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2013/11/05
C.ハスキルやL.クラウス等に続く女流モーツァルト弾きとしてI.ヘブラーはモーツァルト作品の独奏曲、協奏曲集を録音完結しております。ここではピアノソナタ集について触れますが周知の通り彼女は二度全集を収録するという偉業を達成しており旧は1963〜1967年37〜41歳(生年1926年説による年齢、1929年説も有るそうです)そして新は1986〜1991年60〜65歳(前記同様)の頃のものです。先輩ハスキルの時に零す脆さ、クラウスの躍動感と比べてヘブラーの演奏は一音一音丁寧で柔らかく暖かい音色からもたらされるその演奏はやはり先輩が東欧系でありウィーン出身の彼女との違いが多分にあると思います。その穏やかな演奏というか大体容姿からしてセカセカしない感じがして演奏そのものにも反映している様な気にさせてくれたものです。モーツァルトの曲自体に深さを視る向きには彼女の演奏にそこまで接点を見出せるかは別として、彼女は1952年のジュネーブ国際音楽コンクールで田中希代子(懐かしいピアニストです・・・)と賞を分かち合ったとかで・・・概ねそんな世代の演奏家だということです。私は旧盤時代は何故か彼女の優雅なロココ調な演奏スタイルに反発を覚えていました。何か問題意識がないような上辺だけの演奏に受け取った時代もありました。さて、旧録音から二十数年後再録された新録音である本盤は当初単品バラで販売されていたものが現在HMVカタログには全集以外には売れ筋の「トルコ行進曲付き」ソナタを含んだCDしかないのは各レコード会社が過去の演奏家の録音分は何枚かのセット物で売り出し商品価値余命を図っている感じがし価格はともかくちょっとこうした何でもセット企画物に私自身は余程の特定ファンアーティストでないと同演奏者収録分では聴き飽きする場合があるので用心・・・。さて、両端楽章は概ね旧より若干速く、中間楽章を逆に遅めに採った演奏で楷書的な運びの中にも演奏する方も聴く方も年齢を経ただけ「味わい」が出て来たのかなと自己満足しております。しょう。本盤リリース会社からは別にピリス演奏盤もほぼ併行した形となってそれだけにHMVレビューにも載っていますように会社スタッフとしては注力したことでしょう。録音もマァマァでありますから一般的には最高ランクであります。旧新モーツァルト・ピアノソナタ集の演奏タイムを比してデータ資料に供しておきますのでご参考下さい。第1番K279(トータルタイム旧14’02,新14’39)、第2番K280(同14’34,13’36)、第3番K281(同15’39,14’58)、第4番K282(同12’03,13’19)、第5番K284(同13’52,13’39)、第6番K284(同27’11,27’50)、第7番K309(同20’06,19’32)、第8番K310(同19’01,18’59)、第9番K311(同17’14,16’49)、第10番K330(同17’42,19’49)、第11番K331(同25’14,24’38)、第12番K332(同21’04,19’45)、第13番K333(同22’34,23’07)、第14番K457(同20’18,19’37)、第15番K545(同9’55,10’43)、第16番K570(同18’54,18’33)、第17番K576(同15’05,15’33)、第18番K533/494(同25’41,25’10)、幻想曲K475(同12’36,12’27)(タイムについては盤により多少異なる場合があります)。