ポシュナー&リンツ・ブルックナー管/ブルックナー:交響曲第00、9番(2CD)

2024年05月17日 (金) 17:00 - HMV&BOOKS online - クラシック


#bruckner2024、遂に完結。
最終巻はブルックナーの交響曲の最初と最後を一堂に収録


「CAPRICCIO」レーベルと国際ブルックナー協会の主導でブルックナーの交響曲全11曲全18バージョン(稿)を録音するプロジェクト「#bruckner2024」が遂に完結。同一指揮者による全稿録音は史上初の快挙ですが、最新の知見を援用した解釈と、ブルックナーの細かい指示を丹念に踏まえたポシュナーの指揮によって新たなブルックナー像を提示することに成功。「私たちが習慣にしてきた聴き方と伝統と見なしてきたものを問い直す企画」として「ICMA(International Classical Music Award)」2024の特別賞を受賞しました。
 最終巻にはブルックナーの交響曲創造の出発点となった交響曲ヘ短調(別名「習作交響曲」、通称「第00番」とも)と未完の遺作となった第9番を収録。どちらも異稿は無く、使用楽譜はノーヴァク版ですが、このプロジェクトに一貫する「スコアの読み直し」によって新鮮なサウンドと解釈が聴かれます。
 ヘ短調の交響曲はブルックナーが作曲の師キツラーに提出した最終課題のひとつ。ブルックナー自身はこれを出版することを考えていた形跡があり、自信作であったことがうかがわれます。ポシュナーはリピートを省いているので全曲の演奏時間は34分弱。インバル盤(Teldec、現Warner)の46分余りに比べてだいぶ短くなっていますが、シューマンやメンデルスゾーンに連なるドイツ・ロマン派の風合いを感じさせる、颯爽としてチャーミングな作品として独自の魅力を提示しています。
 ブルックナーは1887年に第8番第1稿を完成させた後すぐに第9番の作曲に取り掛かりましたが、第8番第1稿が初演拒否されるとこれの改訂に取り掛かり、合わせて第1番、第3番、第4番、ミサ曲へ短調の改訂にまで手を伸ばしました。1889年に第9番に戻ったブルックナーですが、途中で『詩篇第150篇』と『ヘルゴラント』を作曲したためまたも遅延し、完成させることなく世を去りました。第4楽章にはかなりの部分の断片が遺されており、少なからぬ数の補筆完成の試みがなされていますが、「#bruckner2024」ではブルックナー自身が関与してないものは対象外とするため、後世の補筆完成版は対象外となります。第9番第1楽章は楽章を構成する主要動機がすべて導入部において提示されますが、ポシュナーはそれら個々の動機をわかりやすく示すことで楽章を貫く緊密な構成を明らかにしてゆきます。従来のブルックナー演奏においては、テンポをあまり細かく動かさず(または動かしたと感じ取らせず)、また教会で聴くオルガンや合唱のように丸く溶け合った響きを求めるなど、その作品を神聖視するあまり教会音楽的に演奏する傾向もありましたが、ポシュナーは作曲者のテンポや強弱記号を仔細に読み込んで反映し、民謡や民俗舞曲に由来するルーツ・ミュージック的な要素もしっかりと打ち出しており、その上でスケルツォの峻厳さやアダージョの浄化されるような美しさをシンフォニックに提示しています。(輸入元情報)

【収録情報】
Disc1
ブルックナー:
● 交響曲第9番ニ短調 WAB109(ノーヴァク校訂、BSW9)

1. Feierlich, misterioso (23:52)
2. Scherzo. Bewegt, lebhaft (10:44)
3. Adagio. Langsam, feierlich (22:08)

Disc2
● 交響曲(第00番)へ短調 WAB99(ノーヴァク校訂、BSW10)

1. Allegro molto vivace (10:30)
2. Andante molto (10:57)
3. Scherzo. Schnell (5:10)
4. Finale. Allegro (6:58)

 リンツ・ブルックナー管弦楽団
 マルクス・ポシュナー
(指揮)

 録音時期:2021年11月9,10日(第9番)、2022年2月23,27日(第00番)
 録音場所:リンツ、ムジークテアター・リハーサルホール
 録音方式:ステレオ(デジタル)

国内仕様盤

※国内仕様盤には石原勇太郎氏(音楽学/国際ブルックナー協会会員)による日本語の解説が付属します。(輸入元情報)


【ブルックナー交響曲年譜と収録CD】(作曲の終了や初演など、ある段階の完成と見なせる年を表記)

1824年9月4日 ブルックナー生誕

1863年 ヘ短調 NYCX10477(C8096)(第9番とのカップリング)
1865年 第1番スケルツォ旧稿 NYCX10469(C8094)
1866年 第1番(第1稿) NYCX10443(C8092)
1869年 ニ短調(第0番) NYCX10274(C8082)
1872年 第2番(第1稿) NYCX10449(C8093)
1873年 第3番(第1稿) NYCX10332(C8086)
1876年 第4番(第1稿) NYCX10354(C8084)
1877年 第2番(第2稿) NYCX10414(C8089)
1877年 第3番アダージョ第2番 NYCX10474(C8095)
1877年 第3番(第2稿) NYCX10474(C8095)
1878年 第5番 NYCX10435(C8090)
1878年 第4番(第2稿/旧第4楽章「民衆の祭り」) NYCX10304(C8083)
1880年 第4番(第2稿/新第4楽章) NYCX10304(C8083)
1881年 第6番 NYCX10236(C8080)
1883年 第7番 NYCX10364(C8091)
1887年 第8番(第1稿) NYCX10373(C8087)
1888年 第4番(第3稿) NYCX10397(C8085)
1889年 第3番(第3稿) NYCX10454(C8088)
1890年 第8番(第2稿) NYCX10258(C8081)
1891年 第1番(第2稿) NYCX10469(C8094)
1896年 第9番(未完) NYCX10477(C8096)(交響曲ヘ短調とのカップリング)

1896年10月11日 ブルックナー没

【#bruckner2024の特色】
・ブルックナーの11の交響曲にある全ての稿(バージョン)を録音。
・ブルックナー研究の第一人者でイェール大学名誉教授のポール・ホークショーが監修。
・演奏はマルクス・ポシュナー指揮、リンツ・ブルックナー管弦楽団とウィーン放送交響楽団。
・一部の曲で新ブルックナー全集(NBG)の楽譜を使用(未刊行のものを含む)
・輸入盤の解説はポール・ホークショー(英語・ドイツ語)、国内仕様盤には国際ブルックナー協会会員の石原勇太郎氏の日本語解説が付属

【#bruckner2024へ寄せて】
「2024年は生誕200年を迎えるブルックナーのアニバーサリー・イヤーです。それに合わせて、これまでにも多くのCDが発売されてきました。それぞれの演奏がブルックナーの様々な側面を照らしてくれていますが、その中でも#bruckner2024プロジェクトはこれから作られていくブルックナー受容の新しい歴史の幕開けに相応しいものなのではないかと感じています。このプロジェクトの一環として発売されてきたCDに収められたポシュナーと二つのオーケストラによる演奏は、多くの音楽ファンを驚かせていることと思います。彼らの演奏は、私たちが「ブルックナーらしい」と感じる/考えている一種の固定観念を打ち砕いてくれます。いくつかの交響曲で使われている新しい校訂版(NBG)の出版が進められているように、ブルックナー研究は新時代へと移り変わりつつあります。しかし、残念ながらブルックナーの演奏様式はほとんど進歩していないと言わざるを得ません。J.S.バッハやベートーヴェンといった作曲家の演奏様式が次々と見直されている時代であるにも関わらず、ブルックナーだけは遺物のように、後付けの「らしさ」が残されているのです。ブルックナーはなにも特別な作曲家ではありません。ベートーヴェンやショパン、チャイコフスキーや武満と同じ一人の音楽家です。であればこそ、ブルックナー作品にも新しい解釈の可能性は十分に残されているはずなのです。#bruckner2024はそのことを私たちに気づかせてくれる重要なきっかけとなり得るでしょう 。」〜石原勇太郎(音楽学/国際ブルックナー協会会員)

【当プロジェクトにおけるブルックナーの交響曲の「稿」について】
「アントン・ブルックナーの音楽の愛好家のみなさんは、当プロジェクトで収録されるブルックナーの交響曲の稿が全部で18しかないことを不思議に思うかもしれません。20世紀半ば以来、音楽雑誌やレコード業界のマーケティングによって、彼がもっと多くの稿を残したかのような誤ったイメージが作られてしまったのです。ブルックナーのすべての自筆資料のあらゆる変更を特定しようとする音楽学的な関心の結果、彼自身が明確に「稿」と捉えていたものに至る途中で行われた修正まで含めた版がやたら増えてしまったのです。本来こうした修正は、スコアではなく、校訂報告に含めるべき情報です。また、レコード・プロデューサーたちが新しいリリースのたびに、ハース版かノーヴァク版かを表記することにこだわったために、この二人の学者がブルックナーの1番から9番まですべての交響曲について明確に異なる版をそれぞれ出版したかのような誤解を与えてしまいました。実は、交響曲第8番の第2稿を除けば、ハースとノーヴァクの版はかなり似通っているのです。
本全集を収録するにあたって、演奏者たちは目下オーストリア国立図書館の後援の下で準備されている『新アントン・ブルックナー全集』の校訂者たちが決めた「稿」の定義を採用しています。新全集では、ブルックナーの交響曲のそれぞれの「稿」を、彼の歴史的な節目〜「たとえば交響曲の演奏、出版、または献呈など、ある作品について彼がひとつの段階を終えたことを示す出来事」〜によって区別しています。したがって、本録音では、新全集の校訂者たちが同定した「稿」が収められており、各CDの原盤解説には、その特定の「稿」を同定した理由について詳しく論じています。この録音には、作曲者の関与なく出版された初版楽譜〜いわゆるシャルク、レーヴェなどのもの〜は含まれていません。わかっている限りでは、ブルックナーが同意した初版楽譜は、第3番、第4番、第7番のみであり、それらの内容は、本セットでは最終稿(もちろん第7番はひとつしか稿がありませんが)の楽譜に組み込まれています。可能な限り、演奏は新ブルックナー全集のためにすでに完成しているスコアとパート譜に基づいています。」〜ポール・ホークショー(イェール大学名誉教授)

【マルクス・ポシュナー、ブルックナーを語る】
「ブルックナーは私にとって、別世界への入り口といえる存在です。子どもの頃、父が私にブルックナーの合唱曲を教えてくれた時から、ずっとそうでした。なかでもグラドゥアーレ《神が作り給いし場所》は、私を惹き付けると同時にいら立たせました。こうしたブルックナーの音楽に対する複雑な思いは、今も変わりません。魅了され、心動かされながらも、動揺させられるといった具合です。彼の作品は音楽的な謎に満ち、また神秘と深遠さに満ちています。彼のものごとに対する見方は独特で、ラディカルでさえあります。私が思うには、ブルックナーはその交響曲において永遠性を見上げると同時に、完全に内なる世界へも目を向けています。その一方で地に足がついていて、オーバーエスターライヒ地方の伝統(ポルカとコラール、飲み屋と教会)にしっかりと根ざしていました。極端な対比の組み合わせという点では、エクスタシーと神秘性を組み合わせたメシアンやリゲティに先んじていました。ブルックナーの音楽は今なお挑発的で、未完で、論議を呼び、因襲的ではなく、ラディカルであり、したがってモダンかつ時代を超えるものといえるでしょう。私たちはリハーサルの過程で、ブルックナーの交響曲の中にこれほどの爆発力や明るい色彩、とてつもない大胆さがあることに何度となく驚きました。それにはスコアをいったん疑い、間違った伝統と真の伝統を区別する必要があったのです。」(輸入元情報)
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