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1 people agree with this review 2009/12/02
ハイドンイヤーを記念して執筆されたのであろうが、各交響曲を譜例をつけてわかりやすく解説してくれている点に大いに好感を覚える。ハイドンの交響曲全集を、例えばドラティ盤など、日本盤で購入すると相当な出費が必要になる。しかし、輸入盤だと、例えば、最近発売されたディヴィス盤など1万円以下で入手可能であるが、日本語解説がない。そのような時に、本書籍は、鑑賞のよき羅針盤になってくれる。残念なのは、コラムなどをもう少し充実させてくれると嬉しいと思うのだが、それでも、特に、一般には殆ど知られていない初期の交響曲(有名な音楽の友社発売の名曲解説ライブラリーにも載っていない。)について、一曲毎に丁寧にわかりやすく解説してくれていることを考えれば、贅沢は言えないだろう。
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14 people agree with this review 2009/12/02
ハイドンの膨大な数の交響曲をすべて聴くのは、ハイドンのファンとしてもなかなか骨の折れることであるが、雇用主であったモルツィン伯爵や、エステルハージ侯爵の求めのままに作曲したと思われる、いわゆる小交響曲と言われる一部の宴会用の作品を除いては、いずれの交響曲も、細部にまで目を光らせた労作揃いであると言える。パリ交響曲以降の傑作群にどうしても目が行きがちであるが、初期の作品でも、たとえば第25番など、後年の傑作を彷彿とさせる才能の輝きが見られる。ハイドンの交響曲全集としては、これまではドラティによる初の全集や、最近ではフィッシャーによる全集が世評の高いものであったが、ハイドンイヤーに併せて全集を完成させたラッセル・デイヴィス盤は、これら過去の全集にも十分に匹敵する内容の名演ということができる。何よりも、素晴らしいのはすべてがライブ録音で、しかも各交響曲の演奏の出来にムラのないことだ。可能な限り作曲された順番に並べたり、初期の交響曲や疾風怒濤期、娯楽用など、ジャンル別に交響曲群を纏めたのも、なかなかの好企画だ。室内管弦楽団ということで、編成はやや小さめであるが、それだけにアンサンブルの緻密さは際立っている。録音も素晴らしいし、演奏の質の高さと価格を考えれば、現在入手できるハイドンの交響曲全集として、第一に推薦されるべきものと評価したい。輸入盤であるが故に日本語解説はないが、井上太郎氏が執筆された「ハイドン106の交響曲を聴く」を参照しながら聴くと、各交響曲の性格などがよくわかる。
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1 people agree with this review 2009/11/30
トリスタンとイゾルデの前奏曲は、実に荘重なインテンポであり、シューリヒトのワーグナー指揮者としての適性を感じさせる。これに対して、愛と死は、終結部の盛り上がりの箇所でアッチェレランドを駆使したりするなど濃厚な表情を見せており、決して一筋縄ではいかない。さすらう若人の歌は、ゆったりとしたインテンポで通しているが、何よりも若き日のディースカウの巧いこと。そのディースカウの絶美の歌唱を見事に活かしたシューリヒトの至芸にも拍手を送りたい。そしてベートーヴェンの第7。平林氏の懇切丁寧なライナーによると、シューリヒトが遺した最後の録音のようであるが、それだけにいかにも巨匠風の構えの大きい名演だ。冒頭のテヌートをかけない最強奏の一打の連続には大いに驚かされるが、主部に入ると、シューリヒトならではの颯爽とした進軍が開始される。呈示部の繰り返しは行っていないが、特に、展開部に入ってからの熱狂や終結部の低弦の響かせ方など、実に素晴らしい。第2楽章は淡々とした表情で開始されるが、やがて、むせ返るような濃厚な表情が表れる。第3楽章は快速のいつものシューリヒト節。第4楽章は、やや遅めのインテンポであるが、シューリヒトの内に秘めたパッションをなんとか抑えようと努力しているのがよくわかる。それも、終結部に至ってついに大爆発。猛烈なアッチェレランドとトランペットの最強奏があり、圧倒的な熱狂のうちに全曲を締めくくるのである。
2 people agree with this review 2009/11/29
ブラームスの第3はなかなか演奏が難しい。4つの交響曲中、最もスケールが小さく、等身大に表現してしまうと、こじんまりとした軽い演奏に陥ってしまう危険性がある。それ故に、呈示部の繰り返しを行ったりして、バランスをとる指揮者も一部にいるが、ケンぺはそのようなことはしない。ケンぺのアプローチはあくまでも正攻法。それでいて、何と力強い作品だろうかと思わせるのはさすがというべきだろう。同曲をブラームスの英雄と称する者もいるようだが、ケンぺの演奏を聴いているとそれもむべなるかなと思われる。北ヨーロッパならではの幾分渋い色調の音色を出しつつ、重厚さにもいささかの不足もない。第2楽章や第3楽章の抒情的な旋律の歌い方も実に感動的であり、この第3は、ケンぺとしても会心の名演と評価してもいいだろう。ハイドンの主題による変奏曲も、ゆったりとしたテンポの下、各変奏の描き分けを巧みに行っており、老匠ならではの円熟の至芸を感じさせる。それにしても、XRCDは素晴らしい。これほどのいやみのない自然体の鮮明な音質で、ケンぺの名演を味わうことができるのは何という幸せなことであろうか。
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5 people agree with this review 2009/11/29
私事で恐縮であるが、筆者がブラームスの第1にはじめて接したのは中学生の頃であったが、その時に聴いたのがこのケンぺ盤であった。当時はLPであったが、決して派手さはないものの、北ヨーロッパならではの幾分くすんだ渋い色調の音色が印象的で、しばらくは愛聴していたと記憶する。その後、様々な指揮者、例えば、カラヤンやベーム、更には時代を遡って、フルトヴェングラーやクレンペラー、トスカニーニなどの名演を聴くにつれて、それらの演奏があまりにも個性的であることもあり、ある意味では地味なケンぺ盤のことはすっかり忘れてしまっていた。本演奏は数年前にスクリベンダム盤が発売され、久々に聴くことになったが、音質は悪くないものの、LPを聴いた時の感触がすっかりなくなっていたのが少々残念であった。しかし、今回のXRCD盤を聴いて、LPを聴いて感動していた少年時代を思い出した。渋くていぶし銀のケンぺならではのブラームスの音が聴こえてくるではないか。ケンぺの演奏は決して華麗さなどとは無縁である。しかし、よく聴くと、渋い曲想のはしばしに感じられる滋味溢れる内容の豊かさ。これこそ、ケンぺ&ミュンヘン・フィルが見事に描き出した至高のブラームス象と言えるだろう。
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1 people agree with this review 2009/11/28
このような崇高にして感動的なマーラーの第2を前にしては、ただただ首を垂れるのみである。シューリヒトは、特に晩年、ブルックナーにおいて神がかり的な名演を遺したせいか、ブルックナー指揮者のイメージがどうしても強いが、平林氏の丁寧なライナーを読むと、実は、マーラーを得意とした指揮者であったとのことである。本盤は、58年の録音であるが、この時代には、マーラー指揮者として名を馳せたバーンスタインやショルティの全集なども完成しておらず、20世紀後半に訪れるマーラーブームなど予測できなかった時期である。マーラー直系の弟子であるワルターやクレンペラーの演奏が幅を利かせた時代である。このような時期に、メンゲルベルクは別格として、独墺系の指揮者がほとんど見向きもしなかったマーラーに果敢に挑戦したシューリヒトのマーラーへの深い愛着と、来るべき時代への先見性を高く評価するべきであろう。この第2は、冒頭に記したように、マーラーを得意としたシューリヒトならではの崇高にして感動的な名演だ。どの楽章も聴きどころ満載であるが、特に、第2楽章の美しさは出色。終楽章の終結部の壮麗な合唱の直前に一瞬のゲネラルパウゼがあるが、これなども実に効果的。こういうところを聴くにつけ、シューリヒトがいかにマーラーを愛し、深く理解していたのかがわかる。さすらう若人の歌も名演であり、録音も、50年代後半のライブ録音としては、かなり高いレベルにあると言える。
3 people agree with this review 2009/11/28
小林研一郎のわが祖国と言えば、チェコ・フィルと録音した97年盤が頭に浮かぶが、これはそれから12年ぶりの録音である。ヴィシェフラドは、小林としてはいま一つの出来。東京都交響楽団ともども、エンジンがかかっていないきらいがある。モルダウに入って、漸く小林らしさが出てくる。特に、終結部の雷鳴のようなティンパ二の鳴動は圧倒的なド迫力。シャールカは、中間部のゲネラルパウゼが実に効果的で、緩急自在のテンポが曲想を巧みに描き尽くすのに貢献している。ボヘミアの森と草原からは、静けさよりは小林の熱い血がそこらじゅうにたぎっている感じ。ターボルの重量感溢れる巨象の進軍にはもはや抗するものは何もなく、ブラ二ークにおける圧倒的な高揚感に繋がっていく。特に、終結部のティンパ二の強打と、ヴィシェラフドの再現の崇高な歌いあげは、小林の唸り声も聴こえるなど、小林の独壇場と言っても過言ではあるまい。東京都交響楽団も、ブラ二ークのホルンの旋律の野太さなど、わが祖国の内包する郷愁の哀感を的確に表現するなど、持てる力を存分に発揮しており、小林の指揮ともども名演であると評価したい。惜しいのは、SACDにしては録音が、特にバランスの面においてイマイチである点。エクストンならば、もう一段ハイレベルの高音質を望みたい。
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1 people agree with this review 2009/11/27
シューリヒトは、颯爽としたインテンポの下、繊細なニュアンスを随所にちりばめるという、言わば渋くて、枯淡の境地を垣間見せるような名演を繰り広げた指揮者だと思っていた。しかし、それは、録音状態のいい名演が60年代の晩年に集中していることによるものであり、50年代半ばにフランスのオーケストラと繰り広げた前作の3枚のCDで、そのような印象が見事に覆ってしまった。本CDも、同じく50年代の演奏であるが、前作と同様に、テンポが目まぐるしく変遷する実に熱い演奏を行っている。シューマンのピアノ協奏曲は、第1楽章のオーボエによるゆったりとした濃厚な表情にびっくりさせられる。主部に入ると、演奏の歩みを早めることになるが、テンポは緩急自在。ハスキルとの息もぴったりだ。第2楽章は、冒頭と終結部の主題を早めに演奏して、中間部をむせ返るような抒情で歌いあげるという、実に効果的な至芸を披露している。第3楽章も、シューリヒトの魔法のような棒のもと、見事な音のドラマを繰り広げている。演奏終了後の聴衆の熱狂も当然だと思われる。ベートーヴェンの第5は、全体の印象は、晩年の颯爽たるインテンポのシューリヒトであるが、隋所に、この時期のシューリヒトならではの踏み外しが見られる。例えば、第3楽章の終結部の第4楽章に向けての弦の動きなど、演奏が止まってしまうかと思うようなテンポダウンを見せたり、終楽章は、冒頭主題をゆったりとしたテンポで高らかに歌い上げたかと思うと、突然、テンポが超快速に変遷する。終結部の一歩手前は、すざまじいアッチェランドをかけており、シューリヒトの熱いパッションの爆発が見られる。オイリアンテ序曲も含め、本CDにおさめられたいずれの曲も、これまでのシューリヒトの印象を覆すのに十分な超名演と評価したい。ライナーの平林氏の解説も、過去の演奏との比較など実に懇切丁寧であり、いい加減なライナーがはびこる中で、平林氏には深く敬意を表したい。
4 people agree with this review 2009/11/26
ベルグルンドはシベリウスの交響曲全集を3度にわたって録音しているが、衆目の一致するところ、2度目のヘルシンキ・フィルとのものが最高傑作であると言えるだろう。そればかりか、古今のシベリウスの交響曲全集の中でもトップを争う名演だと評価したい。本盤は、その中から第1と第6をおさめているが、いずれも北欧的な抒情とフィンランドの民族的な力強さを兼ね備えた超名演である。第1は、そうしたベルグルンドのシベリウス解釈に見事に符合する楽曲であり、どこをとっても熱い燃えるような民族的な高揚と清涼感溢れる抒情という、ある意味では二律相反する要素を併せ持つという至芸をいとも簡単に成し遂げている。これは、ベルグルンド&ヘルシンキ・フィルのシベリウスへの敬愛と深い理解の賜物であろう。第6は、冒頭の繊細なヴァイオリンの演奏からして、身も心も洗われるような北欧を吹く一陣の清涼感溢れる風に触れるようだ。どこをとっても、世の中にこれほど美しい音楽があるのだろうかと思わせるほどの天国的な美しさに満ち溢れている。もちろん、第3楽章の終結部など、シベリウスの内面に秘めた情念のような力強さにもいささかの不足はない。第6のおそらくはベストを争う名演と言っても過言ではないだろう。
4 people agree with this review
2 people agree with this review 2009/11/25
ベルグルンドはシベリウスの第2を3度にわたりスタジオ録音しているが、ベストの演奏は、やはり本盤のヘルシンキ・フィルを指揮したものだと思う。第1楽章など、シベリウスの演奏様式としては禁じ手とも言うべき緩急自在の思い切ったテンポ設定を行っているが、決してやり過ぎの感じがしないのは、ベルグルンドがシベリウスの本質をしっかりと捉えきっているからに他ならない。第2楽章は、おそらくは史上最速と言ってもいいくらいの快速のピツィカートで開始されるが、かのバーンスタインの新盤のような大仰なテンポ設定と比べると、はるかにしっくりくる。中間部の金管楽器の鋭さや北欧風の清涼感溢れる抒情、沈み込むような低弦の響きなど最高だ。第3楽章から第4楽章にかけては、あまり踏み外しはないが、終結部の圧倒的な高揚感は、さすがはベルグルンドである。併録の大洋の女神も、北欧風の抒情を活かした名演であるし、フィンランディアは、テンポはかなり早いが、それでいて、聴かせどころのツボはしっかりと心得ており、ベルグルンド&ヘルシンキ・フィルに内在する祖国愛に満ち溢れた至高の名演と評価したい。
4 people agree with this review 2009/11/23
全体を43分で駆け抜けるという、ブラームスの第1としては早めのテンポ設定であり、マーツァルは、一直線のインテンポで演奏している。テンポだけで言うと、かのベーム&ベルリン・フィルの名演と同様であるが、出てきた音楽は全く異なる。ベームが剛毅でなおかつ重厚さがきわだったいかにもドイツ正統派の名演であったが、マーツァルの演奏は、むしろ柔和なイメージ。剛と柔という違いがある。では、軟弱な演奏かというとそうではない。ブラームスの音楽の美しさを、オーケストラを無理なく鳴らすことによって、優美に仕立て上げるという、マーツァル得意の名人芸が繰り広げられているのだ。それには、やはりチェコ・フィルの巧さ、そして音色の美しさの貢献度を高く評価しなければならないだろう。特に、終楽章のホルンの美しさや、低弦のしたたるような濃厚さも、あくまでも気品を失うことがないのは、さすがはチェコ・フィルだと思う。ブラームスの音楽の魅力を、純音楽的なアプローチで、力強さをいささかも損なうことなく優美に仕上げた名演と評価したい。SACDによる高音質録音も決して見逃せない。エクストンとしても、これはかなりの成功例と言えるだろう。
6 people agree with this review 2009/11/23
インバルは、有り余るパッションを秘めながらも、表面に現れた音楽は実に抑制的。得意とするマーラーの交響曲にしても、抑えられた表現が目立ち、やや物足りなさを感じるのも否めない。しかし、このチャイコフスキーは、これまで抑えてきたインバルのパッションが爆発したような濃厚な表情づけの熱い名演になっている。爆演と言ってもいいかもしれない。インバルが、これほどまでに個性的で熱い演奏をする指揮者だとは思わなかった。第1楽章は実にローテンポの序奏部で開始されるが、主部に入ってからは緩急自在のテンポの連続。時には大見えを切るような箇所も見られるが、決してやり過ぎの印象を与えることはない。かの小林研一郎の名演を思わせるような個性的な解釈と言うことができるだろう。第2楽章は、特にホルンソロをレガートをかけずに吹奏させるなども他の演奏には見られないものだし、終結部の運命の動機が再現する箇所の突然のスローダウンなど、初めて聴くような感動を覚える。第3楽章の流れるようなワルツも、あたかもマーラーのレントラー舞曲を聴くような楽しさだし、終楽章も、第1楽章と同様にテンポを目まぐるしく変化させるなど、インバルの内に秘められたパッションが爆発する。録音も良く、インバルと東京都交響楽団のコンビも、三作目にして漸く軌道に乗ってきた感じだ。インバルも、マーラーなどでこのような熱い解釈をすれば、どれだけ感動的な名演に仕上がることだろうか。
6 people agree with this review
0 people agree with this review 2009/11/23
デニス・ブレインのホルンは実に素晴らしい。朗々として雄大なスケール感のある音色、そして低音の重厚さ、弱音の繊細さ。ホルンという楽器が紡ぎだす音色をすべて兼ね備えている。あわせて、桁はずれのテクニック。デニス・ブレインこそは、史上最高の不世出のホルン奏者と言えるだろう。R・シュトラウスのホルン協奏曲は、モーツァルトのそれと並んでホルン協奏曲史上の名作だと思うが、それにしてはCDに恵まれていない。その意味でも、このデニス・ブレイン盤は、R・シュトラウスのホルン協奏曲史上最高の名演と評価すべきであると思う。若き日のサヴァリッシュのサポートもなかなかのものだ。ヒンデミットのホルン協奏曲は、デニス・ブレインのために作曲された曲であるが、逆に言えば、デニス・ブレインにしか表現できない要素を持った難曲ということができるだろう。表情の起伏の激しいいかにも現代曲と言った趣きであるが、デニス・ブレインの超絶的な技巧と表現力が相まって、同曲がヒンデミットの傑作であることがよくわかる。デニス・ブレインにしては珍しいステレオ録音というのも嬉しい限りだ。
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5 people agree with this review 2009/11/23
ケンぺ&ミュンヘン・フィルの偉大なベートーヴェンの交響曲全集の有終の美を飾る名演だと思う。ケンぺの指揮はあくまでも正統派。気を衒うことは決してしない。堂々たるやや遅めのインテンポで、愚直なまでに丁寧に曲想を描いていく。しかし、そうしたケンぺの第9への真摯な姿勢が、ベートーヴェンの音楽の美しさ、力強さを一点の曇りもなく聴くものにダイレクトに伝えてくれる。我々は、ケンぺの演奏を聴くことによって、指揮者の個性ではなく、ベートーヴェンの音楽の魅力を満喫することができる。ここに、ケンぺの演奏の偉大さがあると言えるだろう。このようないぶし銀の魅力を持ったドイツ正統派のベートーヴェンは、今や聴くことはほとんどできないが、それだけに、軽妙浮薄がまかり通る現代においてこそ、尊ばなければならないケンぺの至芸と言えるだろう。
3 people agree with this review 2009/11/22
第7は、冒頭から実に柔和なタッチでゆったりとしたテンポをとる。主部に入っても、テンポはほとんど変わらず、剛というよりは柔のイメージで第1楽章を締めくくっている。第2楽章は、典型的な職人芸であり、決して安っぽい抒情に流されない剛毅さが支配している。第3楽章は雄大なスケールとダイナミックな音響に圧倒される。終楽章は、踏みしめるようなゆったりめのテンポと終結部の圧倒的な迫力が見事だ。第8は、中庸のテンポで、ベートーヴェンがスコアに記した優美にして軽快な音楽の魅力を、力強さをいささかも損なうことなく表現している。両曲ともに、ベートーヴェンを決して威圧の対象にせず、ベートーヴェンの音楽の美しさ、そして力強さをそのまま伝えようとする、正にドイツ音楽の王道を歩んできたケンぺならではのいぶし銀の名演と評価したい。
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