HDM (HMV × DESTINATION MAGAZINE) 【Vol.8】

HDM 〜 HD SELECTION

天才、サンダーキャットの肖像


拡張するブラック・コンテンポラリーが人々に笑顔とダンス、そして歌を届ける瞬間


ジャコパストリアスを引き合いにだされ、同業者のフリー ( レッド・ホット・チリ・ペッパーズ ) が手放しで絶賛する天才ベーシスト、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー。フライング・ロータス作品の常連であるのは周知の通りだが、彼のミュージシャンとしての経歴を掘り下げるとこの冒頭分が決して大袈裟ではないことが分かるだろう。

ダイアナ・ロスやテンプテーションズのバック・バンドとしてモータウン全盛期を支えた名ドラマーを父に、スタンリー・クラーク・トリオの一員としてグラミー賞受賞歴を持つジャズ・ドラマーを兄に持つ音楽サラブレットとして 16 歳の時にはすでにリオン・ウェアのツアー・メンバーにその名を連ねている。その後もロバート・グラスパーやオンマス・キースなど現在のブラック〜ジャズ界隈のハイライトにはその名を必ず見かけたはずだ。ここに加えなければならいのが、彼が LA ハードコア・パンクの顔スイサイダル・テンデンシーズのメンバーとして今でも活躍、さらには昨年レッド・ホット・チリ・ペッパーズのスタジアム・ライブに飛び入り参加しアンセム「Give It Away」をメンバーと共演…とその豊潤なキャリアは一筋縄ではいかない。

フライング・ロータスのお膳立てもあり、元々ソロ活動をするつもりのなかったサンダーキャットが待望のセカンド・アルバムを完成させた。スピリチュアルなフュージョン AOR を特異なプレイヤビリティで再生した前作を軸に、本作ではブギーやディスコの血を通わせたグルーヴ、そして何よりも本人の蒼い美声が主軸に添えられた発展がみられる。エイドリアン・ヤングやトーマス・プリジェンら凄腕プレイヤーを従えながら、眉間に皺を寄せる瞬間はなく思わず笑みがこぼれてしまうサマー・アンセムがズラリと並び、昨年急逝した盟友オースティン・ペラルタに捧げられた楽曲(坂本龍一の「El Mar Mediterrani」がサンプリングされている)では思わず涙ぐんでしまいそうになるのは彼の人懐っこい性格がよく表れている。

そしてそのヒューマニティは図らずもブラック・コンテンポラリーをさらりと更新していて、ホセ・ジェイムスやダフト・パンクの新譜と並べてみてもきっと楽しめるはずだ。アルバム・リリース後にラパラックスとティーブスとともに来日ツアーも決定している。この男の天才たる所以を友人と杯でも交わしながら堪能してほしい。

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