『ファルスタッフ』全曲 ミキエレット演出、メータ&ウィーン・フィル、マエストリ、チェドリンス、他(2013 ステレオ)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2014年12月29日
ミキエレットの演出では例外なく舞台は現代、つまりは読み替え演出だ。けれども彼の場合、現代のスター演出家が必ず見せてくれるような、読み替えによってオペラから何が取り出したいのか、どんな新しい面を見せたいのかという問題意識が希薄であるように思えてならない。ただ、こうも読み替えられるから、この方がファッショナブルだから、という理由で舞台を現代に変えているだけなのだ。それでも同じザルツブルクの『ボエーム』、新国立の『コジ・ファン・トゥッテ』、二期会の『イドメネオ』ではそれなりに光るところがあった。それらに比べると、この『ファルスタッフ』は最悪だ。これは確かに練達の書法で書かれたヴェルディ最後のオペラだが、老いを感じさせるようなところは皆無だし、むしろ非常にみずみずしい作品だ。それをどうして「カーサ・ヴェルディ」住まいとなった老人の見た夢にしなければならないのか、私にはさっぱり理解できない。 歌手陣は決して悪い出来ではないが、マエストリの芸達者ぶりを味わうのならベヒトルフ演出のチューリッヒ版以下、他にいくらでも良い映像ソフトがある。他にもう一つ、耳を覆いたくなるほどひどかったのは、鈍重なだけで全く生気のないメータの指揮。少なくとも壮年期まではいい仕事をした指揮者なのだから、これ以上、晩節を汚さないでほしいというのが私の切なる願いだ。3人の方が、このレビューに「共感」しています。
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