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baroque mania さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/03/13

    絶賛に値する名演です。特に素晴らしいのがクセルクセスの弟アルサメネス役でカウンターテノールのクリストファー・ロブソン。演奏技術的には彼以上の歌手はたくさんいます。ショルやジャルウスキーやベジュン・メータや最近ではファジョッリのように。しかし、ロブソンのようにトランペットのような輝かしい音色と声の厚み、そして演技力で今までこれほど深く私を魅了した歌手はいません。最初の登場した瞬間からまさに千両役者で、聴衆の熱狂ぶりが伝わってきます。さらに他の女性歌手もタイトルロールを歌ったアン・マレイ、アルサメネスの恋人ロミルダ役ヴァレリー・マスターソン、その妹アタランタ役のレズリー・ギャレット、さらにクセルクセスの妃アマストレ役のジーン・リグビーと現在では皆往年の名歌手ですが各々第一級の美人歌手揃いです。約30年前の映像なので画質が今ほどよくないですが、それを補って余るものがこれにはあります。ストーリーはロミルダと妹のアタランタを巡ってクセルクセス王と弟アルサメネスが恋のさや当てをするというコミカルなものでヘンデル唯一のコミックオペラですが、冒頭に有名なアリア”オンブラマイフ”が歌われます。以前のこのバージョンは録画形式がPAL方式で通常のDVDプレイヤーでは再生できず、また原作の伊語を英国の聴衆のために英語版に吹き替えて歌われているにかかわらず英語の字幕がないといった欠点がこの版では録画形式をリージョンフリーとし、英語伊語両方の字幕を加えて改善されています。原作通りイタリア語版であれば最高だったのですが、それでも全曲収録されており現在この作品は市販されている中で一番良いと思います。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/08/24

    実にすばらしい作品で、ポルポラの才能を存分に示している。一言で言えば「イタリア的流麗な音の流れ」とでも表現できようか。切れ味のある浮き立つようなアリアと深く哀愁を帯びたアリアの対比が耳に心地よい。これこそイタリア修業時代にヘンデルが貪欲に習得したものだと思う。ロンドンに先に渡ったオペラ作曲家ヘンデルにとって後からきたポルポラは強力なライバルとして目に映ったことだろう。伴奏はテンポも的確で歌手3人もきわめて水準が高く申し分ないものです。これをきっかけにポルポラの他の作品も聴いてみたいところです。

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     2014/08/23

    あまり有名ではないが、ジュゼッペ・スカルラッティという18世紀の作曲家による作品です。名前から想像して、多分有名なスカルラッティ父子の遠縁に当たるのかも知れません。アリアの出来映えについてはモーツァルトやペルゴレージのオペラブッファと比べると少し劣るかも知れませんが、聴いて不満を感じることは全くなく十分楽しめます。商品紹介にあるとおりチェコのクルムロフ城主のためのバロック劇場を修復したもので小ぶりながら大変美しい劇場です。書き割りと仕掛けはバロック様式ですが、衣装及び演出はバロックというよりもロココ風の雰囲気で映像はシャープで目を奪われるほどです。いわゆるコミックオペラで演奏時間も1時間半と短いので肩肘凝らずに楽しめる上に、私のように現代的な演出には不満で古典的な演出を好む者には満足できる作品です。主要な登場歌手4人については自国チェコ出身であろうと思われますが、その力量は全て合格点を与えても良く西側の歌手に十分肩を並べる程でレベルが高いです。元々、中欧地域の歌手や演奏家は私たちが想像するよりも遙かにレベルが高い事を再認識させられました。個人的には伯爵夫人の侍女ヴェスペッタ役のカテリーナ・ネジコヴァを以前からヘンデルのオペラやオラトリオで聴いてその力量を知っていたので購入したのですが、実際観たところ映像がこれほどすばらしいとは思いませんでした。また、コミカルなストーリーに日本語字幕が付いていますのですぐ理解できます。ペルゴレージの奥様女中のような作品が好きな人には買って損はしない一押しの作品です。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/09/08

    YOU TUBEを見て大変気に入ったのでCDを聴きさらにこのDVDを購入したのだが期待外れ。映像があまりにも粗すぎて長時間観るには耐えられない。舞台演出及び歌手が共に優れていることから、よけいに映像の粗さが惜しまれる。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/01/05

    第一級の歌手及びオーケストラ共にすばらしい演奏です。タイトルロールを歌ったチェンチッチの他ゴーヴァン、レージネヴァいずれも評判通りで耳を十分楽しませてくれます。また、オケについては、よく訓練されて音が揃っているため、時折みられるような古楽に関して未熟な演奏ではありません。指揮者ペトルの経歴についてはよく知りませんが、各楽曲で採用した的確なテンポとアーティキュレーションにその非凡さを示しています。指揮者の才能はその採用するテンポに現れると日頃から感じています。往々にして指揮者は劇的効果を出そうとして早いテンポとゆったりしたテンポとの間に極端な差を付けたがる傾向がありますが、これは全く逆効果で両者の間には頭で考えるほど速度の差はありません。ペトルはよく分かっており聴いたときに最も心地よく聞こえるテンポを採用しているので、聴いてて本当に気持ちがいい。なおチェンチッチは今大変人気のカウンターテナーですが、歌唱力については残念ながら絶賛するまでには至らないというのが正直な感想です。理由は、その声の輝かしさにも拘わらず正確さの点で音程と音価が両方共に微妙にずれているため、特に器楽曲的パッセージで弱点となっており、非常に惜しまれます。総合的にはヘンデルの多彩なアリアを配した楽しい作品です。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/01/02

    ナポリ楽派の作曲家ヴィンチの作品は初めて聴きましたが、なかなか良い作品です。パルテーノペ役のソニアプリナやロズミーラ役のスキヤーヴォは外の作品でよく知っている歌手なのでハズレはないと思って購入しました。直接のきっかけは、YOU TUBEでこのライブ公演がアップロードされており、衣装と舞台の美しさに目が眩んでしまったことです。まるでファッションショーの様な18世紀前半頃を連想させる美しいコスチュームと舞台セットを観るだけでも目の保養になります。その時のライブ公演を収録したCDですから映像はありませんが、この映像を想像しながら聴いています。どちらかと言えば男声陣よりも女声陣の方が出来がいいです。深刻なドラマではなくナポリ派に特有の愉悦と快楽を追求した作品で、超絶技巧を要求されるアリアはありませんが、気の利いたアリアがたくさん有り、十分耳を楽しませてくれます。いつかこのライブ公演をDVDにしてくれないかと心待ちにしています。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/03/18

    ヘンデルのチェンバロ組曲集は多くの演奏家が録音しているが、このバージョンは率直に言って涙が出るほどすばらしいものです。バロックの器楽演奏法をこれほど見事に体現し得た演奏はめったにないと思われます。音質も良く一押しです。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/02/10

    3〜4年前に購入してレビューに記載したのですが、いつのまにか削除されていたのでその時の内容を思い出しながら改めて投稿します。他の方も評価されていますが、パパゲーノ役のロートの発声法がすばらしい。容姿が万人受けしないかもしれませんが、歌唱力はきわめて高いです。パパパのアリアの場面は、当時のYOU TUBEではアクセス件数が1万件にも達していなかったのが今では80万件を突破しており、クラシックとしては驚異的な件数です。そして舞台上のセットも奇を衒ったところがなく場面転換もすばやく、幻想的であったり詩的であったりと変化に富んでいます。衣装も大変美しい。但し、夜の女王の衣装ははもう少し凝ったものにした方が良かったと思います。夜の女王のランカトーレは適役ではなかったかもしれないがベッツアーラとともに声質と歌唱力は大変良い。オーケストラのテンポもモーツアルトのテンポとしては適切で疑問を感じた箇所はありません。それにしてもこのバージョンはYOU TUBEのアクセス件数からすれば世界的には非常に高く評価されているではないでしょうか。日本では他のバージョンに比較して不当に評価が低いのではないかと思います。前回四つ星としましたが今回あえて五つ星とします。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/09/16

    ヘンデルが20歳代前半で作曲したこのオラトリオはメサイアとかソロモン、エジプトのイスラエル人といった作品ほど有名ではないが、たいへんすばらしい作品で、霊感みなぎるヘンデルの才能を感じさせる。また、ハイレベルの歌手4人を揃えたこの演奏は一級の出来映えですばらしい。指揮者のエマニュエル・ハイムはフランス人女性だが、各楽曲において採用されたテンポを注意深く聴いても疑問を感じた箇所はなく、器楽伴奏のアーティキュレーションにおいても決して奇をてらったりしない。イタリア的な流麗な音の流れや官能性といったヘンデル作品の特質というものをよく理解しており、並々ならぬ才能を感じる。歌手についてはまず、ソプラノのデセイはバロックからロマン派までの幅広いレパートリーをこなす過去のキャリアに裏打ちされた高い技量を持っており、有名な4重唱のところでも並の歌手ではなかなか歌えない難易度の高いパッセージにおいても聴く者を唸らせる力量を示している。メゾソプラノのハレンベリは元来バロックは最も得意としている歌手であり、芸術的なアーティキュレーションによる歌唱を聴かせてくれた。コントラルトのソニア・プリナはその魅力的で中性的な声の故に一番好きな歌手であるが、技巧的なパッセージも決して聞き手に不安を与えることなくその声質と高い技術でもって私の心を深く魅了した。テノールのブレスリクはそれ程知名度のある歌手ではないが、特に欠点もなく他の力量ある3人の歌手に聴き劣りすることはなかった。ただ声にもう少し艶とハリがあればもっと良かったかもしれない。この時の録音の状況は、YOU TUBEで4重唱の映像がアップロードされていたが、何と4人の楽しそうなことか。歌手にとって歌うこと以上の喜びはないのだと感じさせる場面である。できればこの映像をボーナスDVDとして1枚付けてくれていれば最高だったと思う。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/14

    この演奏は真に絶賛に値するものです。役者、歌手及びダンサー各々がその実力を存分に発揮しており、実に違和感なく溶け合っている。演出も大変優れており、コメディ・バレーでありながら気品と美しさを備えた舞台になっている。喜劇にありがちな、どたばた劇で無理に笑いを取ろうとするところが少しもなく、例えばダンサーのコミカルな動きの中に何ともいえない可笑しさがこみ上げてくる。17世紀当時の舞台の再現がどの程度成功したのかはわからないけれども、問題はそこではなく、現代に生きるわれわれにとって真に美しい舞台となっているかどうかではないだろうか。私は躊躇なく優れた公演であると感じた。役者の台詞の言い回しや所作が大仰すぎるとの批判もあるようだが、例えば歌舞伎における見栄を切る場面の方が遙かに大げさで、よほどの通でなければ何を唸っているのかわからないし、多くのファンを有するロマン派のイタリアオペラなどでも歌手が大きな声量で歌うアリアはイタリア人ですらオペラ通でなければ歌詞は聴き取れないと思う。いずれにしてもこの演出は無駄な動きを排除した役者の美しい所作、バロックの音楽語法に精通した歌手の発声法、そして宮廷バレーの素養があるダンサーの洗練された身体能力、この三者が各々見せ場を持ちながらも、時に見分けがつかなくなるぐらい見事に融合した結果もたらされた美しさである。よくありがちな卑俗な舞台では決してない。この公演が欧州各地で好評を博したのも十分にうなずける。また、音楽悲劇でその独創性を発揮したリュリがこのようなコメディ風の作品を書いたことは作曲家としての実力を示すものである。映像はシャープで音質も良いので、バロックオペラに関心のある人は是非観ることをお奨めします。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/14

    すばらしい演奏です。ライブであれば臨場感があってもっと良かったのですが。特にミヤノヴィッチの歌唱力は優れている。30年以上前の絶頂期を過ぎたサザーランドの演奏よりも格段にいい。カーティスの指揮も熟練しておりテンポも的確で申し分ないもので、音質もきれいです。一押しといっていい。将来は誰か良い演出家(例えばハンペとか)との組み合わせでライブ演奏のDVDが出ないものかと思っています。この作品はヘンデルのオペラの中でも最高傑作であり、これほど霊感あふれるアリアが次から次へと出てくる作品は他にはない。最も円熟したで創造力あふれる時期に書かれたもので、アリアの多彩さとその出来映えの見事さには唯々感嘆するのみです。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/04/17

    ポネルの演出、アーノンクールの指揮によるDVDを既に聴いていたのでそれとの比較で言うならば、歌手陣は皆かなり高い水準だと思う。さらにCDの音質が良い上に省略場面がなく全曲録音であるのも長所といってよい。伴奏については大きな欠点もなく全体としては悪くはない。ただし、いくつかの場面における、歌手の表現力や指揮者ガリードの採用する演奏テンポについては、アーノンクール版の演奏の方が優れている。例えば、@王妃オッタヴィアの嘆きのあと乳母のヌトリーチェが励ます場面でのレシタティーヴォアコンパニャート(叙唱)の表現力の弱さと途中での不必要なテンポの変化、Aセネカとネローネが激しく言い争う場面での二人の同じく途中から激しいレシタティーヴォアコンパニャートに変わるところでの早すぎるテンポ(言葉が聴き取れなくなることから却って劇的表現力を損なう)、Bネローネとポッペアの2回目の愛の場面でネローネがポッペアにローマを与えようとアリオーソを歌う場面での早すぎるテンポ(ここは聴かせ所の一つであった)、Cセネカの友人(弟子か?)の一人が若い女性に求愛するコメディ場面でのわずかに早すぎるテンポ(小躍りするようなテンポといわゆる早いテンポは違う)、Dオッタヴィアがオットーネに対しポッペアの殺害を命じる怖い場面における一定しない速度と表現力の弱さ等が指摘できる。又、これらとは違うが終局の有名な二重唱については、二人の声質が似通っているのがマイナスに作用しているし、二人とも息が続かないようで聴いていてつらくなり宣伝文句とはかなり異なる。他にもあるがいずれにしても、歌手の表現力(声の強さとかバロックの音楽語法に対するセンス)において、特に各場面での速度については、アーノンクール版は遅すぎず速すぎず絶妙であり劇的かつ芸術的です。一方ガリードの採用したテンポについて言うならば、演奏効果を狙うあまり、ゆったりしたテンポと早めのテンポとの差をつけすぎていることから逆に劇的効果を損なってしまったと考える。速度の差をつけることで劇的効果を出そうという素朴かつ本能的な誘惑から逃れきれなかったのかもしれない。これは他のあらゆるオペラにも当てはまることである。当時の楽譜(写譜)にはおそらく速度記号など全く書かれてはいないはず。後の時代の楽譜の考証に基づいて試行錯誤の中から速度を決定するものと思う。概ね1960年代までの演奏速度は遅すぎるものが多く、70年代以降の演奏の中には時々速すぎるものがあり、バロックに限らず古典派でも適切な速度を決定することは極めて難しい。ただ、私の考えるところは例えばアンダンテやアレグロと言ってもよく知られているようにその中には種々の中間的な速度があり、両者の速度の間には頭で考えるほど差はない。アンダンテをほんのわずか早めるだけで人間の聴覚にはかなり速い速度に感じるのであり、このことを無視すると却って声楽における(器楽においても)劇的効果を損ねてしまうではないだろうか。アレグロといってもいわゆる快速にではなくわずかに遅めの速度で決然とした演奏を要求される場面も多いと思う。あれこれ書いたけれども演奏速度は極めて重要であり、これを誤るとその作品全体を台無しにしてしまう危険性があることから、演奏家特に指揮者には速度のもたらす効果について常に熟考してもらいたいといつも思うところです。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/04/15

    カウンターテナーにも例えばショル、ザッゾ、C・ロブソン、コワルスキ、F・ミニアッチさらに若手ではジャルウスキー等ミステリアスな声から輝かしい声、宗教曲に向いているピュアな声、さらにコロラテューラまでさまざまな種類があるが、B.メータの声は輝かしく、しなやかで艶があり、高い音域から中音域までむらなく出せる大変魅力的な声で、ヘンデルのオペラアリアに良くマッチしている。テクニックも精確でアーティキュレーションも天性のセンスを示しており十分満足できる久しぶりにすばらしい歌手を聴いた。ヘンデルのオペラアリアの中には大変技巧的なものがあり、聴衆の心を一瞬でとらえて離さないような完璧かつ芸術的な演奏ができる歌手は今まで聴いた中でも数えるほどしかいなかった。メータは多分その中の一人に入るであろうと思う。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/01/29

    以前に映像なしで音楽だけは複数の演奏家で聞いていましたが、今回初めて映像を見て感じることは、真に驚くべき作品であり、古典派以前において言葉と音楽とがこれほど見事に融合した劇的な作品を私は知りません。西洋音楽史上最初にオペラ様式を確立した革命的作曲家の名に恥じないもので、ヘンデルやグルックやモーツアルトといえどもこの作品の前には膝を屈するのではないかと思われます。この様式こそワーグナーに至るまでの約200年間に亘って西洋のオペラ様式を支配した事を再認識させられました。劇音楽に対する周到な構想と多くの宗教曲やマドリガルで普段に技術を磨いてきたたまものでしょう。他のレビュアーの方の指摘にもあるとおりポネルの演出は大変すばらしい。約30年前の映像で幾分シャープさに欠けるけれども、アーノンクールの熟練した解釈は的確でテンポも適切です。舞台装置がやや重厚すぎると思われますが、各場面はユニークで変化に富んでおり聴衆を飽きさせない。また、歌手の卓越した歌と演技力には舌を巻くほどです。ネローネ役のタピー、ポッペア役のヤカール以上に乳母役の歌手オリヴァー、ミネットさらにオッタヴィア役のシュミットなど。例外はオットーネ役のエスウッド(カウンターテナー)で非力で訴える力が弱いように感じました。いずれにしても、オペラ好きの人は是非この作品を知るべきです。なぜならこの作品中にアリアはただの一つとしてあるわけではない。レシタティーボ(叙唱)とアリオーソらしきものだけにもかかわらず何故これほどの劇的表現力を有しているのか。要するに歌詞と音楽とのこれ以上ない程の融合というに尽きる。決してアリアの多少とか善し悪しがそのオペラ作品の評価を決定するものではないということです。現代の聴衆はあまりにアリアにとらわれすぎて音楽劇のあるべき姿を見失っているように感じます。

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     2010/02/11

    以前にクリストフ・ルセ指揮のドレスデンでのライブ公演を収録したDVDを
    観て演出の美しさには魅了されたものの、歌手の方が悪くはないがもう少しという感が否めなかった。97年録音のこれを聴いてみて、ほとんどが絶頂期を過ぎた歌手ばかりではあるが、間違いなく全体的にこちらの歌手の方が一ランク上だと言える。セルセ役のアン・マレイは若干ヴィヴラートがかかって音程が不安定ではあるが、高音域、中音域ともにきちんと出ている上に音色も艶があり十分鑑賞に堪えうる。アルサメーネ役のイヴォンヌ・ケニーはその実力を遺憾なく発揮しており、安定感から終始安心して聴くことができた。張りがあり音色も輝かしくテクニックもすばらしいものがある。
    妹のアタランタ役のジュリー・カウフマンは今回初めて聴いたので、何らの
    先入観も持っていなかったが、中性的で艶のある音色、高音域中音域での完璧なテクニック等すばらしい歌手であることがわかった。今回一番期待していたのは、アルサメーネ役のクリストファー・ロブソン(CT)であったが
    80年代に収録されたイギリス国立オペラでのライブ演奏(英語版)と比較すると残念ながら若干声の衰えが否めない。当時の演奏をハイライトシーンで観たが、まさに千両役者といった感じで、官能的で魅力的かつ驚異的な輝かしさを有する声である。しかし衰えたとはいえまだ十分な魅力を放っている。聴いたことのない人は一度聴かれることをお勧めします。オーケストラについては、冒頭のドレスデン版のDVDと甲乙つけがたい程よい演奏であるが、テンポについて特にアレグロやアレグロ・アンダンテの速度記号のアリアの伴奏が速すぎる点に指揮者のヴォルトンに対して強い不満を感じる。例えば第1幕の第13場面のアマストレのアリアとか第3幕の第9場面のアルサメーネとロミルダの二重唱のところなど最高のの聴かせどころだったのに、速すぎるテンポのために台無しにしている。二重唱のところは正当な演奏ならば熱狂的な拍手で終わるはずであるが、聴衆も幾分困惑気味に拍手している。これさえなかったら文句なく五つ星を与えるほど全体としてすばらしい演奏です。

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