【インタビュー】DIMMU BORGIR / Silenoz

2018年05月02日 (水) 22:00

|

HMV&BOOKS online - ヘヴィーメタル


8年ぶりとなるニュー・アルバム『イオニアン』をリリースするノルウェーのディム・ボルギル。10月には7年ぶりの来日公演も決定!ギタリストのシレノスに、新作のことやEuronymousのことなど、いろいろと聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『イオニアン』がリリースになります。前作『Abrahadabra』から8年ぶりと、常に数年の間隔でアルバムをリリースしてきたディム・ボルギルからすると、ずいぶんと久しぶりの作品ですね。時間をかけたのは故意なのでしょうか。

シレノス:いや、こんなに時間をかけるつもりはなかった。14年までずっとツアーをやっていて、いつも通りツアー後、少し休みを取った。今回はメンバーそれぞれプライヴェートで色々なことがあってね。3人みんな再び子供が生まれたりとか。さらにオーケストラとのDVD(『フォーセズ・オブ・ザ・ノーザン・ナイト〜ライヴ・イン・オスロ 2011』)の製作が遅れたりもあった。で、気づいたらあっという間に時間が経っていたんだよ。じっくりインスピレーションを受けて曲作りをしたけど、8年間全部をニュー・アルバムのために費やしていたわけではないよ。実際に『イオニアン』に取り組んでいたのは3-4年だね。

川嶋:年をとってくると、本当に時間が過ぎるのが速いですからね。

シレノス:そうなんだよ(笑)。

川嶋:『イオニアン』は以前の作品と比べて、どのような点が変化、進歩していると言えるでしょう。

シレノス:幸い今回は締め切りもなくじっくり作業をすることができたから、色々とディテールに凝ることができた。何度も曲を見直してね。まあ締め切りが決まっていないというのは、わかると思うけど、良くない面もあるだろ。「ああ、ここも変えよう」なんていう調子で、永遠に作業が終わらない(笑)。今回は自らプロデューサーとして、外側から作品を客観的に眺めることができたと思う。そこが過去数作と違う点だと思うな。エゴから脱却できたと言えばいいかな。曲として、アルバムとしてどのようにすればベストなのかを客観的に考えらえた。これはチャレンジだったけど、素晴らしいチャレンジだったよ。

川嶋:クレジットを見た限りでは、今回は本物のクワイヤは参加していますが、オーケストラは使っていないようですね。このような決断に至ったのは何故なのでしょう。

シレノス:そう、今回はオーケストラは使っていない。とても素晴らしいオーケストラのサンプルを使うことができたからね。デモやプリプロをやった時点で、ロジスティック的観点からも、サンプルで十分だという結論に達したんだ。一方、かなり早い段階から本物のクワイヤは使おうと決めていた。クワイヤは以前の作品でもとてもうまく機能していたし。クワイヤのサンプルも使っているから、アルバムはクワイヤだらけだけど、それが狙いなんだ。歌詞のある部分は本物のクワイヤを使って、そうでない部分はサンプル。「クワイヤ・オーヴァーキル」とでも言うべき作品になってるよ(笑)。

川嶋:ではフル・オーケストラだけでなく、補助的に本物のヴァイオリンを入れたりもしていないのですね。

シレノス:全てサンプルだよ。ブルガリアのライブラリーからエンドースを受けていてね。サンプルの名前は忘れてしまったのだけど。このサンプルは凄いよ、本当にリアルで。

川嶋:確かに最近のサンプルには、本物と区別がつかないくらいのクオリティがありますよね。

シレノス:毎日オーケストラと仕事でもしてなければ、絶対に区別つかないよ!100人以上のオーケストラの様々な奏法を収録したソフトウェアだからね。

川嶋:今回レーベル・メイトでもあるフレッシュゴッド・アポカリプスのフランチェスコが、オーケストラのアレンジメントで参加しているとのことですが。

シレノス:いや、実はその話はよくわからないんだ。イエンス(ボグレン)からその彼にファイルを送ったという話は聞いたのだけど、一体何のためなのか...。ファイルをクリーンアップする手伝いでもしたのだろうか。フランチェスコは、レコーディングにも曲作りにも一切参加していないんだよ。何で彼があんなプレス・リリースを出したのか、全くわからないんだ。まるで彼がアルバムに参加したかのような書きっぷりだっただろう(笑)?

川嶋:え、そうなんですか?私もてっきりアレンジメントを手伝ったのかと思っていましたが。

シレノス:いや、まったくしていないよ。プリプロダクションの段階で、細部に到るまで非常に良い感じで出来上がっていて、それからイエンスのスタジオに入ったわけだからね。イエンスのところでギターとドラムを録音する前に、すでにクワイヤやオーケストラ、ヴォーカルなどは録り終わっていたんだ。今回はスタジオ入りする前に、とてもきちんと下準備ができていたのさ。さっきも言ったとおり、締め切りがなかったからさ。スタジオ入りする時点で、110%準備ができていたから、その後誰かの手を借りる必要なんてまったくなかった。

川嶋:ではイエンスが何らかの手伝いをさせただけということなのですかね。

シレノス:おそらくそうなんだと思う。イエンスに、「一体彼に何をやらせたんだ?」と聞いてみたんだけど、はっきりした答えは返って来なかったけどね(笑)。俺自身もファイルを聴き比べてみたけど、特に変わったところは見つけられなかったし。MIDIか何かの手伝いをしたのかもしれない。

川嶋:不思議な話ですね(笑)。

シレノス:まったくだよ(笑)。

川嶋:そのイエンス・ボグレンですが、今回彼にミックスを頼もうと思った理由は何だったのですか。

シレノス:メンバー全員一致で彼にお願いしようということになったんだ。新しいことを試したかったからね。彼のミックスした作品の音をとても気に入っていたし。彼は、非常にオーガニックなミックスするだろう?とても音楽的で。今回特にドラム・サウンドは、実にそれらしい深いヘヴィな音が欲しかった。俺たちが好きだった古いアルバムみたいなね。いわゆる機械的でディジタルなドラム・サウンドは避けたかったんだ。とても労力はいったけど、彼はとても素晴らしい仕上がりにしてくれたと思う。特にドラム・サウンドは、とても気に入っているよ。バンドらしい音にしたかったんだよ(笑)。人間らしいやつ(笑)。

川嶋:ディム・ボルギルは、過去にフレデリック・ノルドストロームやアンディ・スニープ、ピーター・テクレンなどとも仕事をしていますよね。あなたたちは長い間Nuclear Blast Recordsという1つのレーベルに留まり続けている一方、スタジオ・ワークに関しては、常にパートナーを変え続けているというのはとても面白いことだと思うのですが。

シレノス:そうだね。俺たちは新しいアルバムを作るたびに、生まれ変わって再生する気持ちでやっているんだ。だから今回も、すべて一から新しいものを作るという気持ちだった。アートワークも同じで、今回は初めてビーラック(Zbigniew Bielak)を起用したんだ。彼は主にアンダーグラウンドな作品を手がけているよね。ずっとヨアキム(Joachim Luetke)にジャケを描いてもらってきたけど、今回は新たにビーラックにお願いしたんだ。あらゆる点において、このアルバムは新しいものになっている。全く新しい皿でスタートしたと言うのかな。

川嶋:そのアートワークですが、これは何を表しているのですか。蛇のように見えますが。

シレノス:これは基本的に、蛇の中に永遠のシンボルが描かれているものだ。ビラークには色々とアイデアを伝えたんだ。二面性であるとか、秘教的なフィーリングとかね。非常に象徴的なアートワークだろう。均衡があって、例えば逆さまにして見ても、ほとんど構図は変わらない。人間であるとか、その精神を表していると言って良いと思う。俺たちが生きている現実では、見かけ通りのものなんて一つもない。だからファンやリスナーに、表面的なものの下に何があるのかを掘り下げてみて欲しいと思ってる。このアートワークは、このアルバムが音楽的にも歌詞的にも、いかに細かい点まで考え込まれているかを表していると言える。ビラークと仕事をするのは今回が初めてだったけど、仕上がりにはとても満足しているよ。最初はなかなか大変だったけど、考えを全て伝え、いざ彼が仕事取り掛かったら、あっという間にすべてがうまく行ったよ。

川嶋:今回のアルバムは「イオニアン=永遠に」というタイトルがつけられていますが、これはどのような意味が込められているのでしょう。

シレノス:俺にとってこのタイトルには、「存在するすべてのもの、存在したすべてのもの、これから存在するであろうすべてのもの」と言う意味が込められている。俺たちが現実の中で認識する時間というのは、あくまで時を刻むためだけのものであって、シャーマニックな実践、経験をすると、時間などという概念は不必要で、分解されてしまうものだということがわかるようになる。そういう高い境地に達すると、宗教、政治、文化、言語も、そして俺たちの持っている時間という概念もすべて消えてしまうんだ。このアルバムの歌詞は、非常に形而上学的だよ。過去のアルバムでは、わりとダイレクトな歌詞を書いていて、そこに結論も与えていた。だけどここ何作か、そして特にこのニュー・アルバムでは、そういうことはやりたくなかったんだ。リスナー、ファンたちに、自らの想像力を駆使して欲しいから、歌詞について俺の客観的な見解を伝えると言うのは正しくないと思う。先入観を与えてしまうからね。今回は歌詞に使う言葉を決定するのに、肉体的にも精神的にも、スピリチュアル的にも色々なものを使ったよ。

川嶋:今回プレス・リリースでも、あなたは歌詞については多くを語りたくないという風に言われてましたよね。

シレノス:そうだね。

川嶋:それを承知で敢えて聞きたいのですが、今回の歌詞をすべて読んで受けた印象からすると、内容としては神智学、例えばブラヴァツキーやルドルフ・シュタイナーといった人たちの思想に近いものを感じたのですが、この意見についてはどう思われますか。

シレノス:確かにそれらの人々が書いたものと、今回の歌詞とに大いに関わりがあると言うのは正しい見解だよ。俺にとって今回の歌詞は、俺が「自分自身だと信じていたもの」の破壊、根絶だ。説明が非常に難しいけど(笑)。自分自身を破壊し、再生させる。肉体的に、精神的にも、スピリチュアル的にもより高いレベルに達するためにね。つまり俺たちはみんな旅をすると言うことさ。人によっては、人生の早い段階でその旅を開始する。あるいは輪廻転生の早い段階でね。開始が遅い人もいるけれど、誰もがいずれはその旅を始めるんだ。この考え方が、このアルバムの歌詞の方向性を決定してくれた。俺は、アルバムの最初の曲が出来上がる以前に、すでに14-15セットの歌詞を書いていたんだ。6-7年もかけてね。

川嶋:あなたの個人的な宗教観というのは、どのようなものなのですか。

シレノス:俺はいかなる組織化された宗教や政治にも反対なんだ。俺たちの人生は探求だ。ある人はある程度の年齢になった時に、この現実の中で自分がどのような位置にいるのかを悟る。俺はあらゆることについて、簡単に結論は出さず、オープンなマインドを保つようにしているんだ。何かについて新たな情報が得られた時は、それについての意見を変えると言うタイプの人間なんだよ。俺は小さい頃から様々な知識を得ることに興味があった。ウサギの穴に落ちてみれば、より多くの情報や知識を得るほど、より疑問が増えるだけだということがわかるものさ(笑)。

川嶋:ディム・ボルギルのことは、今でもブラック・メタル・バンドだと思いますか。

シレノス:俺たちのことを、単なる「ブラック・メタル」と呼ぶのは正しくないと思う。初期の頃も含めてね。もちろんブラック・メタルとの関わりはあるけれど、俺たちは自分たちの道を歩み続けてきている。Sighもそうだろう。ブラック・メタルと関係はあるけれど、独自の音楽をやっている。人々が俺たちのことを「シンフォニック・ブラック・メタル」と呼びたいのなら、それはそれで構わないけど、俺にとって大切なのは、音楽が優れているかどうかだ。結局音楽が良くなければ、俺は感動しない。俺はあまりラベル貼りはしないようにしているんだ。


川嶋:ディム・ボルギルはそのシンフォニックが売りの一つですが、メタル以外からだとどのような音楽から影響を受けているのでしょう。

シレノス:さまざまな音楽から影響を受けているよ。サルサを聴いた次の日に、ダーク・アンビエントも聴くし、年とともに聴く音楽の幅も広がっていくものだろ。ニュー・アルバムの製作中は、俺たちは色々古い作品をレコードで聴いた。80年代や90年代初頭の音楽は、俺たちにとって今でも大きな意味があるからね。

川嶋:具体的にはどんなバンドを聴いていたのですか。

シレノス:Darkthrone、Emperor、Mayhem。それにBurzumすらも聴いた。シャグラットは古いBurzumのレコードをたくさん聴いていたよ。デモだけ出して解散してしまったアンダーグラウンドのバンドとかもね。当時俺たちはテープトレードをやっていたし、俺は今でもそれらのテープを持ってるんだよ(笑)。当時素晴らしい音楽がたくさんあったよね。

川嶋:ヘヴィ・メタルとの最初の出会いはどのようなものだったのでしょう。

シレノス:84年にテレビでTwisted Sisterを見たのが最初だった。6-7歳のころで、あれには本当にぶっ飛んだよ。それ以前は、ラジオで音楽を聴いていただけだったからね。ブルース・スプリングスティーンとかエルヴィス、ボブ・マーリーとか、もっとソフトなものしか聴いたことがなかった。Twisted Sisterをテレビで見て、一発でファンになったのさ(笑)。

川嶋:その後、どのようにしてさらにエクストリームなメタルにハマっていったのでしょう。やはりスラッシュ・メタルがきっかけですか。

シレノス:そうだね、その数年後TestamentやExodusなんかを買ったりした。だけどなんと言っても、Deathこそが俺にとってエクストリーム・メタルへの入り口だったよ。『Scream Bloody Gore』(87年)と『Leprosy』(88年)の2枚が、俺をエクストリーム・メタルの世界へと連れて行ったんだ。それからご存知の通り、Euronymousのレコード・ショップの存在も大きかった。彼は非常に優れたセールスマンでさ。彼の店に行くと、必ず何か買って帰ったものだよ。彼のオススメにはハズレがなかったからね。とてもスペシャルな時代だった。

川嶋:具体的にどんなものをオススメされて買ったか覚えていますか。

シレノス:Samaelのファースト・アルバム(『Worship Him』(91年))が出た時のことはよく覚えている。「これは絶対買った方がいい。今一番かっこいいのはこれだ!」って言われてね。BlasphemyやBeheritとかも教えてもらった。こういうオールド・スクールなバンドは今でも聴いてるよ。それからもちろんSighも教えてもらったよ。あの頃は楽しかったね(笑)。

川嶋:90年代の頭ころですよね。

シレノス:91年とか92年くらいだね。ブラック・メタルがマスコミの標的になる少し前のことさ。毎週第2土曜日に彼の店に行っていた。片道1時間かけてバスでオスロに行って、バス停から店まで歩いて行って。マジカルな時代だったよ。

川嶋:ブラック・メタルという音楽を知ったのは、Euronymous経由だったということですか。

シレノス:そうとも言えるけど、彼に会う以前から、DarkthroneやMayhemのことはもちろん知ってはいた。Darkthroneのファースト(『Soulside Journey』(91年))は、もっとデス・メタルっぽい作品だったけど、俺たちはあれの大ファンだったんだ。Euronymousが「『A Blaze in the Northern Sky』(92年)を聴いてみな。これは本当にユニークな作品だから」って聴かせてくれてね。で、『Soulside Journey Part2』を期待してたら、あれだろ。「これは最高だ!」って、一発で気に入ってしまった。この世のものとは思えなかったよ(笑)。

川嶋:当時のノルウェーにおけるブラック・メタル・シーンの雰囲気というのは、どのようなものだったのでしょう。さまざまな逸話、伝説が伝えられていますが。

シレノス:俺たちは田舎の出身だったから、いわゆるインナー・サークルの活動に直接関わることはなかった。もちろんライヴやEuronymousの店などで会っていたので、ほとんどの奴らと知り合いではあったけどね。当時はみんな喋らなかったよ。みんな暗くて物静かで、せいぜい「ハロー」って頷く程度だった(笑)。非常に奇妙だけど、マジカルな時代だったね。みんな若くて、自分は無敵で、誰も自分たちには触れることすらできない気がしていた。16-17歳で、自分は不死身だと感じていたものさ。

川嶋:当時新しい音楽、新しいシーンが生まれつつあるんだというエキサイティングな雰囲気はありましたか。

シレノス:あった。ディムを始める以前にデス・メタルをやっていたのだけど、俺はもっと音楽だけでないものをやりたいと思っていたんだ。ブラック・メタルがアンダーグラウンドの世界で爆発的人気になったときには、すごく連帯を感じたし、ブラック・メタルというのは1つのパッケージだっただろ。音楽だけでなく、服装、ライフスタイル、マインドセットすべて含めてね。それがまさに俺が求めていたものだった。

川嶋:Euronymousが殺されたというニュースを聞いた瞬間のことは覚えていますか。

シレノス:はっきり覚えている。あの事件の数日前、彼に電話をして、TシャツをいくつかとCDを何枚か注文したんだ。それが郵便局に届いたので、受け取りに行ったんだ。で、途中食料品店に寄ったら、新聞の1面に事件のことが出ていて。「何なんだこれは!」ってビックリしてね。何しろEuronymousとは数日前に話したばかりたったのに。とんでもないショックだったよ。俺もまだ若くて、事件についてどう考えるべきなのかわからなかった。あのときみんな凄く疑心暗鬼になっていたよ。新聞のヘッドラインには、「フィンランドのブラック・メタル・マフィアに脅されていた」なんていう記事が出ていたわけだからね。それでみんなナイフを常に持ち歩くようにしたりとか。クレイジーだったよ。

川嶋:誰が犯人なのかはすぐにピンと来ましたか。

シレノス:いや、わからなかった。誰もわからなかったと思うよ。特に俺たちのようにインナー・サークルの外側にいた人間はね。被害妄想やショックも大きくて、みんな起こったことを信じられないような状況だったし。

川嶋:お気に入りのメタルのアルバムを3枚教えてください。

シレノス:とても難しいな(笑)。やっぱりJudas Priestの『Defenders of the Faith』(84年)を挙げないわけにはいかない。それからIron Maidenの『Powerslave』(84年)。あとはDarkthrone。彼らには大きな衝撃を受けたからね。ファーストも大好きだったけど、やっぱりここでは2ndか3rdかな。『A Blaze in the Norther Sky』を3つ目として挙げておこう。

川嶋:さて10月に来日公演が決まっていますが、久々の日本公演ですね。

シレノス:前回は2011年、例の津波の数週間前だった。俺たちはあの時日本からオーストラリアに行ったのだけど、Iron Maidenは逆にオーストラリアから日本に行く予定で、結局彼らのライヴは中止になったんだよね?

川嶋:そうです。7年ぶりのディム・ボルギルの日本公演は、どのような内容になるのでしょう。

シレノス:今はいくつかのセットリストでやっているんだ。フェスティヴァルではヘッドライナーでないケースもあるからね。でも日本ではヘッドライナーだから、しばらく演奏していない曲も含めたクールなセットリストにしたいと思っている。何しろ7年ぶりだからね。前回の日本での経験は、とても素晴らしいものだった。ただあのとき、確か東京で俺のギター・テックが転んで頭をフライトケースにぶつけてね。ざっくり切れてしまって、帰国せざるをえないという事件があった。彼は昨年脳腫瘍で亡くなってしまったのだけど、おそらく転んだのも、脳腫瘍が原因だったのではないかと思う。それ以外は本当に素晴らしい体験だったよ。また日本に行くのがとても楽しみだ。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

メッセージ:随分と待たせてしまったけど、もう少しだけ待って欲しい。それまでニュー・アルバムをじっくり聴いていてくれ。俺たちが日本に行ったときには、ぜひエネルギーを分けて欲しい。待ちきれないよ!


 95年のアルバム・デビュー以来、常に数年という間隔でアルバムを発表し続けてきたディム・ボルギル。10枚目となる本作『イオニアン』は、彼らにしては異例の8年という長いブランクを経てのリリースとなった。内容については、シレノスの言う「クワイヤ・オーヴァーキル」以上にぴったりの表現はないだろう。11年のオスロにおけるスペシャル・ライヴでも共演したクワイヤ、Schola Cantorum Choirが今回もフル参加。EpicaやTherionのファンもびっくりの、壮大なクワイヤ満載アルバムに仕上がっている。そしてバンド結成25周年にあたるということもあり、本作では90年代初頭のブラック・メタルへの回帰を思わせる雰囲気もあるのは、インタビュー中の「80年代や90年代初頭のレコードをよく聴いた」という発言からもわかるとおり。まさに『イオニアン』は、ディム・ボルギル自らが完成した「シンフォニック・ブラック・メタル」というジャンルの歴史をさらに上書きする傑作である。

 Fleshgod Apocalypseのフランチェスコの件について、少し解説しておこう。18年の年明け早々、「Fleshgod Apocalypseのピアニスト、ディム・ボルギルの新作のオーケストレーションを手伝う」というニュースが出回った。それによれば、「Fleshgod Apocalypseのピアニストでありオーケストレーターでもあるフランチェスコ・フェッリーニは、ディム・ボルギルの新作の補助オーケストレーターとして採用」され、フランチェスコによれば「長い間ファンであったディム・ボルギルの新作に貢献できるなんて最高の体験」であったとのこと。確かにこのニュース、ディム・ボルギルではなく、Fleshgod Apocalypse側から出されている。私もまさかこれが真実ではないとは夢にも思わず、ライナー・ノーツにもフランチェスコ参加と書いてしまったのだが...。結局シレノスによれば、フランチェスコに何らかのお手伝いをお願いしたのはイエンス・ボグレンで、しかしイエンスのスタジオに入る時点では、オーケストレーションもシンフォニック・パートのレコーディングもすべて済んでいたわけだから、フランチェスコがオーケストラ関連の作業に関わっているはずはないということになる。

 90年代初頭の回想の中で、1つとても興味深い部分がある。シレノスが、Euronymousに「BlasphemyやBeheritとかも教えてもらった」というところだ。ブラック・メタル・ファンならご存知のとおり、当時ノルウェーとフィンランドのブラック・メタル・シーンは対立関係にあった。対立の原因は、Beheritのメンバーが夜中にEmperorのSamothにイタズラ電話をかけたからなんていう説もあるが、音楽的、イデオロギー的にお互い相いれない部分があったことも事実。Euronymousは当時アンチ・デス・メタル、アンチ・グラインドコアを強烈に押し出し、「ブラック・メタルは美しくなくてはいけない」という理想を掲げていたが、フィンランド側のImpaled NazareneはExtreme Noise Terrorのカヴァーまで披露、ノルウェー側とは対極の音楽的価値観を持っていた。イデオロギー的にも、ノルウェー側はアンチ・ラヴェイを打ち出していたが、Beheritなどは『Satanic Bible』からの引用を行うほど、チャーチ・オブ・サタンのシンパであった。当時Euronymousを中心としたノルウェーのブラック・メタル勢は、大きな人気を誇っていたスウェディッシュ・デス・メタル、そしてハードコア・パンクやグラインドコアなど、さまざまなものへのアンチを表明していた。だが実際は、これらの対立構図は、戦略的に意図的に作り出された部分も少なからずあったのだ。Euronymousが実はハードコア・パンクが大好きだったことはよく知られているし、初期のMayhemの音楽には、ハードコア的要素が露骨に現れている。そしてのちにやはり対立構図へと取り込まれるフィンランドのブラック・メタルについても、Euronymousは決して頭ごなしに拒絶していたわけではなかったのだ。それどころか、若き日のシレノスに「Beheritってカッコいいから聴いてみな!」と薦めるほどお気に入りだったのである!カナダのBlasphemyを推していたという話も非常に興味深い。今ではウォー・ブラックの元祖とも言える彼らの作風は、北欧のシンフォニックなブラック・メタルとは対極にあるもの。音だけで判断すれば、彼らのデビュー作『Fallen Angel of Doom』(90年)などはモロにグラインドコア、当時Euronymousが忌み嫌っている(と装っていた)スタイルである。EuronymousがBlasphemyをどう評価していたのかについてはずっと気になっていたので、今回のシレノスの発言は非常に興味深いものだ。

 ブラック・メタル・ファンはもちろん、シンフォニックなメタルが好きな人なら誰もが楽しめるに違いない『イオニアン』。シレノスも言うとおり、音楽的にも歌詞的にも非常に深い作品だ。じっくりと聴きこんで、ディム・ボルギル7年ぶりの来日公演に備えようではないか!

取材・文:川嶋未来 / SIGH


日本盤 初回限定盤 ボーナスデモCD付き

Eonian

CD

Eonian

Dimmu Borgir

価格(税込) : ¥3,240

発売日: 2018年05月04日

日本盤 通常盤

Eonian

CD

Eonian

Dimmu Borgir

価格(税込) : ¥2,700

発売日: 2018年05月04日

輸入盤 通常盤

Eonian

CD輸入盤

Eonian

Dimmu Borgir

価格(税込) : ¥3,188

会員価格(税込) : ¥2,775

まとめ買い価格(税込) : ¥2,391

発売日: 2018年05月04日

限定盤完売

%%message%%

最新ニュース・情報を受け取る


Dimmu Borgirに関連するニュース

HMV&BOOKS online最新ニュース

最新ニュース一覧を見る