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marco さんのレビュー一覧 

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/01/03

    良い意味での「若さ」が集団で一丸となった時の、眩しいような、少し青臭い、圧倒的に力強く、ひたむきで、どこまでも一途な演奏。
    これは誰もが一度は味わったことがあるであろう身近なアマオケがほんの一瞬垣間見せる尊い煌きを、商業的かつ政治的により精緻に純化して達成されたものといえる。サラリーマン化したプロオケの紋切型に食傷した耳にはこれが滅法心地好いのだ。唯、この心地好さや爽快感には根源的にかなり危険な香りが隠されている。「若さ」が極端に賞賛され消費される風景の後ろにはろくなものがないことは歴史的に明らかだ。
    音楽を聴こう。老獪なマーラーの器は流石に大きく「若さ」だけでは埋められない。例えば、アダージェットの幾重にも輻輳していく綾が、豊潤に膨らむことなく
    素っ気無い素描に終わるあたり、この交響曲の画竜点睛を欠くとも捉えられる。
    ドゥダメルは、それを全体構成の中での確信犯的訣別としているようだ。「ヴェニスに死す」よ、さようならなのだ。
    全体としては、新鮮で活きの良い素材をそのまま活け造りに仕上げた指揮者ドゥダメルの力量が素材共々に素晴らしい。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/20

    個人のコレクションはどうしても偏りのあるものになりがちだ。このセットボックスの楽しみは、自分では敢えて聴かないジャンルやアーティストにも気軽に接することができて新しい発見がある点にある。
    例えばピアノならば、ユジャ・ワンやアリス沙良オットの若々しくも堂々とした音楽を最高の録音で聞けると共に、田舎の好々爺とばかり食わず嫌いでいたケンプの意外なモダンさに驚いたり、ポリーニのペトルーシュカの造形美の裏に隠れたブルータルな素材感に気付いたり、バレンボイムのピカピカのベートーヴェンに悪態ついたり... かなり高踏なザッピングが楽しめる。そんなお大尽な遊びができるのも驚愕のコストのお陰である。昔ならばこの56枚のボックスのお代はゆうに10万円を越えただろう。
    最近はやりのオリジナルデザイン紙ジャケットは、一覧性が高く所有感を高めることにも寄与している。入手困難なedition-1赤箱55枚と合わせて111というのもうまい。DGは全般的に硬質な音調で若干聴き疲れのする音盤も多いのだが、今回は評判通り聴きやすくとても音楽的な音調で好ましい。杞憂だといいけど、この低コスト大型箱の乱発がパッケージメディアの最後の仇花とならないことを祈りたいものだ。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/10/09

    旧態依然の装飾に満ちたムジークフェラインとその聴衆達と、
    ヴォロドスの清新なヴィルティオジティとの対比が余すところ無く
    捉えられた映像と録音。 
    圧巻は間違いなくダンテ。リストのオッシアなのかヴォロドスの怪変なのか、
    通常版と全く異なる高難度の音の饗宴に心底圧倒される名演。 
    彼の凄いところは、此れほどの爆演でもまだまだ余裕を感じさせることで、
    その余裕が、歌と構造をしっかりと浮上させ、リスト後期の宗教的な思索や
    イタリアの文化空間までをも照射する。 
    彼のテンペラメントにぴったりのシューマンはいずれも絶品。
    とろける様な美音と歌。 ラベルは正直ミスマッチ。
    そして恐るべきは、スクリャービン後期の白ミサを完全に薬籠中に
    するのみならず、妖しくデモーニッシュな領域にまで立ち入っていること。
    ここがあの能天気なニューイヤーコンサートの場であることを完全に
    抹消してしまう有様に、独り快哉を叫ばずにはいられなかった。

    ライブなのにおよそミスタッチというものを聴くこと稀な
    ヴォロドスのコンサートは、色々な意味でほどなくプレミアム化
    していくことになるだろう。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/10/09

    丁寧に慈しむように奏でられたスクリャービン。テンポは全体に遅めだが、
    絶妙に美しい弱音によって、所々で今まで聴いたことの無い異界が
    出現する。でもそれは「あちら側」までは行かない類の清潔かつ誠実な白昼夢だ。
    片や後期のソナタは思い入れの強弱はあるが、しっかりと把握された構造が
    遅いテンポによって宙吊りにされていくさまはある意味スリリングではあるが、曲によってはもう少しアッサリと呈示して欲しいものもある。後期のソナタはドロドロにしないことが最低限のラインだと思うが、テンポ遅めで乗り切るには、冷徹な構造把握の上に、ペダル、音色の多彩な利用が不可欠。
    ウゴルスキは、それらを難なくクリアしつつ、物語のようにひとつひとつの
    音を紡いでいく。スピードと引き換えに得られるものの価値を思い直すことのできる演奏。曲の配列は単純に数字順ではなく、二つのCDで二晩のプログラムを組むような配列になっている。一枚目の印象が良かった。
    蛇足だがレーベルと内容から将来的入手難が予想されるのでマニアの人には早めの入手をお薦め。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/10/26

    総合芸術であるオペラにまつわる様々な想いを、アリアという軸に沿ってピアノ一台で凛とした気品を湛えて典雅に表現した作品。
    ピアノトランスクリプションの可能性は、ピアニストにより一旦抽象のフィルターを通しながら、逆にそこから時代と現場の生々しい雰囲気を鮮やかに再現するところにある。クリック一つでどんなオペラでも入手可能な現在だからといって、本物のオーラを誰もが味わえるわけではない。ティボーデによって表出される濃密な声やオーケストラ、そして劇場のざわめきやプリマドンナの吐息は、絶対に下品な曲芸に堕すことなく、失われた時を丁寧に紡ぎ出していく。
    特にスローな楽曲のしみじみとした味わいは格別で、この芸風はビルエバンスへのトリビュートCDあたりから確立された「21世紀に甦る新しいサロン芸術」ともいえるものだ。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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