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Review List of フォアグラ 

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  • 0 people agree with this review
     2016/03/18

    遅いというよりのろいといったほうが合っている演奏。「キリエ」を聴きとおすのは苦行に近い。クレンペラーやジュリーニ、リヒターだって結構遅いテンポなのだが、シェルヘンの場合はそれでスケールの大きな世界を構築するわけでなし、必然性が希薄なため辛くなってくる。独唱陣も心に残る歌唱をしているのはメリマンだけであり、ナイトリンガーなんて笑ってしまうレベルだ。シェルヘンならなんでも聴きたいという人向け。

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     2016/03/17

    レハールの後年の作品はアンハッピーエンドが多いそうだが、この「フリーデリケ」も悲恋もの。「メリー・ウィドウ」に比べ、はしゃいだところはなく、しっとりとしたロマンティックな音楽だが、メロディーの豊富なところはさすがにレハールだ。演奏も優れている。ヘレン・ドナートはモンテヴェルディからヒンデミットまでこなす万能ソプラノだが、出てきた瞬間にぱっと明るくなるような美声と初々しさはいつもながらに魅力的。ワルベルクの指揮は、もっと濃厚にやってもいいかなとも思うが、それはミュンヘン放送管の限界なのかもしれない。

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     2016/03/05

    6つのパルティータはバッハの最高峰の曲集のひとつだが、驚くほど録音が少ない。平均律クラヴィーアやゴルトベルクとは比べものにならないばかりかイギリス組曲やフランス組曲よりも全然少ない。チェンバロではレオンハルトの旧盤くらいしか優れたものがなく(新盤はリピートを全て省略した淡泊なものになってしまった)、コープマンの録音は待望のもの。楽器や装飾に完全に満足したわけではないが、それでも現段階ではこの曲集の最高のものといってよさそうだ。コープマンも録音を熱望していたとライナーノーツに自身書いており、万全を期して挑んだのだろう。3番、4番と曲が深みを増すにつれ、幽玄といっていい味わいを醸し出しており、繰り返し鑑賞したい逸品である。

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     2016/02/25

    「エロイカ」と3つの序曲が壮絶な演奏。これだけで購入する価値がある。定評ある9番とワルシャワ・フィルとの7番も素晴らしい。戦後間もない時期であり、オケのコンディションも万全ではないが、指揮者、オケとも苦難な状況を音楽で乗り越えようとする鬼気迫るものがあり、技術を超えて胸を打つ。44年の8番が磁気テープ録音のおかげで良好な音質なのも嬉しい。

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  • 6 people agree with this review
     2016/02/06

    コヴァセヴィチのスティーヴン・ビショップ時代の集成。オリジナル・ジャケットの復刻は嬉しいが、裏ジャケとディスク面の復刻はなし。このあたりがソニーのこだわりとの差だが、音質はフィリップスの暖色系の音が再現され極めて良好であり、良しとしよう。ベートーヴェンとブラームスが中心で、デビューが「ディアベリ変奏曲」というのはまさに超本格派だが、フィリップスにはアラウとブレンデルというこれまた超本格派がおり、レパートリーが完全に被っていたためコヴァセヴィチは常に3番手扱いであった。アメリカ人で「スティーヴン・ビショップ」という名前なのも特に日本ではベートーヴェン弾きとして不利だっただろう。私もEMI時代以降に聴きこんでおり、フィリップス時代はアルゲリッチとのデュオとバルトークくらいしか聴いたことがなかった。このセットで驚いたのは、ピアノの音の美しさ。実に芯があって輝かしく、EMI時代よりはるかに良い。フィリップス録音のほうがEMIより優秀なのも一因なのだが、そのおかげでどれも大変な聴きごたえだ。ベートーヴェンはコンチェルトと初期、中期ソナタが素晴らしい。後期3大ソナタは作品110の第2楽章のようにテンポが速すぎるところもあり、もう一息。一方で、バガテルやバルトークのミクロコスモスがとてもいい出来で、こうした小品を味わい深く聴かせる腕はたいしたものだ。コリン・デイヴィスもベスト・パートナーであり、ベートーヴェンが特に優れた演奏。ブラームスの2番はオケともども一味欠けるか。ともあれ、コヴァセヴィチの実力を再認識させる出色のセットであり、お勧めしたい。

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  • 5 people agree with this review
     2016/02/01

    コパチンスカヤのチャイコフスキーは賛否が割れるだろう。私は否だ。言いたいことはたくさんあるが、一番問題なのはコパチンスカヤに品格が認められないことだ。チャイコフスキーを自分のエモーション表現の道具としか考えていないように感じる。しかもその表現の底が浅いため、最初は驚かされてもだんだんネタが割れてきてしまう。一方、「結婚」は目の覚めるような名演奏だ。爆発的な生命力に、自然に体がリズムをとってしまう。クルレンツィスは時に地声を混ぜ土俗性を加味するが、それがストラヴィンスキーの意図を外れることは全くなく、キレのある最高にスリリングな演奏をなしとげている。ここがコパチンスカヤとの「芸格」の違いだ。迷演と超名演のカプリング。迷うところだが、「結婚」だけで十分価値あることから満点とする。

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  • 9 people agree with this review
     2015/12/31

    音が良くなっている。「ロメジュリ」はダブルデッカがメタリックでやかましい音でがっかりだったが、このセットでは本来の奥行と透明性を回復し、決定的名盤として蘇った。他の演奏も録音も素晴らしく、面白くて聴きだすと止まらない。プロコフィエフの5番でこれほど様々な音が聴こえてくるものはないし、ドビュッシー、ラヴェル、フランクも最高クラスの名演。「ポーギーとベス」も優れた演奏だが、ラトルのグルーヴ感はない。マゼールはノリで指揮することが全くなかったことが伺える。ブラームスも正統派の演奏にみえて随所に仕掛けが用意されており、こういうところをあざといと感じる人もいるだろう。しかし、それも含めてここには絶好調のマゼールとデッカ録音の絶頂が記録されている。生で聴いたこのコンビはむしろCBS録音の音に近かったが、マゼールの時に切れ味が鋭すぎ音楽の膨らみを失ってしまう欠点をデッカの圧倒的な色彩の録音がカバーし、相乗効果で最高の録音芸術になったと思う。マゼールがCBSに移籍して間もなくデッカは崩壊し、マゼールも大きな壁に突き当たることとなり、その音楽も変貌。バイエルン放送響とのブラームスなどけれん味しかない演奏で驚かされた。晩年にマゼールは復活するのだが、音楽業界不況で出ている録音が少ないのは残念。

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  • 1 people agree with this review
     2015/12/23

    リヒテルのこの2曲は、圧倒的にDG盤が支持されているが、彼のピアニズムの凄みを味わうのなら断然このメロディア盤だろう。音が悪いので敬遠されているのかもしれないが、昔聴いていたものよりかなり音質改善もされていて鑑賞に支障ない。雄渾でスタティックなムラヴィンスキーと垢ぬけないザンデルリンクの指揮者の対比も面白い。

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  • 2 people agree with this review
     2015/11/27

    作曲家の吉松隆が6番を「銀河鉄道交響曲」と呼んでいたが、尾高の演奏はまさにその表現として理想的なものだ。各楽章のリズムの刻みは「夜汽車」を連想させ、終楽章で「夜汽車」のリズムが戻ってくると、なんとも切ない気持ちで一杯になる。この曲の名演の一つといえよう。7番も同様に極めて内省的な演奏だが、この曲には大自然と人の営みの先に宇宙への飛躍もある。尾高&札幌響の真面目で丁寧な演奏では、そこまでたどり着けなかった印象も残る。札幌響には弦のさらなる厚みと表現力を求めたい。

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  • 1 people agree with this review
     2015/11/12

    ヒンデミットは、フーガ、パッサカリアばかりで理屈っぽく金太郎飴的という誤解がまだ残っているが、本当はハードボイルドなかっこいい音楽を書いた人だ。30年代末に書かれた作品では「シンフォニック・ダンス」やヴァイオリン協奏曲とともにもっと評価されていい曲。シュタルケルは気に入っていたようだが、確かに彼にぴったり。一方、プロコフィエフについてはシュタルケルはヒンデミットより下と言っているが、そんなことはない。超絶技巧を交えながら曲想がどんどん変遷し、強烈なロマンティシズムとドライなタッチが交錯する実に面白い曲であり、70年代にはまだその面白さが理解されていなかったのかもしれない。この時代に既にラウタヴァーラを取り上げているのもちょっと驚き。シュタルケルの演奏はどれも素晴らしいもので、この3曲の代表盤といっていいだろう。録音も鮮明。

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  • 12 people agree with this review
     2015/10/24

    「リーダイ」の愛読者だった父がクラシックに興味がないのに見栄で購入したベートーヴェン交響曲全集。書斎の飾り物となっていたレコードを小学生の時に引っ張り出して聴いたのが私のクラシック入門になった。チャールズ・ゲルハルトの解説も何度も読んだ。これが私のベートーヴェンの規範であり、だからこそフルトヴェングラーを聴いた時の衝撃は大きかった。なんだこの、のろい、重苦しい演奏は、こんなのベートーヴェンじゃないと思ったものだ。今ではフルトヴェングラーの素晴らしさももちろん理解しているが、どちらが好きかと言われればレイボヴィッツだ。私と同様の経験をしている方も少なくないようなのも嬉しい。演奏はどれもいいが、特に3番、4番は大好きである。時代を切り開いていく前衛としてのベートーヴェン。ロイヤル・フィルも優秀。今回のスクリベンダム盤では、ベートーヴェン以外のリーダイ、RCA録音が初めてまとめられたのだが、ロイヤル・フィル以外は偽名オケやスタジオ・オケばかりで演奏も玉石混交。(なぜか今回1枚のみパリ音楽院管弦楽団が正式名称になっている。それにしてもインターナショナル交響楽団てなんやねん。)このうちロンドンの2つのスタジオ・オケ(ロンドン新響、ロンドン・フェスティヴァル管)のレベルが低いのが残念。「春の祭典」はリズムもボロボロ。レイボヴィッツがブーレーズの師匠というのが信じられない演奏だ。ロイヤル・フィルとのものはどれもよく、パリ、ローマのオケのものも独特の面白みもある(グロボカールのソロが有名なボレロなど)が、評価は星4つが妥当だろう。でも、ベートーヴェンの価値を含めて満点にしたい。

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  • 10 people agree with this review
     2015/10/19

    プロコフィエフ交響曲全集以来、キタエンコ&ギュルツェニヒは絶好調だ。現在、ロシアものでは最高のコンビだろう。このチャイコフスキーも実に素晴らしい。とにかく1曲1曲聴き終えての充実感が凄い。特別個性的な表現はとらないのだが、どの曲も真摯で高い音楽性と生命力に溢れている。5番が白眉で、3番、6番、マンフレッドが次ぐ。キワモノの7番ですら充分聴かせる。管弦楽曲も名演ぞろい。録音も超優秀であり、価格も安く、広くお勧めしたい。

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  • 1 people agree with this review
     2015/10/14

    LPの縦開きジャケットが復刻されていることだけで感涙ものだ。「ペトルーシュカ」はバーンスタイン盤とブーレーズ盤がほぼ同時期に発売され、中学生だった私は大いに迷った。バーンスタイン盤は、虚ろなペトルーシュカのジャケットが魅力的だし、バーンスタインのレクチャー・ボーナスLPが付いているのもポイントだったが、結局1911年版を聴きたくてブーレーズを購入。バーンスタイン盤は暫くしたら買おうと思っていたら廃盤になってしまった。ブーレーズ盤がLP-CDと時代を経ても発売され続けたことからみても、多くの人は私と同じ行動を取ったのだろう。このジャケットを見るのは数十年ぶりだ。演奏は、エネルギッシュでストレート。同じニューヨーク・フィルでもブーレーズの幻想的な演奏とは随分違う。版の違いによるところもも大きいのだろうが、ここでの生命力が溢れ出んばかりの演奏はブーレーズに負けず劣らず素晴らしいものだ。

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  • 6 people agree with this review
     2015/10/08

    第2集と同じく全て持っているのに買ってしまった。だが、買って良かった。音質改善が著しいからである。特に「春の交響曲」。デッカから出た時はあまりの劣悪な音にたまげ、いくら初演の歴史的ライヴでもこれはメジャーが出すものではないと憤慨したものだが、このスクリベンダム盤では悪い音なりに音楽が聴こえてくることに驚いた。他にもテープの経年劣化によりフラッターのあるものがもともといくつかあったが、この盤では音の鮮度を落とさず目立たないように処理されている。小さくノイズが入る部分もあるので、板起しでカバーしたところもあるのかもしれない。それにより際立つのがデッカの録音の優秀なこと。第2集のフィリップスと比較すると明らかだが、モノーラルとしては最高水準だろう。デッカは鮮明ではあるが、音が痩せて聴こえる難点もあったが、ここではそういう問題は全くない。オケが超優秀なせいもあろうが。演奏の素晴らしさについては他のレヴュアーの方が書かれており繰り返さないが、初めて聴く方は驚くに違いないものであることは一言添えておきたい。

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  • 2 people agree with this review
     2015/10/05

    プライがデッカにリート・リサイタルを録音していたことは知らなかった。ヴォルフの機知の音楽はフィッシャー=ディースカウの最も得意とするところだが、正反対のタイプであるプライは正攻法で歌い、見事な出来を収めている。ムーアのピアノの力も大きい。あまり歌われないプフィッツナーも優れた演奏。「孤独な娘」は、これぞプフィッツナーというべき名曲で、ポップらの女声によるものもあるが、プフィッツナーはやはり男声のほうがふさわしい。リヒャルト・シュトラウスでの天衣無縫の歌唱はプライならではの聴きものだ。近年のリート歌手はフィッシャー=ディースカウの影響が強すぎ、センテンス毎に表現を細分化させてしまうが、本来の歌の楽しみは、このプライのようなおおらかなものではないか、と思っている。

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