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うーつん さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/05/20

    鍵盤楽器の聖典を「before&after」で愉しめるのが最大のポイントであり、発見であろう。

      クラヴィコードを演奏した1枚目では、息子の教育のために書き溜めた小曲の中に平均律クラヴィーア曲集第1巻の「芽」を見つけることができ、2〜3枚目のディスクではオーケストラの如き多彩な音とゴージャスな響きを持つ三段鍵盤機構のチェンバロで平均律第1巻の「果実」を聴かせてくれる新鮮な構成。

      今年(2022年)に作曲300年の誕生日を迎える平均律第1巻を、できる過程・できた後で両方聴けるのは今までなかったのではなかろうか。しかもクラヴィコードとチェンバロの組み合わせ。聴いていて「バッハが自宅でクラヴィコードをかき鳴らし曲の構想を膨らませ、チェンバロでその成果・結論が演奏された」というようなバッハの作曲過程を垣間見る錯覚も感じられた。

      第1番ハ長調BWV846から第24番BWV869を番号順に演奏せず彼独自のやり方で披露するのも新鮮そのもの。Disc2の第1曲目 BWV846からしてかなり意欲的なテンポで奏され、その様子はさながら噴水から水が勢いよく噴き出るような瑞々しさを感じ、曲順の変更も相まって「お、次はこれが来るのか!」「あ、この角を曲がるとこんな風景があらわれるのか」と愉しく曲を追うことができるのもうれしい。レジスターの操作なのか、発音・撥弦のバリエーションも豊富で、もともと豊かな響きのこの名器がパートに分かれて自由に歌ったり、おしゃべりをしているかのよう。

      おそらく、今年あといくつか平均律第1巻がリリースされることだろう。当盤はその中に在っても、さらに過去のディスクと比較してもプログラミングの妙、使用楽器の音の良さと歴史的価値、演奏の充実さでひと際光彩を放ち続けるディスクであろうと思う。故に今まで同曲を多く聴いてきた方々にも満足を与え、知的好奇心をくすぐるものになるであろう。ぜひ聴いてみていただきたい。

      蛇足ながら…つい先日、バンジャマン・アラールのチェンバロ・リサイタル(5月11日、浜離宮朝日ホール)も聴いてきた。白シャツにニットタイ、上品なオレンジ色のジャケットとこげ茶色のパンツというフランス人らしいしゃれた服装で登場し、フランス、イタリアなど様々な音楽文化を吸収し作られたバッハの曲たちをていねいに演奏する姿を見て、バッハの音楽と共にさらに成長していくであろう彼の才能に触れることができて嬉しくなったことも書き添えておきたい。

      

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     2022/05/03

    全集の掉尾を飾るにふさわしい盤としておすすめしたい。

    なぜ3番(と1番)を全集のラストにしたのかは判らない。が、聴いてみて「これならラストに持ってくるのは正解だった」と感じた。感じた理由の第一は「勢いがある」、第二は「スリリングなノリの良さ」、第三は「冒険心が豊か」である。        

    第一:両曲とも一気呵成に聴かせる勢いが何よりすばらしい。前作や前々作にも共通するソロとオケ両者のフレッシュな勢いはここでも健在。    

    第二:畳みかけるようなノリのすばらしさと、グルーヴ感にも似た感覚に目が覚めるような感覚をもった。この演奏は他にあまりないテンションで、当然ながら他の盤に引けを取らない。    

    第三:ソロの演奏やオケへの受け渡しなど、曲ががっちり決まってしまっている4番・5番ではなかなかやりづらい即興的なひらめきや実験精神が終始充実しており飽きさせることがない。    

    作曲者自身のピアノ演奏で発表された当時のスリルやワクワク感はこんな感じだったのではと想像してしまう。「ベートーヴェンは今も生きている」と感じさせる一枚だと感じた。
    はなはだ表面的なレビューになってしまった。細かい部分がどのように凄くて愉しいかは聴いてみてほしい。

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     2022/04/20

    2022年4月17日、76歳でラドゥ・ルプーが逝去した。早すぎる引退、そして死。私が彼の実演に接したのは1度のみ。今でも大切な思い出として残っている。おそらくこの本で登場した音楽家たちもそれぞれの思い出を持っていることだろう。その思い出やルプーへの敬愛の気持ちを語っている。音楽家の「業績」を振り返るならCDなどの音楽を聴けばよい。しかし、ルプーのそれはその業績と比べると残念なほど少ない。(そのどれもが魅力的なディスクであるのは言うまでもない)


    ラドゥ・ルプーという名の音楽家・芸術家の人となり(ほんの一面にすぎないだろうが)を表すために集められた「素描集」。この本を読みつつ、彼の演奏したCDを合わせて聴くことで彼の死を悼みたい。

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     2022/03/31

     沈黙という名の空白の中にバッハの音符をはめ込んでいく、またはちりばめていく…数回聴いてそのような印象をもった。

     時間的にみるなら108分という演奏時間はたしかにべらぼうな印象を受けるが、聴いていると「遅い」という印象はない。リピートの有無の問題ではなく、上述のような音の配置が結果的に108分ということになったのかもしれない。残響の長い録音場所で演奏することで発せられた音が沈黙に還っていくようにも感じられる。装飾音についていうととても個性的。楽譜の記述によるのかロンドー本人のinventionなのか私には判らないが、それがあることで曲が不思議な煌めきと生命力を発するので、いろいろな方に聴いてみてほしいところだ。更に言うと、休止または無音も装飾音の一部になっているようにも感じる。沈黙と言うのか、沈思と表現するかは人それぞれだろう。 また、音楽を奏でると同時に詩を編んでいるような印象もなんとなく感じる。彼の名前(Rondeau)から連想してしまうのかもしれないが…。

     ふと思ったのは、こんなゴルトベルクならM.フェルドマンのピアノ曲どれか(「マリの宮殿」か「三和音の記憶」のどれか1曲あたり?)とカップリングしてみたら面白そうだなとも思った。一見、性格や思想がかけ離れていると思えるが、どことなく合いそうな気もする。両曲ともその長さで演奏者も聴く方も大変なのはまちがいないだろうが。

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     2022/03/19

    全ての楽器から鮮烈に音がほとばしる。聴いてまず思ったのがこれだ。奇抜なことをやっているという印象はない。聴いているだけだが、各奏者がすべての音を情熱をこめて「創造」しているのを眼前にしているような錯覚にとらわれてしまう。

     セッション録音でありながら、ライヴのような緊迫感とドライブ感がすばらしい。どんなに短いフレーズでも、テーマを縁取るような小さい音でも今まさに生まれたかのようなほとばしりを感じる。聴きなれたはずのベートーヴェンの交響曲が「生まれ変わった」かのように鮮烈に響き、かけめぐる。他のレビューにもあるように録音も秀逸。ドライすぎず痩せぎすにならず立体的で、モダン楽器によるフル編成のオーケストラにも引けを取らない迫力と推進力がある。それぞれの音がはじけながら聴こえ、「個の集合」といった趣で全体的にもバランスが取れている。ティンパニの縦横無尽の活躍は特筆もの。おそらく他のティンパニ奏者が聴いたら「ここまでベートーヴェンでやれたら本望」と羨ましがるのではないだろうか。

     「ベートーヴェンなんてもう食傷気味だ」と思われる方に、「古楽器演奏は痩せていて、とてもベートーヴェンのボリュームを期待するのは無理だろう」と考える方に、「より鮮烈なフレッシュな演奏を聴いてみたい」と希望される方にお薦めしたい。私自身が「宣伝レビューは話半分に考えておこう」とか、「今さら他のベートーヴェン交響曲全集といっても大して違いもないだろう」と高をくくって入手を遅らせていたが、良い意味で裏切られたくちなので余計にそう思う。

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     2022/03/12

     劇的な表現を前面に出すより、じわじわと哀しみや悲劇、そして救済を歌いだしているように感じた。冒頭からテンション全開にせず、イエスの磔刑とその死にクライマックスを置くことを重視しているかのようだ。もちろん他の盤でも同じだろうが他の盤のような動的な表現というよりはいくらか静的な印象を受ける。

      ディスク見開きの写真ではホールに半円を描くような配置になっている。楽器奏者は通常の配置よりもう少しソーシャルディスタンスをとり着席、歌い手はその後ろにこれもソーシャルディスタンスとったかなり距離のある配置。聴こえてくる音も左右それぞれ様々な方角から耳に入ってくる。響きは豊かだしさすがの合唱なのだが、先述のソーシャルディスタンス配置のせいだろうか歌によるメッセージが私の中では一つに収斂せず、あちこちに発せられてまとまってこないような印象を受けた。 

      福音史家やイエスなどの歌手は見事に思えたが、第20曲のアリアなど一部で少々表現に苦労している(?)ような印象も持った。私個人の印象として、(指揮者の希望によるのだろうか)無理に表現に傾くより、もっと音の流れがあった方が良いのでは? と感じる部分もあった。 少なくとも1986年アルヒーフへの録音盤では自然な流れでアリアが歌われていたのも確認してみた。  歌唱の経験もない私の聴き込み方がまだ稚拙なのかもしれないが、今の印象ではこのようになってしまう。

     古巣に戻り、満を持してのヨハネ受難曲だから悪かろうはずはない。それでも今ひとつ音楽が、そして歌がまっすぐに心に届いてこない、いくばくかのもどかしさも感じた。ガーディナーのDG復帰第一作なのだから…、と期待値が高すぎたのかもしれない。

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     2022/03/07

    真っ黒なソナタ、漆黒の幻想曲、真っ暗闇の夜想曲…。ポゴレリチの新しいショパンアルバムに、ダークというか黒一色のイメージをまず持ってしまった。 華麗なショパン、美しいショパン、いわゆるまっとうなショパンを期待するなら正直お勧めできないこともあらかじめお伝えしておきたい。

     異形な演奏なのは「彼のことだから」と予想(期待)はしていたがここまでくると黙りこむしかない。このディスクがダメとか受け付けないという意味ではない。むしろこんな演奏だからこそ聴きたかったのだ。力強いを通り越し禍々しいまでに強靭なタッチと、死を連想させるような異常な静けさを併せ持ち、独特な感性でショパンの「ダークサイド」、または「異世界のショパン」を抉り出すかのようなポゴレリチの新譜は好悪がはっきり分かれると思うので購入される際は充分考えてから(?)決めてほしい。私の意見を述べさせてもらうなら、当盤は充分に聴き応えのある評価になる。

     昔の録音「夜想曲 Op.55-2」は、ポゴレリチのショパン演奏の中でのお気に入りだった。退廃というのか死の香りというのか、他の演奏者では感じられない感覚があったが、その延長線上に当盤はあると思う。  以前、彼のコンサートでソナタ第3番を聴いたときの衝撃もすごかった。彼は何を考えているのだろう、どこを見つめているのだろうと迷ううちに演奏は終わっていたのだ。一度しか聴けないコンサートゆえ、彼の言いたいことを理解しようとする前に曲が終わってしまったのが悔やまれたが、こうしてディスクになったので繰り返し聴いてみてポゴレリチの世界に浸ってみたいと思う。決して心地よい世界でないのは解っているが、その中に「何か」が潜んでいるはずだ。それを探してみたい。

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     2022/02/23

    やや太めの音の線で丹念に語られた無伴奏と感じた。華美にならない丁寧な楷書体のような装飾音でまわりをふち取り、音の出だしから音が消えていくその刹那の瞬間まで弓づかいのコントロールが行き届いているのがすばらしい。 彼のキャリアからみればもっと技術的にいろいろ盛り込むことはできたと思うが、削るべきものを削り、余計な飾りや着こなしを脱ぎすてた、さながら禅僧の着こなしのような表現を選んだように感じる。(蛇足だが、パガニーニ国際コンクールでキャリアを勝ち取ったヴァイオリニストにバッハ無伴奏の名盤が多い気がするのは偶然なのだろうか…。)

     聴いた感覚として、パルティータとソナタではカヴァコスの接し方が異なる気がした。どちらもヴァイオリンで歌うという感じではないと思う。パルティータはダイアローグ(対話)、ソナタは思索(またはモノローグ?)という感じだろうか。パルティータではなんとなく音楽の構成や表現が、対話して何かを探求していくような姿勢に感じる。一方ソナタでは思索かモノローグで登場人物は一人。ひたすら心の内奥に視線を向けているような気がする。どちらかと言えばソナタ3曲の方に彼の本領がより表現されたように感じた。

    それほど多いとはいえないが私が聴いてきた「無伴奏」の中でも独特な孤高の姿を提示していると思う。お奨めします。

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     2022/02/16

     何も考える必要はない。すばらしいリュートから発せられる音楽に、ただ身を浸すだけでいい。本当にそう思える演奏と音質。甲高く、緊張感を発する音でなく、どことなくゆったり、身構えずに聴くことができる。

     もしかすると、バッハ自身もカントルの激務が終わった深夜、一日の最後に自室でつま弾いて楽しんだのかも…、と想像するのも一興。 おすすめの聴き方は、ほの暗くした部屋でソファーなどでくつろぎながら耳を傾けるやり方。バッハの時代に想いを馳せながら、または何も考えずにどうぞ。1992年に録音したリュート曲集(2枚組)も併せておすすめです。

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     2022/02/11

    50年(!)かけて醸し続けた吟醸ゴルトベルク。派手さはないが、実直に曲に向かい合ってきた氏の姿勢そのものが演奏に反映されているような気持ちで聴かせてもらった。

     吟醸=素材を吟味し、丁寧に作り上げる…音楽で使うのは間違いかもしれない。しかし、一音一音をじっくりと吟味しつつ、慈しみながら、まるで今新たに発見しながら弾いているような演奏には「吟醸」がぴったり合うような気がした。

     音は比較的大きくくっきり出てくる。装飾音をちりばめるより、音楽の自然な流れを壊さないようひとつひとつの音の重なりや構造に重点を置いて演奏しているように思えた。

     2枚にまたがるのでディスク交換で少し間をとってしまうのは当初マイナスかなと思っていたが、第15変奏でじんわりと終わり、ディスクを入れ替えて2枚目冒頭第16変奏 Overtureで新鮮な空気が流れ込んでくると「これもアリだな」と思える。2枚組はこういった活かし方もあるのですね。

     加えて、アンコール曲 BWV.699を紹介する時の、氏の声のなんと若々しいこと。若輩者の私が言うのもおこがましいが、ゴルトベルク変奏曲と共にすばらしい年輪を重ねてきた人物だからこその声と感じた。

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     2022/02/11

     オルガン、チェンバロ、クラヴィコードを愉しみ、バッハの音楽の幅広さを感じられる3枚組だ。

      1枚目はオルガン。誰もが知る「トッカータ ニ短調 BWV565」から壮大かつ華麗に始まるのが心憎い。演奏は早めで、音を伸ばして引きずらずサクッと楽想や音を変化させていく。あまり大げさに響かせず明るくのびのびとしたオルガンと感じた。刺激的なトッカータBWV565から始まり、コラール前奏曲で歌い、トッカータとフーガBWV540の壮大なドラマで幕を閉じて聴き応えは十分。

      2枚目はチェンバロ。第5集の主要演目であるトッカータを中心に軽やかに弾き進んでいく。トッカータは今まであまり聴いてこなかったがこうしてまとまった量で聴くと楽想のきらびやかさと即興的技術の冴えが問われる作品なのだろうか。現代のジャズにも通じそうなスリルと愉しさを満喫できる。

      そして3枚目はクラヴィコード。アルバム全体として大きく壮麗な音からディスクを替えるたびにミニマムで室内楽的に落ち着いてくるのも面白い。クラヴィコードでの演奏をCDで聴くのは初めて。なるほどチェンバロとも違う音色と空気感が面白い。どことなく、チェンバロにリュートとツィンバロンのテイストを加えて3で割ったような朴訥な音色がするものと知ることができた。楽器の音はかなりこじんまりしているということだが、CDで聴いているので楽器のすぐ傍で聴かせてもらっているようなごく私的な室内楽を愉しむ感覚だ。セバスティアン・バッハも仕事が終わって自室でリュートやクラヴィコードなどを愉しんでいたのだろうか。

      一つだけ注文としてあげたいのは解説書の中身。せっかく初登場の楽器もあるのだからもう少し楽器の写真の撮り方や量を工夫してもらいたい。解説書にはクラヴィコードの鍵盤部分アップが数枚のみ。楽器全体が写ったものや演奏中の写真などがそろっていたらよかったのにと思った。このシリーズは様々な楽器を使い分けていくのでも画期的なのだからオルガンでもチェンバロでも収録場所全体が目で楽しめるような写真が入ってくれたら嬉しいです。

      挑戦的な作品、壮麗な作品、即興的な作品、ひとりでつま弾くような作品を楽器を替えつつ広く聴けるのでお薦めしたい。 

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     2022/01/30

     必聴かつ必読のディスクとしてお奨めしたい。
     作品の性格ゆえか人を寄せ付けないような厳しさをイメージして入手した。しかし、実際に聴いてみると音は温かく明晰で丸みもあり、少なくとも「隔絶の感」というイメージはない。判り易く言うと「聴きやすい」のだ。音列の変化と派生・発展が美しい調和をもって響きかけてくる気がするのだ。詳しい評価は耳の良い他の方々のレビューを待ちたいところ。おそらくこの作品に初めて取りかかる方にも聴き込んでいる方にもそれぞれ評価されるような演奏ではないだろうか。

      どうしても「フーガの技法」というとバッハ最晩年の作曲技法の極北と構えて作品に挑むパターンになるように思う。もちろん、それだけの覚悟をもって対峙しないと取り組めない作品なのだろう。ところが渡邊順生(と崎川晶子)両氏の手によって聴き応えと「聴く愉しみ」も兼ね備えたディスクに仕上がっていると思う。

      そして解説書のボリュームと質の高さがすばらしい。渡邊順生氏の丁寧な説明文は「買ってよかった」と思える充実した内容なので学ぶ価値の高いディスクとしても薦めていきたい。「初期稿(自筆稿)」と「印刷稿」別の聴く順番やCDトラックのプログラム指南まで添えてある位なのだ。どの順番で聴こうとその価値に違いが出るわけではない、むしろいろいろな聴き方をすることで作品へのアプローチも感想も増えてくることだろう。

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     2022/01/09

    幾分禁欲的で、カチッと硬めのチェンバロの音色(と私は感じた)が心地よい。 演奏ペースは中庸とゆったりの中間位だろうか。少なくとも聴いていてせわしなくなる感じはない。複雑なテクスチュアのうつろいを愉しむのにちょうどよい塩梅の演奏と思う。

     鈴木雅明によるパルティータやフランス組曲などの演奏は聴いていないが、当盤の曲目と楽器の相性は良いように感じた。今となっては指揮者・鈴木雅明の方が通りが良いが、やはり氏のチェンバロ(またはオルガン)演奏を聴くのもまた愉しい。チェンバロ演奏は今までも聴いてはきたものの、ここ最近、特にはまっておりこのディスクもことあるごとに聴かせてもらっている。

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     2022/01/09

    チェロを愛し、チェロに愛された音楽家・ビルスマの生の声が楽しく、分かりやすく入ってくる。打ち解けた間柄である聞き手(渡邊順生氏)との対談だからこそ率直な、そしてユーモアも交えた内容が引き出され、読む方も自然に惹きこまれるかのようだ。音楽の書(でもあるわけだが)としてよりも豊かな人生を歩いた音楽家の道のりを振り返る書として読む方が適切なのかもしれない。

      ビルスマのディスクで私が好きなのはブラームスのソナタ、六重奏曲、シューベルトのピアノ・トリオ、アルペジオーネ・ソナタ&「ます」五重奏曲にバッハの無伴奏とボッケリーニの五重奏曲など。聴いていて目(耳?)が覚めるような鮮烈さと同時にホッとできるようなあたたかさも持ち合わせているのが特徴かな…と考えていた。実際にこの本を読んでみて「演奏がその人となりを表しているのだ」と納得することができた。特にボッケリーニについては昔、なんの前情報もなく購入し時々日曜日などに聴くことがあった。曲自体は音楽の山も谷もないが、だからこそ心に穏やかに入ってくるような気がしたものだ。ようするに、聴いていて「ほっこり」できるのだ。本書を読んでみてボッケリーニへの愛情を知り、「このような演奏家だからこのディスクでほっこりできるのか」と思ったこと(「ほっこり聴けた」ことが氏の理想かどうかは定かではないが…)も書き添えておきたい。

      チェロを通して音楽と人生を謳歌したビルスマ。彼の音楽を愛する方はぜひ手元に置いていただきたい。バッハの無伴奏6曲についての興味深い解説もあるので無伴奏チェロ組曲が好きな方、チェロ演奏を、更にバッハや古楽をもっと知りたい方にも手を伸ばしていただきたい。おすすめです。

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     2022/01/06

    「初期作品」と侮るなかれ、若かりしバッハの意気軒昂ぶりがシュタイアーの演奏で再現されているのがすばらしい。もっと名曲やもっと後の作品を混ぜてもよさそうなところ、あえてのこのようなプログラミング。「バッハは初期でもバッハの魅力にあふれている」というシュタイアーのメッセージなのだろうか。実際、ここに収められている作品のフレッシュさ、元気と才気のほとばしりは尋常ではない。高いテンションで突き進む演奏と、粒立ちがはっきりしながら豪華なチェンバロの音響は「初期作品」という言葉を忘れさせてくれる。おすすめです。

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