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さすらうけど歌えない若人 さんのレビュー一覧 

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/26

    ブラームス4番に対する批判について少し意見を述べさせて頂きます。


    ・テンポが遅い

    第1楽章の冒頭にはAllegro non troppoと表記がありますが、Allegro=速いと考えておられるならそれは全くの誤解で、Allegroの本来の意味は『明るく、快活に』というニュアンスです。つまりAllegro non troppoは『明るくなりすぎないように』と訳せます。だからこの演奏に聴ける解釈は何ら的外れではありません。VPOと共演したクライバーのイメージに裏切られた思いがあるからそう感じるのではないでしょうか。クライバーは元々自分が納得の行く解釈を持った曲しか演奏しない人でした。つまり彼がこの演奏でテンポを変えてきたというのは彼自身確固とした意志があったからだと思います。もちろん聴衆の好みはありますが、それをクライバーの間違いだと揚げ足をとるのはお門違いでしょう。


    ・弦のボウイングが揃っていない。

    これは敢えて逆に弾かせているのです。映像を見ると各プルト毎に逆弾きさせているのが分かります。これは戦前の名指揮者たちが行なっていた奏法で、詳しい効果は分かりませんがおそらくニュアンスとデュナーミクに深いコントラストをつける意味合いがあるのでしょう。
    父エーリヒを敬愛し、古風な表現を研究し尽くしていたカルロスらしい技術と言えるでしょう。また、手兵であり気心知れていたバイエルンだからこそ出来た奏法でもあるでしょう。
    また、映像では逆に弾かせる部分とボウイングを揃わせる部分をきちんと使い分けています。


    ・オケと指揮が噛み合っていない。

    確かに映像を見るとタクトにオーケストラがついていけていないように見受けられる部分がありますし、事実1楽章のラストではTimpが飛び出しているように聞こえます。
    しかし、カルロスは元々リハーサルで全てを調整して本番では音楽の流れを示すだけというタイプです(カラヤンもそうですね)。実際彼のニューイヤーのリハーサル映像を見ると、本番の指揮ぶりでは考えられないくらいちゃんと指示しています。
    つまりこの演奏も既にリハーサルの段階でテンポから歌わせ方まで全て出来ていたはずなので、遅れているように見えるのは『そう見える』だけで楽団員とクライバーにとっては予定調和だったのではないでしょうか。


    確かにこの演奏からはかつての快活で歯切れのいいクライバーは聞けません。しかし私にはより深化した解釈、老境にありながらも鮮烈なサウンドを感じ取ることが出来ました。正直私はチェリビダッケが『音楽の神秘を通りすぎていく』と評したかつてのクライバーがあまり好きではありませんでした。しかしここに聞くブラームスは紛れも無く『カルロス・クライバーのブラームス』でありながら、音楽の神秘をくまなく掬い上げようとしたクライバーの意志を感じられる気がします。
    それは楽章間では微笑みを浮かべながらも、時に唸るような仕草をして腕を震わせていた指揮姿からも読み取れます。
    そこには以前のバレエのようなと評されるほどの流麗な姿はなく、まるでバーンスタインのようにただ音楽に共感し、時に涙する一人の音楽家の姿があっただけでした。

    私にとってはかけがえのない演奏の一つです。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2011/02/24

    バーンスタインのマーラーについては既に語り尽くされたものだろう。この演奏もまた然りで。専らBPOと並んでマーラー8番の名演奏として語り継がれている。
    私自身、カラヤン盤、バルビローリ盤、アバド盤(新録)など数多く聞いてきたが、やはり最終的にはこの演奏をベストに推したい。
    マーラーと一体化したような心情の吐露と平行して、この交響曲が持つ古典的な交響曲への回帰という意味合いでの構成感も備わった演奏はこれしかないと思う。そしてバーンスタインはこの曲からネガティブな感情だけでなく、希望を併せ持った表現を導き出していることも評価を揺るぎないものにしているのだと思う。

    ただここで私が星3つにしたのは、『この演奏はバーンスタインの演奏の究極』ではないと思うからだ。
    ライヴレコーディングと銘打っておきながら、各演奏会(リハーサル含む)の切り貼りによって無意味に完成度をあげようとしている点もそうだが、何よりもコンセルトヘボウの音が暖色過ぎるのだ。
    これは第4楽章冒頭を聴けば瞭然で、やはりこの交響曲にはそぐわない感じがする。

    バーンスタインのマーラーの最高の演奏はやはり来日公演のIPOとの演奏だと思う。私は海賊版でこの演奏を聴く機会があったのだが、解釈自体はコンセルトヘボウ盤と大差ないのだが、音がやはり違う。すべての楽章においてコンセルトヘボウ盤が霞んでしまうほどだ。もし叶うのならば商品化して欲しいものである。
    マーラー9番のディスコグラフィーが大きく変動するだろうに。

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     2010/05/17

    サン=サーンスはまだ聴いていないので、ガーシュインの感想です。冒頭あまりに遅いテンポで、スウィングというには遅すぎて崩壊寸前のような印象を受けました。あまりにアメリカした協奏曲にエッシェンバッハがとまどっているのではないかとさえ思うほど。しかし、リヒテルがピアノを弾き始めてからは世界が広がったような印象を受けました。力強くも柔らかいタッチ、そしてガーシュインの呼吸を知り尽くしたフレーズ運び。それにつられるようにオケも指揮者も段々と乗ってきたようで、第1楽章が終わることには冒頭部の不安定が嘘のようでした。
    今までこの曲はプレヴィン/LSO盤でしか聴いていませんでしたが、やはりあちらよりも音色が柔らかく、たっぷりとした響きでガーシュインを聴いていると思えないほどゆったりとした時間を過ごせました。

    クラシックピアノの大御所リヒテルに自身が追い求めていたヨーロッパオケのサウンドによる演奏。ガーシュイン本人にこの場にいてほしかったと感じさせてくれる1枚でした。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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