フードスタイリスト・飯島奈美さん インタビュー
Monday, September 28th 2009

フードスタイリスト・飯島奈美さんが、映画に登場する食卓のシーンを再現する、雑誌「AERA」の人気連載『シネマ食堂』が一冊の本になりました!
数々の映画で、魅力的な食卓シーンを作り上げる飯島さん。『シネマ食堂』では、映画のワンシーンを感じることができるだけでなく、映画を観た後に思う「あの映画に出てくる、あのごはんが食べてみたい!」という願いを、わかりやすいレシピにして叶えてくれています。まだ観たことのない映画は、いったいどんな場面でこのごはんが登場するのだろう?と映画を観てみたくなります。 観て楽しく、作っておいしいという嬉しい本なのです!
『シネマ食堂』のほとんどの撮影を行っているという、飯島さんの作業場におじゃまして、新刊『シネマ食堂』と、映画のフードスタイリングについて、お話を伺いました!
- --- 新刊『シネマ食堂』は、本当に映画のワンシーンのようですが、飯島さんご自身が手がける映画と、再現としてのフードスタイリングとでは違いますか。
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そうですね。自分で映画のフードスタイリングをする時は、視覚から入るものが何もなく、台本を読んで一から考えるので、作業としてはまったく違うものですね。『シネマ食堂』の場合は、なるべく元の映画のイメージに近づけるようにしています。映画のスタイリングは、設定に合わせて細かく食器や小物を選んでいるので、その映画の作り手のイメージを、私が全く違うものに変えてしまうのも良くないかなと思ったんです。 元の映画の作り手や、その映画を好きな人のイメージを壊さないように、それぞれの映画の雰囲気を出すようにしています。
- --- ほとんどの撮影が、こちらの飯島さんの作業場で行われたそうですが、同じ場所だとは思えないくらい、映画によってまったく雰囲気が違うので驚きました。
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映画の人がよく使う、味わいのある小道具が揃っているリース屋さんがあるんですが、そこで畳や使いこんだような椅子とかを借りて、逆にかわいい設定の時は、雑誌やCMでよく使う食器のリース屋さんに行ったりと、映画のイメージによってリース屋さんを使い分けています。 「お茶漬け」の奥に写っている、「味の素」の瓶は、私が富岡八幡宮の骨董市で買ってきたものを使いました。「すき焼き」の時は、コンロのオレンジ色のホースが見つからなくて、白いホースにオレンジの色紙を巻きつけたんです。
- --- 撮影で、思い出に残っているエピソードはありますか。
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「ポップコーン」の時ですね。『トンマッコルへようこそ』という映画で、兵士が村に紛れ込んできて、その村に世話になっているんですけど、村の備蓄倉庫が手榴弾で爆発して、備蓄してあるじゃがいもとかとうもろこしが降ってくるシーンがあるんです。 それを、とうもろこしが弾けてポップコーンになって空から降るという風にしたんですが、両側から、せ〜の!でポップコーンを飛ばして、空を飛んでいる瞬間を撮影しました。 風の強い日で、終わった後の掃除が大変でした。
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--- 飯島さんが、フードスタイリストになるまでの経緯も聞かせていただきたいのですが、フードスタイリストになろうと決めたのはいつ頃だったんですか。
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高校を卒業してから、栄養士の学校に通っていて、料理に関わることで、何か楽しい仕事はないかなぁって考えていた時に、料理雑誌に「フードコーディネーター」という仕事が載っていて、「なんか、いい気がする!」って。直感ですね。
調べていくうちに楽しそうだなと思って、自分が楽しめないと続かないような気がしたんですね。それで、「よし、これになろう!」って思い込んだのが二十歳くらいの時でした。
- --- 料理に関係する職業がたくさんある中で、二十歳で決めるというのは早いですね。
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そうですね。まっしぐらっていう感じですね。
それで、どこに行ったらなれるのかわからなかったので、料理に関係する編集もしているようなところへ何件か面接に行ったら、「フードスタイリストを紹介してあげる」と、その場で電話して下さって。次の日に面接に行ったら、「じゃあ明日からいらっしゃい」ということになったんです。
この仕事は体力も必要ですし、すごくやる気がないと続かないんですね。それで辞めちゃう人が多いので、たまたまそのタイミングで、すぐアシスタントとして働くことになったんです。
独立してからもCMの仕事をずっとしていて、たまたまパスコのCMで小林聡美さんとご一緒して、小林さんが『かもめ食堂』の映画に出演されることになった時に、声をかけていただいたんです。 - --- 『シネマ食堂』の帯にある、小林聡美さんの「ナミちゃんの作るゴハンは、もはや消えモノではない。レジェンドである!」という文もいいですね。
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ありがたいお言葉です・・・!うれしいです。
- --- 飯島さんは、焼きそばがお好きで、焼きそばを極めようとしていらっしゃるという話を「ほぼ日」で拝見したのですが、作りたい味、出したい味というのは、過去に味わったことのある記憶の味なのでしょうか。それとも自分の中でイメージとして描いている感じなのでしょうか。
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記憶のものを作りたい場合もありますし、「これをもっと進化させたものを作りたい」という場合も、両方ありますね。
焼きそばの場合は、すでに茹でた麺がパックしてあって、それを使いますよね。なんで茹でたての麺がないんだろうって思ったんです。
あるお店で、ラーメンの麺の茹でたてを炒めて作る焼きそばがあって、コシもあっておいしいんです。でも、じゃあみんなにレシピとして紹介するとなると、果たしてそれなのかどうかっていうのに迷ってしまって。
糸井(重里)さんもおっしゃっていたんですが、焼きそばとかお好み焼きって、ある程度、いい加減っていうとなんですけど、「いい加減が良い加減」というんでしょうか、なんていうか、そういう中においしさがあるものってあるよなぁって。
あんまりきっちり作りすぎても、出来すぎた焼きそばというか・・・。なんでもかんでも細かく作ればいいっていうものじゃなくて、その料理によって完成度や作り方は違うなって、最近そういうことにも気が付けたんです。面白いものですねぇ。

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- シネマ食堂
飯島奈美 - 2009年9月(朝日新聞出版)
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- LIFE なんでもない日、おめでとう!のごはん
飯島奈美 - 2009年3月(東京糸井重里事務所)
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- ごはんにしよう。
飯島奈美 / 榑谷孝子 - 2009年7月(文化出版局)
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- 朝ごはんの献立
飯島奈美 - 2008年11月(池田書店)
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- おいしさの秘密
飯島奈美 - 2009年3月(メディアファクトリー)
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- かもめ食堂
- 2006年9月
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- めがね
- 2008年3月
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- 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
- 2007年10月
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- ハンサム★スーツ
- 2009年3月
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- 歓喜の歌
- 2008年8月

飯島奈美
1969年、東京都生まれ。
CM広告を中心に、食に関するさまざまな分野で活躍。
2006年、荻上直子監督作『かもめ食堂』をきっかけに『めがね』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』『歓喜の歌』『南極料理人』『プール』など数多くの映画のフードスタイリングを手掛ける。
著書に『LIFE なんでもない日、おめでとうのごはん。』、『朝ごはんの献立 12のシーンとおいしいごはん』などがある。
