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TOP > My page > Review List of つよしくん
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3 people agree with this review 2010/02/20
今や世界のトップヴァイオリニストの一人となったムターの天才的な至芸を味わうことができる名演だと思う。ムターは、カラヤンの引き立てによって、一躍スターダムにのし上がったという経緯があるが、カラヤン存命中は、カラヤンの庇護の下にある名ヴァイオリニストといった地位に甘んじていたように思う。そんなムターが、本盤を録音したのはカラヤンの没後3年経った92年。漸く、ムターがその個性と才能を発揮し始めた時期の録音である。冒頭のチゴイネルワイゼンからして、ムターの個性全開だ。この曲特有の民族臭を全面に打ち出し、決して上品ぶったりはせず、恥じらいもなくこれ以上は望めないような土俗的な音色を出している。このような演奏をすると、単なる場末のサーカスのような下品さに陥ってしまう危険性もあるが、ムターは決して高踏的な芸術性を失うことはない。ここにムターの偉大な才能があると言えるだろう。他の諸曲もいずれも名演揃いであるが、特に素晴らしいのはカルメン幻想曲。サラサーテの編曲によるこの超絶的な技巧を要する作品を、ムターは完ぺきに弾きこなすだけでなく、例によってその個性的な演奏によって、この曲の持つ民族色をことさらに強調する。その芸術性の高さは、他のどの演奏にも勝るものであり、同曲随一の名演と言えるだろう。SACDマルチチャンネルによる高音質録音によって、ムターのヴァイオリンの弓使いの一つ一つが鮮明に再現されているのも、本盤の価値を大いに高めるのに貢献している。
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6 people agree with this review 2010/02/20
本盤は、ポリーニがショパン国際コンクール優勝後、表舞台から一時的に姿を消し、自己研鑽を積んでいた時期の録音である。したがって、ポリーニの若き日の記録ということになるが、既にここには、ポリーニの特徴である研ぎ澄まされた卓越したテクニックや、透明感溢れる強靭なタッチが見られる。ポリーニの演奏のこうした非の打ちどころのない卓越したテクニックについては、絶賛する者もいる半面、非人間的であたたかみがないとか、あるいは表層的で浅薄という批判が一部に根強くあるのは否めない事実である。しかしながら、本盤の演奏には、そうした一部にある批判をも吹き飛ばしてしまうような圧倒的な集中力や勢いがある。いずれも、後年にスタジオ録音を行うことになる諸曲をおさめているが、後年の演奏とは異なり、どの演奏にも、切れば血がでるような生命力に満ち溢れている。卓越した切れ味鋭いテクニックや、力強い、そして透明感溢れる力強い打鍵は、既にこの演奏の随所に伺えるものの、若さ故の生命力溢れる激しい燃焼度が、決してきれいごとではない、ポリーニの、引いてはこれらの諸曲を作曲したショパンの荒ぶる魂を伝えることになり、我々聴き手に深い感動を与えることになるのだろう。ポリーニは、前述のように、本盤の後、数々のショパンの楽曲を録音することになるが、本盤こそ、ポリーニのショパンの随一の名演と評価したい。
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2 people agree with this review 2010/02/20
これはクリーヴランド四重奏団員とブレンデルの息が合った見事な名演だと思う。シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」の様々な演奏の中でも、トップの座を争う名演と高く評価したい。成功の要因は、ブレンデルのピアノということになるであろう。既に引退を表明したブレンデルは、シューベルトのピアノ曲を好んで採り上げたピアニストであったが、必ずしも常に名演を成し遂げてきたわけではない。例えば、最後のピアノソナタ第21番など、他のライバル、例えば、内田光子やリヒテルなどの綺羅星のように輝く深みのある名演などに比べると、踏み込みの甘さが目立つ。いつものように、いろいろと深く考えて演奏をしてはいるのであろうが、その深い思索が空回りしてしまっている。やはり、シューベルトの天才性は理屈では推し量れないものがあるということなのではないだろうか。しかし、本盤のブレンデルについては、そのような欠点をいささかも感じさせない。それは、ブレンデルが、クリーヴランド四重奏団員の手前もあると思うが、いたずらにいろいろと考えすぎたりせず、楽しんで演奏しているからにほかならない。シューベルトの室内楽曲の中でも、随一の明るさを持つ同曲だけに、このような楽天的なアプローチは大正解。それ故に、本演奏が名演となるに至ったのだと思われる。クリーヴランド四重奏団員も、ブレンデルのピアノと同様に、この極上のアンサンブルを心から楽しんでいる様子が伺えるのが素晴らしい。
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1 people agree with this review 2010/02/20
若き日のワイセンベルクによるショパンのノクターン集であるが、いかにもワイセンベルクらしい明晰でなおかつ耽美的なアプローチを示している。もちろん、例えば第7番など、力強い打鍵も時折垣間見せはするが、全体的に見れば、重厚さとは殆ど無縁の柔和で繊細なイメージが支配していると言える。したがって、一部の音楽評論家によっては、女々しいとか不健康な官能美などと言った、ピアニストとしては決して有り難くない酷評をされているのも、あながち言い過ぎではないものと思われる。確かに、ノクターンは、ショパンのあまたのピアノ曲の中でも優美かつロマンティックな要素を持った楽曲ではあるが、それをそのまま等身大に演奏してしまうと、単なる陳腐なサロン音楽と化してしまう危険性がある。ショパンの音楽に、こうしたサロン的な要素があることを否定するものでは全くないが、むしろ、ショパンは、仮にノクターンのような小曲であったとしても、より高踏的な芸術作品を志向して作曲されたものと考えるべきではなかろうか。そのような観点からすれば、やはりワイセンベルクのような軟弱とも言えるアプローチにはいささか疑問を感じざるを得ない。いずれにしても、ノクターンというショパンの芸術作品に内包するエッセンスを我々聴き手に伝えるには到底至っておらず、うわべだけを取り繕ったなよなよとした浅薄な演奏に陥ってしまっているのは、はなはだ残念な限りだ。
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3 people agree with this review 2010/02/19
トスカニーニのワーグナーとしては、他にもっと状態のいい演奏はあるが、本盤は次の2点で大いに価値のある名盤ということが出来るだろう。その第1は、トスカニーニにとって2点しかない稀少なステレオ録音であること、第2は、トスカニーニによる最後のコンサートの記録ということだ。ステレオ録音という点については、さすがに臨場感が違う。昨年には、この演奏の数年前に演奏されたワーグナーの管弦楽曲集のXRCDが発売されたが、全く問題にならない。もちろん、本盤においても、録音の古さから微妙な音割れなども散見されるが、衰えは見られるものの随所にこれぞトスカニーニならではの本物のカンタービレを満喫できるのは、正に本盤がステレオ録音であるが故と言えるであろう。トスカニーニの最後の録音という点については、確かに、統率力に綻びが見られるのは否めない事実だろう。しかしながら、山崎浩太郎氏による懇切丁寧なライナー・ノーツによれば、タンホイザーの序曲とバッカナールの中途で指揮が止まったということであるが、それでもオーケストラによる演奏が滞りなく続けられたのは、巨匠ならではのオーラによるものと言えるのではないだろうか。したがって、いくつかの瑕疵は散見されるものの、決してトスカニーニの勇名を陥れるような駄演には決してなっておらず、むしろ、トスカニーニと手兵であるNBC交響楽団の強固な絆を感じさせる演奏として高く評価したい。なお、リハーサル風景もおさめられているが、トスカニーニのリハーサルの厳しさを認識させてくれるものとして貴重な記録であると言えよう。
9 people agree with this review 2010/02/18
アリスが、デビュー盤であるリストの超絶技巧練習曲集の次に選んだのは、それとは全く対照的なショパンのワルツ集であったのは少々意外であったが、これは実にすばらしい名演であり、あらためて、アリスの幅の広い豊かな表現力を思い知らされる結果となった。ショパンのワルツ集は、うわべだけの美しさだけを追及した演奏だと、陳腐なサロン音楽と化してしまう危険性があるが、アリスの手にかかると、実に高踏的な大芸術作品に変貌する。第1曲である華麗なる大円舞曲からして、他のピアニストの演奏とは全く次元が異なる個性的な解釈を見せる。中間部の魔法のようなテンポのめまぐるしい変化は、聴いていてワクワクするほどで、あざとさなどいささかも感じさせない。それどころか、どんなに奔放とも言える弾き方をしても、常に気品に満ち溢れているのが、アリスの最大の長所と言えるだろう。「子犬のワルツ」の愛称で有名な作品64の1も、他のピアニストなら軽快なテンポであっという間に駆け抜けてしまうところを、アリスはややゆっくりめのテンポで優雅に演奏している。そこに漂う高貴な優美さには頭を垂れざるを得ない。「別れのワルツ」で有名な作品69の1も、決して感傷的には陥らず、決して気品を失わないエレガントな抒情を湛えている。ボーナストラックのノクターン嬰ハ短調も、深沈とした憂いのある、それでいて気品溢れる美しい抒情を湛えており、アリスの将来性豊かな才能が全開である。本盤のような名演に接すると、他のショパンの諸曲もアリスの演奏で聴いてみたいと思ったのは私だけではあるまい。
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10 people agree with this review 2010/02/17
リストの超絶技巧練習曲集は、文字通り超絶的な技巧を要するとともに、ダイナミックレンジの広さやテンポの激しい変化など非常に振幅の激しい楽曲であり、弾きこなすためには卓越した技量はもちろんのこと、幅の広い豊かな表現力を要する難曲と言える。このような難曲をデビュー曲に選んだだけでも、アリスのピアニストとしての底知れぬ才能とその器の大きさを感じざるを得ない。第1曲や第2曲のたたみかけるような火の玉のような激しさはどうだろう。打鍵も力強く、快速のテンポにいささかの弛緩もしない圧倒的な技量にも圧倒される。第3曲で、我々は漸く、アリスが女流ピア二ストであることを知ることになる。ここの抒情は実に美しい。有名な第4曲のマゼッパは、堂々たる威厳に満ち溢れており、とても19歳のピアニストとは思えないスケールの雄大さだ。第5曲の鬼火の軽快さも見事だし、第6曲の幻影や第8曲の狩りの重厚さも特筆すべきだ。長大な第9曲の回想は、女流ピアニストならではの繊細な抒情が感動的だし、第11曲の夕べの調べの正に夕映えのような美しさや第12曲の寂寥感の嵐にも大きく心を揺り動かされる。ボーナストラックのラ・カンパネラも繊細さと重厚さのコントラストが見事な名演だ。このように、アリスは、既に豊かな表現力を備えており、将来楽しみな逸材と言えるだろう。今後のアリスの更なる発展をあたたかく見守りたい。
10 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/02/16
美しき水車小屋の娘は、冬の旅とともに、シューベルトの二大歌曲集であるが、冬の旅が、死に際しても安住できないという救われぬ苦悩や絶望を描いた深みのある作品であるのに対して、美しき水車小屋の娘は、青年の恋と挫折を描いたみずみずしいロマン溢れる作品であり、冬の旅と比較すると相当に親しみやすい作品と言えるだろう。このように、青年を主人公とした楽曲や、親しみやすさと言った作品の性格を考慮すれば、音声についてはテノールで歌うのが最も適しているのではないかと考える。美しき水車小屋の娘には、本盤の数年後の71年に録音されたフィッシャー・ディースカウ&ムーアによる定評ある名盤もあるが、バリトンということがネックであるのとともに、フィッシャー・ディースカウのあまりの巧さ故の技巧臭が、いささかこの曲のみずみずしさを失ってしまっているのではないだろうか。その意味では、本盤の録音後、36歳という若さでこの世を去った不世出のテノール歌手、ヴンダーリヒによる演奏こそ、歴史的な名演と評価するのに相応しいものと言えるだろう。どのナンバーをとっても決してムラがなく、みずみずしい抒情に満ち溢れており、この曲の魅力を存分に味わうことができるのが素晴らしい。ピアノのギーゼンも、ヴンダーリヒの歌唱を見事に支えている。併録の3つの歌曲も名演であり、こうした名演を聴くと、ヴンダーリヒの早すぎる死が大変残念でならない。
8 people agree with this review 2010/02/15
アリスの初の協奏曲録音であるが、とても20歳のピアニストとは思えないような威風堂々たる名演だ。チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、第1楽章冒頭のホルンの朗々たる旋律の後に続く、女流ピアノストとは思えないような強靭な打鍵は、聴き手を圧倒するのに十分な迫力を有している。特に、低音の残響の響かせ方など、はじめて耳にするような新鮮さだ。それでいて、チャイコフスキーならではの抒情豊かな旋律も、繊細であたたかなタッチで弾いており、その硬軟併せ持つバランス感覚が見事である。カデンツァにおける、卓越した技量に裏打ちされたゆったりとしたテンポによる重厚な演奏は実に感動的で、アリスのピアニストとしてのスケールの大きさを感じさせる。第2楽章の繊細な抒情も美しさの極みであり、終楽章も、例えばアルゲリッチのようにアッチェレランドをかけたりすることはしていないが、強靭な打鍵にはいささかも不足はなく、それでいて、どんなに力奏しても気品を失うことがないのは、アリスの最大の長所と言えるのかもしれない。リストのピアノ協奏曲も、重厚さと繊細さのコントラストが見事な秀演と評価したい。特筆すべきは録音の素晴らしさであり、ピアノの音が実に鮮明な音質で捉えられているのは大変嬉しい限りだ。アリスという美貌の若きピアニストの前途洋洋たる将来性に今後も大いに期待したい。
8 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/02/14
パーヴォ・ヤルヴィの最近の好調ぶりをあらわした大変美しい名演だと思う。もちろん、表面だけを繕った美演は他にも多くあるが、パーヴォ・ヤルヴィの素晴らしさは、内容においても彫りの深い精緻な演奏を行っているという点にある。第1楽章冒頭の低弦の響かせ方からして、ただならぬ雰囲気を感じる。その後は、決して絶叫したりはせず、ひたすら精緻に丁寧に曲想を描いて行くが、それでいて安全運転の印象を与えることは全くない。ショスタコーヴィチならではの透明感溢れるオーケストレーションを透徹したアプローチで丁寧に表現していく。第2楽章は一転して劇的な表現であり、その迫力はなかなかのものであるが、ここでも金管がわめくという印象はいささかも受けない。第3楽章は更に精緻な表現を徹底している。ホルンなど決して割れた音を出させず、抒情溢れる美しさには比類がないものがある。終楽章は、テンポがめまぐるしく変化するなど、なかなかまとめるのに難渋する楽章であるが、パーヴォ・ヤルヴィは決して雑には陥らず、ここでも精緻で丁寧な表現に徹し、全曲の締めくくりに相応しい見事な演奏を行っている。トルミスは、ショスタコーヴィチを崇敬していた、同郷のエストニアの作曲家であるとのことだが、このような意外性のあるカプリングを行ったのも、パーヴォ・ヤルヴィの抜群のセンスを証明するものと言えるだろう。録音は、テラークならではの鮮明な名録音と評価したいが、できれば、SACDマルチチャンネル盤を出して欲しいと思ったのは、私だけではあるまい。
1 people agree with this review 2010/02/14
ナタン・ミルシテインとカラヤンという極めて珍しい組み合わせのブラームスのヴァイオリン協奏曲の登場だ。私の記憶が正しければ、両者ともにその後、同曲を二度にわたりスタジオ録音を行っている。カラヤンは、フェラス、ムターと録音しており、特にムター盤は名演の誉れが高いが、いずれも、若きソロ奏者を引き立てつつも、どちらかと言えば、カラヤンペースでの演奏と言った傾向があったのは否めない事実である。ところが、本盤では、両者ともにその個性をぶつけあっており、その後の両者の発展を予感させる佳演ということが出来るのではなかろうか。当時、カラヤンはベルリン・フィルを手中におさめ、飛ぶ鳥勢いだったこともあり、演奏にエネルギッシュな力感が漲っていたことも功を奏しているのかもしれない。ミルシテインのヴァイオリンも、艶やかで色彩豊かな音色は比類がなく、カラヤンもミルシテインのヴァイオリンを活かしつつ、ルツェルン祝祭管弦楽団を生命力溢れる力強さで統率して、地にしっかりと足がついた力感溢れる重厚な演奏を繰り広げている。録音は、50年代のモノラル録音であり、特に、オーケストラの音色がやや荒っぽく聴こえるが、ヴァイオリンの音色は鮮明に捉えられており、欲求不満を感じるほどではない。シベリウスは、ヨッフムにとっても珍しい選曲であり、ドイツ風の野暮ったさを感じないわけではないが、決して凡演ではなく、ギンぺルのヴァイオリンともどもなかなかの好演を繰り広げていると言えよう。
1 people agree with this review 2010/02/13
パーヴォ・ヤルヴィの勢いはとどまるところを知らない。音楽業界の世界的な不況の下で、CDの新譜が殆ど発売されない事態に陥っているが、そのような中で、気を吐いている指揮者の最右翼が、このパーヴォ・ヤルヴィということになるだろう。もちろん、粗製乱造はなはだ困るが、パーヴォ・ヤルヴィの場合は心配ご無用。凡演になることは殆どなく、常に一定の水準以上の演奏を行っているというのは、パーヴォ・ヤルヴィの類まれなる資質をあらわしていると言える。本盤は、そうしたパーヴォ・ヤルヴィの類稀なる才能が発揮された名演だと思う。惑星は、緩急自在のテンポ設定の下、重厚さや繊細さなどを織り交ぜた手練手管を行っているが、それでいて小賢しさは皆無。正に聴かせどころのツボを心得た職人芸のなせる技とも言うべきであり、我々が惑星という楽曲に求める魅力を存分に味わうことができる名演と高く評価したい。パーセルの主題による変更曲とフーガも、各変奏の描き分けが実に巧みであり、音の強弱やテンポ設定なども絶妙。フーガの終結部の盛り上がりも圧倒的な迫力であり、作曲者による自作自演盤にも匹敵する超名演と評価したい。録音もテラークならではの鮮明なものであるが、一つだけ不満を一言。テラークはSACDから撤退したのであろうか。本盤がSACDならば、本名演が一段と輝くことになったのにと思うと、少々残念な気がした。
2 people agree with this review 2010/02/13
プレヴィンによる2度目のカルミナ・ブラーナであるが、初演者のヨッフム盤にも匹敵する名演だと思う。ヨッフム盤の方を演奏の質においては上位に置きたいが、録音にいささか不満を感じる点があり、録音まで含めると、本盤はヨッフム盤と同格に位置する名盤と言っても過言ではあるまい。プレヴィンは、ポピュラー音楽の世界からクラシック界に進出してきた経歴を持っているだけに、楽曲の聴かせどころをしっかりとおさえたわかりやすいアプローチを行うのが特徴だと言える。このカルミナ・ブラーナも、そうしたプレヴィンの明快なアプローチが見事に功を奏しており、どの箇所をとっても曖昧模糊には陥らず、各部をくっきりと明快に描くのに腐心している。このようなアプローチは、陰影に富む楽曲だと、表層だけをなぞった浅薄な演奏に陥る危険性を孕んでいるが、曲が、当該アプローチとの相性がいいカルミナ・ブラーナであったということが、本演奏を名演にした最大の要因であると考える。特筆すべきはウィーン・フィルと国立歌劇場合唱団、ウィーン少年合唱団の見事な好演であり、本名演をより一層魅力のあるものにするのに大きく貢献している。録音は、前述したように通常CDでも十分に満足すべきであるが、かつてSACDマルチチャンネル盤が発売されていた。私も、中古のSACD盤を入手したが、通常CDを上回る実に鮮明な音質で、本名演の真の魅力を味わうには最良のものだと考える。可能ならば、中古CD店で探されることをお薦めしたい。
3 people agree with this review 2010/02/13
ジュリーニが得意とした諸曲を組み合わせた演奏会の記録である。演奏当時は69年。ジュリーニが円熟の境地に達する少し前の演奏であり、若さ故のエネルギッシュな生命力溢れる劇的なアプローチをしていることが特徴と言えるだろう。冒頭のセミラミーデからして、当日の演奏会の開始を告げるのに十分な迫力ある演奏を聴かせてくれる。シューベルトの第4は、後年にバイエルン放送交響楽団と録音を行っているが、演奏の性格のあまりの違いに唖然としてしまう。演奏の完成度という点に鑑みれば、バイエルン放送交響楽団との演奏に軍配を上げるべきであるが、本盤には若き日のジュリーニならではの劇的な凄まじいまでの迫力があり、特に、この曲の副題でもある「悲劇的」を体現して見せたという意味においては、高く評価しなければならない名演であると言える。フランクのブシュケとエロスは、後年のベルリン・フィルとのスタジオ録音と比較しても遜色はない重厚かつ堂々たる表現を行っており、ライブならではの熱気を考慮すれば、本盤の演奏の方をベストの名演としたい。海は、ジュリーニが何度も録音している十八番とも言うべき曲であり、同時発売の78年のライブ録音が超名演であるだけにどうしても分が悪いのは否めないが、若き日のジュリーニならではの生命力溢れる激越な表現には大いに見るべきものがあると言える。録音は、60年代後半のライブ録音とは思えないほどの鮮明さだ。
ジュリーニは決してレパートリーの広い指揮者とは言い難いが、その分、レパートリーとした曲については完成度の高い名演となることが多い。ジュリーニがレパートリーとした宗教曲は、バッハのミサ曲ロ短調やブラームスのドイツ・レクイエム、モーツァルト、ヴェルディ、そしてフォーレの3大レクイエムなどが掲げられるが、ジュリーニが指揮した宗教曲の最高峰は、何と言ってもロッシーニの最高傑作の呼び声の高いスターバド・マーテルということになるのではなかろうか。ジュリーニは同曲をフィルハーモニア管弦楽団とスタジオ録音しているが、天下のベルリン・フィルを指揮した本盤こそ、ライブならではの熱気も相まって、随一の名演と高く評価したい。ジュリーニの決して奇を衒うことのない真摯で誠実なアプローチと、同国人であるロッシーニへの深い愛着が、これだけの名演を生み出したと言うべきであり、独唱陣も合唱も、そしてベルリン・フィルもジュリーニの指揮の下、これ以上は求められないほどの最高のパフォーマンスを示している。併録のジェミニアー二やガブリエリの諸曲も名演であり、録音も70年代後半のライブとしては十分に合格点を与えることができる。
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