『ワルキューレ』全曲 カシアス演出、バレンボイム&スカラ座、W.マイヤー、シュテンメ、他(2010 ステレオ)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2012年07月23日
演出は特定の主張を押し出さないタイプのもの。ダンサーを駆使してかなり意欲的な見せ方をした、同じカシアス演出の『ラインの黄金』と比べてもずっとおとなしい。演技はまあ普通についているし、少なくとも音楽の邪魔はしないという点は評価して良いだろう。CGも多用されるが、いわゆるバレンシア・リングのように、のべつまくなしに説明的な映像が流れるわけではなく、使い方は節約されている。第2幕後半の森の風景はとても美しいと思うが、その代わりジークムントの死の場面は非常にどぎついクプファー演出に比べると物足りない。 これに対し、音楽面は現在望みうる最高水準と言っても過言ではあるまい。気力充実(この人の場合、指揮姿でそれが露骨に見えてしまう)のバレンボイムの指揮がまず素晴らしい。第1幕最後のアッチェレランドは彼としても会心の出来だろうが、一方、第3幕の幕切れでは遅いテンポでデリカシー重視の指揮、と表現の幅がきわめて広く、多彩だ。機能的な精度ではシュターツカペレ・ベルリンの方が上かもしれないが、スカラ座のオケも決して悪くない。幕切れ近くのヴァイオリンの豊麗さなどは彼らならでは。歌手陣も今やバイロイトでは望めない超豪華版。特にマイヤー、シュテンメという二大歌手の競演は圧巻だ。マイヤーがジークリンデを歌うのはこれが初めてというが、文句なしの出来ばえ。その圧倒的な存在感ゆえにジークムントのかなり歳の離れた「姉」に見えてしまうのも仕方あるまい。シュテンメの方は感情の振幅をあまり歌や演技にストレートに反映させないタイプだが、声そのものは申し分ない。コワリョフのヴォータンも『ラインの黄金』で歌ったルネ・パーペ(悪役寄りの性格的なキャラクターは駄目という定評を実証してしまった)よりはずっと良い。今のところは型通り演じているだけで、彼ならではの個性はないが、それは贅沢な不満だろう。オニールのジークムントもまだ悲劇的な陰影は足らないが、期待通りの見事なヘルデン・テノールだ。7人の方が、このレビューに「共感」しています。
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