『ファルスタッフ』全曲 ジョーンズ演出、V.ユロフスキ&ロンドン・フィル、パーヴィズ、クズネツォワ、他(2009 ステレオ)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2013年09月07日
別のところでジョーンズ演出をけなしたので、これだけは誉めておこう。スカラ座来日公演の予習で9種類の『ファルスタッフ』映像を見たが、演出・演奏ともに現状ではこれを凌ぐものがないというのが私の結論(ベヒトルフ演出/ガッティ指揮のチューリヒ版が二番手)。演出は「1946年」という特定の年に時代を設定している。こんど日本に来るカーセン演出は1950年代、ベヒトルフ演出も同じぐらいだから追随者がたくさん現われたわけだが、頭の固い旧世代ブルジョワ(フォード氏)と若者たち(ナンネッタ/フェントン)の葛藤を描くにはこの辺がふさわしいし、最終場の大騒ぎには「戦勝」直後の開放感も影響していよう。1946年を実際に経験した人はもう少ないと思うけど、現地のイギリス人なら思わずニヤリとするような、小ネタも盛り込まれているようだ。演出はそんなに特別なことをしているわけではなく、笑いのネタも定番通りのものばかりなのだが、笑わせられるところでは必ず「がめつく」笑いを取りにくる。第2幕の終わりではファルスタッフが窓から落ちる様を、第3幕の頭では彼がテムズ河から引き揚げられる様をちゃんと見せる、など細部へのこだわりも楽しい。最後の「仮装大会」での各キャラの扮装も秀逸だし、フーガぐらいは歌手たちに突っ立ったまま歌わせてやりたいと思うが、演出は終わりまで手抜きなし。 ユロフスキの指揮が圧倒的に素晴らしい。シャープかつ繊細、こんなに生命力のはちきれんばかりに詰まった指揮は、バーンスタインの録音以来だ。強弱、緩急の幅も非常に大きいが、鉄壁のアンサンブルは崩れない。歌手陣もスーパースターこそいないものの、全く隙のないアンサンブルをみせる。女声陣のなかでナンネッタが一番太っていたりすると、それだけで見る気が失せるものだが(ロンコーニ演出のフィレンツェ版のこと)、全員がぴったりと適材適所にはまっている。5人の方が、このレビューに「共感」しています。
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