ボル・ズリヤン／『ジェズアルドとリュート』

異才ジェズアルドとリュートを結ぶ、知られざる糸を手繰る好企画

1987年スロヴェニア生まれのボル・ズリヤン。リュートはもちろんビウエラ、ウードといった撥弦古楽器を弾くかたわら、ギターを操ってジャズのインプロビゼーションもこなす新世代のミュージシャンが贈るソロ・アルバム第2弾のテーマは、なんとジェズアルド。
　ヴェノーザの君主でもあったジェズアルドといえば、不貞の妻を殺害したというスキャンダラスな前半生と、居城に籠り異形のマドリガーレを書いた晩年がよく知られる作曲家ですが、実はリュートの演奏に関してもかなりの腕前であったという証言が残っています。16世紀の末には、彼の再婚相手の父であるフェラーラ君主アルフォンソ2世を通じ、同い年のリュートの名手アレッサンドロ・ピッチニーニよりアーチリュートの原型となる楽器を譲り受けました。
　このアルバムはこの時のものに近いと考えられる楽器を用い、当時のリュート作品のほか、ジェズアルドのものを含むマドリガーレをリュートの譜面に置き換えた写本を元に、ボル・ズリヤン自身が編曲したものも収録しています。冒頭のピッチニーニの作品を始め、ジェズアルドを思わせる半音階技法を用いた作品が多数選曲されており、知られざるその関係性に思いを馳せるに十分な内容となっています。（輸入元情報）

【収録情報】
● ピッチニーニ：半音階的トッカータ第12番
● カプスペルガー：ガリアルダ 12a
● ピッチニーニ：コレンテ第9番
● ジェズアルド：美しい人よ、貴女がいないと
● ピッチニーニ：ガリアルダ第1番
● メッリ：半音階的カプリッチョ「チャルリーノ」
● ピッチニーニ：歌い手なしのコレンテ第1番
● ピッチニーニ：コレンテ第10番
● ピッチニーニ：サラバンド風アリアと変奏
● カプスペルガー：トッカータ 1a
● メッリ：コレンテ、通称「ラ・バルトラ」
● サラチーニ：サン・セコンド伯爵のためのトッカータ
● ピッチニーニ：第1トッカータ
● カスタルディ：半音階的コレンテ
● サラチーニ：アルフォンソ・ストロッツィ氏のためのトッカータ
● ジェズアルド：ヴェノーザ君主のガリアルダ
● ジェズアルド：君主のフランスの歌
● カプスペルガー：トッカータ 6ta
● カプスペルガー：コレンテ 7a
● カプスペルガー：トッカータ 3a
● メッリ：半音階的コレンテ、通称「ラ・ベルナルデッラ」
● メッリ：半音階的ヴォルタ、通称「ラ・サヴィア」
● ベルニア：半音階的トッカータ
● 作者不詳（エギディウス・リュート写本より）：ガイヤルド
● メッリ：コレンテ、通称「アルフォンシーナ」
● ピッチニーニ：第1リチェルカーレ
● ピッチニーニ：パッサカリア

　ボル・ズリヤン（リュート・アッティオルバート）

　使用楽器：ハンス・ブルクホルツァー1596年製14コース・リュート・アッティオルバートに基づく、プラハのイジー・チェペラーク2020年製作

　録音時期：2021年12月
　録音場所：スイス、ボルム教会
　録音方式：ステレオ（デジタル／セッション）