mich 1.43(Daland/Senta)
  • 04. Mögst du, mein Kind 6.20(Daland)
  • 05. Wie aus der Ferne 6.48
  • 06. Wirst du des Vaters Wahl 8.13(Holländer/Senta)
  • 07. Verzeiht! 1.56(Daland/Senta/Holländer)
  • 08. ACT THREE: Scene one Orchestral interlude Steuermann, laß die Wacht! 11.22(Chor/Steuermann)
  • 09. Johohoe! Johohoe! Hoe! Hoe! Hoe! 3.23(Chor)
  • 10. Scene two: Was muß ich hören! 2.25(Erik/Senta)
  • 11. Willst jenes Tags 3.10(Erik)
  • 12. Verloren! Ach, verloren! 8.31(Holländer/Erik/Senta/Daland/Mary/Chor)

総合評価

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演奏は素晴らしいのですが(序曲に観客が拍...

投稿日:2022/08/07 (日)

演奏は素晴らしいのですが(序曲に観客が拍手してしまっているのですが、気持ちは分かる)、録音が今一つな気がする。録音がいいと言っているレビュアーさんもいるし、私はそんなに超高級な再生装置は使っていないので、あれこれ言う資格はありませんが、ソリストの男声が揃って遠く聴こえる一方、ソプラノだけが変に強調されている。重唱の一部はソプラノしか聞こえない。この男声陣が揃ってシリアの声量に押されるわけはないので、彼女にフォーカスしているのですかね?(そういえば、クレンペラー最後のベートーベンチクルスの第9も、四重唱ではソプラノだけが目立っていた。映像でもマイクはソプラノの前。イギリスの伝統?)ジャケット表紙もタイトルロールのアダムではなくてシリアだし… よく分かりません。よく分からないので星は三つ。もう一度聴いてみます。合唱のドイツ語がちょっとゆるいのは御愛嬌。スタジオ録音で、オランダ船の船員の合唱に入っていた妙な電子音はありません。

yuriko さん | 東京都 | 不明

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ワーグナーの旋律の奥底から、クレンペラー...

投稿日:2019/06/26 (水)

ワーグナーの旋律の奥底から、クレンペラーの魂が蘇らせてくるものを、私たちは ただ受けとるだけでいい。批評も評価もなにも要らない。このライブのオランダ人には、そう思わせる凄味がある。

surwolf さん | 東京都 | 不明

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驚きました。序曲の開始から何かただならぬ...

投稿日:2012/05/06 (日)

驚きました。序曲の開始から何かただならぬ雰囲気、演奏の気配です。1幕がこれほどまでに見事な録音は、私は初めての体験です。あのヴィーラントWがマエストロをバイロイトへ呼ぼうとしたのもむべなるかな。歌手全員が格別のテンションで歌っています。加えてオーケストラの鳴りっぷり! シーリアは有名なバイロイト録音を上回る出来と思われます。録音も優秀。実は、落穂拾いかも、と手を出さずにいました。いやはや、スゴイ!

オペラかじり虫 さん | 兵庫県 | 不明

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