「極辛口アランフェスで覚醒」
2009年8月3日 (月)
連載 許光俊の言いたい放題 第167回「極辛口アランフェスで覚醒」
夏に聴く音楽というと、これはもうギターでキマリ。今年もまもなく東京のHAKUJU HALLでは、HAKUJU ギター・フェスタ2009というのが始まる。日本を代表するギタリストたちが集い、ゲストも迎えて、何日にもわたってさまざまなプログラムを演奏するのだ。今年はニーノ・ロータの映画音楽をいくつもやるらしいが、酷暑の折、くつろいで聴けて楽しそうだ。
ところで、このフェスタにも登場する荘村清志が、アランフェス協奏曲の録音を少し前に出している。有名になって日も長い彼にとって、これがこの曲の初めての録音というのは意外だ。
さあて、どんな演奏か。これが並々ならぬ個性的なものなのだ。特に第2楽章。「なんだ、この克明さは?」と驚くほど、超緻密なのである。たとえていうなら、今までよく知っていた人間を、突然ルーペで拡大して見ているような感じ。細部のリアリティをひとつひとつ教えてもらうような演奏。情報量がすごい。ハイパーリアルなCGでも眺めている気分だ。「こんな曲だったっけ?」と思いながら聴いた。音の粒がきわめて明快で、楽譜や指の動きが目に見えるようである。微細な表現を特徴とするミニアチュール的美と言ってもよい。この演奏に耳が慣れてしまうと、他の演奏を受け付けられなくなるかもしれない。一般的には濃厚な情緒に浸るがごとき演奏が愛されるのだろうけれど、この極辛口、この曲が好きな人なら一聴しておくべきだろう。全然ボンヤリさせてくれません。
伴奏を務めるのは、スペインのビルバオ交響楽団だが、ほとんど違う音楽ではないかというほど、密度感が違う。とはいえ、このオーケストラ、決しておおざっぱで大味というものではなく(それはそれで楽しいのだけれど)、意外に着実なのである。異常なのはギターのほうなのである。
数ヶ月前、拙著『クラシックを聴け!』が文庫化されたら、どっと売れた。で、次に『オペラに連れてって!』も文庫になった。どちらも前より千円安くなっているが、1680円が630円になると、こんなに反応があるものかと驚かされた。このHMVのサイトでも、かつて名盤、名演奏と呼ばれたものが、安くなった途端に大量に売れたりするようだ。メンゲルベルクの『マタイ受難曲』など最たるものだろう。昨今は激安レーベルだけでなく、DGのセットも安い。私もこの前、ケンプが弾くシューベルトのピアノ・ソナタ全集を買った。シューベルトもまた、暑いさなかにタラタラとした気分で聴いても悪くない作曲家である。ことにケンプの場合、しみじみ味で聴かせるタイプなのでなおさらだ。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学教授)
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