橋本徹の『チルアウト・メロウ・ビーツ』対談 【6】
Thursday, July 21st 2011
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吉本:そしてミア・ドイ・トッドからのラスト3曲は、まるでアルゼンチン音楽のスピリチュアリティーを感じさせるテイストだよね。
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橋本:僕は今、こういうメディテイティヴな雰囲気に最も惹かれるんだよね。気づくとこの3曲はよくリピートしていたな。
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河野:ミア・ドイ・トッドはアメリカ西海岸の日系のアーティスト土井美亜さんですね。この曲はビルド・アン・アークのアンドレス・レンテリアとの共演によるインスト作品ということもありますが、彼女の最新アルバムはそれまでのソロ作品の延長にありながらも、若干趣の異なるコンセプチュアルでメディテイティヴな独特の雰囲気がありますよね。
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稲葉:この曲から次のドン・チェリーへは、いつ変わったかうっかりすると気がつかないほどに自然なつながりです。ドン・チェリーがタブラ奏者のラティフ・カーンと78年にパリで録音した1,000枚だけリリースされた貴重なアルバムからです。
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山本:オレゴンとか、やはりタブラ奏者のザキール・フセインがECMに残した『Making Music』のサウンドや、ノスタルジア77やカルロス・ニーニョの『Ocean Swim Mix』などにも通じますね。
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吉本:カルロス・ニーニョがプロデュースした、 J・ディラへの追悼の音楽にも共通する雰囲気を感じる。
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橋本:ミゲル・アットウッド・ファーガソンの指揮とアレンジでロサンゼルスで行われた、J・ディラの32回目の誕生日を祝うというコンセプトから生まれた『Suite For Ma Dukes』だね。確かにあれにも強く惹かれてインスパイアされているところはあるな。
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稲葉:そしてラストがビルド・アン・アークですね。これはタイトルどおりインプロヴィゼイション(即興)じゃないですか。それってヴィジョンを共有しないとできないですよね。
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橋本:この曲も自分の中では音の桃源郷、“蓮の花系”だね(笑)。ほんとうにだんだんとピースフルな幽玄の境地になってくる。
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吉本:魂を鎮めてくれる、沈思と瞑想のための音楽だね。
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橋本:ムビラ奏者のリチャード・クランデルの新譜のライナーに、病気の女性から、彼の音楽を聴いていて状態がよくなったという感謝のメールをもらったというエピソードがあって、世の中にはストレスや緊張が多すぎるから、自分の音楽でそれを減らせたらいいというメッセージが寄せられていたんだけど、このコンピもそんな風に届くといいなと思うよ。
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河野:そのエピソードはほんとうに素晴らしいですね。
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稲葉:この最後のピアノの音は、渇いた日常を潤し、疲れた心を慰撫しながらも、次に向かっているということを予感させる感じがありますよね。
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一同:おお、次回を予感させる言葉ですね。
- Chill-Out Mellow Beats
〜Harmonie du soir - 橋本徹(サバービア)監修の人気シリーズ「Mellow Beats」からスペシャル・イシュー。「夕べのしらべ」(Harmonie du soir = ドビュッシーの曲名)をテーマに、ドラマティックでロマンティックでスピリチュアルな心に迫る名曲が連なるチルアウト・メロウな一枚が登場!

橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・グラン・クリュ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは200枚を越える。NTTドコモ/au/ソフトバンクで携帯サイト「Apres-midi Mobile」、USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。


