暖炉の側で母親が子供に歌って聴かせるような優しさと暖かみがポップの魅力だ。これはボニーにもフレミングにもない味。前半は1983年のリサイタル。この頃から、ポップの声は重くなりはじめており、音程も時折、微妙にフラットになる。しかし、シュトラウス「万霊節」での真情のこもった表現は素晴らしい。後半はその3年前なので、声がより瑞々しい。ドヴォルザークでのほの暗い歌、ブラームスのしっとりとした味わいも印象的。ゲージもパーソンズの伴奏も説得力があるもの。

表情、仕草の細部が凄い。スカルピア殺害の直前、ゴッビが「どの道を通るのか？」と訊ねるシーンで、羽ペンでテーブル越しのカラスをぬらりと撫でる。また、カラスが十字架をゴッビの胸に置く直前、一瞬、天を仰いで祈るような目線をとる。オペラ史上最高の名優二人の貴重な記録だ。ピークは過ぎたとは言え、二人の歌にも圧倒的な説得力がある。ゼッフィレッリのカメラワークも計算されている。これは永久保存版。

発売元のサイトを見て収録曲を調べたのだが、２枚がジェフリー・パーソンズと組んだ歌曲集で、あとの２枚が、クルト・アイヒホルンなどと組んだアリア集だ。いずれも正規録音で音質も完全に期待できる。とにかくお薦め。

こんなに花のあるソプラノはいない。日本での人気はないが、諸外国では現在でも人気がある。

もしかして彼女は現在までに出演し評価されている以上に豊かな才能を持つ人ではないのか？こういう盤では多くの場合、そのオペラ全体の雰囲気や配役のイメージが湧きにくいものだが、これは各曲とも、その場面、状況、心理、全てを彷彿とさせる名唱揃い。この声、美声だったら、たとえ彼女の容姿がどうであれ、聴く。

シュヴァルツコップと並べることは異議あり!です。彼女のようなこれ見よがしの人工臭のないことがロットの特徴ではないでしょうか。この中に含まれる「ジョロルスタン女大公殿下」は2004/10-2005/1パリ・シャトレ劇場で彼女のタイトルロール、ミンコフスキー指揮で上演されることも注目、同劇場でのリサイタルDVD(TDK)も日本NTSC仕様の発売を期待したいものです。

ルチア・ポップが亡くなってもう１０年くらいでしょうか。悲報を聞いたとき、どうしてと驚いたのを未だに覚えています。ポップを初めて聴いたのは、クライバー指揮の「薔薇の騎士」でした。ミュンヘンで聴いたのは「ローエングリン」のエルザでした。彼女の可憐な歌声を満喫できるCDではないでしょうか？ もの凄く懐かしくなりました。

きれいなフランス歌曲を堪能できる今までありそうでなかったアルバム。 お勧めは「愛の小径」「私たちの愛」「ｲｽﾌｧﾊｰﾝのばら」「ｶﾃﾞｨｽの娘たち」あたりでしょうか。アントワネットの時代から近代までのパリを駆け抜けてたよう気分。フランス歌曲の美しさが唐澤の歌唱力でなお冴えます。

私は当レーベルの大ファンで毎度企画の品質の高さに感心していたのですが、このセットだけは大ハズレです。たとえ廉価であってもこのような劣悪な録音で消費者に無駄な時間を使わせるべきではないと思います。またこのレーベルのブランドにもキズがつきます。再度、企画直しを希望します。

以前のショルティとのアルバムをはるかに凌ぐ出来で、全てのアリアで完全にヒロインになりきり、オペラの魅力をアリアひとつで存分に感じさせてくれるのは天晴れとしか言いようがない。