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2012/01/20
60年代,70年代,そしてこの80年代の全集,それぞれがカラヤン・ファンの私にとっては大切なもの(東京でのライブの全集が加わり,最近4つになりました)。
60年代は“勢い”,70年代は“完璧(精緻)”,そしてこの80年代は“ゆとり”です。「今後は俺に黙ってついてこい!」の勢いを感じる60年代。オケに対しても,リスナーに対しても,そのメッセージを伝えようとする,意欲的なカラヤンの姿が彷彿とします。
オケもリスナーもつかんだカラヤンが次に目指すのが70年代の「一糸乱れぬ完璧に美しいベートーヴェン」。そしてそれを見事に達成。これほど精緻で美しいベートーヴェンを私は知りません。
この2つの見事な全集を受けてのこの80年代の全集。確かに,前出の2つに比べると中途半端の感は否めません。60年代物ほど勢いがあるわけでもなく,70年代物ほど精緻であるわけでもない…。でも,この感じは私の耳に前出の2つの見事さが残っているためであって,虚心坦懐に聴けば,素晴らしいベートーヴェンが鳴っていることがわかります。今までにはなかった適度の“ライブ感”もありますし,指揮者の強引さもやや後退し,奏者の自主性も垣間見えます。
カラヤンは3つの(4つの),素晴らしいベートーヴェンを残してくれた。どの一つが欠けても物足りなさを感じてしまうかもしれない。