フラリーパッド 『京風』発売記念インタビュー
2008年5月20日 (火)
ウクレレ前田大輔、ギター清水英之が2005年に結成した京都発popインストユニット fulare_pad(フラリーパッド)。
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フラリーパッド/京風
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--- では、簡単にプロフィールから。フラリーパッドという名前はどういう意味なんですか? fulare_pad/清水(以下、清水) フラリーパッドという名前は僕たちの造語なんです。フラリーは“ふらり”、つまりふらり歩くとか、ふらふらするとかっていう言葉と、パッドというのはてくてく歩くという英語のpadを合わせて、のんびり歩いていこう、って意味でつけたんです。まあぼちぼち行こうや、みたいなそういうイメージで。 --- そうだったんですか。てっきりウクレレとギターだからハワイのフラから来てるのかなと思ってました。
fulare_pad/前田(以下、前田) あとで知ったんですけど、ハワイ語でも“フラリ“って言葉があるんですよ。ハワイ語では”f”はなくて“h”で始まるんですが、「輝く道」って意味なんだそうです。なんかいいですよね、輝く道って希望、とか夢ってイメージもあるし、それに向かって、てくてく、のんびり歩いていこう、っていう感じがして。 --- なんかすごくロマンチックな言葉ですよね。フラリーパッド結成のきっかけは? 清水 僕ら小学校からの幼馴なじみなんですよ。で、13歳の頃にお互いギターを始めたのが音楽的なきっかけです。二人ともでギター小僧でしたよ。スコア譜やら当時流行ってたいろんな曲を練習して…ジュン・スカイウォーカーとかユニコーンとかが流行ってたんで、そういうのを教えあったり弾きあったりして(笑)。でも別々の学校になってしまって、それからしばらくはお互い忙しくて…再会したのは学校卒業後ですね。 前田そう、僕がハワイアンのバンドを組んでて、そのライブに彼が来てくれたんです。まずはそれがフラリーパッドのきっかけですね。じゃあふたりで何かやろうよ、ってことになって僕はハワイアンやウクレレを、そして彼はジャズ・ギターやいろんなスタイルを経て、じゃあインストでアコースティック・ギターとウクレレのデュオにしよう、って意気投合して。意外にないんですよ、アコギとウクレレのデュオって。ライブなんかでセッションではありますけど、ユニットとしてそのスタイルを貫いてるのは珍しいかなって。 ---
そういえば確かに珍しいですね。ギターデュオならゴンチチさん、押尾さんが確かジェイク・シマブクロさんと数曲コラボ参加というのはあったけど。 前田 はじめは京都のカフェや路上ライブをやってたんですね。で、そこにたまたま京都テレビのプロデューサーの方がたまたま通りかかって僕らのライブを聴いて下さったんですよ。で、すごく僕らのサウンドを気に入って頂けて、「ええやん、いっぺんテレビに出て見いや」ってお誘い頂いたのがすごく嬉しくて今も印象に残ってます。 清水 うん、その一言がきっかけでどんどんいろんな方たちに興味もってもらえるようになったしね。レコード会社はじめCMタイアップのお話も頂いて、こうしてフル・アルバム完成が実現しました。ライブでは、グラミー最優秀ハワイ音楽アルバムを3年連続で受賞されたダニエル・ホーさんのオープニング・アクトなんかでも呼んで頂き、いろんな場所でライブする機会も増えましたね。 --- なるほど。早くもCMタイアップや、コンピレーションなんかでも取り上げられたり、まさに急成長なお二人なんですが、さて、いよいよその待望のメジャーデビュー第1弾のアルバム「京風」についてなんですが、こちらのアルバムはどういったコンセプトなんでしょうか? 清水 ポップス、ジャズ、ハワイアンなど色んなジャンルを経て、自分たちのオリジナルなサウンドを伝える第一歩として、生まれ育った自分の街をテーマに作りました。 前田 僕らのホームタウンである京都をイメージして作ってます。ウクレレが入るとどうしても南国とかハワイアンのイメージしがちなんですけど、そういう固定イメージにとらわれない、1つの楽器でいろんな表現ができる、ってことを知ってもらえたらという思いもこもってます。 --- いま、楽器やジャンルのイメージのお話がありましたけど、そういう意味では京都のイメージも確かに固定された部分ってあるかも知れないですよね。名所やお寺とか、観光客が訪れる場所のイメージって、お琴と獅子おどしの竹と水の音に「おおきに」ってはんなり笑う舞妓さんがいて…みたいな(笑)。 清水 お琴が似合う場所は京都には確かにいっぱいあるし、舞妓さんのイメージもうなずけるんですけど、メインストリートからはずれるとふと川縁の風景があったり…京都って、ずっと昔からあるものと新しいものが当たり前にあるというか、お互いうまく共存してる街だなって思うんです。昔は当たり前で気づかなかったけど、古いもののスペースはちゃんとあって、その横にはすごく雰囲気のあるカフェ・スペースがあって。カフェや路上で演奏してると気づくんですよね。こういう感覚が“京風”やなーって。せつないような懐かしいような、素朴な佇まいなんですよ。そういう季節感とか空気感を表現できたらな、って。 前田 実はウクレレの音域って和の音楽にも通じるものがあるんですよ。音も琴の音色にすごく似ている部分もあったりして…。路地裏の、ふわっと吹くあの京都独特のちょっと蒸したような夏の隙間かぜに感じる、潮風みたいなちょっと生あったかい風の感じが、ウクレレ本来の南国イメージと琴にも通じる共通点があると思うんです。それがうまく作用して、風の温度みたいなものが表現できればな、なんて思ってます。--- せつなくて懐かしいっていうの、すごくよくわかる気がします。そういう感覚って、アコースティックなサウンドで表現するのにぴったりですよね。さて、そんなフラリーパッドの音楽をジャンルで一言で表現するとしたら、どんな言葉がいいでしょうか? 清水 ふだん僕が音楽を聴く時、本当にいろんなジャンルの音楽を聴くんですよ。ジャズのビル・エバンスだったり、チャーリー・パーカーとか、あとボサノバやハワイアン…、とにかく何でも聴く。どれも持ち味がそれぞれに違ってて好きで、自分たちの音楽に関してはそういうひとつのジャンルを意識して作るというよりも、身の周りにある日常とかその時感じた心象なんかを表現できて、聴いてもらって共感できるような、気持ちのいい音楽、かな。 前田 最初からスタイルを決めてやるというより、時と場所によって聴きたい音楽もジャンルも変化するみたいに、その場面場面のシチュエーションや日常の風景にしっくり来るような音楽、かな。 --- なるほど。確かに今ではジャンルで一括りにできない音楽が沢山ありますよね。既存のジャンルで言いかえるのではなくて、これからはアーティストが自分の音楽でジャンルを提案する時代かもしれません。最初のお話にあった、“フラリーパッド” という名前の由来にも通じるものがありますね。さて、そんなアルバムの聴きどころ、またはオススメは…。 清水 今回、オリジナル曲を8曲収録したんですが、そのなかの「サマー・シュプール」はフラリーパッドのテーマ・ソング的な曲で、CMにも使って頂いてる曲なんですが、これから夏に向けてぴったりな曲だと思うので、ぜひ聴いて頂けたらと思います。 前田ふだんのライブではあまりカバー曲ってやることが殆どなかったんですけど、今回5曲のカバー曲を収録してます。ギターとウクレレのスタイルに、さらにアルバムとしてアレンジを加えたことで、より一層それぞれの楽器のオイシイところと、原曲の良さが惹き出せたんじゃないかなと思います。こちらもぜひオススメしたいです。
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