ドヴォルザーク：交響曲第3番、第7番　マーツァル＆チェコ･フィル

新たなチェコ音楽の守護者
チェコ・フィル首席指揮者、マーツァルの来日記念盤！
ラトル/BPO、ゲルギエフ/VPO、ヤンソンス/ACOなど、錚々たる顔ぶれが並ぶ今秋のクラシック界ですが、東欧随一の名門オーケストラ、チェコ・フィルが10年ぶりに迎えたチェコ人首席指揮者マーツァルに率いられて来日、没後100年となるドヴォルザークの諸作品を演奏するのも大きな話題です。

　来日に合わせ日本発のクラシック・レーベルとして目覚ましいリリースを続けるエクストンから交響曲第3番＆第7番を収録したアルバムが登場。ドヴォルザークの後期三大交響曲のひとつに数えられる第7番は、公演曲目ともなっているため、このコンビがお国ものといわれる名曲をどう表現するのかファンの注目を集めるところです。

　マーツァルは1936年チェコのブルノ生まれ。1965年のブザンソン、翌66年のミトロプーロス指揮者コンクールを制覇、一時はチェコ・フィルの首席指揮者就任がほぼ決まっていたといいます。しかし、1968年の『プラハの春』の嵐により、チェコの民主化と自由化への道が閉ざされてしまうと西側へ亡命。以来、ケルン放響、ハノーヴァー放響、ミルウォーキー響、ニュー・ジャージー響など、世界各地のオーケストラで活躍することになります。長きに亘った海外での活動はマーツァルに世界的な評価をもたらしましたが、その間も彼の心は常にチェコ・フィルのもとにありました。そして35年の時を経て、2003年に念願のチェコ・フィル首席指揮者に任命。就任にあたりマーツァルは「輪はまさに閉じようとしている。私はここから出発し、そして今ここに帰ってきたのだ」とその思いを述べました。

　演奏はキリリと引き締まった堅固なフォルムが見事で、細部まで精緻に彫琢されたシンフォニックな表現は格調の高さをも感じさせます。また、管楽器の陰影深い音色や弦楽器の落ち着いたトーン、緩急のツボを心得たアクセントのつけ方など、音にもリズムにもチェコの音楽家ならでは個性が自ずとにじみ出ています。いたずらに民族色を強調するのではなく、曲自体にその美質を語らせるというマーツァルの自然体のアプローチは、純音楽的でありながらもチェコ音楽固有の美しさにあふれた第7番と絶妙な調和をみせ、説得力抜群の名演となりました。

　カップリングの第3番は、ドヴォルザークが書いた唯一の3楽章形式による交響曲。稀代のメロディー・メーカーであったドヴォルザークらしくその旋律は美しく親しみやすさに満ちていますが、オーケストレーション（2管編成）においては、第2楽章にハープ、第3楽章にトライアングルが登場するなど、リストやワーグナーの影響が顕著です。「チェコ音楽には、チェコ人、いや私でなければできない解釈がある」と主張するマーツァルと古きよき伝統を今に伝えるチェコ・フィルの今後に大きな期待を抱かせるリリースといえるでしょう。

　前作に引き続き、９６kHz/２４bitの高品位録音による５チャンネル・マルチ・サラウンドを含むDVDオーディオと通常CDとの超お買い得盤です。すべての楽器が表情豊かで、チェコ・フィルのスーパー・サウンドがリアルに生き生きと再現されます。まさにEXTONの真骨頂、必聴の1枚です。

・ドヴォルザーク：交響曲第3番変ホ長調作品10
・ドヴォルザーク：交響曲第7番ニ短調作品70

ズデニェク・マーツァル（指揮）
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

録音：2004年8月30-9月2日
プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホール


1CD＋DVDオーディオ ＜全2枚組＞
（DVD-A：第3番、第7番／CD：第3番、第7番）
DVD-A仕様
　音声：PPCM 24bit/96kHz 2ch/5ch 片面二層
マーツァル特典インタビュー収録