要するに「和モノレゲエ」とは、一般的にレゲエ・アーティストではない日本の歌手、グループによって歌われたレゲエ・アレンジ、スカ・アレンジの楽曲(純歌謡曲、ロック、ニューウェイヴ、アイドル、演歌等スタイルは様々)のことを少なくともここでは指しています。5年ぐらい前に出ていたECDのミックスCD『Strictly Rockers chapter 17』や、雑誌「Relax」監修のコンピレーション『Relaxin With Japanese Lovers』の、まさにあのセンスですね。こちらでは、そんな和モノ市場のトレジャーアイル「和モノレゲエ」を月イチ連載形式で少しずつご紹介していこうという目論み(のちにレゲエ〜ダブ・リミックスを施したものなどは除外しています)。あまりにも採算が取れない本コーナー、大手の悪フザケととるか文化遺産の正しき継承事ととるかは閲覧者であるお客様次第。いつまで続くかも皆目検討つかずですが、ローソンHMV 和モノレゲエ課のエリート刑事たちが日夜レコ屋街を這いずり回って検挙した”クロ”なブツの数々、定番モノからニューディスカヴァリーまで百花繚乱、「アレがねぇ、コレがねぇ」とザワツキながらおたのしみください。
大本命盤が遂に初CD化。知ってか知らずか、欧州屈指のレゲエ翼賛国南フランスにまで足を運びレコーディングしたという、根津のオジキらしいワイルドなシロモノ。作家陣も、プロデューサーのチト河内をはじめ、クニ河内、BORO、泉谷しげるとこれまたワイルドすぎる顔ぶれ。ストロング・スタイルのルーツ・チューン「GINKA」、「野良犬 PART U」(泉谷作)、朴訥としたナイヤビンギ・タッチに揺れる「火男」、大野克夫作の「南回帰船」など、ゴツゴツとしたブルージーなレゲエ・フィーリングをここまで全編に漂白させている和モノレゲエ・アルバムは後にも先にもこれっきりだろう。今回のCD化に際し、シングル盤「上海帰りのリル」のフリップサイドに収録されていた上田正樹のカヴァー「しゃんそん」をボーナストラックとして追加。
70年代の最後っ屁には、これまでになく密度の濃いモダニズムが漂流。オリジナルLP盤ではB面にあたる山下洋輔(p)、向井滋春(tb)、杉本喜代志(g)、川端民夫(b)ら旧知のジャズメンによるブルージーな演奏もすばらしいが、彼らを下から突き上げるかのように溌剌とグルーヴする、つのだひろ(ds)&吉田健(b)のリズム・セクションが何と言ってもここでは肝。マキさんの詞と唄にフィットしたナイスなレゲエ・チューン「コーヒーひとつ」では、この年に本田竹曠のネイティブ・サンでキャリアを叩き上げはじめる天才リズム・ギタリスト、大出元信のシュアな裏拍刻みも地味に大活躍。また、「Too Much Mystery」(オーティス・クレイ)、「Mr. マジックマン」(ウィルソン・ピケット)、2曲のサザンソウル・カヴァーでは、つのだひろのダイナミックな併唱も聴くことができる。
井上つながりでコチラも。スパイダース、PYG、はたまた「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「寺内貫太郎一家」のテーマソングでおなじみの井上堯之。スペシャル・ゲストとしてミック・テイラー(g on M-1,2,5,6)も駆けつけた入魂の英スタートリング・スタジオ録音のアルバムから、クマ・ハラダ(b)&リチャード・ベイリー(ds)の強力なボトムを下支えにした、クラプトンも真っ青のレゲエ&ロールを。洋題は「It's Never Too Late To Try Again」。人呼んで”イノヤン・レゲエ”、歌詞・歌唱のピュアなバタクサさこそが逆に今旬。
和モノレゲエ党、心のベストテン第一位と言えばやはりコレ。渋谷系小僧たちにはキタキマユ嬢のカヴァーでおなじみの「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」、そのシングル盤のフリップサイドに収録された「ジャマイカン・アフェアー」。歌良しメロ良しリディム良しの天才・加藤和彦レゲエ製手工場の大看板チューン。2009年にSMEJのオーダーメイドファクトリー「アンコールプレス」企画でアルバム『ドゥー・ユー・リメンバー・ミー』がCD化された際、ボーナストラックとして収録されたが、そちらは当然ながらすでに廃盤。現在は上掲の『Relaxin' With Japanese Lovers』でしか聴くことができない。是非「タイムスリップグリコ 青春のメロディ」シリーズの8cmCDで復刻してほしいもの。しっかり2曲入りで。また、イチ早くワンウェイのロジックを用いたテレサ野田「トロピカル・ラブ」(編曲は坂本龍一)は、『Relaxin'...Vol.3』に収録されている。
1977年9月に渋谷・西武劇場で行なわれたパルコ主催・企画・制作の「石川セリ・コンサート」と、夢の企画舎主催「石川セリ・リサイタル」より厳選収録された初のライブ・アルバムから。「春を売った女」は、和モノレゲエ・ディガーはお世話になりっぱなしの南佳孝が73年に書いたオリジナル・レゲエ。セリさんのレゲエものでは、同じく南楽曲の「Midnight Love Call」、ニューウェイヴ・スカ歌謡「睫毛の先の21世紀」の陰に隠れがちだが、あまりにもストレートなワンドロップ・チューンということで本曲をないがしろにしておくわけにはいかない。1分弱のグダグダMCも微笑ましいぞ。アルバムは、スティーヴィーの「サンシャイン」、ポール・マッカートニーがペギー・リーに贈った「レッツ・ラヴ」、ディラン「天国の扉」といった洋モノ・カヴァーも充実しており、CD化が待たれるばかり。
藤谷美和子 「I LOVE YOU EVERYDAY &
生板にのった恋」 ('95) 作詞:藤谷美和子/作・編曲:Kim Bullard
シングル・コレクション
コロムビア COCA13617
クリスチャン・ラッセンと舞台演出家・岡村俊一(最終的にこちらとご結婚)との二股熱愛宣言前夜に放たれた、妖精・藤谷美和子のヤッピーレゲエの傑作。「Wow War Tonight」やジャパンスプラッシュ景気に沸いた当時の日本音楽産業界には、クラブ−茶の間−レゲエを一本の線でC調につないだかのような楽曲が氾濫した。「I LOVE YOU EVERYDAY & マナ板にのった恋」は、その代表的な1曲とも言えるが、主役シンガーの強度(注目の自作詞!)がそんな小喧しいガヤを一蹴。ビッグ・マウンテン「Baby I Love Your Way」、アスワド「Shine」、シャギー「Boombastic」なんかよりこっちの方が何十倍もアガるしグッとくる。