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うつりぎ ゆき さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/11

     これはとっても楽しいハイドンのアルバムです。
      
     メインは交響曲第60番で、これをハイドンと同時代のザルツブルクのハープ奏者Meingosius Gaelle神父と言う人が編曲した室内楽版で演奏されています。編成はハープ、ハンマーダルシマー、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと言う、もうそれだけで楽しくない筈はない予感です。
     速い楽章では、ダルシマーの弦を打つ音が、ドラムスの様に「バチン!バチン!」と響きますし、緩い楽章ではダルシマーの音色がジプシー音楽を思わせます。第1楽章(トラック分けでは序奏部と別カウントになっているので2番目のトラック)の終わりの部分で、ハープが得意げにグリッサンドで掻き鳴らすのも、めっちゃ楽しいです。ハーピストだったGaelle神父さんの編曲も、ツボを押さえた達者な編曲です。

     ハイドン好きな人、18世紀後半の音楽が好きな人、そしてクラシック正当派からちょっと離れた演奏が好きな方には絶賛お薦めです!

     内容はもう申し分ないのですが、本を模したスタイルのジャケットは、僅かの差でPP袋に入らず、CD収納部はサイズがキチキチで、CDを取り出す時に、盤面を指で掴まないと取り出せず、凝り過ぎてロクな結果になっていません。
     最近は凝った特殊仕様のジャケットのCDが増えていますが、余り凝り過ぎるのは迷惑です。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 16人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/02/15

     再三の発売日延期を繰り返していた、E.メールツェンドルファー指揮/ウィーン室内管弦楽団による、交響曲全集(CD33枚組。交響曲A、B、協奏交響曲を含んだ全107曲)が、先日届きました。まだ何曲か「つまみ食い」聴きですが、全体的にはいい感じの印象です。

     先ず、数年前の某指揮者の全集では、高域のホルンが演奏できなくて、あろうことかオーボエで代奏させていて、一気にテンションが最低まで下がってしまった、第5番を聴きました。
     当然ですが、きちんと譜面通り(別の某演奏の様にオクターブ下げる事もなく)、ハイトーンの綺麗な響きを聞かせてくれていて、一安心です(*´▽`*) ウィーンの演奏家達ですから、これ位は当たり前ですが。

     全体の印象でまず感じるのは、随所にあるソロ・ヴァイオリンの、程よく艶やかで心地良い音色と表情です。ハイドンの交響曲の中の独奏弦楽器は、ヴァイオリンよりもチェロの方が多めで、朗々と歌う独奏ヴァイオリンの箇所は、いざ探してみると、思った程多くはないのですが、その中で第31番(「ホルン信号」)の第2楽章では、音を伸ばし気味なテヌートで、綺麗に歌っていきます。こういう演奏は、一歩間違えると「ロマン派的」な、べったりな演奏に陥りかねませんが、ここでは全くそういう危険性は感じられず、まるで窓辺にいる人に、路上で弾き聞かせているセレナーデの様な心地よさです。

     じゃあ全体的にソフトな雰囲気で流しているか・・と言うと、寧ろ逆で、アタック感のある縦線のしっかりしたサウンドです。これは管楽器がよく聞えるという、小編成オーケストラの特徴も手伝っている様です。特にフルート1本が加わった初期の曲では、そのフルートが、まるで外側を縁取っているかの様に、くっきりと聞こえて新鮮です。
     それと、旋律ではなくて、全音符で「ポー」と伸ばしているだけだったり、四分音符一つ「ポン」と鳴らしている箇所(ヴィオラとかによくある)に、神経がよく行き届いていて、響きが効果的です。

     通奏低音チェンバロは、一部の曲でのみ加わっているだけです。チェンバロ有りで聴きなれた第1番などは、無い響きが寧ろ新鮮に感じたりもしますが、これは個人的にはやはり在った方がいいですが、録音された1970年前後では、未だやむを得ないのでしょう。
     第6番(「朝」)の第2楽章では、前奏の部分では加わっていなくて、主部になっていきなり参加しています。「通奏低音」と言うよりは、「独奏楽器」の扱いなのかも知れません。

     ちょっと珍しいのは、繰り返し記号が一切ない第2番の第1楽章で、提示部が終わった所(他の曲の場合は、ここに「複縦線+:」の繰り返し記号が付きます)で繰り返しをしています。提示部の繰り返しは、今では行うのが当たり前で、私達の耳も、そういう演奏に慣れ親しんでいますので、ここで繰り返した方が自然なのですが、これはちょっと物議ポイントかも知れません。
     あともう一つ気付いたのが、協奏交響曲の第1楽章提示部の結尾部で、4小節の「異版」が挿入されています。この4小節は、フィルハーモニア社の「ランドン版」スコアにも、巻末に追加で掲載されていますので、怪しい物ではない様ですが、実際に演奏されているのは珍しいです。

     他には、繰り返しを行ったり省いたり(例えば31番の第4楽章)と、不統一感とかもありますが、全体的にはきちんと曲の考証や分析を行っての演奏の印象です。 最近の「尖った」演奏とは違う、聴いていての心地良さと、きっちりした裏付けが、程よくバランスされた、好演奏だと感じます。

     22番「哲学者」はびっくり。第2楽章(Presto)と第3楽章(Menuetto)の間に、短いゆっくりの楽章が入っています。
     これはドラティ盤でも、巻末の付録に収録されている、変イ長調のAndante grazioso楽章なのですが、ドラティ盤(とフィルハーモニア社スコア)では、2Flと弦楽(何とVaが二部)と言う編成なのに対して、メールツェンドルファー盤は、2Cor.ingと弦楽と言う編成でした。

     22番の管楽器の編成は、2本のコール・アングレ(イングリッシュ・ホルン)と2本のホルンです。そして恐らく、コール・アングレが無い楽団用に、誰かがこれをフルートに書き換えたのが、異版の意図だと思います。
     で、フルートに置き換えてしまうと、冒頭のホルンとコール・アングレの、強烈に間抜けな「哲学者問答」の雰囲気が、すっかり弱まってしまいます。ならばこの第1楽章は全部割愛して、代りに別の緩徐楽章を挿入・・ これが異版を書いた人の意図だと思います。(ドラティ盤の異版は、Presto-Andante grazioso-Finale の、メヌエットも割愛された3楽章スタイル)
     それに対してメールツェンドルファー盤は、正版にコール・アングレ使用のAndante grazioso を挿入した「フル構成」です。
     もう、何が正しくて、何が「確実に」正しくないのか(苦笑)、訳が判りません・・

     順番に聴いていますが、40番台辺りになって、急に表現が豊かになって、生き生きとして、響きも「ツボを押さえた」様な感じになって来ました。

     管楽器が和音で加わった部分で、ハッ!とさせられる事がしばしばあります。
     ハイドンが、単に音を増強させる為に、和音の根音と第三音を機械的に書き加えたのではなくて、その楽譜から生まれる響きを、ちゃんと計算して書いていたのだと言う事が、解かる演奏です。


     ただ、この全集には、一切の解説や説明文はありません。LP(米MHS)で発売された当時、ジャケット裏面にびっしり書かれていた解説(当然英語。K.ガイリンガーが担当していた回もありました)は、跡形もありません。
     独奏のある曲では、独奏者名が一応は記載されていますが、独奏部のある曲全てで、記載がある訳ではありません。

     「マスターテープは失われていて見つけられなかったので、デジタル化はビニール(発売されたLP盤と言う意味でしょうか?)から行われた。」と書かれていて、実際、微かな盤面の傷のノイズらしい音もありましたが、復刻版っぽいプアな音質ではありません。オーディオマニアさんや「音質屋」さん的には、不満足かも知れませんが、普通に音楽を楽しむには十分な音質です。

    16人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/05/16

     柔らかい長い和音の響く中で、H.スタッグのハープが、優しくて温かく豊かな音で奏でられます。まるで南の明るい海の中を、ぼんやり漂っているかの様な、そんな感じの心地よさが、身体を包みます。
     これは「癒し系ミュージック」の中では、最高です。
     私はこのアルバムが気に入って、H.スタッグのCDを全部買い揃えましたが、H.スタッグは数年前に他界してしまっていて、これ以上彼の新作を聴くことが出来ないのが、とても残念です。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/01/25

     これは本当に素晴らしい演奏です。
     ハイドンのピアノ三重奏曲は、基本的にはヴァイオリンとチェロの加わったピアノソナタのスタイルで、ウェイト的にはピアノ6、ヴァイオリン3、チェロ1位の配分です。特にチェロはほとんどピアノの最低声部と重なっていて、2曲の協奏曲や初期の交響曲で、チェロを存分に扱って、チェロの表現力を熟知している筈のハイドンが、何故ピアノ三重奏では、こんなにチェロを控えめな扱いに終始しているのか、疑問に思いますし、その点で現在では評価も低いものになっています。
     しかし古楽器によるこの演奏を聴くと、低音の響きが不足しがちな、当時のフォルテピアノにチェロを重ねると、とても心地よい響きになる事に、気付かされます!
     例えばHob.XV-14変イ長調の第一楽章。この楽章はハイドンが得意とした、短調と長調の複主題変奏曲ですが、長調部分でのチェロの心地良さは、絶品です。笑顔で気持ち良さそうに演奏しているチェリストの姿が、目に浮かびます。
     フレーズの扱いも要領を得ていて、例えばHob.XV-29変ホ長調の「ドイツ風」と書かれた溌剌とした終楽章。これは速いテンポの3拍子の曲です。他の演奏者の中には、ただ「チャキチャキチャキ」と弾き飛ばしただけの演奏もありますが、この演奏では、何とうきうきと楽しいフィナーレになっている事でしょう!これはフレーズの捉え方を、十分に理解してから演奏している証でしょう。
     この素晴らしい全曲集が、現在品切れ中とは、残念な限りです。ぜひとも追加プレスして欲しい名演奏です。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/11/23

     この録音は、私はLP時代の初期に米国CBSから出ていた、品質の悪いLPで持っていますが、それがCD化されていい音質で聴けるとは、何と素晴らしい事でしょう!
     L.ランドンが解説を書いていたので、もしかしたらドラティの前に、このゴーバーマンで全集を目指していたのでは?と思います。
     当時としては明快で作曲者の意図を理解した演奏です。特筆すべきは、超高音域が使われている、第5番イ長調の第一楽章のホルンの美しさです。その音色は、まるで天国から響いて来る様な澄んだ美しい高音です。様々な演奏者の第5番の中で、最も美しいと思います。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2013/11/29

     旅行先で時間を潰す必要が出来て、ふらっと入ったお店で見付けた一枚です。ファジル・サイと言うピアニストについては、全く何も知りませんでしたので、どんな演奏なのかも判りませんが、ここで見掛けてしまったのも、何かの縁だと思って、2520円の定価を支払って購入しました。
     演奏は、とても音の粒が揃った、ピュアな印象です。さらっと流している様ですが、きちんと様式を捉えていると思います。例えばソナタアルバムにも入っている35番なんかは、教則曲のイメージでロクな解釈や理解も行わないまま、ざーっと弾いてしまっている演奏もありますが、このサイの演奏では、一つ一つのフレーズが、主題なのか、経過句なのか・・といった存在意味をきちんと把握区別して演奏されています。これは思わぬ拾い物をした感じです!

     ただ気になるのは、演奏者が、弾きながら歌っているのが聴こえます。人によっては、例えば「往年の名指揮者○○の声が、どこそこの箇所で聞こえる・・」みたいな事を好んで話題にする人も居る様ですが、私は好みません。ハイドンの音楽に浸っている時に、異質な音を聞かされる違和感が大きいです。本来なら5点をつけたい所ですが、この点がマイナスです。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/02/20

     まず作品自体についてですが、これは楽しい作品です。ドイツ風の親しみ易い旋律とイタリア風の流暢なスタイルが合わさって、次から次に魅力的な音楽が進んで行きます。
     演奏は管弦楽は古楽器オーケストラですが、古楽器から連想されるくすんだ悠長な響きではなく、活気のある生き生きとした響きと、ヤーコプスの変幻自在のテンポで、舞台を盛り上げています。
     歌手も皆とても上手く表情も豊かです。余りオーバーなアクションはありませんが、コミカルな動きが多く、歌詞が解からなくても、歌の上手さと振りだけで、見ていて十分に楽しめます。
     演出はいわゆる「新解釈」な演出らしく、現代風の衣装や、背後で動いている妖精風のキャラ等、ちょっと引っ掛かる部分もありますが、私的にはこの作品は、過去にはCDやLPの「音だけ」でしか接した事が無いので、既成感との差が生ぜずに楽しめました。しかしハイドンの時代風の、オーソドックスな演出も観てみたいと思うのも正直な所です。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/16

     これは名演です! ハイドンのピアノソナタと言うと、「ベートヴェンの前座」か「モーツァルトに似ているけど及ばない」と言った捉え方をされる事が多いですが、この演奏は、ハイドンのピアノ作品が、そういうポジションではない事を、50年も前に実証しています。かと言って、近年の演奏家の演奏の様にそれを意識した結果、乾燥したりひねくったりした印象しなる事もありません。
     堂々とした52番や、落ち葉舞う並木道を歩いている様なヘ短調の変奏曲も素晴らしいですが、一番素晴らしいのは34番です。清水が湧く様な透き通った第2楽章と、その後に続く清流の様な第3楽章は、ハイドンの中期のソナタの持つ清涼感を、見事に表現していると思います。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/18

     今までハイドンの作品目録で存在しか知る事が出来なかった曲が、全部一気に聴けるとは、何と素敵な事でしょう。演奏も優れているし、(何番かは忘れたけど)カデンツァのある曲では、ハイドンの他の有名な曲のメロディを奏したりして、楽しさもあります。
     殆どの曲が3楽章形式で、緩・急・メヌエットの構成が多いです。速い楽章ではなくメヌエットで終わるのは、一見何か尻切れトンボの様に思えるのですが、聴き込んでいくと、重すぎず大袈裟すぎず、普段着のハイドンを見る様な快い日常感が感じられてきます。ハイドンがこの楽章配置で良しとした理由が解る気がしますし、そう感じさせるのは、エステルハージ・アンサンブルの演奏が、きっちりハイドンの意図を読み取っているからだと思います。
     ピアノソナタや交響曲から編曲された楽章もあって、思わず頬が緩む事もありますし、緊張感のある3声のフーガ、そして速い楽章では当然ハイドンお得意のソナタ形式と、曲数が多いにも関わらず決して手を抜かない曲ばかりで、ハイドン好きには至極の全集です。緻密な弦楽四重奏曲とも、華やかなピアノ三重奏とも異なり、これは奏者がリラックスして演奏し楽しんでるタイプの室内楽です。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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