ジーバーベルク監督のマニアック演出による『パルシファル』

ワーグナー：舞台神聖祝典劇『パルシファル』全曲
ゴルトベルク、ミントン、ロイド、シェーネ、チャマー
ジョルダン指揮モンテカルロ・フィル、ほか

1982年、旧西ドイツとフランスの合作オペラ映画。監督のハンス・ユルゲン・ジーバーベルクはドイツ映画界の巨匠。
　代表作の『ドイツ三部作』（冒険小説作家、政治家、国王という組み合わせ。『カール・マイ（Karl May）』『ヒトラー（Hitler: ein Film aus Deutschland）』『ルートヴィヒ二世へのレクイエム（Ludwig: Requiem für einen Jungfraülichen König）』）の中の『ルートヴィヒ二世へのレクイエム』では、ワーグナーの音楽を大量に用いたり、ワーグナー一族を描いた長編ドキュメンタリー映画『ヴィニフレート・ワーグナーとヴァーンフリート館の物語（Winifred Wagner und die Gesichte des Hauses Wahnfried von 1914-1975）』（298分）を製作したりするなど、この作曲家への傾倒ぶりはかなりのもので、当DVDに収録されたオペラ映画『パルシファル』でも、凝りに凝った手法を駆使して、映像美学の探求をおこなっているのが注目されます。

　冒頭、前奏曲では人形劇を用いて作品全体を暗示的に予告し、パルシファル役は、愚者から賢者への性格転換に注目して役者を使い分ける、さらに舞台セットにはワーグナーの巨大なデスマスクが登場したり、バイロイトゆかりのマニアックな小物が配されるなど、ワーグナー好きにはたまらない仕掛けが随所に見受けられるという非常に興味深い内容です。

　もともと楽劇ではなく舞台神聖祝典劇と名付けられた『パルシファル』では、舞台上演に際しても「神聖さ」を志向した結果、スタティックなものが多く見られたのですが、ここではより自由の効く「映像別撮り」ということもあってか、色彩的かつ象徴的な手法が多用されています。
　荘厳な重々しさと崇高さに対置される官能的な性格や、邪悪な性格が克明に描き出されるほか、指揮者のジョルダンの「顔」に注目したキャスティングともとれるアンフォルタス役の「苦悩」の表現も相当なもの。監督みずから、ヴァーンフリート館の石ころなど、無意味なものにまでこだわってみせたという美術の面白さは、舞台上演では考えられない面白さにあふれています。

　ちなみにこの作品、以前、日本盤LDで最初にリリースされたときは2万6000円もしていました。

監督：ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
出演：ミヒャエル・クッター、カーリン・クリック、アルマン・ジョルダン、マルティン・シュベル、ロバート・ロイド、エディト・クリヴァー
歌唱：イヴォンヌ・ミントン(S)、ライナー・ゴルトベルク(T)、ヴォルフガング・シェーネ(Br)、オーゲ・ハウグランド、ハンス・チャマー(Bs)

合唱：プラハ・フィルハーモニー合唱団
管弦楽：モンテカルロ・フィルハーモニー
指揮：アルマン・ジョルダン

画面：カラー　アスペクト比 4:3
音声：ドルビー・デジタル・ステレオ
字幕：英語
収録時間：255分
その他：インタラクティヴ・メニュー、Webアクセス
リージョン・コード: 0 (world-wide)

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