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Review List of 風信子 

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  • 1 people agree with this review
     2017/02/27

    ユダヤとアジア マーラーはより東へ心の寄る辺を傾けていたのだとまた改めて識る ヘルヴェッヘがマーラー音楽の美の軸を何処に捉えているか明らかにした演奏である こんな屁理屈はもういい こんな美しいマーラーの声を初めて聞いた 第8番で移ろいずきゆくものは全て幻影に過ぎないと歌い 母性的愛のみがわたしを高みへ上らせると締めくくったマーラーがいわゆる”第九”を書けるわけがない 母の胎内回帰 生まれ変わるために一度彼岸へ渡らなければならない思想は東のものだ ヘルヴェッヘは見抜いている だから「〜角笛」と第4番が残された 室内楽版のオーケストレーションはマーラーの真意を見抜いたものだ 人の声に寄り添いたい心境だった 傷ついた魂が奏でた音楽それが「大地の歌」 ブロホヴィッツ レンメント 共にヘルヴェッヘの読みを解した名唱 衷心よりお薦めする  

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     2017/02/26

    ラヴェルから発せられる詩情こそ聞きたい ケフェレック演奏のラヴェル全集を待望するも 叶うものか知らん されどプログラミングの匠ケフェレックのラヴェルこの一枚が不足を忘れさせる 何よりも「夜のガスパール」が凄い ベルトランの詩が誘引した”闇の世界”がピアノの音で織り成されていく様を前に身も凍りついた 省略されたオーケストラ版で聞いていると忘れている「クープランの墓」作曲の趣意に思い当たった ラヴェルは6曲を戦時中に書いている これらは第一次世界大戦中に戦死した特定の個人に捧げられた だから『墓」なのだった 色彩感を感じるほどケフェレックのピアノ音は雄弁だが ピアノ単一楽器によればこそ ラヴェルの言葉が聞こえ 心情の綾が透過してきた その管弦楽法の色彩美にばかり引き寄せられていては見えないラヴェルの”アニメ”(魂)に寄り添うてみることを勧めたい    

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     2017/02/24

    面白い 新しい世代がLVWのシンフォニーを演奏することを期待する これがライヴなら猶いい このLPO盤も昨日今日の録音ではない 倉庫の隅に埋もれるのは惜しいから出版されたのかは知らない この時まだ若い二人だ ウィッグルスワースの第4番は生きがいい テーマに拘泥して構えてもいけないし熱に浮かされて突っ走ってもいけない 中庸に惰っせず冷徹な目を向け傾聴して立ち向かう態度が要る 遅すぎたり速すぎたりはあるものの決然と対峙したウィッグルワースに賛を贈る ユロフスキーの第8番はLVWの音楽と人の真如を引き出して見せた LVWの音楽が由って来った風土とその為人を十全に示す演奏となった これほど味わいに富んだ”第8”を知らない 80歳を越えたLVWがベートーヴェンの「第8」を意識したことは間違いない 小品のごとき扱いは両第8番を知らないからだ 両曲とも天才の証であり 最も挑戦的な思考から作曲された しかもそこには諧謔・軽みを含む交響曲が目指す心的宇宙が広がる稀に見る傑作だ ユロフスキーの天才も輝いていることは言うまでもないか 衷心より推薦する 

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     2017/02/21

    オノフリを追いかけて 暴風の夜 ヴィヴァルディが至高のヴァイオリン迷宮を彷徨うことになった naiveのVVCの箱を開けてしまった 美少年の面影をそのままにこちらを見据える若きオノフリが貌をジャケットにしたCDから聴き始める 演奏は10年前 罹病前のふくよかな容姿をしたオノフリが弾く6曲がすごい RV.208『ムガール大帝』RV.332 ト短調 RV.234『不安』 RV.199『疑い』 RV.362『狩』 RV.270『休息』 息を呑むとはこのことか 斬り込む白刃の鋭さと妖艶なまでにしなるがことき表情を用いてヴィヴァルディ音楽は表出された 荒れ狂う風は窓外で恐ろしい雄叫びをあげ続けている 何かが剥がれ何かが飛び 甲高い破裂音が響いた 遠くでサイレンが鳴り続けている だが嵐の闇もオノフリのヴァイオリンの比ではない 恐怖も快楽もオノフリが弾くヴィヴァルディの中にあるではないか 気温が下がったのかゾクッとする 明日の朝はどうなっているだろう 片付け修理掃除と忙しいのだろう いや 朝は来ないかもしれない と ふと妙な錯乱すら忍び寄る怪しさがこの音楽この演奏にはある まだ箱は開けたばかりだ これからアレッサンドリーニの「四季」をはじめシュテック ガルフェッティ ミナージ シンコフスキーの弾くヴィヴァルディを聴かなければならない もちろん無事明朝を迎えられればの話だが‥‥ 

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     2017/02/20

    何処かで逢っていた既視感のようなものが纏わり付いてくる 手慣れているようでいて清新な気風を失っていない音楽の運びに惹きつけられて耳が離せなくなった自分がいる  バレーが展開する舞台が見える迫真性が今も息づいている 60年前の演奏録音と知るだけに自己の内に沸き起こる勇躍感に不思議な戸惑いすら感じる 二曲とも抜粋と組曲であり省略が多々あるにも拘わらず 不足不満足を全く感じさせない 原曲の生命力と美を存分に伝えて余りある LSOは溌剌と奏で COPは繊細でいてまた朗々と奏でわたしを喜ばせた モントゥーとはかくも見事な指揮者であったかと今更のように賛嘆の想いを深めた ご一聴を

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     2017/02/20

    スクリーンを通して映し出された20世紀の投影図 ”イタリア合奏団 オン シネマ”はこんな趣の一枚だ イタリア人映画音楽作家の曲を中核としながら 米英ソの3人を柱に立ててまとめた構成は一廉 ウォルトンで幕開け 中にハーマン しんがりはショスタコーヴィチと人選を過たない シェークスピアで額縁を作りサイコを納めるなんざ粋でしょう CDを一つのコンサートと見れば 中心はピアノが主役となるモリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス」これが休憩後の一曲目 前半はドナッジョの「デ・パルマ」組曲で締めくくる これまでのラヴァニーニョ ロッセリーニ 共に聞き応えがあった上のウォルトン ハーマンだ 20世紀のロマンが放つ光と闇の世界を表現して見事だ モリコーネに導かれた後半はシェイクスピア一色 ショスタコーヴィチも三つの映画の音楽から編まれた組曲だが ハムレット劇に他ならない イタリア合奏団の面目躍如となる豊かさに満ちたコンサートになっている これを聴かずに春は迎えられない といっても20年も前の彼らの仕事だ 心より推薦する  

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     2017/02/20

    名盤健在を歓ぶ 今は改組して’新’が付いたが 旧”I Solisti Italiani”のヴィヴァルディ録音は格別の味わいを持って今を生き遺産となりつつある 古楽復興がオリジナル楽器と演奏法へ大きく傾斜していった時代に イタリアに受け継がれ変遷してきた弦楽奏法の流れを汲んで現代に生きる姿のまま 誠に清廉精妙な演奏に勉励してきた その精華がここに残る 四半世紀前に演奏された協奏曲らが今も生気を放っていることに幸福感すら湧く ヴァイオリン協奏曲5曲のソロは分担されている 最も聴きたかった「ムガール大帝」はソロ オーケストラ共に熱演で聞き応えがあった 「恋人」の繊細な優しさには癒された 「不安」は面白く興味が尽きないと 5曲が5曲ソリストと楽曲の個性の違いが明瞭に聞き取れ堪能した ここにはヴァイオリン属楽器への愛が生きつ続けいる 衷心より推薦する   

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     2017/02/18

    素晴らしき日曜日 駅で待ち合わせてランデブー 微笑みながら歩き始める さあ何処へ行こうか 青空から降り注ぐ陽の光に包まれて 風まかせ 気任せ 流れる雲の方向へ足を向ける 幸福な喧騒が聞こえる街は華やいで心地よい ふと目を留めたポスター‥‥音楽堂へ急ぐ マチネのプロムナードコンサートを聴こう 飛び込むと直ぐオーケストラが歌い出す 繰り出される音楽は千変万化 次々に新しい世界へ連れ去ってくれる 休憩なしの8曲そして1曲のアンコール 小品集とはいえど作曲家を象徴する名曲の数々は勿体無いほど贅沢な時を与えてくれた M.ギーレン送別エディション第4集の1stCDはこんな幻想を見せてくれた 日曜日はこれで好し 続く8CDは日日大切に味わおう 何しろ初出音源がほとんどなのだからワクワクする 楽しみを急いて消費することはない お楽しみはこれからだ 諸兄諸氏さあご一緒に

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     2017/02/11

    今更推薦もないのだが 止むに止まれず一筆啓上申し上げる 流浪の指揮者と呼ぼうナガノケントを ベルリン・ドイツ交響楽団との出会いはナガノがいよいよ永の住まいを見つけたかとわたしを安堵させ歓ばせた だが今また漂泊の指揮者となっている 稀有な感覚と能力を持ち行くところ何処でも篤い賞賛を受けながら 生涯のパートナーとなるオーケストラと出会えない運命を惜しむ 何がそうさせるのか知らない 類稀なる才能を得て余人が引き出せない美を表すナガノがやり残している仕事はあまりに多い 手兵と呼べるオーケストラと共にあればブルックナーもマーラーも疾うに全集を完成し得ただろう このマーラーの第3交響曲一曲取っても誰も真似できないマーラー像を描ききっている このしなやかさ繊細さはケントが我らが民族文化の血を引く者であることを明かしている これがマーラーの一面でしかないことは百も承知だ しかしこのフィナーレを聴いて落涙しない日本人がいるだろうか ナガノケントはまだ三曲しかマーラーを録音していない この3と8と”大地の歌”だ  三曲とも名演であることはいうまでもない 後の7曲には関心すらないのかもしれない せめて1と4そして9番を録音してほしい ナガノケントよ日本に還ってこないか 愛が溢れて妄言に終始してしまった 

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     2017/02/08

    20世紀の傑作は隠されている 未だにだ ユダヤに根ざした音楽と音楽人は狂人ヒットラーの時代に排斥され時代の壁の中に塗り込められた この人類の恥を濯がずに音楽を語ることはできない 暴力を背景とする狂気に丸め込まれていった人間たちに同情しない いかなる時も芸術は生きとし生けるものに自由と生きる希望を与えるもの シュテッケルのチェロが未来へ希望をつなぐ素晴らしい演奏を聴かせてくれる シェロモ以外は初めて聴いた コルンゴルトの単一楽章協奏曲も時間に関わらず内容豊かな傑作であり味わい深い ゴルトシュミットの四楽章からなる協奏曲も充実した内容を持ち 繰り返し聴く価値あるものだ コンサートで聞かれる機会が増えることを願う チェロを愛する人ばかりでなく多くの方に衷心より推薦する 

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     2017/02/07

    竟に出た! ベートーヴェンを完璧に弾きこなしすクァルテットが! 逡巡がない 誇張もない ベートーヴェンへの畏敬すらないと言える スコアに記された音楽信号をあるがままに音化仕切って終わる演奏から見えたもの それは紛れもない音楽に刻印されたベートーヴェンの魂だった 聴覚の障害に絶望し 苦悩の闘争から勝利へ突き進んで行くベートーヴェンなどどこにもいない 青春の息吹を失わず音楽の造形に工夫を加えて行く面白さに憑かれているミューズの申し子の姿だ 音楽が飛んでいる 天翔ける創造の翼は歓喜の唸りを上げて羽ばたく ミロ・クァルテットの奏でには重力の影がない ppは伸びやかで無限の表情を持つ ffは重く停滞することがない 真のダイナミズムが奏でられているからこそ自然に語りかけが生まれ わたしも自然に翔け上がり一緒に飛ぶことができる 作品18から作品59へ来た 期待は高まる ハープやセリオーソの1日も早い完成を待つ 何よりも嬉しい衷心より最高の推薦をする    

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     2017/02/07

    ”ムジカ・バロッカ” アンソロジーの名盤だ 今更四の五の言う代物じゃない バッロクを象徴する8人の10曲と民謡1曲が並ぶ たった一枚のCDだが実に聞きごたえがある 構成は前後半で特徴を異にする 前半はバッハ ヴィヴァルディ マルチェッロの多楽章曲を聞かせる 三曲の間はアルビローニの異なるアダージョが間奏曲の役目を果たす もうこの前半だけでコンサートが成立している贅沢さだ 後半はテレマン パッヘルベル 民謡 パーセル ヘンデル そして三度アルビローニの別のアダージョで締めくくる こちらはどれも小品若しくは抜粋楽章が連なって飽きさせない 見事なプログラミングにため息が漏れる 最高のヴァイオリニスト オノフリあればハーモニーの庭は生き生きと鳴り響き時を進める この心地よさは何物でも置き換え得ない 一人でも多くの人に耳傾けてはいかがと言わずにいられず筆をとった    

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     2017/02/04

    交響曲の醍醐味がここにある 凡ての音形・フレーズが明瞭に浮き出てくる 立体構造がすっくと立ち上がっても重くない 透明な風に乗って全方向内から外から眺められる開放感を感じる 蒼天の下に広がるスオミの全景が見渡せる シベリウスとはかくも伸びやかな音楽だったとは改めて感動を新たにした SACDでないことに落胆していたがこの美しさに不興も霧消した 美しい演奏は巧まずして真実を言い当てる 第5番からはシベリウスが故国の自然美を賛嘆して止まなかったこと 第6番からは同胞へ向けられた友愛の情が溢れ出して止まらない シベリウスも悲しみを纏わずに世を渡ってこれなかったが それでもいつか呪いが解けることを信じて今日も夢幻の湖水を滑っていく 白鳥のように もう聞き飽きたなどと言わず耳傾けられることを願う 

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     2017/02/03

    定本(定盤と呼ぶべきか)ニールセンの登場 没後85年を経たが 故国のオーケストラが労作したとあればニールセンも本望だろう ようやくニールセンの音楽言語をネーティブのイントネーションで発音し伝える演奏に出会った 後は聞く耳が要るだけだ 20世紀になっても交響曲形式探求の旅を続けた人は多々あった その中でベートーヴェンの道を辿ったのは 即ち自らの交響曲宇宙の果てへ突き進んだのはシベリウス ニールセン ヴォーン=ウィリアムズ マリピエロ そしてショスタコーヴィチだった ベートーヴェン以来彼らの到達点は最後の交響曲だ だからニールセンにおいても第6番の魅力を発見できない人はニールセンを聴いたとは言えない 未だに分からないという声を聞くが残念でならない ここではショーンヴァントの演奏二種が聴ける CDの方が見通しのいい演奏だが  DVDは心楽しい演奏になっている どちらも堪能できる 番号順に聴くといい ニールセンが向かおうとする旅路の行く手が想像できるだけでも音楽の享受につながるだろう  SACDの管弦楽曲集がまた愉しい一枚になっている 指揮のダウスゴーには交響曲全集録音を画策して欲しいものだ ニールセンの理解は演奏頻度が上がり鑑賞機会が増えることで高まると信じる 何よりもここからニールセンの旅に同行してくださることを願う衷心から推薦する 

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     2017/02/03

    好きなオペラの第一が”ジャンニ・スキッキ”だ 観たオペラは数が知れるほどの無精者だが プッチーニは尊敬する 中でも”三部作”を好んで観てきた ”外套” ”修道女アンジェリカ”ですでに見入られているところに”ジャンニ〜”が演じられては 如何にオペラ嫌いのわたしでも脱帽せざるを得ない 第一次世界大戦の最中に書き続けられた三作品は上演時間一時間程度の短編オペラとなった 穿った見方と言われようが戦争が与えた精神への抑圧が反映していると見る プッチーニは三作を通して「人生」或いは『人世」の諸相を描いた それは「人間」とは何かという問いに答えたとも言える V.ユロフスキ&LPOは喜劇”ジャンニ・スキッキ”のみを上演している 見事なオーケストラ演奏に先ず瞠目した 日本語字幕を付けないオペラ・ディスクが多く残念だが これもないけれど 言葉を必要としないほど音楽が語っていた 演出演技も見事で理解し楽しめた ただジャンニにコルベッリはそぐわないという印象が消えなかった さらにラフマニノフ作品に触れる資格はわたしにない プッチーニのみだが衷心より推薦する  

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