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【特集】今昔、ツトム・ヤマシタから

2008年11月25日 (火)

Stomu Yamashta


 
スティーヴ・ウィンウッド、アル・ディ・メオラ、
さらには、クラウス・シュルツまでをも惹きつけた
ツトム・ヤマシタの”Go”の世界。


 上の写真、パンタじゃありませんよ、決して。知る人ぞ知るという云い方をしてもよいでしょう、日本が世界に誇るマルチ・パーカッション奏者・・・厳密に云えば、世界から火が点いた逆輸入アーティスト、ツトム・ヤマシタ、となるでしょうか。綴りは、西洋人にとって「Tsutomu」という発音は困難を極めることから、「Stomu Yamashta」、または、「Stomu Yamash'ta」となっております。表記ミスではないことを、ご念頭にお願い致します。簡素なプロフィールを記しますと・・・1947年京都生まれ。弱冠17才で渡ったアメリカで活動を続け、打楽器による”これまでにない音”を創造し、「打楽器のイメージを変えた人」(米タイム誌)と世界的にも高く評価され現在に至ります。1972年には、演劇と劇団を融合した芸術集団「レッド・ブッダ・シアター」、さらには、本稿の主役となるロック/ジャズ・ロック〜プログレ的性格の強いプロジェクト「Go」を結成しました。また、まだ無名だった時代に、黒澤明監督の『用心棒』のスコアでパーカッションを演奏していた、というエピソードも残されています。

 まずは、現在のヤマシタ氏の活動を知る上でも、「サヌカイト」という石の打楽器について簡単に説明した方がよいかもしれませんね。「サヌカイト」とは、四国・讃岐地方で産出する石(1350万年前に噴出した溶岩)のことで、その名の由来は、「讃岐の石」という意味から来ているそうです。このサヌカイト、金槌で叩くと抜けのよい美しい金属音を発しながら振動し続け、古くは、鐘用に供せられ、『かんかん石』とも俗称されていました。ヤマシタ氏とサヌカイトとの出会いは、1986年に遡ります。1990年には、イギリスのミステリー・サークル”ストーン・ヘンジ”にてサヌカイト演奏を行ったことは、つとに有名な話であります。このサヌカイトとの出会いにより、「西洋と東洋における”音”の追求の方法が違う」ということを認識したヤマシタ氏は、現在の音世界へと行き着きました。サヌカイト演奏にとどまらず、ベルリンフィル、フィラデルフィア、シカゴ響といった世界有数のオーケストラとソロ打楽器とによる協奏曲演奏、京都・東寺での仏教音楽研究に基づく「供音式(音による法要)」、演劇と音楽を融合した芸術集団「レッド・ブッダ・シアター」の立ち上げなど、その活動の履歴は多岐に渡ります。こうした氏の”打楽器の可能性とその創造性”を追い求める熱意・探究心は、いち打楽器奏者としての活動域を遥かに超えた、スピリチュアルでイマジネーションに満ち溢れた部分に帰依するものであり、総合芸術としての打楽器のポテンシャルの高さを、”自然との対話の中から生まれた偶然性”という角度から世に示している数少ない演奏者のひとりと云えるのではないのでしょうか?  

Stomu Yamashta

 そして、こちら。今回、アンコール・プレスとして紙ジャケ再リリースとなる『Go Too』。77年にニューヨークとロンドンで録音され、米Aristaより発表されたアルバムです。ストーリー性のあるコンセプトを、ロック〜ジャズ・ロック寄りのイディオムで具現化しようとしたヤマシタ氏のプロジェクト=”Go”。氏自らのアイデアをバンド・メンバーに伝えるために、まず最初にNASAの”宇宙フィルム”を全員に見せたというエピソードや、ジョージ・ルーカスが氏に『スターウォーズ』の音楽を依頼しようとした逸話も残されている前作『Go』(76年発表)は、「宇宙に存在していた人間が、何か見えないものに引かれ地球に向かう旅の過程を、空手チャンピオンのクラタの敗北〜復活〜勝利の物語に投影した作品」であったのに対し、こちらの『Go Too』は、「宇宙から来た人々の間に生まれた”愛”をテーマとしたストーリーを持つコンセプト・アルバム」となっているのです。つまりは、宇宙での闘争から、地上で芽生える愛へと、ストーリーが展開。当初、この『Go』プロジェクトは、3部作を予定していたそうで、『Go On』という次作の仮タイトルまでも決まっていたということなのですが、78年、ヤマシタ氏は、突如全ての音楽活動を停止して日本に帰国してしまいました。鬼形智氏による『Go Too』ライナーにも明るいのですが、ヤマシタ氏自身は、その当時の理由を、「すべてのジャンルにおいて自分が最高であると思い込み、その結果、他人の作品がすべてつまらなく見えてしまった。ようするに、感動を失ってしまったんですね」と振り返っています。その後、京都の東寺に籠もって仏教音楽の研究に打ち込んだことは、知られているところでしょう。 「序章」、「再会」、「狂気」、「愛の神秘」、「運命の轍」、「美」、「男と女」、「月蝕」、8つのテーマから成る『Go Too』は、そんな氏の葛藤連なるターニング・ポイントとなった時期に制作されているという点でも、キャリアにおいて、とても興味深い作品と位置づけることが可能なのです。

  Stomu Yamashta(左から2人目)と彼のプロジェクト、Go
 『Go』と同じく参加ミュージシャンの豪華さには、「ヤマシタ・ツトムの世界」に対する海外からの注目度の高さや、評価の高さが顕著に表れていると云ってもよいでしょう。『Go』及び、ライヴ盤『Go - Live From Paris』には、すでにトラフィックを解散させていたスティーヴ・ウィンウッドらが参加。『Go Too』には、『Go』に引き続き、サンタナの元メンバーとして有名なマイケル・シュリーヴ(ds)、チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァー参加で知られるアル・ディ・メオラ(g)、独ジャズ・ロック界を代表するマルチ鍵盤奏者クラウス・シュルツ(key)、さらに新たな参加組として、ハービー・ハンコックのヘッド・ハンターズでおなじみのポール・ジャクソン(b)、『Lark』、『Fathoms Deep』といった名アルバムを発表していた5オクターブの歌声を持つシンガー・ソングライター、リンダ・ルイス(vo)、”黒い”歌唱を本領とする英国シンガー、ジェス・ローデン(vo)など・・・ロック、ソウル、ジャズ、クロスオーバー、各界を代表するミュージシャン達が集結し、ヤマシタ氏の世界を見事にサポートしています。とりわけ、粘り気のあるポール・ジャクソンのベースが加わったことにより、”ジャズ・ファンク〜フュージョン指数”は、前作に較べ格段にアップ。昨今著しい”ジャパニーズ・レアグルーヴ再考”の文脈からすると、「狂気」、「運命の轍」、「男と女」といった楽曲などには、クラブ界隈からの需要にも十分応え得る要素が詰め込まれていると断言してもよいかもしれません。

 富田勲、YMO、喜多郎らと並ぶ、世界が認めた陽の国の才、ツトム・ヤマシタ。氏の音楽は、今日も国境と時間を越えて世界中に届けられ、愛されていることでしょう。なれば、今こそ、母国での再評価を祈願!


 



Go Too

 
4 『Go Too』  紙ジャケット仕様  « New«


2005年「ストレンジ・デイズ・プレゼンツ」企画の1枚として紙ジャケ限定リリース。あまりの反響の大きさに、この度、アンコール・プレスとして再登場。前作『Go』に引き続き、マイケル・シュリーヴ(ds)、アル・ディ・メオラ(g)、クラウス・シュルツ(key)、さらに新参加組として、ポール・ジャクソン(b)、リンダ・ルイス(vo)らが参加。よりタイトで、コンセプチュアルな「ツトム・ヤマシタの音世界」を展開させている。レアグルーヴ、フリーソウル的フィルターを通し耳にしても、実に秀逸な1枚。



 




Go / Go Live From Paris

4 『Go / Go Live From Paris』


Goプロジェクトの76年1作目『Go』と、同年6月パリのパレ・デ・スポール公演を収録したライヴ・アルバム『Go Live From Paris』のカップリング盤。『Go』には、スティーヴ・ウィンウッド、マイケル・シュリーヴ、アル・ディ・メオラ、クラウス・シュルツらが参加。パリ公演盤にもウィンウッド、シュリーヴは登場。ギターには、ディ・メオラに代わり、パット・スロールが参加し、多彩なインプロを交えたスタジオ盤以上の強烈なインパクトを残す。






Complete Go Sessions

4 『Complete Go Sessions』


『Go』、『Go Live From Paris』、『Go Too』全3作品を完全収録したリマスター2枚組。プログレ色の強い『Go』、フュージョン・サウンドと歌モノ要素が絶妙に絡む『Go Too』、スペイシーなインプロビゼーションを味わえる『Go Live From Paris』、3作品を一気に聴き較べるなら、こちらをどうぞ。






ツトム・ヤマシタのサヌカイト作品



Listen To The Future Vol.1:懐かしき未来
4 『Listen To The Future Vol.1:懐かしき未来』

 打楽器とサヌカイトとの融合を初めて音源化した記念すべき1枚(2001年発表)。幻想的で澄み切った音色が響き渡るこのコラボレーションは、もはやリラクゼーション・ミュージックの域を超えた、真の総合芸術と呼ぶに相応しい。Go時代や、「いろは」4部作時代の楽曲のメロディも飛び出す。

 



久遠之今 太陽の儀礼 Vol.1
4 『久遠之今 太陽の儀礼 Vol.1』

 この作品の初演が、92年に延暦寺根本中堂における「天海大僧正350回忌記念」だったことからして、レクイエムの性格を持っているのがわかる。特異なサヌカイトで作った楽器を使い、鎮魂の音を身心に溶け込ませる。




神々のささやき 太陽の儀礼 Vol.3
4 『神々のささやき 太陽の儀礼 Vol.3』

 「太陽の儀礼」3部作の最後を飾る97年のアルバム。ミニマルな美を追求した結果、非常にシンプル、そして、静かで優しい音楽の表情が映し出されている。ベートーヴェンの「月光ソナタ」では、本作のテーマ「ピース&ラヴ」のピースを体感させてくれる。




ツトム・ヤマシタの映画音楽



イメージズ
4 Movie 『イメージズ』

 ロバート・アルトマン監督による、72年製作のイギリス=アイルランド=アメリカ合作映画。主人公のキャスリンが現実と幻覚を行き来する展開に合わせ、現実場面では、ピアノとストリングスによるリリカルでメランコリックな曲を、幻覚を見る場面では、ツトム・ヤマシタのパーカッションをフィーチャーしたアブストラクトな楽曲が展開されている。




地球に落ちて来た男
4 Movie 『地球に落ちて来た男』

 ミック・ジャガーとアニタ・パレンバーグが共演した『パフォーマンス』で知られるニコラス・ローグ監督、デヴィッド・ボウイ主演の”風変わりな”SF映画。ロイ・オービソン、ビング・クロスビーの楽曲に交じって、ツトム・ヤマシタの楽曲は、「メモリー・オブ・ヒロシマ」をはじめ6曲が効果的に挿入されている。

  



F1グランプリ: 栄光の男たち
4 Movie 『F1グランプリ: 栄光の男たち』

 クロード・デュボック監督によるモーター・スポーツ界の最高峰=F1の世界を描いた、75年製作の伝説のF1ドキュメンタリー映画。本スコアもツトム・ヤマシタが手掛けている。



 




その他の関連作品



Steve Winwood
4 Steve Winwood 『Steve Winwood』  紙ジャケット仕様SHM-CD 

 スティーヴ・ウィンウッドが、スペンサー・ディヴィス・グループ、トラフィック、ブラインド・フェイス、そして、Goプロジェクトへの参加を経てリリースした77年の初ソロ・アルバム。「Hold On」におけるセンス抜群のブルー・アイド・ソウル・フィーリングなどには、脱帽するばかり。ジェイムス・テイラー、ロン・ウッド作品などで有名なウィリー・ウィークス(b)、アンディ・ニューマーク(ds)といった名セッション・マンらを迎え、ゆったりとしたグルーヴをモノにしている。




Moondawn
4 Klaus Schulze 『Moondawn』  紙ジャケット仕様 

 76年、ヴァレンシュタインのハロルド・グロスコフを迎えて制作した名作アルバム。自ら「私は新たな扉を開け進む」と豪語した作品。ムーグ、ARPシンセ等をふんだんに駆使し、全2曲はいずれも25分を超える大作となっている。




Elegant Gypsy
4 Al Di Meola 『Elegant Gypsy』  BLU-SPEC CD 

 アル・ディ・メオラの名声を決定的にした、77年の記念すべき作品。スパニッシュナフレイヴァー「とロック的なエッセンスをミックスしてさらに個性をプラスした優れたディメオラのオリジナリティが完成された形で結実した金字塔。こちらは、高音質BLU-SPEC盤。




Survival Of The Fittest
4 Headhunters 『Survival Of The Fittest』

 ハービー・ハンコック『Headhunters』(73年発表)のレコーディング・メンバーだったポール・ジャクソン(b)、ベニー・モウピン(sax)らによって結成されたヘッド・ハンターズの75年1stアルバム。「God Makes Me Funky」、「If You've Got It、You'll Get It」など、漆黒のジャズ・ファンク/フュージョン・サウンドをたっぷりと体感できる。 。




Lark
4 Linda Lewis 『Lark』

 カリブ移民系、UKブラック・ソングストレスの始祖、リンダ・ルイスが72年に発表した2ndアルバム。元々女優ということもあって、その歌い口は控えめながらも”レインボー・ヴォイス”の異名を取るほどに個性的であり、魅力的。彼女の作品の中でもベスト・アルバムとの呼び声が高い傑作。






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