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0 people agree with this review 2024/09/22
内容は良い筈だが、日本語解説付きとはいえ1枚4,000円とは。。流石に買う気が起きない。
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8 people agree with this review 2024/09/22
垂涎の正規録音だが、フルプライスの2枚組で、1枚は60分のドイツ語のリハーサルで文字起こしさえないというのはあまりではないか?せめて、文字起こしして英訳を付けるのが当然だろう。それがなしでフルプライスの2枚組では、正直買う気が起こらない。
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28 people agree with this review 2021/01/09
分からない人には分からない演奏だと思うし,嫌いな人は嫌いだろう。その魅力をいくら説明しても恐らく無意味だ。だから議論しようとは思わないが,星一つの評価だけが残ってしまうのは如何かと思い敢えて投稿。サバールと彼のオケは,最近のピリオド・オケが目指している方向とは正反対の方向を志向している。洗練と滑らかな演奏ではなく,原始の姿,生々しい音を目指し,自発的アンサンブルに任せる部分と指揮者が締めるべき部分とを切り分け,演奏の生命力を高めるという方向性を明快に示しているのだ。ピリオドが当たり前となった今,ノリントンがLCPを率いてピリオド・オケで古典以降の曲を演奏するというインパクトを,改めて聴き手に与えたかったのだと考える。アンサンブルは雑なのではなく,自由に振る舞う部分とサバールが締める部分をしっかり演奏し分けているということだ。これを快感と感じられなければ,この演奏は受け入れられないだろう。
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4 people agree with this review 2019/12/26
熱心なファンにとっては,これまでのリリース分との重複は膨大になるでしょうし,一方持っていない人はそれ程熱心なファンではない可能性も高いという状況下,全てSACD,日本語解説・対訳付きといっても,80枚組・132,000円⇒@1,650円。。。このご時世,総額,単価とも高過ぎて,このセットに手を出す人は何人いるのだろうと考えてしまいます。私にはとても手が出ません。
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1 people agree with this review 2019/08/11
ヤナさんの仰るとおり。ネット上の字幕(紙への印刷物を含む)と画面の両方を睨みつつ鑑賞するのはナンセンスでしょう。できる方もあられるかもしれませんが,普通はヤナさんの仰るとおりだと思います。また「マクロプロス事件」のBDが日本で売れたかどうかだというご意見があるようですが,そもそも参考になるような過去事例は殆どないでしょうし,演奏者の違いや視聴者の興味の広がり等を勘案すれば,特にこの作品の映像商品の過去の売れ方など参考にならないでしょう。売れるかどうか不安であれば,字幕無しの中途半端な商品を売る意味はありません。この価格帯のクラシックの映像商品は,飲料や食品のような「トライアル消費」は期待できません。また韓国語,中国語の字幕付きなのに,日本語字幕無しという商品に対しての日本の消費者の印象は悪いでしょう。ますますマーケティング上のマイナス材料です。ディストゥリビューターは,まずマーケティングを見直すべきだと思います。
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3 people agree with this review 2019/02/26
ああ,何と素晴らしいシューマンだろう!ゴーティエ・カプソンの艶やかで歌に満ちた,それでいて一本筋が通った極上のチェロに,老巨匠ハイティンクとECO,アルヘリッチ,ルノー・カプソンと豪華な共演陣を起用したシューマン集。協奏曲では,ハイティンクが,テンポは遅いものの信じられないような生命力でオケをリードし,カプソンは思いの丈を吐露するかのような,甘美なまでに美しく,かつ力強く切々とした歌を紡ぐ。ハイティンクがオケから引き出す,室内オケとは思えない程充実した音楽共々,私がこれまで聴いたこの曲の最上の演奏だ。アルヘリッチと共演した幻想小曲集,ルノー・カプソンが加わった幻想小曲集等はルガーノ音楽祭ライヴからの再発売だが,こちらもアルヘリッチの慈母のような温かみに溢れたピアノと,ルノーのゴーティエと気心の知れたアンサンブルが美しい限り。 初発の協奏曲1曲を聴くだけで,このアルバムを買う価値はあると思う。
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5 people agree with this review 2018/11/06
うーん,私はこれは苦手です。ヴェンツァーゴは,ブルックナーも全く駄目でした。この人の音楽と合わないんだな,と思います。 このサイズのオケでブラームスをやること自体は,マッケラス以降珍しくないと思いますが,この演奏はサウンド自体が非常に個性的です。全ての曲の全ての場面で常に弦楽器を前面に出そうとしており,ブラスなどは「sempre mf-mp」という印象で,ブラームスが意識してブラスを目立たせようとしているところでも,常に弦楽器の裏で目立たないように鳴っています。一番極端な例は,セレナード第1番の第1楽章,ホルン・ソロが伸びやかで田園的な,魅力的な主題を歌い,他の楽器は5度音程の単純なリズム伴奏を奏している部分。何とこの部分のホルン・ソロもほぼp〜mpの音量で寧ろ「目立たないように」演奏されていて,この曲の明るさや沸き立つ生命力のようなものが全く感じられません。交響曲も同様で,常に弦楽器を目立たせるため,ブラスが相対的に弱められています。これは,バランス上オケの弦楽器が弱すぎる(オケの能力の問題?)ことに問題があると感じます。どの曲を聴いても,箱庭的で,同じバランスで演奏されるブラームスは,私は苦手です。なお,ティンパニのみピリオドを意識したと思われる部分がありますが,全体的にピリオド・アプローチは殆ど採り入れられていません。
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1 people agree with this review 2018/08/02
ルーティンに堕した凡演だ。LSOも「お仕事」としてこなしている。こんなにも心にに響かないスクリャービンは初めてだ。ブーレーズだってもっと聴きどころがあった。ゲルギエフに期待を持って聴くと、確実に裏切られる。
0 people agree with this review 2017/07/04
第1番について。前の方とは少々観点が異なるが,残念ながら正反対の感想を持った。まずオケの魅力が非常に薄い。第1楽章冒頭のFl.による主題提示は良く歌われていたが,弦楽器が出てくると「あれっ?」という感じで,音がばらけているし,痩せている。チェロも同様のばらつきを感じる上,柔らかい膨らみに欠け,浮き上がるべきがオケの中に埋没してしまっている。ブラスも線が細く,残響の少ない録音のせいか,特にTr.はそれ程強奏していないにも関わらず,サウンドに溶け込んでいない。従って,サウンド全体の纏まり(一体性)に欠け,若々しさだけが強調される結果となってしまった。機能面では健闘しているが,サウンドの魅力が伴わなければ魅力半減である。イギリスのオケとしては,LSO,BBCSOを別格として,元々個性があったLPOは勿論,RSNOやBBCPO等がオケとしての総合的能力を大きく伸ばしている昨今,中堅のRLPO,バーミンガム市SO,ボーンマスSO辺りがやや遅れを取っている感が否めない。 ペトレンコの解釈は,個人的にはごく普通の若手指揮者の若々しい演奏という印象を超えるものではなく,フィナーレのコーダもそれ程爆演とは思わない。全体として,古くはMTT/BSO盤(ロシア的情緒とはやや異なるが,私の愛聴盤。コーダの加速は強烈),スヴェトラーノフ/BBCSO盤,シナイスキー/LPO盤(BBC Music Magazineの付録)等と比較すると,これを選ぶ積極的理由が残念ながら感じられない。 第5番は,有名曲であるが故にオケの非力さが目立ち,ペトレンコの指揮もいろいろ工夫をしているが,残念ながらこの演奏を選ぶに足る魅力には至っていない。
0 people agree with this review 2016/08/04
評価の高いネゼ=セガンがBRSOを振ったマーラーであり,期待は大きかったが,残念ながら不満の残る演奏だった。 これまで彼の演奏は,ECOとのシューマン,ロッテルダムPOとのベルリオーズとR.シュトラウス,LPOとのサン=サーンスと聴いてきたが,サン=サーンス(これは曲の華麗さに流されることなく,細部まで神経を使っている上に結構熱く,見事な演奏)を除いて,どれもいかにも優等生的に聞こえる演奏だった。レーベルが複数に亘っているが,どのレーベルでも印象は変わらなかった。 この演奏も,それらと同様の感想を持たざるを得ない。若手だから,マーラーの第1だから,汗が飛び散るような熱演を・・などとは全く思わないが,どの一部分をとっても冷静そのもの,曲全体の構成をしっかり見通した上で,声部のバランスや細部の歌い回しまで気を配った演奏から受ける印象は,正に優等生的である。しかし,換言すると「今一歩曲の核心に踏み込まない」演奏と感じるのである。彼はこれまでの録音で,モーツァルトのオペラから後期ロマン派まで採り上げてきているが,多くは後期ロマン派の大曲であり,レパートリーの中心はそこにあるのだろう。しかしそうであれば,もう少し表現のダイナミックレンジ(音量だけではなく)を広げるとともに,音楽の核心を鷲掴みにして聴き手に突きつけるような演奏も聴きたいと思う。 それにしても,マーラーの第1はやはり難物だ。中期以降の交響曲と比較すれば,楽器同士の複雑な絡み合いや対位法的なパッセージは少なく,音の層が薄いため,判り易くとっつき易い一方,各パートが裸で演奏する部分が多く,特にホルンやトランペットは演奏能力がはっきり晒されることになる。この演奏でも,特にホルンはBRSOとしては出来が良いとは言えず(昔からパワフル路線ではないが,この曲ではもっとパートとして前面に出てほしいし,残念ながら各奏者の力量差も感じる),トランペットも音が軽くややルーティン的であり,オケを鼓舞するという印象ではないところが物足りなかった。 なおもう一点付け加えると,このBRKLASSIKシリーズのサウンドは,私個人としては線が細く,音場も箱庭的でこぢんまりしたものが多いように思う(ハーディング指揮のマーラーの第6もその例の一つ)。そのため,演奏のスケールが一回り小さくなったように私には聞こえる。興味深い演奏が多いだけに残念である。
6 people agree with this review 2016/05/16
1999年にこのオケが,ヴァンスカに率いられて初めてすみだトリフォニーHに登場した時の衝撃は今でも忘れられない。北欧の小都市の小さなオケである彼らが披瀝したのは,それまで聴いたこともない,緻密・精細で,あたかも一つの楽器が鳴っているかのように有機的な,しかもローカルでありながらローカリティに寄り掛からない,全く新しいシベリウス像だった。4夜のツィクルスに通い詰め,息をするのも忘れるほど夢中で聴き入った。客の入りはもう一つだったように記憶しているが,それが幸いして,当時の彼らにしか出せなかったであろう,楽員相互の聴き合いの賜物と思われる,全く濁りの無い音程による「究極のPP」を,身体全体を耳にして聴き取ることができた。 しかしながら,今回のカム盤を聴いてがっかりした。何だ,この焦点の合わなさは?自然体といえば自然体だが,アンサンブルの精度も落ちているし,オケ全体に強い表現意欲が感じられず,おおらかというより無神経に鳴っている印象だ。音量的にも「sempre mf」みたいなメリハリのないもので,ヴァンスカ時代の精緻さは全く影を潜めてしまっている。個人的に,元々カムという人の指揮は,私にはやはり少々無神経と感じられ,余り好きになれなかったのだが,今回のCD,更に東京オペラシティでのツィクルスを聴いて,「カムはカムで,基本的に昔と変わっていないのだ。」と思い知らされた。コンサート・ミストレスは,「マエストロは何をしても許してくれるので,私たちは自由に演奏できる」というような発言をしているようだが,果たしてそれで有機体としてのオーケストラが保たれるものだろうか?帝王のように君臨する必要はないが,プレイヤーがどんな演奏をしても許されるのでは,主張・方向性のはっきりした音楽にはならないのでは,と危惧する。尤も,それだけヴァンスカの指揮・指導が厳しいものだったのかもしれないが,それがあって初めて維持されていた,かつての素晴らしいラハティ・サウンドだったのではないだろうか。 なお,東京オペラシティの演奏会にはヴァンスカも来場していたが,彼は全く変貌してしまったかつての手兵をどう聴いたであろうか?
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0 people agree with this review 2015/07/23
評判のネゼ=セガンだが,私にはどうもロマン派を好んで振っている割には,冷静な計算が先に立って,内面から溢れ出る「こう表現したい」という止むに止まれる「思い」が伝わって来ない気がして,もどかしい。シューマンでも同様のもどかしさを感じたので,私とこの指揮者との相性が悪いでのあろうか。ロッテルダムのオケの,「敢えてもう一歩踏み込まない」美点(RCOAの演奏にもこれまた同様の印象を持つことが多いが,オランダのオケの共通点なのだろうか?)も,センスの良さを感じつつ,私には少々微温的に聞こえてしまう。なおサウンド全体の線が細く,アンサンブルに少々の甘さがあるのは,ネゼ=セガンの棒にも原因があるのではなかろうか?(なお私にとって「幻想」は,少年時代からの刷り込みで,内面的な熱さと高貴なセンスが同居した演奏―例えば,マルティノンの新盤―がより望ましい。)
0 people agree with this review 2015/03/26
久しぶりにこの演奏を視聴したが,この演奏が収録されてから既に10年という,バッハ解釈の深化・多様化において決して短いとは言えない年月を経たこともあり,やはりこの演奏は「他の誰とも違う独創的な演奏とまでは言えず,好演の一つ」という位置付けになるのではないかと感じた。ただし,映像付きの商品は少なく,映像自体が美しいため,その意味では十分価値がある。) それが結論なのであるが,この演奏のレビュワーの皆さんは,「ウエンジンのように、波動方程式を当意即妙に説明できるチェリストは、どれだけいるのだろうか?」(レコ芸の当該記事を読んでいない者には,残念ながら意味不明である。この演奏において,波動方程式といった,音響にかかる高度な数学的理論がどう当意即妙に実践されているのか,浅学非才の小生には悲しいかな全く分からない。これが理解できないと,この演奏の真価は分からないのであろうか?),「一聴するだけでアプローチが既存の誰とも似ていないことは一発で分かる」(この演奏発売時にも,この曲集については,アプローチの方向性の異なる膨大な数の録音が存在したと思われるが,このレビュワーはどの程度それらを聴いてレビューされたのか?),「上昇音型と下降音型は、どの旋法と解釈することで音の高さは異なる。これは基礎中の基礎。」(この曲集は,基本的に「旋法」ではなく○○長調・××短調といった「調性」に則っていると理解しているが,それらの調性毎に各音の音程が異なる(例えば純正調においては,調性毎に同じ音でも音程が異なるのは基本中の基本),ということではないのだろうか?また演奏者の解釈によって,同一小節内の臨時記号の付されていない音を,前の臨時記号を活かして弾いている例もあったと記憶しており,ルネ・バロ時代の音楽を演奏する場合,解釈(または,和声上の理由)によって何れを選択することもあるのではないかと,基本は基本として疑問を呈しておきたい。因みに,ルネ・バロの曲を演奏(合唱)する際に,楽譜の欄外に♯や♭が記載されていて,同一小節内で,前の音に付されたそれら臨時記号が有効である,と校訂されていることも少なくない)等,正しいかどうか俄かに判断できない難しい理論・議論を開陳される方が多く,それらを見ることによってこの演奏を敬遠するユーザーがおられるのではないか,と改めて感じたことを記しておきたい。
3 people agree with this review 2014/02/24
HMVレビューに書かれているとおりの,実に見事な演奏である。特に第1番は,私が40年以上前から聴き続けている「愛聴曲」であるが,マツーエフの演奏は,子供の頃からの私の理想の演奏像に極めて近いものである。久し振りに聴く序奏の,見事な重量感を伴った和音連打(この肉厚でソリッドな音は,現役の他のピアニストからは聞けないものだ),リズム感の良さ(3拍子の第3音を決して急がないのがいい。ここを早めに突っ込んでしまうピアニストが多いこと!)は「そうそう,これこれ!」と膝を叩いてしまう快演である。全曲に亘って,圧倒的テクニックで余裕を持って弾かれたマツーエフのソロは,どんなにスリリングでも危うさが皆無で,アンサンブル的にも極めて優れたものである。ペダルを控え目にして,細部まで弾き飛ばすことなく粒立ち良く弾かれているマツーエフのソロは混濁がなく,弦のテヌートを十分に活かしたバックに乗りつつ,それと見事な対照をなす。フィナーレ終結部はその最上の例であろう。(「弾き飛ばし」の多いベレゾフスキーには,マツーエフを見習って欲しいものだ。)第2番は,音楽的には第1番より劣ると思うが,マツーエフの充実したバランスのいいタッチから生まれる第1楽章第1主題の和声の動きは,初めて聴くような新鮮さを覚えさせる。第2番の特徴でもあるオケのソロ楽器との絡みも極上で,「この曲はこんな魅力的な曲だったんだ。」と再認識した次第。第2楽章は正に極上の室内楽だ。フィナーレの圧倒的高揚は言わずもがな。しかし無闇な「爆演」とは一線を画した節度のある締め括りである。ゲルギエフとマリインスキーのバックは,彼らのシンフォニック・レパートリーの演奏時にしばしば感じる,「やる気のなさ」「ルイーティン」感がなく,飽くまでコノンチェルトのバックであることを意識してソロを引き立てることを忘れず,オケのみの部分では十分に歌わせ,必要とあらば「爆演」になる直前まで盛り上げるなど,その味付けは心憎い限り。ソロ共々アンサンブルに対する心配りもしっかりなされており,ここには「オペラ指揮者ゲルギエフ」の経験が活かされていると評価したい。なお,SACDによる発売は有難く,マツーエフの強烈なタッチ,オケのダイナミック・レンジとも天井感なく味わえる。廉価でもあり,お勧めである。
1 people agree with this review 2012/04/19
最近,注目すべき演奏が相次いで発売されている「復活」だが,これはその中でも最高のものといっていいのではないか。(ユロフスキ盤も,指揮者の強烈なカリスマ性と凄いオケのドライブ能力が忘れ難い印象を残すが。)個人的には,ハイティンクのライヴ音源の中でも,BRSOとのブルックナー/第5と並ぶ最高峰と評価したい。近年のハイティンクは,精緻な彫琢と古典的品格を柱としつつ,必要とあらば意外な程高揚した,正に「巨匠」に相応しい演奏を聞かせてくれているが,この演奏は20年近く前のものであるだけに,若々しさと音楽の成熟とが絶妙にブレンドされていて,バスを基本とした正にドイツ的などっしりとした音楽造りでありながら,そこここに聴かれる踏み込んだ表現が,強い音楽的感興を呼ぶ。第1楽章冒頭(低弦)こそやや慎重な足取りで始まるが,直ぐに音楽が熱を帯びてきて,「これは凄い演奏だ」と実感させられることになる。ゼンパーオパーでのライヴ,しかもバンダ・ソロ・合唱を伴う作品の演奏でありながら,マスの力で押すのではなく,細部まで磨き抜かれた音楽が,この曲のライヴ録音としては最高水準と思われる録音と相俟って,かけがえのない記録となっている。そして私が強く感じたのは,この時期のSKDの音楽性・合奏能力が如何に素晴らしいものだったかということだ。シノーポリのファンの方には叱られそうだが,私見ではこの後のSKDは,シノーポリによって不似合いなラテン気質が植え付けられ,アンサンブルは緩く,個々の奏者のレベルは低下し,深みに欠ける音・不要な力みが感じられる演奏が多くなったように思う。この録音では,そうなる前のSKDの,高貴な音楽性・柔らかいサウンド・緻密な合奏(ライヴ故の瑕はあるものの),ドイツ的な芯の強さ,明瞭な弱音と絶叫とは無縁の迫力ある最強音・・といった様々な美質が聴き取れ,嬉しい限りである。個々のパートについて言えば,特にホルンを筆頭としたブラスのブレンドされたサウンドとテクニックは圧倒的である。ティンパニも音楽的で意味深く,立派の一言。厚くしっかりとオケを支え,重要な部分では十分な主張をするコントラバスも凄みがある。声楽陣では,J.V.ネスのアルトが,ヴィブラートを抑制した内面的歌唱で素晴らしいが,惜しむらくは,合唱(特に高声部)の輝きが不足することである。終結部に至る息の長いクレッシェンドは,歌劇場の合唱団らしく,もっと張りのある歌唱で盛り上げてほしかった。また,「銀盤の狼」さんの仰るとおり,これがSACD(サラウンド)で聴けたら,更に感動は深まったかもしれない。とはいえこれらは,全体としてこの素晴らしい演奏の評価を下げるようなものではなく,声を大にして多くの方に一聴をお勧めしたい。
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