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『トルソ』 渡辺真起子 インタビュー

Wednesday, January 26th 2011

interview
渡辺真紀子


『トルソ』のDVDがいよいよ解禁!公開前に主演の渡辺真起子さんにお話を伺った。監督はドキュメンタリーを数多く撮影し、近年は是枝裕和監督作品のほぼを撮影されている山崎裕氏で本作は初の監督作品となる。是枝監督の目としてスクリーンいっぱいに映し出される、あの生理的な肌目がさらに広がっていて、そこに少しの所作も美しい渡辺氏がいた。白ワインを飲みながら台所に立ち、ラタトゥイユを作っている途中、不意にバジルをベランダに取りに行ったりする細かい仕草やガラス皿の底に小豆をよそい入れ、氷あずきを作り食べるシーンなど・・・是枝監督作品でも印象的な食卓のシーンがあるが、それが本作では女のムードとともに堪能出来たりする。そして、人に伝えずとも孤独をぎうゅっと暖かい場所で抱き締めながら、ラストにはある決意を持って生きていくというストーリーは、規則的で無機質に繰り返されていくような日常が愛おしく感じ、“女性讃歌”と言ってしまえるほどに、圧倒的に女に優しい。INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美 ヘアメイク: 貴島貴也

服を脱ぐことは大したことではないんですよね。映画の中なら何をされてもいいけれど、それと一緒に裸になる心みたいなものに関しては「平気じゃない」って思うことが悪いことだと思わなかったというか。


--- わたしは以前から渡辺さんの演技がとても好きなので、お会いしてお話を伺うことが出来てとてもうれしく思っています。

渡辺真起子(以下、渡辺) ありがとうございます(笑)。

--- まずは、山崎裕監督が初監督された本作の出演経緯をお聞かせ頂けますか?

渡辺 何となく、山崎さんが「やるぞ」「はい」とそれくらいのことなんです(笑)。


※山崎裕 1940年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、フリーの撮影助手を経て、65年長編記録映画『肉筆浮世絵の発見』(中村正義・小川益夫共同監督)でフィルムカメラマンとしてデビュー。以降、『遠くへ行きたい』『素晴らしき世界旅行』などのテレビドキュメンタリーの他、CMや記録映画などで活躍。81年、ドキュメンタリージャパンに役員として参加。撮影だけでなくプロデューサーやディレクターとしても映像作品づくりに携わる。

主なテレビドキュメンタリー作品は、86年『神々の峰 アンデス大自然紀行』(演出兼/ギャラクシー選奨)、94年『印度漂流』(演出兼/文化庁芸術作品賞/ギャラクシー奨励賞)、95年『僕たちはあきらめない〜混迷のハイチと子供たち』(五十嵐久美子演出/ATP賞優秀賞/イタリア賞出品)、97年『20世紀黙示録 ものくう人々』(深作欣二演出/ATP賞グランプリ)、98年『なぜ隣人を殺したか〜ルワンダ虐殺と煽動ラジオ放送〜』(五十嵐久美子演出/ATP賞優秀賞/イタリア賞グランプリ/ギャラクシー奨励賞)、10年『死刑囚 永山則夫〜獄中28年間の対話』(堀川恵子演出/ギャラクシー大賞)など。

99年、是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』で初めて劇場用映画の撮影を手掛け、以降、01年『DISTANCE』、04年『誰も知らない』、06年『花よりもなほ』、07年『歩いても 歩いても』、08年『大丈夫であるように –Cocco 終わらない旅-』迄の是枝監督作品すべてを担当した。

また、00年にはカメラマンの田村正毅(現 たむらまさき)、猪本雅三、照明の佐藤譲とのコラボレーションによる、監督のいない映画づくりに参加。『短編 TANPEN』(プサン国際映画祭正式出品)中の『Share』を担当した。その他の映画作品は、03年『沙羅双樹』(河P直美監督)、04年『カナリア』(塩田明彦監督)、06年『ハリヨの夏』(中村真夕監督)、07年『恋するマドリ』(大九明子監督)、07年『たみおのしあわせ』(岩松了監督)、08年『俺たちに明日はないッス』(タナダユキ監督)など。『トルソ』は初の監督作品となる。



--- 山崎さんが今までカメラマンで参加した作品がお好きだったというところも?

渡辺 もちろんです。山崎さんは肩にカメラが生えているような方なので(笑)、「山崎裕さんの撮った作品が好き」ということと「山崎さんが好き」っていうことは同じことかもしれません。いつかご一緒したいと思っていました。ネタ友達・・・ネタ友達って言い方も大変失礼な話なんですけど、「何かおもしろいことが出来ないかな」というような話を定期的にしてたんですね。「山崎さん、こんなものはどうですか?」というような感じで、それはわたしに関係なくアイデアをいつも話していくような感じで。で、「今回はこういう話があって、渡辺くんで形になりそうだけれどもどうする?」っていう風に言われて、「あ、それ、やるやる!」みたいな感じで(笑)、そこからですね。

--- 脚本を読まれる前から「山崎さんが撮るなら・・・」というようなお気持ちが先に?

渡辺 もちろんです。


トルソ


--- 本作ではトルソを愛する女性、ヒロコを演じられましたが、実際に脚本を読まれていかがでしたか?

渡辺 驚きますよね(笑)。アイデアを言われた時点で「えー!?トルソってー」って思いましたよ(笑)。でも、入りはトルソではなく女で、山崎さんはとにかく「女が撮りたい」という思いがあって、そこにトルソがいたっていうようなイメージの方が強いんですよね。みなさん、トルソというものがとてもショッキングな存在・・・インパクトが強いようで、度々質問されるんですが、山崎さんが撮りたいのは、女なんですよ(笑)。なので、その「ある女」に選ばれたのはとても光栄でした。

--- 実際にその女、ヒロコを演じるにあたり、どのように役作りや作品に入られていったんですか?

渡辺 わたし一人で役作りをするっていうことはなかったですね。ひたすら山崎さんと話をし、「何なんだ、この女は!こんな人いるの?」とか(笑)。山崎さんとディスカッションする中で実は「いる」と思えていましたし、自分と重ねられる部分もどんどん浮かび上がって来たので何となく符号させながら。

--- 山崎さんは女性に厳しくもあり、やさしいんだろうなあというのが画面から伝わってきたのですが・・・(笑)。

渡辺 厳しいかなあ・・・冷たいのかな?(笑)。どっちだと思います?謎なんですよ、それ。

--- 初監督作品で監督をしつつカメラを回されていて、「いい画を撮りたい」という思いからの貪欲さ、ストイックさが厳しさでもあり・・・でも、女性に対してはすごく愛情を持ったやさしさがあるといいますか、日常を丁寧に撮られていて“女性賛歌“と言っていいくらいに女のわたしにとってはすごく大切な映画になりました。

渡辺 そんな風に言われるとすごくうれしいです。

--- 実際に細かく演出されたりということもありましたか?

渡辺 みなさんが想像するいわゆる映画監督のイメージ・・・「これは絶対ここに置いて、それでこうやってああやって」とか「それじゃいい女に見えない!」とかそういう風な演出の厳しさはあまり感じなかったんですけど、「フレームの厳しさ」っていうものはあった気がします。山崎さんはカメラも担いでいるので反応が直というかすごく動物的で、「撮れていないと嫌」・・・ちって舌打ちするような感じといいますか、そういう風に見えるわけです。で、そこにはわたしの生理もあるから、生っぽく「嫌」って言われているような感じというか、それが結構厳しかったですね。あとは、距離感ですね。


トルソ


--- 渡辺さんはいろいろな作品に出演されていますが、ほぼノーメイクに映るような女性の心の闇みたいなものを演技で求められるようなことがすごく多いような気がするんですが、本作もそういった部分が全開になっていましたよね?

渡辺 暗いですよね、わたし(笑)。そんなに自分から遠い役はやっぱり来ないと思うんですよね。役を頂く度に思うんですが、「わたしの私生活を見てるんじゃないの?何で知ってるのよ!」っていうくらい近く思えることが多いんですよね。それはわたしが俳優としてそういう風に脚本を読もうとしているだけかもしれないんですけど、闇とか影のある女の人がすごく多いなあって。その度に自分でその役をやって、誰にわかるわけではないけれど「わたしもそういうものを抱えてるなあ」って再確認させられ、「つらいなあ」って思いながら(笑)、1個ずつの作品と一緒に卒業していくっていうことを繰り返しているのかもしれません。

--- 5月31日に小谷忠典監督の『LINE』のトークショーに参加され、「女が裸になるとき」というテーマで語られたそうですが・・・。

渡辺 あんなタイトルだと、そりゃあ気になりますよね(笑)。わたしが付けたんじゃないですよ、あれ。気がついたらああいうタイトルがついてました。

--- 実際にそういったお話になったんですか?

渡辺 なりませんでしたよ(笑)。『LINE』はセルフドキュメンタリー作品なんですが、家族の、もしくは出会った人の傷に触れたことから自分の傷を触り、自分さえも剥き出しになって発展していくような作品だったので、「渡辺さんなら話をしてもらえるんじゃないかって思った」って小谷くんは言ってました(笑)。「渡辺さんはやる役やる役に孤独もあるし、そういうものが見える・・・僕はそれがすごい好きです」って。裸の話はしなかった。「わたしはいつも裸んぼなんで」みたいな(笑)。洋服を着てても裸んぼだから「これ以上は嫌」っていう。


トルソ


--- 今作でもヌードシーンがありますよね?渡辺さんは映画の中でヌードを求められることも多いと思うんですが、それに対してのお気持ちもお聞かせ頂けますか?

渡辺 服を脱ぐことは大したことではないんですよね。「裸んぼになったわたしを誰か受け止めてくれるの?」っていうことだったと思います。『トルソ』の撮影は2年前で、当時は裸んぼになるのは全然構わないし、映画の中なら何をされても何でもいいけれど、その状況からぱっと「誰かわたしを抱きとめてくれるのかな」っていうのはすごくありました。そんな青いようなことを思うのもこの頃が最後かなって思うんですけど(笑)。体は平気、いくらでも。だけど、それと一緒に裸になる心みたいなものに関しては「平気じゃない」って思うことが悪いことだと思わなかったというか。最初はぐずぐずぐずぐず言いましたよ(笑)。「脱ぐのは平気だけど、じゃあ、でろーんと寝てればいいの?」とか「キレイだ」って撮ってて、「キレイに撮れたらおもしろい映画になるわけ?」とかね(笑)。そういうのはたった1シーンとか2シーンとかでしょ?だから、そんなことはどうでもよくて「本当にいる人じゃないけれど、このヒロコさんっていう人の人生を作り上げて中に入り込んでいくことで誰かの何かを傷付けたりするかもしれない。それはわざとやりたいの?何か理由があってそうしたいの?」とかそういう話はしました(笑)。でも、きっとそれがこの映画のテーマになるというかとっても大事なところになるんじゃないかなって思ったんです。山崎さんが「わたしがいい」って言ってくれたんだから、「そういうぶつぶつしたこともちょっと引き受けて」っていう。もちろん、そういう部分もちゃんと引き受けて下さいました。面倒くさいなって思われたかもしれませんね。今はまた変わったと思います。

--- ヌードシーンももちろんですが、山崎さんのカメラ、視線はすごく生々しいですよね?(笑)。

渡辺 そう!もう大変(笑)。カメラが近いっていう鬱陶しさはないんですけど、すっごく遠くにいても「ああ、いるー」みたいな(笑)。いますからね、本当に。近いというか。前にご一緒した時も「この人はいるんだよ、ここに」って(笑)。やっぱりね、見つめられることから逃れられないというか。だから、すごく個人的なものになる怖さみたいなものが多少ありましたね。それをどこまで出来るか、出来るところまでがんばりたいって。言われた通りにやってるだけじゃ絶対に楽しんでくれないっていう感じがしてそれが一番厳しかったし、恐怖はすごくありましたね。「わたし、よくがんばったなあ」って今思っちゃった・・・って、嘘、嘘(笑)、山崎さんが大変だったと思いますよ。



(次の頁へつづきます)



『トルソ』 2011年2月8日、DVDリリース決定!


『トルソ』 オフィシャルサイトはこちらから!

監督・撮影・脚本:山崎裕
脚本:佐藤有記

渡辺真起子安藤サクラARATA蒼井そら石橋蓮司山口美也子

製作:いちまるよん / トランスフォーマー

© 2009 ”Torso” Film Partners


『トルソ』 公開記念!渡辺真起子 直筆サイン入りプレスシートプレゼント!


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※応募締切 2010年8月8日(日)

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profile

渡辺真起子 (わたなべまきこ)

東京都出身。1986年よりモデルとして活動をスタート。88年『バカヤロー!私、怒ってます』(中島哲也監督)にて映画デビュー。99年『M/OTHER』(諏訪敦彦監督)で高崎映画祭主演女優賞受賞。01年『贅沢な骨』(行定勲監督)、05年『カナリア』(塩田明彦監督)、06年『無花果の顔』(桃井かおり監督)、07年『14歳』(廣末哲万監督)、『殯の森』(カンヌ映画祭グランプリ審査員特別賞受賞/河P直美監督)などに出演。同年、ロカルノ映画祭グランプリ受賞作『愛の予感』(小林政広監督)では主演を務めた。近作には09年『愛のむきだし』(ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞受賞/園子温監督)、『ワカラナイ』(ロカルノ国際映画祭コンペティション出品/小林政広監督)など世界的にも評価の高い作品に多数出演。

そして、是枝裕和監督作品の多くに参加する撮影監督、山崎裕初監督作品『TORSO』にて主演し、7月10日(土)より公開となる。同作品は2009年、香港国際映画祭インディーパワー部門コンペティション正式参加、トリノ国際映画祭、フューチャー・フィルムコンペティション正式参加作品でもある。

今後は、蜂須賀健太郎監督『あの庭の扉をあけたとき』(2010年公開予定)、佐藤寿保監督『名前のない女たち』(2010年9月公開)、瀬々敬久監督『ヘヴンズストーリー』(現在公開中!)、東陽一監督 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(現在公開中!)と公開が続く。

また、舞台でも活躍しており、2010年8月4日(水)〜13日(金) 月影番外地 その2「ジェットの窓から手を振るわ」(木野花演出/下北沢ザ・スズナリ)の出演なども行った。

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