アンナー・ビルスマ・コレクション
チェロ組曲とソナタ集(11CD)
ビルスマの無伴奏チェロ組曲の新旧録音とガンバ・ソナタ、無伴奏ヴァイオリンと無伴奏フルートのための作品をビルスマ自身が編曲したものに、17世紀イタリアのチェロ作品や、ヴィヴァルディ、ボッケリーニのチェロ・ソナタのほか、バッハやヘンデルなどのフルート・ソナタで通奏低音を受けもったものも収録されています。
Disc1-2は、ロマン派のチェロの名手で作曲家、アドリエン・フランソワ・セルヴェが使用していた大型のストラディヴァリウス「セルヴェ」を弾いた2度目の無伴奏チェロ組曲の全曲録音。ビルスマはモダン弓と、弦はА線のみ裸のガット弦を、その他はガットを心材に使った普通の弦を使用しています。「セルヴェ」はチェロの中でも非常に大型なもので、コントラバスのような音色を持った独特な楽器といわれており、ここでもその性格に合わせたロマンティックな解釈が採られることとなり、1回目の録音とは全く異なったものとなっています。なお、第6番だけは「セルヴェ」では演奏不能なため、SEON盤と同じ5弦のチェロ・ピッコロを使用しています。ビルスマ本人は無伴奏チェロ組曲について「広大であり、アプローチの可能性も無限である」と、解釈の多様性について語ってもいます。
Disc3-4は、ビルスマが最初にSEONでおこなった無伴奏チェロ組曲の全曲録音。愛器「ゴフリラー」による演奏で、バロック楽器らしい小回りの効いた舞曲という曲調を大事にした演奏です。
Disc5では、ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタと、トリオ・ソナタ形式で書かれた作品をチェロで演奏しています。チェロはガンバの音域より低いため、ここでは、もう一本高い弦が張ってある5弦のチェロ・ピッコロを使用。小回りの効く表現が可能になり、ポジティフ・オルガンの深めな音と対等に絡み合うことで、新たな表現方法を導き出したと評価されています。
Disc6は、無伴奏ヴァイオリン、無伴奏フルートのための作品をビルスマ自身が編曲してチェロで演奏したもの。BWV.1006のプレリュードではヴァイオリン以上のスピードで演奏するという離れ業も披露。
Disc7は、ブリュッヘンらの演奏する室内楽の通奏低音チェロとして参加した録音を集めたもの。それまで単なる伴奏としかみなされなかった通奏低音のチェロの重要さを認識させられる演奏です。
Disc8には名手のために作曲されたチェロのためのソロ作品が収録されています。時代と共にチェロは小回りが効くようにと小型化され、さらに超絶技巧の作品が作られていきました。ここに収録された作品も、当時の音楽演奏法を研究しているビルスマによって、素晴らしい演奏に仕上がっています。
Disc9〜11では、ヴィヴァルディとボッケリーニのチェロ・ソナタを中心に収録。ヴィヴァルディのソナタは、かつて作品14として知られ、数多くの楽器のために編曲されてきた旋律美が印象的な傑作。ビルスマがオリジナルの姿で演奏しています。さらにチェンバロ&オルガンにイタリア古楽の第一の演奏は、旋律の流れを大切にしたもので、ガット弦による柔らかで透明な響きと超絶技巧を駆使しながらも独特の倍音豊かな音色を朗々と響かせています。(HMV)
【収録情報】
Disc1-2
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV.1007
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 BWV.1011
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV.1009
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調 BWV.1010
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV.1008
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV.1012
録音時期:1992年
Disc3ー4
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV.1007
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 BWV.1011
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV.1009
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調 BWV.1010
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV.1008
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV.1012
録音時期:1979年
Disc5
・J.S.バッハ:ソナタ第1番ト長調 BWV.1027
・J.S.バッハ:ソナタ第2番ニ長調 BWV.1028
・J.S.バッハ:ソナタ第3番ト短調 BWV.1029
・J.C.F.バッハ:チェロと通奏低音のためのソナタ イ長調
ボブ・ファン・アスペレン(オルガン)
録音時期:1990年
Disc6
・J.S.バッハ:無伴奏パルティータ BWV.1006
・J.S.バッハ:無伴奏パルティータ BWV.1013
・J.S.バッハ:無伴奏ソナタ BWV.1003
録音時期:1988年
Disc7
・J.S.バッハ:フルート・ソナタ ホ短調 BWV.1035
フランス・ブリュッヘン(フラウト・トラヴェルソ)
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
録音時期:1975年
・コレッリ:ソナタ ト短調 Op.5-7
フランス・ブリュッヘン(Bfl)
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
録音時期:1979年
・フリードリヒ・ドッツァウアー:無伴奏チェロのための3つの練習曲
録音時期:1994年
・ヘンデル:ブロックフレーテのためのソナタ HWV.365
・ヘンデル:ブロックフレーテのためのソナタ HWV.362
・ヘンデル:ブロックフレーテのためのソナタ HWV.377
フランス・ブリュッヘン(Bfl)
グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
録音時期:1973-74年
Disc8
・フレスコバルディ:カンツォーネ第16番イ短調
・フレスコバルディ:カンツォーネ第8番ト短調
・フレスコバルディ:カンツォーネ第15番ヘ長調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第5番ハ長調
・D.ガブリエリ:2つのチェロのためのカノン ニ長調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第1番ト短調
・D.ガブリエリ:ソナタ ト短調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第4番変ホ長調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第2番イ短調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第3番ニ長調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第6番ト長調
・D.ガブリエリ:リチェルカール第7番ニ短調
・ヤッキーニ:ソナタ ハ長調
・ヤッキーニ:ソナタ イ短調
・ヤッキーニ:ソナタ イ長調
・ヤッキーニ:ソナタ ト長調
・アントニーニ:リチェルカール第3番ヘ長調
・アントニーニ:リチェルカール第10番ト短調
・アントニーニ:ソナタ変ロ長調
ボブ・ファン・アスペレン(チェンバロ)
録音時期:1988年
Disc9
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第1番変ロ長調 RV47
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第2番ヘ長調 RV41
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第3番イ短調 RV43
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第4番変ロ長調 RV45
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第5番ホ短調 RV40
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第6番変ロ長調 RV46
フランチェスコ・ガリジオーニ(通奏低音チェロ)
イヴァーノ・ザネンギ(リュート)
アンドレア・マルコン(チェンバロ、オルガン)
録音時期:1999年
Disc10
・ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ イ短調 RV.44
・ヴィヴァルディ:ト短調 RV.42
・ヴィヴァルディ:変ホ長調 RV.39
鈴木秀美(通奏低音チェロ)
ジャック・オッホ(チェンバロ)
録音時期:1986年
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ G.6
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ G.4
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ G.17
ヴィーラント・クイケン(通奏低音チェロ)
ホプキンソン・スミス(バロック・ギター)
録音時期:1980年
Disc11
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ変ロ長調 G.8
・ボッケリーニ:2つのチェロのためのフーガ ヘ長調 G.73-2
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ変ホ長調 G.10
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタヘ長調 G.9
・ボッケリーニ:2つのチェロのためのフーガ変ロ長調 G.73-3
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ ハ短調 G.2
・ボッケリーニ:2つのチェロのためのフーガ イ長調 G.73-5
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタ ト長調 G.15
ケネス・スロウィック(通奏低音Vc)
ボブ・ファン・アスペレン(フォルテピアノ)
録音時期:1992年
アンナー・ビルスマ(チェロ)
アンナー・ビルスマ・コレクション(全4点)
古楽の世界を代表するオランダの名チェリスト、アンナー・ビルスマが、VIVARTE、DHM、SEONの3レーベルで制作した音源からCD38枚分を4つのボックスにまとめた大型企画。
ビルスマは当初モダン楽器のチェロ奏者として活躍しますが、やがて古楽に本腰を入れるようになり、バロック・チェロ奏法を研究して実践、楽譜に書かれてある細かな指示も忠実に再現することを基本に、ガット弦による多彩で柔らかな響きとアーティキュレーションの獲得に加え、軽快で舞曲的な性格も巧みに表現することに成功しています。
パブロ・カザルス国際コンクールで優勝するほどの腕前だったヴィルトゥオジティに加え、コンセルトヘボウ管首席奏者だった時代から、レオンハルトやブリュッヘン、シュレーダーらと「クヮドロ・アムステルダム」を結成するなど室内楽への愛着も深く、ビルスマはソリストとしてだけでなく、室内楽プレイヤーとしても名をあげて行きます。
このシリーズは、テーマ別に分けられたの4つのボックスから成っており、概要は下記の通りとなります。ソリストとしての演奏を前半2つの17枚で、室内楽プレイヤーとしての演奏を後半2つの21枚で楽しめる構成です。
88843010482 チェンバー・ミュージックVol.1(9CD)
88843010592 チェンバー・ミュージックVol.2(12CD)88843010662 コンチェルト&アンサンブル(6CD)
88843010762 チェロ組曲とソナタ集(11CD)
【ビルスマについて】
1934年、オランダのハーグに誕生。幼少から父に音楽を習い始め、ハーグ王立音楽院でカレル・ボーンカンプにチェロを学んで優秀な成績で卒業。1959年パブロ・カザルス国際コンクールで優勝し、国際的な名声を得ます。 1962年から
1968年までアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団首席チェロ奏者を務め、その間、グスタフ・レオンハルトやフランス・ブリュッヘン、ヤープ・シュレーダーらとクヮドロ・アムステルダムを結成してバロック演奏に力を注ぎ、やがてバロック・チェロ奏法を確立し、オランダ古楽界の重鎮として現在に至ります。
ビルスマは、ソリストとして活躍するほか、室内楽ではガット弦を使用した弦楽アンサンブル『ラルキブデッリ』を主宰、夫人でヴァイオリニストのヴェラ・ベス、左利きヴィオリストのユルゲン・クスマウルらとともに、17〜19世紀の知られざる傑作をとりあげて話題を呼んでいます。彼はまた、古楽器だけにこだわることなく、モダン楽器をも使用した驚異的なレパートリーの広さでも知られており、そのディスコグラフィはすでにかなりの数に達しています(SEON・SONY・Channel Classics・Deutche Harmonia Mundi・MD+G・Teldec・
Nonesuch・ATMA・Philips・Bayer・L'oiseau Lyre・Donemus)。
演奏活動以外では、アムステルダムとハーグの音楽院での教授活動が重要ですが、さらに彼は、アンナ・マクダレーナバッハの写本のボウイングについて論じた著書も刊行。昔から批判の絶えない対象を意義深い存在と認め、そこに示された複雑なボウイングに取り組んでいます。
名手ビルスマの演奏には、以上のような多彩な背景が認められ、そうしたことが、オリジナル楽器演奏の先駆者でありながら、常に努力し進歩し続けるという彼のアプローチを支えているものと思われます。もちろん、その謙虚で誠実な人柄が音楽に与える説得力については言うまでもありません。 (HMV)