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『ライブテープ』 松江哲明×前野健太 対談 【4】

Friday, December 9th 2011

interview
ライブテープ


第24回 東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 正式出品作品。12.10公開!『トーキョードリフター』も話題!公開に合わせ、松江哲明グレイテスト・ヒッツ1999-2011が11.19より上映決定!さらに『トーキョードリフター』テーマソング収録のミニアルバム、「トーキョードリフター」も緊急発売!『ライブテープ』待望のDVD化につき、公開時の対談をもう一度!DVDに収録されているメイキングドキュメンタリー「ライブテープ、ニ年後」、はっきり言って!おもしろいです。ご期待下さい。 INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美

どんな激しいロックアルバムよりも、もしかしたらちょっと危ないかもしれないですね。


--- 今回、松江さんが初めて監督と名乗られていますよね?いろいろな方がそのことについて書かれていますが、松江さんから直接伺いたいなあと思いまして。

松江 でもそこは全然深い意味ないですよ。評論家さんはね、すごいおおげさに書くんですけど。でもね、本当に意味はないんですよ。今まで演出・構成ってしてたのは、ドキュメンタリーだからこそ、演出して構成して僕が操作してるというか、「作り込んでる中の僕の作品なんです」っていうクレジット・・・要するに消去法なんですよね。最初から「演出しよう」「構成しよう」じゃなくて、素材があれだけ多くなると、そうせざるを得ないし、そうしないと僕の観たい映画は撮れないから、その最後の肩書きというか覚悟というか、それとして演出・構成・編集なんですよね。

ライブテープ』は最初、演出・構成って入れてたんですけど、どこか違和感があったんですね。構成したのは前野さんだし、編集したのは音をどこで避けてって・・・リズムを作るっていう作業をしてくれた(録音の山本)タカアキさんなんですよね、僕にとっては。演出はある意味、歌ってる前野さんだし、キャメラをどういう視点で見せるかっていう演出は全部、近藤くんがやってるんですよ。一緒にカットを割ってっていう時は、意図を伝えてやってもらいますけど、74分回ってる間にそんなこといちいち言えないですよ。


※山本タカアキ 『ライブテープ』録音。 日本大学芸術学部映画学科録音コース卒業。大学同期の冨永昌敬監督や後輩である沖田修一、入江悠監督をはじめ、多くの若手映像作家の作品に録音/整音で参加。個人的にわたしは冨永監督作品を愛しておりますので、山本さんのお仕事をいつも、耳で感じております。映画『ライブテープ』の音と『ライブテープ オリジナル・サウンドトラック』の音は全く違った響きで満ちておりますので、この違いを映画で、サントラで体験しながらご堪能下さいね。


だから、「演出もしてない、構成もしてない、何だろう・・・」って考えると、みんなに任せて信じるっていうことをしてただけなんですよね。最初に「スタート」って言って、「OK」って言ってるだけ。だから、最後に監督って入れただけで。本当におおげさな意味じゃないんですよ(笑)。

だから、それはやっぱりね、日本の監督主義とか作家主義的なところがあるじゃないですか?でも、全然違いますから、実際の映画作りっていうのは。本当に集団作業ですよ。それぞれの集団作業の個々のプロフェッショナルが自分の能力を題材に対してどう出すかっていうことは。だから、『ライブテープ』は今までの僕の映画とそこが違いますね。一番何もしてないんですよ(笑)。

前野 足つってましたけどね(笑)。

松江 足つっただけじゃん(笑)。


ライブテープ


--- では、長澤つぐみさんを”参拝出演”としてキャスティングされた理由もお聞かせ頂けますか?

松江 近藤くんとリハーサルをしている時に、映画の最初は女性から始まるのがいいんじゃないか、という話になって、そこで長澤(つぐみ)さんの名前がパッと上がりました。

--- 元旦に撮影されたこともあり、「撮影が無事にできますように」という思いも込めて、あのシーンから始まったんですか?

松江 長澤さんはそう願ってくれたそうですけど、僕自身、祖母と父を亡くしていたので、参拝する気分になれなかったんです。だから「僕の代わりにお願いしてくださいね」とだけ伝えました。

--- 『ライブテープ』を撮られたその2週間後(1月13日)に「鴨川」のPVを中野坂上で撮られたそうですが、『ライブテープ』のつながりで松江さんに監督依頼を?


「鴨川」のPVはこちらでご覧頂けます!


前野 よく覚えてないんですけど、『ドキュメント・メタル・シティ』の流れから『ライブテープ』。そうですね。流れからして松江さんに頼む以外にはありえなかったですね。

--- 「鴨川」のPVにも長澤さんが出演していますが、『ライブテープ』が縁で?

松江 違います。「鴨川」を撮ることになったのも「『ライブテープ』で演奏しなかったから」という理由ですし、長澤さんにお願いしたのは、僕の中では『ライブテープ』と「鴨川」と対のようなもので、男子目線と女子目線のような関係したかったので、「鴨川」では長澤さんが主となって踊りまで考えてくれました。『ライブテープ』は男っぽさがあって、「鴨川」はそんな想いを吹っ飛ばす女性ならではの強さを出したいな、と思っていました。

--- 前野さんは、『ライブテープ』を体験される前と後では意識などに変化はありますか?

前野 ライブをするということに関してはさほど変化はないんですけど、松江監督の映画に関わった、というのはすごく大きな経験になったと思いますね。監督と車で地方の舞台挨拶回りをしに行ったんですけど、地方の映画館の人達に対する監督の愛情は半端なものではなかったです。

--- それでは、HMV吉祥寺PARCOに続き、1月17日(日)にHMV渋谷でサントラ発売記念のイベントが開催されますので、もう少しサントラのお話をして頂けますか?


”HMV吉祥寺PARCO” イベント動画も到着!「18の夏」を歌う前野さんのパフォーマンスをご堪能下さい!


松江 映画とあのサントラは全然別物ですね。これはもう、前野健太監督作品として聴いて欲しいですよ、本当に。サントラの表に僕は前野さんと一緒に映ってますけど、このサントラに関しての僕の役割りはきっかけっていうか、本当にもうそれだけですよ。中身だったり、音の作り方っていうのは僕の映画で撮った解釈と全然違う前野さんのライブアルバム、ベスト盤っていうか、前野さんの歌がこういう音源が揃ってどう作り込んだのかっていうことなので。僕はこのサントラは本当に、普通に前野健太の1ファンとして聴けましたね。

--- 前野さんは新作のオリジナルアルバムという感じの解釈で?

前野 そうですね。耳だけで聴く『ライブテープ』というか、もう1つの『ライブテープ』っていう感じですね。これね、街でイヤフォンで聴いてると危ない・・・危険なアルバムなんですよ。車の音がいきなりぶわーんって聞こえて、振り返ると何もいない(笑)。「あ、俺引かれたか?いや、引かれてない」みたいな(笑)。

松江 もしくは気付かないこともあるよね。「ああ、CDだな」って思って避けなかったら、本当に車が来てたとか(笑)。

前野 本当に危ないアルバムですよ(笑)。どんな激しいロックアルバムよりも、もしかしたらちょっと危ないかもしれないですね。磯部(涼)さんがライナー書いてくれたんですけど、「街中で聴いたりするとトリップする」って。だから、そういう映画を持ち出して、耳で聴いてたのしめるというか。本当にもう1つの『ライブテープ』っていうものを作らせてもらったっていう感じですね。

松江 まあ、便宜上はありますけど、本当はオリジナル・サウンドトラックっていうのはまた違うよね?

前野 そうですね、若干違いますよね。

松江 このアルバムを聴いてもらえばわかるんですけど、いわゆる映画音楽っていう意味合いで先にイメージが付いちゃうと、「ちょっと違うよなあ」って僕は思いましたね。

前野 迷ったんですよね。タイトル、ただの『ライブテープ』にしようかなって。

松江 全然それでもいいよね、『ライブテープ』っていう1個の作品でも。でも映画と被っちゃうんで(笑)。

前野 ちょうどね、僕、アルバムのタイトルが『ロマンスカー』、『さみしいだけ』って、全部6文字できてるんですよ。だから、「『ライブテープ』もいいかな」って思ったんだけど、でも、せっかく映画があってのこのサントラですからね。MIXももう1回やってもらって、マスタリングもして、すごくおもしろい作品になってるんで、ぜひ聴いて頂きたいですね。

松江 僕、聴いた時に勝手にタイトルを考えてて・・・『ライブテープ 生』って。

--- 『ライブテープ 生』・・・(笑)。

前野 いやらしいですね(笑)。

松江 いやらしいでしょ?(笑)。でも本当ね、聴いててそんな感じがしたんですよ。

前野 いやあ、そんな感じですよね、本当そんな感じ。だからすごく、アナログっぽいんですよ、音の作りも。デジタルっぽくないというか。

松江 映画の『ライブテープ』は人と関わるためにあれこれ工夫を凝らしているけど。CDは本当に生!

前野 生テープ。

松江 生テープですね。

--- では、それぞれの今後のご予定をお聞かせ頂けますか?

松江 『ライブテープ』で得た経験を生かし、2010年代はこの作り方をもっと徹底したいと思っています。具体的な企画は挙げられませんが、僕だけでは作れない、刺激的な内容が進行中です。

前野 3枚目のアルバムを今年中に必ず発表します。

--- 最後に一言ずつお願いします。

松江 『ライブテープ』はお客さんによって育てられる映画だと思っています。出発は個人的な動機でしたが、見る人の解釈は自由ですから。一人でも多くの方に見て欲しいです。

前野 HMVでCDを買って下さい!お願いします。

--- 今日はありがとうございました。

松江&前野 ありがとうございました。



映画『ライブテープ』 予告編!


(おわり)



『ライブテープ』 コレクターズエディションで12/7(水)リリース決定!


ライブテープ: コレクターズエディション』(DVD2枚組)

【封入特典ブックレット】 (24P 予定)
・前野健太と松江哲明の出会いのきっかけを作り、『ライブテープ』では現場進行を担当した九龍ジョーによる18000字エッセイ
・松江哲明による『ライブテープ』制作日記
・スタッフ、キャストプロフィール

【DISC1】
『ライブテープ』本編74min
音声特典1、オーディオコメンタリー(前野健太、監督:松江哲明、撮影:近藤龍人、録音:山本タカアキ、司会:那須千里)
音声特典2、ライブテープ・ゼロ(撮影時のキャメラマイク音声)

【DISC2】
・メイキングドキュメンタリー「ライブテープ、ニ年後」約60min
監督:岩淵弘樹(『遭難フリーター』)
出演:前野健太、DAVID BOWIEたち、近藤龍人、山本タカアキ、曽我部恵一、矢田部吉彦、無善法師、大橋裕之、九龍ジョー、リピーターの方々、松江哲明、他。
・『ライブテープ』予告編
・『トーキョードリフター』予告編


唄・演奏:前野健太

演奏:〜DAVID BOWIEたち〜
吉田悠樹(二胡)
大久保日向(ベース)
POP鈴木(ドラムス)
あだち麗三郎(サックス)

参拝出演:長澤つぐみ

監督:松江哲明(『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』)

撮影:近藤龍人(『ウルトラミラクルラブストーリー』)
録音:山本タカアキ(『SR サイタマノラッパー』)

配給・宣伝 SPOTTED PRODUCTIONS
宣伝協力 菫青色映画株式会社

協力 エスパース・サロウ
若杉公徳(宣伝ビジュアル)

(2009年 / 16:9 / カラー / ステレオ / HD / 74分)

© 2009 Tip Top


『トーキョードリフター』のテーマソング収録のミニアルバム、「トーキョードリフター」12/14(水)に緊急発売!


CDの表題曲は松江哲明監督が作詞を担当。元々映画のテーマソングとして書き下ろされた楽曲を今回のCD化にあたって新たに招集されたメンバー「チーム・トーキョードリフター」とともにスタジオ録音が実施された。本作にはこの「トーキョードリフター」新録バージョンの他、映画で使用されている同曲の1人多重録音バージョンや既発曲「あたらしい朝」の劇中弾き語り音源、「ファックミー」の再録バージョンなど、全6曲が収録予定!

「トーキョードリフター」


松江哲明監督最新作『トーキョードリフター』 12/10(土)よりユーロスペースにて、連日19:00より公開!他、全国順次公開!


『トーキョードリフター』 オフィシャルHP


松江哲明グレイテスト・ヒッツ1999-2011、11/19(土)よりオーディトリウム渋谷にて、連日21:00より上映!


「松江哲明グレイテスト・ヒッツ1999-2011」 オフィシャルHP

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    • 2011年02月13日
profile

前野健太
1979年、埼玉県生まれ。ミュージシャン。2000年頃より作詞・作曲を始め、07年、アルバム「ロマンスカー」でデビュー。同作収録の曲「天気予報」が映画『デトロイト・メタル・シティ』(李闘士男監督)のメイキング映像の挿入歌として使用される。09年、アルバム「さみしいだけ」を発表。09年元旦に吉祥寺の街中で撮影された前野健太主演のドキュメンタリー映画『ライブテープ』が第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で作品賞を受賞、全国で公開され日本のみならずドイツ、ニューヨーク、ロンドンなどでもライブを繰り広げた。2011年2月、アルバム「ファックミー」を発表。松江哲明監督によるライブドキュメンタリーDVD『DV』が発売された。「前野健太とDAVID BOWIEたち」、「前野健太とおとぎ話」などバンド形態でも活動。今年は、「ARABAKI ROCK FES’11」などのロックフェスにも多数出演し、映画『モテキ』(大根仁監督)で「友達じゃがまんできない」が挿入歌として使われる。

松江哲明
1977年、東京都生まれ。99年、日本映画学校(現・日本映画大学)卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が99年山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波特別賞」、「NETPAC特別賞」、平成12年度「文化庁優秀映画賞」などを受賞。その後、『カレーライスの女たち』、『童貞。をプロデュース』など刺激的な作品をコンスタントに発表。2009年、女優・林由美香を追った『あんにょん由美香』で第64回毎日映画コンクール「ドキュメンタリー賞」、前野健太が吉祥寺を歌い歩く74分ワンシーンワンカットの『ライブテープ』で第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞、第10回ニッポン・コネクション「ニッポンデジタルアワード」を受賞。著書に「童貞。をプロファイル」、「セルフ・ドキュメンタリー―映画監督・松江哲明ができるまで」など。11月下旬フィルムアート社より「映像作家サバイバル入門」(仮)が刊行予定。

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