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雲谷斎 さんのレビュー一覧 

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  • 12人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/08/21

    これは本当にありがたいコレクション。ケンペの録音は結構たくさんCD化されているのだが、R.シュトラウスを別にすればバラバラな単品発売で、このセットの目玉ともいうべきBPOとのブラームスの交響曲全集やVPOとの管弦楽小品集をいちいち買っていたらこのセットの価格を優に超えてしまう。ICONの11枚組も魅力的だが、収録曲がベートーヴェンやワーグナーに片寄りすぎているきらいもあり、小品も含めもっと多くの作品を聴きたいという人にはとにかくこのセットがおすすめ。小品といっても今では演奏されなくなった管弦楽の組曲やケンペの指揮以外では聴けないワルツなどがふんだんに盛り込まれていて実に魅力的。ケンペはこういう小品も上手かった。カラヤンのような外連味たっぷりという派手な演出はないものの、曲そのものがもつ味わいをうまく引き出す指揮者だった。もちろん、このセットの核になっているブラームスのドイツ・レクイエムや交響曲全集も地に足のついた構築豊かな演奏。第4番にいたってはモノとステレオ2種類を収録するという念の入れよう。ただ、57年にメニューインと共演したBPOとのバイオリン協奏曲の名演が含まれていないのは残念(ぜいたくな望みか)。VENIASというイギリスの新興レーベルの音はこのセットではじめて聴いたが、復刻CDにしばしばありがちなわざとらしいデジタル臭ふんぷんのものではない。モノ、ステレオ混在だが、いずれも往年のLPを良好な状態で再生した落ち着きのある音。こういう音だったよなぁという安心感に包まれる。収録曲目、音も含め、実に良識溢れるコレクションである。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/08/10

    この”CLASSIC ALBUMS PLUS”シリーズはREAL GONEから数点出ていてCD4枚組でもずいぶん格安である。内容やいかに、と思い試しに購入したのがこのPAUL ANKA。結論を先にいえば、実にきっちりとした内容、録音。ステレオで発売された盤はもちろんステレオ録音。他のモノラル盤も申し分のない水準の録音で文句のつけようがない。ということは、このシリーズは安価ではあるが信頼度は高いと判断できそう。当盤はPAUL ANKAがRCAに移籍する前ABC-PARAMOUNT時代のLP集成だが、すでにこの時代から彼が単なるポップス・シンガーにとどまらない器であったことをこの4枚のCDはよく伝える。半世紀前のラジオ・リスナーとすれば、ABC-PARAMOUNT時代末期の地味な数曲が収録されていたらという勝手な希望もあるが、それはこのCD製作の主眼ではないだろう。CD2になかなか入手しがたいクリスマス・ソングLP全曲がステレオ収録されているのをはじめ、CD3のコパ・ライブほかのナンバーは聞きごたえ十分である(もちろんステレオ録音)。廉価だからといって見過ごしてはもったいないほどの水準の高い盤である。

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     2014/11/13

    LPとのダブリがかなりあるのだが、80分を超える収録はもちろん、90分近い収録盤もあって2枚組だったLP曲がCD1枚で聴けるようになったメリットも大きい。この
    エディションにはモノ録音も結構多いが、私がLP収集する前の名盤が目白押しでとてもありがたい。ステレオ時代に焦点を合わせてくれればという方も少なくないだろうが、単品でまだ購入可能な時代の作品よりも、もう入手しえない過去の名盤に重きを置いた編集には知性を感じる。えり抜かれた名盤だけあって、どの演奏にも気品が漂う。とりわけ、50年代後期から60年代にかけての演奏はすごい。しなやかでいて強さも併せもつ圧倒的な名演。今のウィーン・フィルからはとても味わえない満足感に満たされる。DECCA BOYSが支える録音・技術陣の卓越したチームワークとも相まって、このボックスはまさに20世紀のレコード産業のピークを記録した音の世界遺産ともいうべき名品である。それが単価250円程度で入手できることにはただただ驚く。このボックスにはOrchestral Editionと書かれているので、いずれ室内楽や器楽、声楽の後編も発売されるのかもしれない。大いに期待したい。もちろん、今年いちばんのいい買物だった。

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     2014/06/18

    60年代ポップスの狭間に咲いた日本ならではのロリコン・ポップスを髣髴とさせるような甘いタイトル。日本では知られていないB級ポップスも聞けるかと思いきや、そんな曲は1曲もなし。女の子を誘って一緒に踊れたらハッピーというロック・ポップスの名曲が次から次へと出てくるという他愛のない3枚組。このCDでしか聞けないという曲はなく、要するにパーティ用のBG集。同種の企画があと2組あるが趣向は同じ。もっとも録音は結構よく、聞いていても腹の立つことはない。同種の企画ものなら、音質といい、価格といい、このシリーズを選んで損はない。

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     2014/05/30

    往時のライデル・ファンとしては、今どきAs&Bs Completeなどという触れ込みのCDが発売されるなどということは想像もつかなかっただけに、まずは発売されたこと自体に拍手しなくてはならない。選曲、録音もそれなりに凝っていて、初CD化の最初の7曲を含め、まるまる2枚のLPがそっくりボーナス・トラックに収められている(全57曲)。これまでこの手の選集になかなか収録されなかった The Door To ParadiseやGee It’s Wonderfulといった日本独自のヒット曲も含まれている。残念なのは、収録曲がCameo時代の1962年までの曲に限られていることで、それ以降 Forget Himをはじめ63、64年の2年間のビルボード・ヒット5曲については未収録である。それらには別のCD音源もあるが、それらを含めて Completeにしてくれればどんなに便利なCDになったかと思うと未練タラタラ。といっても、このCDの発売は歓迎に値するものであり、録音も聞きやすい。こういう歌声がラジオから流れた時代は本当に健康だったと今さらながら思う次第。

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     2014/03/11

    ティーレマンがSKDのシェフに就任して最初の録音ツィクルスとなったブラームス交響曲全集。いずれもライブで1,3番が東京、2,4番がドレスデンでの収録である。すべてNHKのBSで放送されたので、改めてこのDVDを買わないという人も多いだろう。SKDファンとしては、ザンデルリンク以来、久々のブラームス交響曲全集とあって、大いに期待したのだが、出来はザンデルリンク盤を超えるものではなかった。4曲のどこにも高揚感はなかったし、○番を聴くならティーレマンというアピール力もなかった。せめて、往年のSKDのサウンドの片鱗ぐらいは、という淡い期待ももちろん無いものねだりにすぎなかった(NHKホールとゼンパー・オーパー録音では最初から期待はできないが)。要するに、それほど悪くはないが、特段良くもない、という平凡な演奏に終始していたのである。こうなると、興味の焦点は、なぜこんな演奏になってしまったのか、という実に後ろ向きな観点からの話にならざるをえない(この演奏以外にも、この2年間ほど、FM放送でのティーレマンの録音を聴いても、ほとんど同じ評価になってしまうところが残念である)。察するに、ワーグナーなど長尺ものを得意にするティーレマンにとっては、作品それ自体が孕んでいるストーリーを人為的介入によって脚色しても音楽を歪めるだけだという指揮態度が強いのであろう。それはそれでわかることである。ただ、それは数時間もかかる作品の音楽表現には適切であっても“わずか”30分や40分で勝負しなければならない多くの管弦楽作品にも通用することではない。この“短い”時間のうちに、どこかで起伏ををつけ、どこかで曲の特徴をアピールしなければ、何もしないうちに曲は終わってしまうのである。ティーレマンのブラームスはまさにその典型ではないだろうか(蛇足ながら、VPOとのベートーヴェンも同じ)。この調子では、R.シュトラウスをやってもケンペを超えられないだろう。そうこうするうちに、ラトル退任後のBPOに移籍するのだろうが、私はまだこの人の名声に見合った実力を実感した覚えはない。かつてのSKDサウンドは伝説のものとなり、それを甦らせるシェフもいないのであれば、これ以上音楽に対する興味や期待は持てそうもない。★4つは少々甘い評価で、実際は3.5といったところ。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/03/11

    まぎれもなく一級品の上質な演奏。手抜かりもない。それにシューマンの愛すべき名品ながら、なかなかこの2曲を一緒に聞けない「序曲、スケルツォとフィナーレ」と「コンツェルトシュトゥック」を1CDに組み合わせたというヤルヴィの企画力にも大拍手だ。交響曲を含め、この3曲でCDにするという着想自体が優れていて、「おぬし、やるのぅ」としか言えない。4本のホルン演奏も最上級のものだ。というわけで、ここまでの評価は★5つをためらわないのだが、この演奏が好きかと問われれば若干の躊躇なしとしない。このコンビの演奏は極上の干物を食べている感じに近いからだ。それはもう、これ以上美味い干物はないのだが、いかんせん干物は干物。もっと脂ののったアジには所詮かなわないわけで。とはいえ、個人の嗜好の問題を別にすれば、このCDはシューマン・ファンなら持っていたい(いるべき)存在価値のある1枚である。

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     2014/02/25

    よくぞこんな珍盤(?)に目をつけCDにしたものだ。CAMEO-PARKWAYの看板スター2人の共演盤は後にも先にもこの1枚きり。その2人がお互いのヒット曲を歌いながらクリスマスを楽しもうという趣向の企画。聞きものは何といっても2人がモノマネで歌い上げるクリスマス・ソング集。当時の人気歌手が次から次へと…。ふーむ、やるもんだ。この人たち、本物のエンターテイナーでした。ライデルの歌うツィスト(もちろん、チャビーのカヴァー)はどこかで映像も見た記憶もあるけれど。傷だらけのLPで聞いた曲が雑音なしで蘇ったことは喜ばしいのだが、62,3年頃の録音にもかかわらず、CAMEO-PARKWAYは録音に関しては当時から後れをとっていて、これも残念ながらモノラル録音。

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     2014/02/25

    1962年半ばのボビー・ライデルのヒット曲集。といっても、この時期のライデルはビッグ・ヒットには恵まれず、このアルバムからシングル・カットされた数枚のEP盤もよほどのライデル・ファンでなければ知らないだろう渋ーーいものばかり。それだけにLPはレア盤扱いで、中古でもとてもこの価格では入手しえない。それがワン・コインで入手できるというのだから、まさに価格破壊CDもいいところ。地味な曲でも歌のうまさにかけては定評のあるライデルのこと、聞きごたえは十分にある。録音も問題なし。興味のある人にとっては実にお買い得。ビッグ・ヒットが1曲でもあれば…、とつい無いものねだりをしてしまう。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/02/20

    プウルセル生誕100年記念と銘打たれた4CD限定盤。エッフェル塔をデザインにした“Paris”と題する1枚はパリにちなんだ曲ばかりで、このプウルセルのエレガントなアルバムはLP時代から音のいい名盤だった。パリの情緒を1枚にしたプウルセルのアルバムは、ありそうで、実はこれだけしかなかった。それがCDになったのだから、この1枚だけでもう“買い”なのだが、この姉妹編ともいうべきエディット・ピアフ名曲集も申し分のない出来。3,4枚目の“コンコルド”と“宇宙のあおたか”(直訳)は趣は変わるが、プウルセル・サウンド全開。いずれも2013年のリマスターとのことで、これ以上求められない極上の演奏と音質。丁寧なオリジナル・デザインの紙ジャケ収納とも相まって、すべてに神経の行き届いたすばらしいセットに仕上がっている。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/02/14

    せっかくの演奏を耳の悪い録音スタッフがあれこれいじりまくって台無しにしてしまった残念な1枚。モーツァルトは弾けないからと尻込みしたアルヘリッチの背をアバドが押し、満を持して実現した演奏だけにその水準は高い。だが、若き日のアバドにはこの両曲ともグルダと共演したウィーン・フィル盤があって、特に20番は今もって名演の誉れ高い。モーツァルトの協奏曲に必要なのは清新さ、溌剌さであり、今回の顔合わせでは当然別の売り物を用意しなければならなかったのだが、往年の若さを凌ぐまでの出来とはならなかった。モーツァルトが相手ではアルヘリッチが危惧したとおり、老練ではカバーしきれない何かがあるということだろう。演奏に何らの瑕疵もないが、この両曲を聞くのにこの1枚を忘れては困るというほどの名演でもない。もっと問題なのは録音である。いったいどのような音響美学からこのような索漠とした音づくりになるのであろうか?モーツァルトの音楽に必要な潤いやみずみずしさをすべて取り去り、残響も極力排除した砂漠のような音。ルツェルンからの放送録音ならばFM放送ですらもっといいソースがいくらでもあるというのに、この鼻づまりのような音はせっかくの演奏を無味乾燥なものにしてしまう。この録音チームにはそういう感覚や能力がないのであろう(この手の録音が最近のDGには少なくない)。半世紀以上前のレッグ、カルショーの録音美学に基づいた名盤誕生時代に比べ、おそろしく劣化したものである(演奏=3.5、録音=3)。

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     2014/01/28

    もうずいぶん昔にCAPRICCIOからSKDの弦楽セクションによるMagical StringsというLP(C27 080)が発売されたことがあって、お楽しみLPとはいえ、その演奏、録音のすばらしさゆえ、今もって愛聴盤なのだが、これに匹敵するようなSKDならではの楽しいジルベスターはないものかと思っていたところ、ようやく2013年になってそれに近い演奏に接することができた。嬉しい限りである。これまでのオペレッタ路線ではどうしてもウィーンのFledermausには勝ち目はなかったが、今回の企画(ベルリンからニューヨークへ)はずいぶん楽しめる内容だった。前半の曲目がいい。なかなか聴けない曲が並び、SKDの演奏でリンケの「ベルリンの風」をぜひ聴いてみたいという願望もかなった(ただ、ベルリンの野外のように口笛、指笛はなかったが)。今回の主役フレミング、フォークトのガーシュイン、バーンスタインのナンバーも悪くない。サキソフォーンも登場するジャズっぽい演奏の数々を指揮するのはもちろんティーレマンなのだが、意外や意外、なかなかサマになっている。なにせジルベスターだ、ワーグナーだけじゃないぞ、というお楽しみがこの人の指揮にあってもいい。ニヤニヤしているうちに90分が過ぎてしまう。昨年はSKDファンであっても、この人のブラームスにはイマイチどうにも、という思いが残ったが、このジルベスターでは指揮台を降りての指揮やら、そこでの会場を見渡す挨拶など、だんだん風格が滲み出てきた風でもあり、ドレスデンの聴衆、オーケストラとも関係は良好なようだ。その自信をぜひとも次からの録音に活かしてほしいし、ケンペのワルツ集を超えるアルバムにもぜひ挑戦してほしいと願うばかりである。

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     2014/01/24

    この愛すべきシリーズのすばらしさについては1962年版のコメントで詳述したので繰り返さない。そこで書いたことはこの61年版でも当然同じである。1年につき107曲のヒット曲(ビルボード・チャート10位以内)が聞ける企画など、そうそうあるものではない。そういうこだわりのCDであるだけに、これはどうしたことだ!という1曲があったので指摘しないわけにはいかない。問題の曲はCD2の26曲目、ポール・アンカの「涙のダンス」である。61年7月にチャート10位になったこの曲がこうしたコンピレーションに登場するのは珍しいので、さすがの企画力と思わせたが、出てきた音は当時ヒットしたABCパラマウント盤のそれではなく、彼が62年にRCAに移籍した直後に吹き込みなおしたLPからの収録曲だった。もちろん、このRCA盤も魅力に溢れ、歌のうまさもきわだっている。よくある安物の思い出のポップスとでもいうCDならばこれで何も文句はない。しかし、1曲ごとに解説のつく資料的価値も有するこのCDの場合、それは許されないであろう。当時は存在していなかった曲が収録されているのだから。どうでもいいことじゃないかと言われる方もいるだろうが、信頼すべきアルバムの画竜点睛を欠くだけに残念至極である。もちろん、そのことによって、このCDのすばらしさを損なうことにはつながらないが。

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     2014/01/22

     これまで知らなかったイギリスのAcrobatというレーベルだが、60年代前半のヒットポップス・ファンならば、発売CDの全貌を知るや、これはただごとでないこだわりのレーベルであることに気がつくはずである。とりわけ、お国物のブリティッシュ・ポップスへの執念ともいえるこだわりようは類を見ない。ともかく、盤面のABを問わず、録音されていたものはすべて掻き集めようという気迫にはすさまじさすらただよう。イギリス人の最大の趣味は“カタログづくり”といわれるが、このレーベルの目指すものはまさにその実証。すごいレーベルが出てきたものだ。
     ブリティッシュ・ポップス同様、アメリカン・ポップスについても50年代以降、各年のアンソロジーがあるようだが(欠落年多し)、さすがにB面曲集成というキワモノはないようだ。とはいえ、カタログの気迫に押されて、今回たまたま1961,62年のアメリカン・ポップスのアルバムを買ってみた。ともに4枚組で、収録曲数もそれぞれ優に100曲を超す。わが国でよく出る60年代ポップス20曲かそこら、というおふざけCDとはそもそも企画力が違うのだ。といっても、収録曲に特段の色めき立つものがあるわけではないし、新たなステレオ録音の発掘などというお楽しみも残念ながら皆無(モノラル録音のあるものは、とにかくモノラル収録)。それでも、同種の海外盤企画CDよりも優れているのは Billboardの10位以内曲に焦点を定め、それらをヒット時期順に収録していること。多くの当時のポップス・ファンならば「あの曲を聞いたのは××年の秋だったなぁ」というような感慨をもっているものだが、このCDはまさしくそのような気持に応えてくれる。ありそうだが、なかなかこういう編集には出くわさない。4枚組のCDということになれば、四季折々のヒット曲という聞き方もできる(ただし、当時の日本でのヒット時期はアメリカよりほぼワン・シーズン遅れであったが)。
     素材に何も付け加えない、曲順にも時の流れ以外の要素は加えないというのは、実は大きな見識である。それが1年につき100曲以上(61年107曲、62年114曲)聞けるというのであれば、こんな便利なCDはなく、もう思い出の扉を開けるしかないだろう。録音は実に良好。いつもはステレオで聞く曲もモノラルという新鮮さ(?)を味わえる。さらに驚くべきなのは、収録曲すべてについてのデータとコメントを記した立派な解説書が付いていること。やはり、これはただごとではないこだわりをもったレーベルのなせる業なのだろうと思うばかりである(61年最後のCDと62年最初のCDで重複する曲があるのも好意的に受けとりたくなる)。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/12/28

    Norrie Paramorには“in London in Love”と“Autumn”というともにCapitalから発売されたLPの2in1CDがあって、この切なくも美しいメロディ集を聞くと心がかきむしられるようなやるせなさに襲われる。柳の下の2匹目のドジョウを探すと、数枚のLPがあるにあるが、選曲、録音ともに難があって、なかなかこれはというものが見当たらない。たまたま探したこのCDは戦前アメリカのミュージカルで用いられたスタンダード・ナンバー集という趣向の12曲。HALLMARKという玉石混交廉価レーベルのことゆえ、音が出るまでは心配だったが、これは当たりだったようだ。この手の初期ムード音楽にありがちな弦のすさんだ高音に滅入ることもないし(もともとの録音が優れていたのだろう)、全曲とてもソフトなステレオ・サウンドで1961年の初発とは思えないいい出来にほれぼれとする。この録音ではParamorサウンドお馴染みのソプラノ・スキャットはなく、オーケストラのみの演奏。余談だが、1曲目のMy Heart Singsは59年にポール・アンカが歌い、ビルボード15位にランクされた曲。初期の彼の歌では“ダイアナ”や“君はわが運命”などの大ヒットよりよほどいい歌だと思っていたが、戦前からのスタンダード名曲ということをこのParamor盤を聞いてはじめて知った次第。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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