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TOP > My page > Review List of つよしくん
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4 people agree with this review 2010/12/19
究極の高音質SACDの登場だ。本演奏は、世評があまりにも高いせいか、数々の高音質化への取組がなされてきた。SHM−CD盤、ルビジウムカッティング盤、そしてマルチチャンネル付きのSACD盤など、様々な種類の高音質化CDがあるが、今般のSHM−CD仕様のシングルレイヤーSACDは、これまでの高音質化CDとは一線を画する次元が異なる究極の高音質CDと高く評価したい。ピアノの音が、硬質ではなく、どこまでもソフトに響くのが見事であり、これだけ音質がいいと、演奏自体の評価も随分と違ったものにならざるを得ない。本演奏は、世評は非常に高いのであるが、私としては、感情移入が全く見られない機械じかけの無機的な音質が、ショパンの詩情をスポイルしてしまっているのでないかと思っており、あまり高い評価をしていなかったというのが正直なところである。しかしながら、今般の高音質CDを聴くと、ポリーニのピアノタッチが決して機械仕掛けの無機的なものではなく、非常にコクのある内容豊かな印象を受けた。力強い打鍵から、繊細な抒情に至るまで、表現の起伏の激しい、血も涙もある演奏を行っており、本演奏に対して、私がこれまで抱いていた悪感情は完全に吹き飛んでしまったのである。それだけ、本CDの音質は素晴らしいのであり、ポリーニの他のCDも、同様の仕様で高音質化すれば、随分と評価が変わってくるのではないかと思った次第だ。
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5 people agree with this review 2010/12/19
極上の高音質SACDの登場だ。この演奏には、これまでマルチチャンネル付きのハイブリッドSACD盤が登場していたが、当該盤は、マルチチャンネルの質があまり良くなく、やや焦点のぼけた音質とあいまって、臨場感にいささか欠ける面があった。ところが、今回のSHM−CD仕様のシングルレイヤーSACDはそもそも次元が異なる音質と言える。同じSACDでもここまで違うとは信じられないほどだ。マルチチャンネルは付いていないが、音場が拡がる素晴らしい臨場感といい、音質の鮮明さといい、これ以上は求め得ないような究極の高音質CDと言えるだろう。アルプス交響曲の高音質CDとしては、数年前に発売されたヤンソンスのマルチチャンネル付きSACDがあるが、マルチチャンネルが付いていないことを考慮すれば、本盤と同格の音質と言えよう。演奏も素晴らしい名演。なによりも、ウィーン・フィルの美音を存分に味わうことができるのが本演奏の最大の魅力だ。ティーレマンも聴かせどころのツボを心得た見事な指揮ぶりであり、最近急増しつつあるアルプス交響曲の名演の中でも、トップの座を争う名演として高く評価すべきものであると考える。併録のばらの騎士組曲も名演。これを聴くと、ティーレマンが、オペラハウスから叩き上げてスターダムにのし上がっていくという、独墺系の指揮者の系列に連なる指揮者であることがよく理解できる。
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2 people agree with this review 2010/12/19
ポリーニとシューマンの相性は非常に良いように思われる。本盤も、そうした相性の良さがプラスに働いた素晴らしい名演と高く評価したい。シューマンのピアノ曲の本質は、内面における豊かなファンタジーの飛翔ということになるが、ショパンやリストのような自由奔放とも言える作曲形態をとらず、ドイツ音楽としての一定の形式を重んじていることから、演奏によっては、ファンタジーが一向に飛翔せず、やたら理屈だけが先に立つ、重々しい演奏に陥ってしまう危険性がある。ポリーニのピアニズムは、必ずしもシューマンの精神的な内面を覗き込んでいくような深みのあるものではないが、卓越した技量をベースとした透徹したタッチが、、むしろ理屈っぽくなることを避け、シューマンのピアノ曲の魅力を何物にも邪魔されることなく、聴き手がそのままに味わうことができるのが素晴らしい。いささか悪い表現を使えば、けがの功名と言った側面がないわけではないが、演奏は結果がすべて。聴き手が感動すれば、文句は言えないのである。交響的練習曲もアラベスクもいずれ劣らぬ名演であり、ピアニストの個性ではなく、楽曲の素晴らしさだけが聴き手にダイレクトに伝わってくるという意味では、両曲のベストを争う名演と言っても過言ではないと思われる。SHM−CD化による音質向上効果もめざましいものがある。
2 people agree with this review
ポリーニのピアノの評価の前に、アバドについて言及しておきたい。アバドは、私見であるが、これまでの様々な名指揮者の中でも、最高の協奏曲指揮者と言えるのではなかろうか。これは、指揮者としては必ずしも芳しい評価とは言い難いが、これまでのアバドの協奏曲演奏における実績に鑑みれば、そうした評価が至当であることがわかろうというものである。例えば、チャイコフスキーやラヴェル(旧盤)におけるアルゲリッチとの競演、レコードアカデミー賞を受賞したブラームスの第1番におけるブレンデルとの競演など、各楽曲におけるトップの座を争う名演の指揮者は、このアバドなのである。この他にもポゴレリチなど、様々なピアニストと名演を成し遂げてきているが、競演の数からすれば、本盤のポリーニが群を抜いていると言えよう。ただ、ポリーニとの競演が、すべて名演になっているかと言うと、必ずしもそうではないと考える。同じイタリア人でもあり、共感する部分もあるかとも思うが、ポリーニの詩情に乏しいピアノのせいも多分にあるとは思うが、ベートーヴェンやブラームスの全集など、イマイチの出来と言わざるを得ない。しかしながら、本盤は名演だ。その第一の要因は、アバドの気迫溢れる指揮と言わざるを得ない。本盤の録音は、ベルリン・フィルの首席指揮者選出直前の指揮でもあり、アバド、そしてベルリン・フィルの演奏にかける情熱や生命力の強さが尋常ではないのだ。アバドは、ベルリン・フィル着任後、大病を患うまでの間は、生ぬるい浅薄な演奏に終始してしまうが、本盤の指揮で見せたような気迫を就任後も持ち続けていれば、カラヤン時代に勝るとも劣らない実績を作ることができたのにと、大変残念に思わざるを得ない。指揮やオーケストラがこれだけ凄いと、ポリーニのピアノも断然素晴らしくなる。シューマンにおいては、ポリーニの根源的な欠点である技術偏重の無機的な響きは皆無であり、アバドの指揮の下、詩情溢れる実に情感豊かなピアノを披露していると言える。シェーンベルクにおける強靭な打鍵も、技術的な裏打ちと、ポリーニには珍しい深い精神性がマッチして、珠玉の名演に仕上がっている点を高く評価したい。SHM−CD化による音質向上効果も素晴らしい。
3 people agree with this review 2010/12/18
これは素晴らしい名演だ。1970年代前半までのポリーニは、圧倒的な技量を全面に打ち出しつつ、そこに、若さ故の生命力、気迫に満ち溢れた勢いがあり、聴き終えた後の充足感が尋常ではない。1970年代後半になると、技量の巧さだけが際立った無機的な演奏が増えてくる傾向にあり、特に、同じシューベルトのピアノソナタ第19番〜第21番をおさめたCDなど、最悪の演奏と言えるだろう。それに比べると、本盤の第16番は、段違いの出来と言える。シューベルトのピアノソナタ特有のウィーン風の抒情の歌い方や、人生の深淵を覗き込むようは深みには、いささか乏しい気もするが、それでも、この力強い打鍵の圧巻の迫力や表現力の幅の広さは、圧倒的なテクニックに裏打ちされて実に感動的だ。シューマンのピアノソナタも名演。シューマンのピアノ曲は、一歩間違うと、やたら理屈っぽい教条主義的な演奏に陥る危険性があるが、若きポリーニにはそのような心配はご無用。シューベルトと同様に、圧倒的な技量の下、透徹した表現で、感動的に全曲を弾き抜いている。SHM−CD化によって、音質も相当に鮮明になっており、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
3 people agree with this review
5 people agree with this review 2010/12/18
これは評価の難しい演奏だ。ポリーニの研ぎ澄まされた鋭いタッチ。抜群のテクニックに裏打ちされたポリーニのピアニズムを、未来志向の新しい前衛的な表現と見るのか、それとも技術偏重の無機的な浅薄な表現と見るのかは、聴き手の好みにも大いに左右されるものと考える。私としては、どちらかと言えば、後者の考え方を採りたい。ベートーヴェンのピアノソナタの中でも難曲とされる第28番以降の5作品。これをポリーニは、一点の曇りもない完璧なテクニックで弾き抜いている。正に、唖然とするテクニックと言うべきで、場面によっては、機械じかけのオルゴールのような音色がするほどだ。このような感情移入の全くない無機的な表現は、ベートーヴェンのもっとも深遠な作品の解釈としては、いささか禁じ手も言うべきアプローチと言えるところであり、私としては、聴いていて心を揺さぶられる局面が殆どなかったのが大変残念であった。他方、これを未来志向の前衛的な解釈という範疇で捉えるという寛容な考え方に立てば、万全とは言えないものの、一定の説得力はあると言うべきなのであろう。それでも、やはり物足りない、喰い足りないというのが正直なところではないか。ポリーニには、最近は、バッハの平均律クラーヴィア曲集などの円熟の名演も生まれており、仮に、現時点において、これらの後期ピアノソナタ集を録音すれば、かなりの名演を期待できるのではないかと考える。SHM−CD化によって、音質はかなり鮮明になっており、その点は高く評価したい。
8 people agree with this review 2010/12/14
これは名演だ。ポリーニは、本盤から10年以上経って、アバド&ベルリン・フィルをバックに、2度目のベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音したが、全く問題にならない。2度目の全集は、アバド&ベルリン・フィルのいささか底の浅いとも言える軽い演奏と、ポリーニの無機的とも評すべき鋭利なタッチが、お互いに場違いな印象を与えるなど、豪華な布陣に相応しい演奏とは必ずしも言い難い凡演に成り下がっていた。本盤の場合は、先ず何よりもバックが素晴らしい。特に、第3番以降の3曲は、ベーム&ウィーン・フィルという最高の組み合わせであり、その重厚なドイツ風の演奏は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲演奏の理想像の具現化と言えるだろう。造型を重要視するアプローチは相変わらずであるが、それでいて、最晩年のベームならではのスケールの雄大さにもいささかの不足はない。第1番と第2番は、ベームが死去したために、指揮者がヨッフムになっているが、こちらも巨匠ならではのスケールの雄大さにおいて、ベームに決して引けをとっていない。ポリーニのピアノも、ここではバックのせいも多分にあるとは思うが、無機的な音は皆無。情感溢れるニュアンスの豊かさが見事である。SHM−CD化によって、音質はかなり鮮明になっており、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
8 people agree with this review
7 people agree with this review 2010/12/12
とてつもない超名演の登場だ。ヴァントは、ブルックナーの交響曲第8番を何度も録音しているが、その中でも、最高峰の名演は、最晩年のミュンヘン・フィル盤(2000年)及びベルリン・フィル盤(2001年)と言うことになろう。本盤は、手兵の北ドイツ放送交響楽団と組んだリューベック盤(1987年)と1993年盤の間に位置するライブ録音ということになるが、これら前後の録音をはるかに超えるのみならず、最晩年の2つの名演に匹敵する至高の超名演と高く評価したい。ヴァントのブルックナーは、厳格なスコアリーディングの下、楽曲全体の造型を厳しく凝縮化し、その中で、特に金管楽器を無機的に陥る寸前に至るまで最強奏させるのを特徴とする。特に、1980年代以前のヴァントには、こうした特徴が顕著にあらわれており、それ故に、スケールの小ささ、細部に拘り過ぎる神経質さを感じさせるのがいささか問題であった。そうした短所も1990年代に入って、神経質さが解消し、スケールの雄大さが加わってくることによって、歴史的な名演の数々を成し遂げるようになるのだが、本盤は、そうした最晩年の名演の先駆となるものとも言える。この当時のヴァントとしては、かなりゆったりとしたテンポをとっているが、必ずしもインテンポには固執していない。それどころか、思い切ったテンポの変化を見せており、これは、最晩年のヴァントにも見られないような本演奏だけの特徴と言える。それでいて、ブルックナーの本質を逸脱することがいささかもなく、ゆったりとした気持ちで、同曲を満喫することができるというのは、ヴァントのブルックナーへの理解・愛着の深さの賜物と言える。金管楽器の最強奏も相変わらずであるが、ここでは、やり過ぎということは全くなく、常に意味のある、深みのある音色が鳴っているのが素晴らしい。録音も、各楽器が鮮明に分離するなど、望み得る最高の音質と言えるところであり、この歴史的名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
7 people agree with this review
6 people agree with this review 2010/12/12
素晴らしい名演だ。R・シュトラウスのアルプス交響曲は、今では演奏機会が多い人気曲になっているが、1970年代までは、ベーム(モノラル)、ケンぺ、メータ、ショルティと言ったごく限られた指揮者による録音しか存在しなかった。LP時代でもあり、50分にも及ぶ楽曲を両面に分けなければならないというハンディも大きかったものと考える。ところが、1981年にカラヤン盤がCDとともに登場するのを契機として、今日の隆盛を築くことになった。この曲には、優秀なオーケストラと録音が必要であり、あとは、指揮者の各場面を描き分ける演出の巧さを要求されると言える。それ故に、カラヤン盤が今もなお圧倒的な評価を得ているということになるのだが、本盤も、そうした要素をすべて兼ね備えていると言える。コンセルトへボウ管弦楽団は、全盛期のベルリン・フィルにも勝るとも劣らない圧倒的な技量を誇っていると言えるし、録音も、マルチチャンネル付きのSACDであり、全く文句のつけようがない。ヤンソンスも、聴かせどころのツボを心得た素晴らしい指揮を行っており、正に耳の御馳走とも言うべき至福のひとときを味わうことが可能だ。併録のドンファンも、アルプス交響曲と同様、録音も含め最高の名演の一つと高く評価したい。ヤンソンス&コンセルトへボウ管弦楽団は、首席指揮者としてのデビューの演奏会の演目として、英雄の生涯を採り上げたが、本盤には、その当時からの両者の関係の深まりを大いに感じることができる。
6 people agree with this review
パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルハーモニーの黄金コンビは、ベートーヴェンの交響曲全集においても、名演の数々を聴かせてくれたが、この新シリーズとなるシューマンの交響曲チクルスも快調だ。本盤は、その第一弾と言うことになるが、このコンビの素晴らしさを認識させてくれる名演と高く評価したい。ライナー・ノーツの解説によると、ここでは、ベートーヴェンの時と異なり、ピリオド楽器を用いていないとのこと。それでも、いわゆる古楽器奏法は健在であり、これまで聴いてきた他のシューマンの交響曲の演奏とは、一味もふた味も異なる新鮮さが持ち味だ。意表を突くようなテンポ設定、そして強弱の変化、金管楽器や木管楽器のユニークな響かせ方、粘ったようなレガートの絶妙さなど、息をつく暇がないほどの内容の濃い演奏になっているが、それでいて、やり過ぎの印象をいささかも与えることがないのは、ヤルヴィのシューマンの交響曲への深い理解と、芸術性の高さの証左であると考える。残る交響曲第2番及び第4番への期待が大いに高まる内容であるとも言える。録音も素晴らしい。マルチチャンネル付きのSACDは、鮮明で臨場感のある極上の高音質であり、このコンビによる名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
ショパンイヤーのトリを飾るのに相応しい超名演の登場だ。ルイサダの芸術家としての深みを存分に味わうことができるのが素晴らしい。バラードの思い入れたっぷりの弾き方のなんという素晴らしさ。これだけ崩して弾くと、演奏によっては、大仰さだけが目立って、楽曲の表層だけを取り繕った底の浅さを露呈する危険性もあるが、ルイサダの場合は、そのようなことは皆無。どこをとっても詩情豊かな抒情に満ち溢れており、そのフランス風のエスプリ香る瀟洒な味わいは、現今のピアニストにおいては、ルイサダだけが描出し得る至高・至純の表現と言えよう。緩急自在のテンポ設定や間の取り方は絶妙であり、それでいて音楽の流れをいささかも損なうことがないのは、ほとんど驚異ですらある。大ポロネーズは、一転して堂々たる巨匠のピアニズムであり、その力強い打鍵と卓越した技量は、ルイサダの表現力の幅の広さを感じさせるのに十分である。夜想曲の2曲は、バラードと同様の表現であるが、感傷に陥ることはなく、高踏的な美しさを保っているのはさすがである。録音も素晴らしい。マルチチャンネル付きのSACDは、ルイサダの至高のピアノを鮮明、かつ臨場感溢れる音質で再現しており、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
5 people agree with this review 2010/12/11
これはなかなか評価が難しい演奏だ。本盤で素晴らしいのはウィーン・フィルの優美な演奏と言えるだろう。ポリーニの弾き振りということになるが、ウィーン・フィルは、後述するようなポリーニのピアニズムとは無関係に、いかにもモーツァルトならではの高貴な優美さをいささかも損なうことなく、見事なアンサンブルを構築していると言える。これに対して、ポリーニのピアノの音があまりにも硬質に過ぎるように思われる。評者によっては、透徹した鋭利なタッチなどと言うことになるのであろうが、これでは、聴き手にあまりにも無機的な印象を与えることになるのではなかろうか。少なくとも、モーツァルトに相応しいアプローチとは言い難い。したがって、ウィーン・フィルの優美な音色とは水と油の関係であり、ポリーニのピアノが非常に浮き上がって聴こえることになる。確かに、ポリーニのピアノは、スコアに忠実であり、その意味では間違いのない演奏なのであろう。しかしながら、ただでさえ音符の数が少ないモーツァルトの楽曲では、単にスコアを正確に弾いただけでは、演奏が極めて無機的なものに陥ってしまい、内容のない、浅薄で無味乾燥な演奏に成り下がってしまう危険性を孕むことを忘れてはなるまい。本盤は、そうした危険性に陥ってしまったところを、ウィーン・フィルの美演によって、何とか鑑賞に堪え得るギリギリの水準を保ったと言える。ピアニストとしては、はなはだ不本意な演奏ということになるのではなかろうか。
0 people agree with this review 2010/12/11
ショスタコーヴィチの15曲ある交響曲のうち、どの曲を最高傑作とするかについては、様々な意見があることと思うが、第8番を中期を代表する傑作と評することについては異論はないものと考える。第8番は、ショスタコーヴィチの盟友であるムラヴィンスキーに献呈され、なおかつ初演を行った楽曲でもあり、ムラヴィンスキーの遺した演奏(特に、82年盤(フィリップス))こそがダントツの名演であると言える。その他にも、ゲルギエフやショルティなどの名演もあるが、私としては、ムラヴィンスキーの別格の演奏には、とても太刀打ちできないのではないかと考えている。本盤のザンデルリングの演奏も、師匠ムラヴィンスキーの名演と比較すると、随分と焦点の甘い箇所が散見されるが、それでも、十分に名演の名に値すると考える。テンポは、ムラヴィンスキーの演奏と比較するとかなりゆったりとしたもの。あたかも、楽想をいとおしむかのようなアプローチであるが、それでも、柔和な印象をいささかも与えることはなく、全体として、厳しい造型を損なっていないのは、いかにも、東独出身の指揮者ならではの真骨頂と言えるだろう。音質は、ハイパー・リマスタリングによって、見違えるような高音質に生まれ変わった。かつて、SACDハイブリッド盤が出ていたが、音場の広さや鮮明さにおいて、本盤の方をより上位におきたい。
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7 people agree with this review 2010/12/11
晩年のクレンペラーならではのスケール雄大な名演である。クレンペラーは、フランクの交響曲においても、例によって、ゆったりとしたインテンポで楽曲を進めていくが、よく聴くと、インテンポというように単純に割り切れるものではなく、実にニュアンス豊かなコクのある演奏を行っているのがわかる。トゥッティの箇所においては、テンポを自在に動かして、各管楽器の強弱に微妙な変化を付けさせている。特に、木管楽器の響かせ方は、他の演奏では決して聴くことができない味わい深さがあると言えるところであり、いかにも巨匠クレンペラーの奥の深い芸術性を感じさせる。低弦の響きも実に分厚いものがあり、フランクの交響曲の、いわゆるドイツ的な要素を全面に打ち出した至高の名演と高く評価したい。本盤は、名演のわりには、長らく輸入盤でしか入手できなかったが、久々に、しかもHQCD化されて登場したのは大変歓迎すべきことであると考える。音質は、旧来の輸入盤と比較して、若干鮮明になるとともに、音場がより広くなったのも素晴らしい。しかしながら、先日、ついに、究極の高音質SACDがESOTERICから発売された。これは、HQCD盤を含め、これまでの従来盤の音質とは次元の異なる超高音質だ。マスター音源まで遡ったこともあるとは思うが、各楽器の鮮明な分離や厚み、そして音場の広がりの雄大さなど、我々が望む最高の音質がここにある。併録されているシューマンの第4ともども、究極の名盤と言うに相応しい。
16 people agree with this review 2010/12/09
これは素晴らしい名演であり、ポリーニとしても会心の名演と言えるだろう。ポリーニのことなので、冷徹とも言えるようなクリスタルなタッチで、バッハが記したスコアを完璧に再現することに腐心しているのかと思ったが、冒頭の第1曲の、温かみさえ感じさせる柔和なタッチに驚かされた。もちろん、スコアリーディングの鋭さについては、いささかの抜かりもないが、近年のポリーニには珍しいくらい、情感溢れる豊かな歌心に満ち溢れていると言える。そうした歌心の豊かさは、時折聴かれるポリーニの肉声にもあらわれていると言える。バッハの演奏におけるスタジオ録音で、ピアノとともに、ピアニストの肉声が聴かれる例として、グールドが有名であるが、ポリーニの場合、グールドのような個性的な解釈を売りにしているわけでなく、そのアプローチはあくまでもオーソドックスなもの。それでいて、四角四面に陥っていないのは、前述のようなポリーニの豊かな歌心と、この曲に対する深い理解・愛着の賜物であると考える。グールド、リヒテル、アファナシエフなどの超個性的な演奏を聴いた後、本盤を聴くと、あたかも故郷に久々に戻ったようなゆったりとした気持ちになるような趣きがあるとも言えるだろう。ピアノ曲と相性抜群のSHM−CD化による高音質効果も申し分ないものであり、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
16 people agree with this review
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