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1950-60年代のロリン・マゼール

Wednesday, December 22nd 2004

ロリン・マゼール(1930〜)のレコーディング・アーティストとしてのデビューは1957年、DGへのベルリオーズ『ロメオとジュリエット』抜粋そのほかでした(オケはベルリン・フィル)。このデビュー盤こそモノラルだったものの、当時のレコード業界が本格的にステレオ録音を導入しはじめた時期だったこともあり、マゼールはこのあと主にベルリン・フィルを振った大量のステレオ録音を残します。その後、EMIを経てDECCAへと移籍、今度はウィーン・フィルとの顔合わせでシベリウス、チャイコフスキーの交響曲全集を含む、これまた相当なレコーディングを残し、一方で手兵となったベルリン放送交響楽団とのレコーディングをPHILIPSに残すなど、20代後半から30代にかけて、少壮の指揮者としては異例の活躍ぶりといえるでしょう。
 この頃のマゼールの録音は、その旺盛な表現意欲が大きな特徴と言えるでしょう。時にあまりにも過剰な、いわばギラつくようなその意欲が空転する場面もあるといえ、いったんツボにはまったときには、基本的な指揮技術の高さもあいまって、他では絶対に味わいがたい感銘を与えてくれることも少なくありません。ベルリン・ドイツ・オペラを拠点に、“帝王”カラヤンへの対抗意識を隠そうともしなかったというマゼール苛烈時代のレコーディングは、大家となったその後の録音からはしだいに失われた鮮烈かつ個性的な輝きを今なお有しています。

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・ロリン・マゼール/DG初期録音集 1957-1962(8CD)

 鬼才と呼ばれ、ヨーロッパの楽壇に新風を送り込んでいた若き日のマゼールが、20歳代後半から30歳代前半にかけてベルリン・フィルを指揮してDGに録音した音源を集めたセット。鋭角的なリズムと巧妙なフレージングを駆使した才気溢れる演奏が堪能できます。『ローマの松』での敏捷な表現など実に鮮やかで、名門オケの鼻ズラを引きずりまわすかのような豪快なドライヴぶりが痛快です。他に初CD化となる、フランス国立放送管弦楽団を指揮したモーツァルトの交響曲集(いずれも「ジュピター」の終楽章として有名な「バスティアンとバスティエンヌ」の主題を用いています)と、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」を収録しています。


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・シベリウス:交響曲全集(3CD)

 1963-64年ステレオ録音。素朴な原産地直系の自然体演奏とは、一線を画す、というよりも対極にあるのが当盤のアプローチ。きつく堅く締め上げられたようなフォルムに、ウィーン・フィルの緊迫サウンドが刺激的かつ美感たっぷりの音彩を付加。第4番における白刃さながらの妖美など、一度聴けば忘れられないところ。少々やり過ぎなくらい強烈な印象を与える個性派名演です。


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・チャイコフスキー:交響曲全集(4CD)

 1963-65年ステレオ録音。若きマゼールのやりたい放題に、こともあろうにウィーン・フィルが素直に従ってしまったきわめて個性的な演奏。ある意味では人工美の極致と言いたいほどですが、ここまで極められれば認めるほかないでしょう。巨匠となった現在のマゼールとは別人のような推進力と、濃厚きわまりない当時のウィーン・フィルの音色によって、大胆な表現が頻出するチャイコフスキーです。


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・プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲

 1966年ステレオ録音。まずは、驚くべき緻密な充実を誇るマゼールの指揮が秀逸。細部を検証するというよりは暴き立てるかのようなエグリの効いたアプローチはこの指揮者ならではのもので、プッチーニの手の込んだオーケストラ部の多様な面白さをあきれるほど鮮やかに切り取ってみせる痛快な手腕はさすが。単純な激情型アプローチからはけっして聴かれることのない刺激に満ちた演奏と言えます。
 ビルギット・ニルソンによるトスカ役も実にユニーク。戦後おそらく最強といわれたこの超ドラマティック・ソプラノによる歌唱はどこまでも強靭で、かつ器楽的なまでに玲瓏な美感に満ちています。そのあまりにも美丈夫な役作りには“悲劇のヒロイン”といった風情は希薄ですが、彼女がもっとも得意としたワーグナーのヒロインたちにも通じる崇高なまでの気高さは、他に代えようのない聴きものといえるでしょう。
 “万能のバリトン”フィッシャー=ディースカウによるスカルピア役は、ある意味でこの全曲盤の影の主役とも言うべき凄まじい出来栄え。得意の性格的な表現によってあぶり出されるスカルピアの暗い内面が、状況に応じて微妙に変化してゆくあたりの心理描写の的確さには仰天するほかありません。特に第1幕の終結部を飾る有名な「テ・デウム」は圧巻で、単に力まかせな演奏も多いなかで、ここではスカルピアの狡猾さ、ドス黒い野望、さらには自らの妄想によって忘我状態におちいる有様までが克明に描かれて、もう開いた口がふさがりません。同じ傾向のアプローチによるマゼールの指揮もいちじるしい相乗効果をあげて、この場面は全曲中のクライマックスといいたい強烈さです。
 フランコ・コレッリのカヴァラドッシ役は、これは得意の役柄なだけに、主役3人のなかではもっともスタンダードな歌唱と言えなくもありませんが、持ち前のヘヴィーで輝かしい声をフルに使った役作りによって、本来のこの役柄をはるかに越えるスケールをおのずから歌いだしてしまった感があります。コレッリとニルソンといえば、同じプッチーニの『トゥーランドット』における凄絶な歌合戦がイタ・オペ史上の伝説となっていますが、互いに役柄を代えたこの『トスカ』でも圧倒的なツバ競り合いを聴かせます。確かに、ニルソンの立派すぎるトスカの相手役は、このコレッリでなければ務まらなかったのではないか、そう思わせるに足るみごとに重い出来栄えです。
 このように、意地悪なくらいウデの立つ指揮者のもとで、常識よりもひと回りスケールの大きい登場人物たちが濃厚な人間模様を披露した当盤、普遍的な名盤と推奨するにはためらわれますが、いわゆる「ウラ名盤」としてこれほど刺激的な楽しみを与えてくれる一組も無いといっていいでしょう。


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・歌劇『カルメン』全曲

1970年ステレオ録音。当時のマゼールならではの、多面的な面白さが魅力のカルメンです。エーザー版を使用した最初期のレコーディングでもあり、従来の“イタ・オペ”的な大仰さとは縁を切った軽快な進行を基調としつつ、さらに作品そのものに肉薄しようという姿勢はいかにもマゼール。随所に聴かれるシャープな閃きが、このオペラにつきまといがちな「異国情緒満点の観光オペラ」といったお手軽ムードをバッサリと切り捨て、主要登場人物たちのハードな緊張関係をあらわにしてしまった感があり、そのリアリスティックなアプローチが実に新鮮です。配役では、7年前のカラヤン盤に比べより濃厚な表情の隈取りが凄いコレッリのドン・ホセ、妖艶な役作りと生来の可憐な声質が微妙な魅力を発散するモッフォのユニークなカルメン、偉大なヴェルディ・バリトンならではのベルカントな雄々しさが素晴らしいカプッチッリのエスカミーリョ(少々固いフランス語ですが)、どこまでも清楚なドナートのミカエラと、非常にヴァラエティ豊か。これら多士済々の面々が、緊張度の高いマゼールの指揮のもとで存分にその個性を主張するありさまが、この一組のきわめてユニークな魅力といえるでしょう。オケと合唱が少々暗めの響きなため、全体のバランスも見事にキープされた、個性的な名盤です。

*この全曲盤は1970年録音ということで、1950〜60年代のマゼールの録音を特集した本稿の主旨には反しますが、マゼールがこの時期に拠点としていたベルリン・ドイツ・オペラを振った数少ない録音のひとつであること、多彩な魅力を秘めたユニークな演奏であることから、あえて取り上げました。ご了承ください。


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Maazel Comp.early Bpo Recordings 1957-1962

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Maazel Comp.early Bpo Recordings 1957-1962

User Review :4 points (1 reviews) ★★★★☆

Price (tax incl.): ¥9,350
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(tax incl.): ¥8,135

Release Date:17/December/2004

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