ローリング・ストーンズが「Out Of Time」を提供したというエピソードだけで白飯3杯!英国R&Bシンガーといえば、昨今のモッズ・リヴァイヴァルの追い風もあって、とかくジョージィ・フェイムに話題が集中しがちなのですが、このクリス・ファーロウのどす黒くソウルフルなフィーリングも、もっともっと語られて然るべき。特に、本家とはまた一味違うヒップな感触を残すイミィディエイト時代のストーンズ・カヴァー(「Think」、「Paint It Black」、「Satisfaction」、「I'm Free」等)の数々は必聴です!
60年代ロンドンのR&B〜モッズ〜ノーザン・ソウル・シーンにおける活躍を知らなくとも、プログレ〜ハード・ロック系のリスナーにはコロシアムやアトミック・ルースターのヴォーカリスト、またはジミー・ペイジの88年ソロ作でマイクを握った男としてよく知られているクリス・ファーロウ。しかし、「黒さ」という点ではやっぱり、バック・バンドであるザ・サンダーバーズ(アルバート・リーも在籍)を率いていたキャリア初期=60年代を強力にプッシュしておきたいのです。同時期のスティーヴ・マリオットやスティーヴ・ウィンウッドとは比べものにならないほど圧倒的なブラック・フィーリングを放っていたファーロウは、あのオーティス・レディングから白人で唯一「ソウル・ブラザー」と呼ばれる存在でもあったのです。ちなみに同時期、ビーザーズ、リトル・ジョー・クックなる変名でブルービートやブルースのシングルを多く残しています。
62年に、ファーロウは、ソロ名義でデッカ・レコードと契約を結んでシングル「Air Travel」で、クリス・ファーロウ&ザ・サンダーバーズ名義では、コロムビア・レーベルと契約を結んでシングル「I Remember」でそれぞれデビュー。その後も数枚のアルバムを出すもセールス的な成功には恵まれずにいました。で、そこで出会ったのがローリング・ストーンズ。ミック・ジャガーとキース・リチャーズが、彼のことを以前から気に入っていて、2人の紹介により、ストーンズのマネージャーであったアンドリュー・ルーグ・オールダムが設立したばかりのレコード会社、イミディエイトと65年に契約を結ぶこととなったのです。翌66年にリリースされた、ミック・ジャガー&キース・リチャーズ作によるストーンズのカヴァーとなる2ndシングル「Think」(全英37位)で初めてチャート入りを果たし、続いてリリースされた同じくジャガー/リチャーズ作の「Out Of Time」はイギリスでNo.1を獲得します。同年には、同じくストーンズ・カヴァー「Ride On Baby」(全英31位)、67年には、スモール・フェイセズの「My Way Of Giving」(全英48位)、モダン・ジャズ古典「Moanin'」(全英46位)(ヤードバーズ加入前のジミー・ペイジとのブルース・セッション盤にも収録。)、ロッド・スチュワートのカヴァーで有名な「Handbags And Gladrags」(全英33位)を次々とチャート入りさせました。
前述のストーンズ楽曲、及びイミディエイトでの2作目のアルバムとなる『The Art Of Chris Farlowe』のプロデュースはミック・ジャガーが務めている。本家のヴァージョンとは幾分異なるアレンジが施され、当時隆盛だったモータウン・サウンドやフィル・スペクター作品を意識したかのようなストリングスやホーン・セクション、コーラスなどを派手に導入したものとなっており、オリジナルと聴き比べるのもまた面白いでしょう。また、オーティス・レディング「I've Been Loving You Too Long」のカヴァーには、キース・リチャーズも参加し、ファーロウのために特別なアレンジを施したという興味深い話も残っています。
ストーンズとの蜜月たっぷりのこのイミディエイト時代の音源は、現在、『14 Things To Think About』、『Out Of Time-The Immediate Anthology』、『Out Of Time』、『I'm The Greatest』(ジャケはミックとの2ショット!)といった数種のコンピCDで耳にすることができるので、ストーン・ピープルはじめ英国ブリティッシュR&Bフリークは是非!「In The Midnight Hour」(ウィルソン・ピケット)、「Mr. Pitiful」(オーティス・レディング)、「Rockin' Pneumonia」(ヒューイ・スミス)といったR&Bクラシックにおけるシャウトも痛快です!