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Review List of 遊悠音詩人 

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  • 7 people agree with this review
     2007/11/25

    申し訳ないが、これは最悪な一枚だ。何故、内省的な資質を持つシューマンの曲を材料にスリルを楽しむのであろうか。鋭角的で喧嘩腰で、少しも歌心がなく、おおよそドイツ・ロマン派的な精神性など微塵もないような演奏だ。やっつけに妙なアクセントをつけるアルゲリッチのピアノは、確かに凄いテクニックかもしれないが、デリカシーがなく、余りに身勝手だ。オケも余韻や粘り、あるいは移ろいゆく色彩感覚など無縁で、乾き切った音響である。ヴァイオリン協奏曲に至ってはもう二度と聴きたくない程の劣悪ぶりだ。妙に古楽器奏法的で金属的な音や不自然なテンポ・ルバートは、聴くに堪えない。クレーメルの弾き方の冷たさといったら、ヴァイオリンを鋼鉄製の凶器のように扱う。文句ばかりでは仕方ないからお薦めを挙げる。ピアノ協奏曲はグリモー/サロネン&ドレスデン国立管が、ヴァイオリン協奏曲はシェリング/ドラティ&ロンドン響が素晴らしい。特に後者は、本盤の駄演の所為で少しも関心しなかったこの曲のイメージを、一気に180度変えてしまったお気に入りの名演である。オケの熱い血潮といい、シェリングの品の良さといい、まさに絶品だ。情熱の中に絶妙な湿り気を滲ませる第一楽章は深みがあるし、歌に溢れた第二楽章のロマンティックなことは筆舌に尽くしがたい。第三楽章のテンポ感覚も、重くならず軽

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  • 2 people agree with this review
     2007/11/25

    名手達による音楽の対話を、ここまで親密に聴かす演奏はなかなかない。三重奏を演奏するグループの中には、三人の芸術性や価値観が対立し、火花を散らすタイプもいる。しかし、ここに聴く三人は、ともに同じ方向を向いて、互いに寄り添いながら曲を紡いでいくので、とても美しい。淡々としながらも味わい深いケンプ、高貴な雰囲気を湛えたフルニエ、端正で上品なシェリングと、造形美や精神美に重きを置く巨匠達だからこそ可能な演奏である。とても柔らかく温かく、聴いた後の充実感は格別である。この名盤を廉価で提供して下さるDGにも感謝。

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  • 1 people agree with this review
     2007/11/22

    シェリングのヴァイオリンの素晴らしさは、筆舌に尽くしがたい。メンデルスゾーンに関してはハイティンク/コンセルトヘボウ管との再録音盤もあるが、端正な表現に壮年期ならではの気迫が加味された本盤の方がより魅力的である。録音も余り古さを感じさせないもので、オケの分離も程よい。ドラティの指揮も情熱的で、血が通っている。シューマンの協奏曲は録音に恵まれないだけあって貴重だ。ここでもドイツ物を得意としたシェリングの気品あるヴァイオリンと、オケの熱い呼吸が見事な融合を見せている。何より歌心があり、一見地味に見えるこの曲から胸を焦がすようなロマンを紡ぎだす。併録の小品も、ヴァイオリンの真の美しさを引き出した逸品揃いである。技術と精神性と気品が程よく融合した、何物にも変えがたい至高の芸術と言えよう。

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  • 1 people agree with this review
     2007/11/22

    端正で、気品と歌心に満ちた演奏だ。シェリングはドイツ物を得意としているが、わけてもベートーヴェンはさすが彼の真骨頂と言えよう。シェリングとしてはS=イッセルシュテット/ロンドンSOとの65年盤が有名であるが、本盤も同様のコンセプトによった演奏だ。旧盤との明確な差異は、むしろ録音にある。旧盤は渋く落ち着いており、本盤は明るくオケの分離も良い。現代人の耳には本盤の音の方が馴染みやすいだろうが、旧盤はオケの語り口が絶妙であり、いずれも甲乙つけ難い。シェリングを愛する人なら、両方とも揃えておくべきであろう。併録のロマンス二曲も、シェリングらしい上品な表現で聴ける。甘くならず、さりとて渋すぎない、程よく中庸を得た演奏は、いつ聴いてもストレートに心に入り込む。最近多いテクニック一辺倒のヴァイオリンとは明らかに一線を画す至芸である。

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     2007/11/21

    評論家のお偉方がこぞって名盤に推しているが、一体この盤のどこがそんなに評価に値するのか甚だ疑問だ。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、この作曲家にしては珍しい程柔和で温かな曲である。理由は、ある女性(テレーゼかヨゼフィーネか?)への思慕があったからで、旋律もロマンティックである。しかし、ハイフェッツは拙速に過ぎ、少しも歌わない。何故かインテンポでガシャガシャとそっけなく通り過ぎる。特に第一楽章は最悪で、こんな冷ややかなベートーヴェンなど聴きたくない。ブラームスもダメだ。夕映えを思わせるような、暖色系の味わいが少しもない。味もそっけもなく、あるのはただテクニックの凄味だけである。「ハイフェッツだから、単なるテクニックだけでないはずだ」と指摘する人もいるだろうが、ならばもっとメリハリや情感があってもおかしくないではないか。批判ばかりしても仕方ないからお薦めを挙げる。二曲ともシェリング盤が最高だ。ベートーヴェンはS=イッセルシュテットの指揮も凄い。オケをここまで語らせた演奏も珍しい。シェリングのヴァイオリンの歌と気品に満ち溢れた表現は絶品!ブラームスは67年のライヴが、知・情・意全てにおいて際立っている。是非聴き比べて欲しい。

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     2007/11/19

    《わが祖国》の最高傑作、ここにあり。ボストンSO盤も有名だが、それよりもはるかに当盤が上である。アメリカのオケは、確かに巧いが情感が今一歩欠如している。また、チェコPOとの来日公演盤も素晴らしい。しかし、如何せんAltusの復刻がイマイチで、オケの厚みを漂白したような、妙に薄っぺらなサウンドに成り果てている。対する当盤は、冒頭のハープの一音からして、懐深い叙情がある。有名な《モルダヴ》も、大河の流れの中に生命の躍動や民族魂の賛美を感じる。その他、どれを取っても真に共感に満ちた演奏が繰り広げられる。祖国が共産化すると亡命を選び、民主化するまで帰郷しないという信念を持っていたクーベリック。彼の望郷の念とスメタナの愛国心が見事な融合を見せた、至高の名演と言えよ

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  • 3 people agree with this review
     2007/11/19

    エヴァー・グリーンな名盤だ。シェリングのヴァイオリンは秀逸である。過度にロマンティックにならず、さりとて辛口過ぎることもない。中道を行く演奏である。やや速めのテンポだが、テクニックでまくしたてることはなく、むしろ軽やかな歌になっている。シェリングは、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ物を得意としている。渋みと甘味の調和した音色で、精神的にも充実した格調高い演奏を繰り広げてくれる。そういえば、ベートーヴェンの協奏曲も絶品で、録音後40年を経た今でも、王者に君臨し続けている。シェリングの素晴らしいヴァイオリンに、更なる彩りを添えるのがルービンシュタインのピアノである。ヴァイオリン・ソナタとなると、ピアノはとかく単なる伴奏になりがちである。だが、ルービンシュタインは一つ一つに味のある表現を加えている。一見淡々としているようで、絶妙なタッチやルバート、ディナーミクがある。しかも奇特な表現は皆無なので、安心して聴いていられるのだ。某ドラマからの流行の産物とは明らかに違う、名匠同士の音楽の対話を味わえる格好の一枚だ。音質も、録音年代を忘れる程優良だ。同時リリースのブラームスのソナタと共にどうぞ。

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     2007/11/19

    今まで色々な演奏でショパンを聴いてきたが、ルービンシュタインの演奏ほど説得力のあるものを聴いたことはない。録音から半世紀近く経ても、全く色褪せないどころか、むしろますます光彩を放っている。ショパンは、ピアニストなら必須のレパートリーだけあって、それこそ様々な演奏が存在する。甘美さで酔わせる人や、強烈な個性で味付けする人、中には、ショパンをおおよそテクニックのお披露目の媒体程度にしか思っていない輩もいる。そうした中、ルービンシュタインは極めて中庸を得た演奏で、ショパンの持つ温かなロマンと男性的側面を開陳してみせる。淡々としながらも、明確な意味付けに事欠かない。奇を衒わないので、安心して曲を味わえる。何より、まるで自分のためだけに弾いてくれているような親近感が

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     2007/11/17

    美しさに溢れた名演だ。シェリングのヴァイオリンは格別である。上品で、甘過ぎず、さりとて渋過ぎず、適度な歌心がある。ブラームスのソナタの名盤として有名なのは、他にデュメイ盤やシュナイダーハン盤が挙げられる。デュメイ盤はとても美しいのだが、やや甘美に過ぎるきらいがある。ブラームス特有の内省的で渋みのある表現が今一つ不足気味なのだ。シュナイダーハン盤も悪くはないのだが、ややぶっきら棒な感じである。復刻も、過度にノイズを除去したせいか高音域が伸びず、金属的な音になっている。そうした中、本盤は中庸を得た極めて正統的な演奏となっている。ルービンシュタインのピアノも、単なる伴奏に留まらず、明確な意味付けをしていて素晴らしい。何より聞き手を優しく包み込むような包容力や親近感があり、素直に音楽世界に浸っていられる。録音の古さ故、やや音像の変化が気になるかもしれないが、さりとて片側のスピーカーからしか鳴らないような劣悪さは皆無なので、鑑賞に差し支えなかろう。二人の名匠が寄り添い合い歌を紡いでいく至高の芸術を、じっくりと堪能出来る一枚である。

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     2007/11/13

    一曲目の《蝶と花》からして、フォーレのリリカルな世界に入り込める。シュトゥッツマンの声は意外と深く、しかも独特の色気がある。艶っぽく、しかし甘過ぎず、気品すら感じる。まるで、言葉の一つ一つが馥郁と香り立つようである。有名な《夢のあとで》も、ここまでロマンティックに歌を紡いだものを聴いたことがない。《漁師の歌》の哀愁や《悲しみ》の憂欝は孤高の美しさだ。《月の光》はリュートの爪弾を思わせる伴奏に、シュトゥッツマンの美声が絡み合う。その他の曲も詩情に溢れた歌唱を聴ける。ただ一つ難点を言えば、数曲だけ、音像の変化や音飛びらしい箇所が見受けられることだ(例えば《蝶と花》や《マンドリン》)。とはいえ、刻まれた演奏はこうした疵を補うに余りある程だ。フォーレの歌曲集は、

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     2007/11/12

    凄まじい演奏だ。ゲルギエフはVPOと再録しているが、それよりももっと強烈だ。第二楽章中間部のティンパニなど、まるで心臓の鼓動のような緊迫感がある。第三楽章も辛口だ。VPO盤では木管楽器の指が回っておらず、もたついた印象だった(因みに有名なカラヤン/VPO盤でもそうだったから、これは恐らくウィーン式の指使いに起因するものと思われる)。両端楽章も張り詰めた空気が尋常ではなく、冒頭のコントラバスの一音からして鳥肌が立つ。荒れ狂うまでの感情、悲劇に翻弄された作曲家の宿命が、うねるようにドラマティックに奏でられている。これがカラヤン(特に70年代!)だと、やたら華麗さや豪快さ、甘ったるさや自己陶酔だけが目につき、殆ど「悲愴」とは無縁の媚びた演奏になる。巧いだけで何も語らないのだ。ムラヴィンスキーも素晴らしいが、やはり録音の古さは否めない。従ってこの盤が《悲愴》の筆頭格だろう。ライヴではないが、ライヴに匹敵する程の怒濤の名演である。

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     2007/11/12

    唯一無二と言ってよい程のお気に入りの曲で、色々な盤を聴いてきた。有名なプレヴィンEMI盤の他、プレヴィンの再録、アシュケナージやマゼール、ザンデルリンク、オーマンディ、スヴェトラーノフ等を聴いてきた。個人的には、スヴェトラーノフ盤とザンデルリンク新盤を好む。純ロシア的で、轟くような重厚さの中に哀愁を滲ませたスヴェトラーノフ盤は絶品だ。また、ロシア的ではないにしろ、天衣無縫な息遣いが美しいザンデルリンク盤も忘れられない。そうした中、やはりゲルギエフ盤は評価出来ない。「期待外れ」という意見に全く同意だ。ロシアのオケとロシアの指揮者による演奏が、何故ここまで拙速に過ぎるのだろうか。ラフマニノフの、強烈なロマンティシズムと蕩々と流れるような歌心は、どこへ行ってしまったのだろうか。特に、少しも歌わない第三楽章

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     2007/11/10

    然らば、ラヴェルの証言は嘘だったのだろうか?いや違う。これは感情のスパイラル(“旋回”)なのだ。ウィンナ・ワルツの礼讃の形をとりつつも、悲しみ、怒り、迷い、あるいは歓喜や悲鳴、栄華と荒廃といった相反する様々な感情や状況を共存させ、拮抗させ、やがては破壊させるのだ。ラヴェルは、光の中に影を、影の中に光を描いたのだ。「白か黒か」ではなく「白あっての黒」「黒あっての白」なのだ。作風は違えど、その神経質なところはマーラーに近いかも知れない。グロテスクさは前に押し出されるものよりも、美の中に潜ませたもののほうがより幻惑的だ。同時に「美は善よりも余計悪と一致する」(オスカー・ワイルド)ものでもある。これらが、刹那的な煌めきの如く、様々な光彩を放っては影に沈み、更に影からまた光を生みながら旋回していくのである。単なるグロテスクさや暗さとは明らかに違う、光と影が織り成す叙事詩なのである。それにしても、公の掲示板での個人的な討論は、正直やりたくありません…。私はあくまで私の意見を“皆様”宛てに投稿したはずなのに…。各位様、演奏に対し賛否様々な思い入れがありましょうが、その余り他の意見をねじ伏せようとしてはいけませんよね。十人十色の考え方があるはずですし、だからこ

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     2007/11/09

    ブラームスの協奏曲は、シェリングが正式デビューを果たす際にも奏でられた曲である。つまりシェリングの十八番とも言えるだろう。さて、ハイティンクをバックにつけた当盤は、集中よりも拡散に向かっている。数多の演奏家の晩年のスタイルに漏れず、テンポも遅目だ。元来パワーで圧倒するようなタイプではなかったシェリングのヴァイオリンは、更に淡々とした趣になっている。だから人によっては地味に聞こえるだろうし、この格調高さを持て余してしまうだろう。私としても、集中力と歌心、それにライヴならではの迫力が絶妙な67年盤(クーベリック/バイエルン放送SO)の方を高く評価する。しかし、現在はびこるテクニック一辺倒の演奏と真っ向から対立するシェリングの演奏には、深い味わいがある。音色も美しいし、何よりその中に感じる豊かな情緒には、感銘を受ける。

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     2007/11/08

    以前“最高”としたが、ワンランク評価を下げる。何故なら、ブルックナーの他の交響曲をヴァント/ミュンヘンPOで聴いた衝撃が大きく、BPOの演奏に今一つ魅力を感じなくなってしまったからだ。全く、上には上があるものだ。何名かが仰る通り、何か洗練され過ぎていて(カラヤン時代以降のBPOの最大の欠点!)、魂の共感が今一歩欠如しているように聞こえるのだ。確かにミュンヘンPOも、チェリビダッケが手塩にかけただけあって、特に透明感はかなり磨かれているが、一方で温もりや重厚感があり、BPOの響きと一線を画している。もしこの第7番がミュンヘンで録音されていたら、もっと深い演奏になったと思う。BPOはヴァントの理想を完全には消化出来ていない。

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