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Review List of あまでうす 

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  • 5 people agree with this review
     2014/09/22

    歳をとると、クラシックも昔の音楽を昔の演奏で聴くに限りますなあ。

     んなわけで、ここんとこ、アルフィーフ・レーベルが特集したモンテヴェルディからバッハまでのバロック作品集をちびちびと聴いておりました。

     ベトちゃん、シュバちゃんもいいけれど、ベルリちゃんとかプロコちゃんとかマラちゃんとかやたら喧しいのは迷惑だし、ちょっと小耳に挟んだだけでもえらく疲れる。

     んなわけで、モンテヴェルデイ、シュッツ、リュリ、シャルパンティエ、クープランなぞを垂れ流しておると、心が慰安婦、じゃなかった、癒される、じゃなくて、ゴロニャンとなりますなあ。

     特によろしいのはスカルラッテイとラモーでして、ヴィヴァルディやテレマンよりもこっちのほうがよい音楽ではなかろうか、と愚考しておりやした。

     ラモーのオペラは映像でたっぷり仕入れてあるから、そのうちまとめて視聴しやう。さうだ、さうだ、さうしやう。

     もちろんバッハ、ヘンデルもどっさり入っておりますが、疲れた心は、どんどん音楽の源流へと遡りたがること、シャケの遡上のごとし。

     演奏はピノック&イングリシュ・コンソート、ガーディナー&イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、ミンコフスキー&ルーブルと続々。


      なにゆえに酸欠金魚が喘いでる絢香が歌う主題歌「にじいろ」 蝶人

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  • 12 people agree with this review
     2014/09/08

    「自分への御褒美」ということで、なんかかんか機会あるごとにクラシック音楽のCDをHMVで購入してきたのですが、いまではそれらが書斎の足元に散在していて、飯を食うために部屋を出ようとするたんびに蹴躓いて、お皿がそこいらに飛び出す始末です。

     それにもめげずに、パソコンに向かって仕事をしながらせっせせっせと聞きまくってはいるのですが、テレビにどっさり録画したオペラやコンサートや映画も見なければならないし、この調子では死ぬまでに全部は聞ききれないかもしれないな、と思いつつ、今は亡きEMIのアレクシス・ワイセンベルクの10枚組セットを聞き終えました。

     ワイセンベルクなんかカラヤンの言いなりになってる超絶技巧ロボットのような不感症ピアニストだ、と長らく思い込んでいたけれど、それはとんでもない誤解で、この人は華麗なテクニックに加えてチャイコフスキーでもブラームス、ラフマニノフ、ムソグルスキーでもバッハでもシューマンでも、いうべきことはちゃんと言っていることに気付きました。

     特にいいのはジュリーニ、ウイーン響と入れたモザールの9番、21番、それと意外なことに小澤&パリ管と入れたプロコフィエフの3番で、小澤とプロコが大嫌いな私も思わず聞き入ってしまったのは、それだけワイセンベルクが凄腕だからでしょうか。

     ちなみに小澤選手は晩年のサイトウキネンとかウイーン、往年のボストン響なんかより昔のトロントとサンフランシスコ響、それにパリのオーケストラとの相性がいちばん良かったように思います。
     
     
        なにゆえに歳をとるほど退化する名のみ高くてつまらぬ指揮者 蝶人

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     2014/08/10

    「エリー・アメリング作品集」全8枚組を聴いて〜「これでも詩かよ」第95番



    エリー・アメリングの声は、限りなくやさしい。
    それは、隣の家の太ったおばさんの声だ。

    シューベルトの「楽に寄す」は、青空のてっぺんでさえずる雲雀の鳴き声。
    音楽に生きる喜びを全身全霊で歌ってる。

    ドスコイアメリングおばさんは、バッハのカンタータも大好き。
    「あんた今日もよく頑張ったわね」と太っ腹で励ましてくれる。

    ヘ長調k596の「春への憧れ」は、モーッアルトの告別のうた。
    オランダのおばさんは、「さよなら、さよなら」と歌いながら泣いている。

    エリー・アメリングの声は、限りなくやさしい。
    それは、隣の家の太ったおばさんの声だ。

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     2014/07/27

    ストルツマンのクラリネットは、モザールであろうがプーランクであろうが、常に清く正しく明るく、しかも透明でのびのびとした旋律を奏でる。その点ではちょっとフルートのランパルに似ているのかもしれない。

    であるからして、とかく晦渋な印象を与えがちなブラームスのクラリネットソナタやトリオをリチャード・グードや東京カルテットのメンバーと演奏しても、まったく屈託がなく、晴れた空に暗雲ひとつない精朗な音楽が流れているさまは、能天気な笛吹童子の生まれ変わりかと思う人もいるかも、しれないか。


    なにゆえに曇り空から晴れ間がのぞく笛吹童子は能天気だから 蝶人

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  • 0 people agree with this review
     2014/06/26

    モーツアルトが好きな人にはお薦めの、なんと111曲55枚組CDの選集です。

    生きていても正体不明の怪人アーノンクールの「フィガロの結婚」のように生命力皆無の青菜に塩の駄作もあるけれど、死んでもなお元気なベーム翁の「魔笛」、「後宮からの脱出」、アバド&ヨーロッパ室内管の「ドン・ジョバンニ」、同じアバドの「レクイエム」、バーンスタインの「荘厳ミサ」が、ヒメギフチョウ舞う春のさかりから、目に青葉初鰹の初夏へと、時の経つのを忘れさせてくれました。

    殆んどすでに聴いたことのある、あるいは持っているCDの演奏ばかりでしたが、ジェームズ・レバイン&ウイーン・フィルの交響曲集と、同じ組み合わせによる「コシ・ファン・トッテ」はとっても素晴らしい。

    ベーム翁の腹にズンと応える演奏とは正反対(ここで「真逆」なる醜い非日本語を使用してはならない!)の5月の薫風のように軽やかで繊細で哀しい疾走に触れることが出来るとは、さすがにジョージ・セルの愛弟子なり!

    それにしてもこのぶよぶよ豚豚の好漢、どうして手抜きの演奏をしてウイーン・フィルから追放されてしまったのかと残念無念でなりませぬ。


    なにゆえにテレーズのパンンツは汚れてるバルテュスが夢見る少女の妖しさ 蝶人

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  • 12 people agree with this review
     2014/06/26

    哀れ大資本のワーナーに吸収された、いまはなき名門EMIから発売された17枚組CDです。

    デュプレのチェロは生命力に満ち、鳴るべきところを隆々と鳴らす思いっ切りの良さで、どこかピアノのアルゲリッチを思わせるところがあります。

    しかし彼女の生涯の不幸はダニエル・バレンボイムという浮気男に惚れてしまったことで、改宗までしてこんな不実なユダヤ教徒に嫁入りせずに、彼女を愛していたスチィーヴン・コヴァセヴィチと一緒になっていたら、彼女のあの不幸な後半生にもいくばくかの光明と救いがあったのかもしれません。

    この全集の演奏のピアニストの大半はバレンボイムとのものですが、そんな思いで聴くスチィーヴンとのデュオによるベートーヴェンの3番と5番のソナタの味は、まことに甘く切ないものがあります。

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  • 8 people agree with this review
     2014/05/27

    ルドルフ・ゼルキンが弾いたベートーヴェンの5つの協奏曲と全曲に近いソナタを収めたお馴染みの激安セットですが、どのCDもすこぶる聴きごたえがあります。

    ゼルキンという人は「謹厳実直」を絵にかいたようなピアニストで、ひとつひとつのスコアを舐めるように丁寧に丁寧に音に変えてゆく。

    だからホロヴィッツの豪胆さやギレリスの鋭さ、アルゲリッチの輝かしい生命力などはないけれど、その誠実無比なピアノを聴くほどに偉大なる楽聖の音楽への献身にうたれ、思わず背筋を伸ばし、居ずまいをただしてしまうような、まあそんな演奏なのですね。

    ですからこの11枚は、「もうベトちゃんなんかにゃあ飽きた」とか、「あれはもう古すぎる時代の終わった音楽じゃ」とか嘯いている人が聴くと、うってつけなのではないでしょうか。

    誰ひとり観客のいない寂しい広場で、誰のためにでもなく、楽聖ベートーヴェンに捧げるために、ひとりのおじいさんがコツコツと演奏している。

    そんな光景が浮かびあがってくるような、これぞクラシックの原点!というような極め付きの演奏です。


    なにゆえにピレシュは右腕に刺青しているのかショパンよりそっちが気になる 蝶人

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  • 1 people agree with this review
     2014/05/26

    レガートを効果的に滑らせるとカラヤンの演奏になり、そいつに輪をかけてさらにポルタメントを惜しみなくばらまくとスットコドッコイ、ストコフスキーの演奏になる。のだろうか。

    一時代前のバッハ、ベートーヴェン、チャイコフスキーといわれるかもしれないが、聴いて愉しく、かつまた興奮させてくれる。

     強いてベストワンをあげれば、オッサンがアメリカ交響楽団と録れたチャールズ・アイヴスの交響曲第四番で、こんなに面白い曲だったのかと唸らせてくれます。


     なにゆえにレガートもポルタメントもやり放題スットコドッコイ、ストコフスキー爺 蝶人

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     2014/03/30

    アルフレッド・コルトー(1877-1962)はサンソン・フランソワ、ディヌ・リパッティ、クララ・ハスキル、遠山慶子、エリク・ハイドシェックなどの素晴らしい名ピアニストを育てましたが、彼自身の演奏は彼の弟子たちのいずれにも似ていないように思われます。


    いまや世界の若手ピアニストたちは、聴衆の迷惑を顧みることなくともかく超絶テクニックで弾きに弾きまくる、という味もそっけもない無味乾燥で不毛の荒野に突入し迷走するようになってしまいました。

    コルトーは現在の水準からみればテクニクはないし、時々指がもつれて弾き損なったりしていますが、そのかわりに音楽への愛の心がみなぎっています。

    ここには彼が1919年から1959年までに遺した40枚のCDが集められていますが、それらのどの録音を聴いていても、(私がてんで評価しないショパンの作品でさえも)、ピアノの音が鳴っているのではなくて、死にゆく老人が星空の森の中でひとり歌っているように思えてくるのです。

    コルトーの前にコルトーなく、コルトーのあとにコルトーはなかったのです。

    けれどもコルトー弧ならず。カザルスやシゲティの朴訥なバッハを、指のよく回るロストロやマ、スターンなどと比べてみると、後者がチェロやバイオリンの音を上手に鳴らしているのに対して、前者は「それ以上の音楽」を上手下手とは無関係に心の奥底から歌っているようです。

    なにゆえに若手のバリバリコンサートに行かないのかコルトー、カザルス、シゲティがあればそれでいいから 蝶人

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     2014/03/22

    1842年に設立されたウィーンフィルが演奏する交響曲を50枚のCDに収めたすこぶる聴きごたえのある選集です。

    指揮者はバーンスタイン、ベーム、クライバー、カラヤン、アバド、ジュリーニなどですが、ここではジェームズ・レヴァインが振ったモザールの交響曲全集11枚に注目したいと思います。

    レヴァインはメットでオペラを振ってきましたが、ウィーンフィルと組んでベームやムーティよりも優雅で美しく、抒情的で清新溌剌爽快なモザール演奏を生み出しています。

    セルの弟子である名指揮者との蜜月は1990年くらいまでは続いていたのですが、どうしたわけか彼らが来日してブルックナーの5番だか8番だかをじつに無内容に演奏した辺りから急激に悪化して、ついにレヴァインはこの名代のオケからボイコットされ、団長から「もう二度と招かない」と宣告されて現在に至っているのです。

    ここではしなくも思い出すのはメットでの練習に遅刻したり出てこなくなったソプラノ歌手のキャスリーン・バトルのことで、彼女を首にしたレヴァインが今度はウィーンフィルから斬られるとは皮肉なものですね。

    最近は怪我や病気でぼろぼろがたがたになっているでぶでぶレヴァインですが、ここはなんとか踏みとどまってぜひともリヴェンジして貰いたいものです。

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     2014/02/18

    2つの弦楽5重奏曲の第2ヴィオラをワルター・トランプラーが弾いているのですが、これがまことに結構な加勢で、それもそのはず彼はカシュカシアンや今井信子のお師匠さんでもあるヴィオラ名人なのです。

    トランプラーのヴィオラは深々と鳴りますが、その深さの底にはちょっと甘さがあって、これがわたしらを激しく魅了するのです。

    2つの弦楽5重奏曲は名曲だからオルランドを除くどんな下手くそな団体が弾いても聴きごたえがありますが、私はいまのところこのジュリオアードと同じトランプラーが加わったブタペストの演奏が好きだなあ。

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     2014/01/22

    正直いうてシギスヴァルト・クイケンとその一党の演奏に感動したことは、あの怪異な顔つきのせいもあって一度もないのですが、例によって1枚276円コスト・パフォーマンスの良さに惹かれてついつい衝動買いしてしまいました。

    バッハ、ハイドン、モザール、ジェミニアーニ、ムファット、ラモーなどの作品を古楽器で演奏したハルモニア・ムンディの10枚組は超一流レベルとはいえないけれど、それなりに楽しませてくれる。

    いちばん聴きでがあるのはおそらくラモーのオペラ「ゾロアストル」の世界初録音で、この3枚組だけでも確実に元は取れるはず。彼らはこの名曲をよどみなくクイクイと聴かせてくれます。

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     2014/01/09

    つい最近消滅した英EMI盤によるヴェルディ・オペラ全集35枚組CDを聴き終わりました。

    この1枚153円也の超廉価版ボックスセットは、全集ではありませんが、ヴェルディの代表的な16のオペラ作品が収録されているので、彼の記念イヤーにふさわしいコレクションといえましょう。

    指揮者の中心はリッカルド・ムーティで、彼の指揮による『ナブッコ』『エルナーニ』『アッティラ』『マクベス』『椿姫』『シチリア島の夕べの祈り』『仮面舞踏会』『運命の力』という8つのオペラ演奏はいずれも聴きごたえがあります。

    さらにジュリーニの『ドン・カルロ』、メータの『アイーダ』、レヴァインの『ジョヴァンナ・ダルコ』、パッパーノの『トロヴァトーレ』、そしてモノラル後期の録音からセラフィンの『リゴレット』、サンティーニの『シモン・ボッカネグラ』と、名指揮者の名演奏が続々登場しますが、やはりももっともヴェルディのオペラらしい演奏は、カラヤンの『オテロ』と『ファルスタッフ』でありましょう。

    いつも思うことですが、ヴェルディのオペラを初期から最晩年までその作曲年代別に聴いていくと、誰の演奏で、何度聴いても、その音楽世界の濃さと深さが、その順番で高まっていくことが実感されます。

    また『マクベス』、『オテロ』『ファルスタッフ』は、いずれもシェークスピアの原作ですが、これほど原作の精神に忠実で、しかもその文学的エッセンスを見事に音化した例はほかにないでしょう。

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     2014/01/07

    私がモーツアルトのヴァイオリンソナタの演奏で求めるのは、夢のような儚さとこの世を遠く離脱したようなある種のはるかさである。

    そうなるとやはりグリュミオーとハスキルのデユオにとどめをさすが、この独逸人二人による演奏も捨てがたい。

    ヴァイオリンソナタとはいうものの、むしろ主役はピアノのほうにあるので、オルベルツの明るく、平明で、そのくせいっさいの虚飾を取り払った、誠実で質朴で淡々とした演奏が、かえって作曲者の孤独な内面を的確にとらえているような、そんな感じがするのである。

    正月は終わったが、この冬の寒さに耐えるためにときどき聴き返したいと思う。


    悲しさは疾走なんかしないいつも私の部屋の片隅で佇んでいる 蝶人

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     2013/12/30

    特に聴きごたえがあったのは、シャイーとゲバントハウス管弦楽団の『マタイ受難曲』で、これはビデオで視聴したときはつまらない演奏だと思ったのですが、このCDは良かった。

    その他のバッハの受難曲やカンタータを担当しているのはガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツとモンテヴェルディ合唱団ですが、これは半分過去の人の過去の音楽の面影を耳にしているような印象で、新旧すべてに冠絶するものは、やっぱりカールリヒターとミュンヘンバッハの大演奏でありましょう。

    しかしデッカとドイツ・グラモフォンの総力を結集した名演名録音が、安倍蚤糞による価格暴騰にもめげずたった1枚185円という廉価で入手できるのは喜ばしい限りです。

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